MRK:メルクの配当推移

ヘルスケア,配当






メルク(MRK)配当投資分析 2026年5月更新


メルク(MRK)配当投資分析(2026年5月更新)

要旨:メルクはブロックバスター薬「キイトルーダ」を軸に、堅調な営業CFと比較的健全なバランスシートで安定増配を継続してきました。投資判断で最重要の「配当を現金でどれだけカバーできるか」を、営業CF/フリーCF双方から年次で検証し、さらにBS(資産・負債・自己資本)の推移も数表で提示します。

更新メモ(2026年5月)

  • 2026年Q1決算(2026年4月30日発表)を反映。売上高は162.86億ドル(前年同期比+5%)、GAAP EPSは▲1.72ドル、Non-GAAP EPSは▲1.28ドルでした。赤字はCidara Therapeutics買収に伴う一時費用3.62ドル/株が主因です。[1]
  • 2026年ガイダンスを更新。会社は2026年通期売上見通しを658〜670億ドルへ小幅に引き上げ、Non-GAAP EPS見通しを5.04〜5.16ドルへ更新しました。このEPS見通しにはCidara買収費用3.62ドル/株が含まれます。[1]
  • 配当の最新水準を更新。2026年Q1・Q2配当はいずれも0.85ドル/株で、現行年率配当は3.40ドルです。2026年5月7日時点の株価112.27ドルに対する単純計算の配当利回りは約3.0%です。[2][3]
  • 2025年配当の誤りを修正しました。2025年の支払ベース年間配当は3.24ドル(0.81ドル×4)であり、3.40ドルは2026年の現行年率配当です。[2]
  • 2025年Form 10-K提出後の確定値を反映。2025年通期の売上高は650.11億ドル、GAAP EPSは7.28ドル、営業CFは164.72億ドルでした。[4]
  • キイトルーダ特許切れ(米国では2028年以降が重要局面)への対応策として、KEYTRUDA QLEX、WINREVAIR、OHTUVAYRE、Cidara、Terns買収予定など、パイプライン・ポートフォリオ拡充策を更新しました。[1]

まず、メルク(Merck & Co., Inc.)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを測る指標)等も確認します。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

配当利回りと権利落ち・配当性向の確認

直近の利回り・権利落ち動向や、EPSベースの配当性向の推移は、Merck IRおよび年次報告書(10-K)・四半期開示(10-Q)で確認可能です。また、長期の年次系列は投資情報サイトの時系列データで補完しています。[4]

現行四半期配当
$0.85
現行年率配当
$3.40
2026年5月7日利回り
約3.0%
2026年売上見通し
$65.8B〜$67.0B

年次:配当の推移(利回り・成長率・配当性向・年間配当・平均株価・EPS)

増配ピッチと「会計ベースの配当性向」の振れ幅を掴むための年次テーブルです。

配当 平均株価 年EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計($)
2026e 約3.0% 約5% 約66% 3.40 112.27
(5月7日)
5.04〜5.16
(Non-GAAP見通し)
2025 約3.1% 5% 45% 3.24 105前後 7.28
2024 2.60% 5% 46% 3.08 118.4 6.74
2023 2.70% 6% 2086% 2.92 108.3 0.14
2022 3.07% 6% 48% 2.76 89.8 5.71
2021 3.42% 7% 51% 2.60 76.0 5.14
2020 3.16% 8% 88% 2.44 77.1 2.78
2019 2.88% 14% 59% 2.26 78.4 3.81
2018 3.25% 5% 86% 1.99 61.2 2.32
2017 3.18% 2% 217% 1.89 59.4 0.87
2016 3.38% 2% 131% 1.85 54.8 1.41
2015 3.35% 2% 116% 1.81 54.0 1.56
2014 3.25% 2% 43% 1.77 54.5 4.07
2013 3.91% 2% 118% 1.73 44.2 1.47
2012 4.29% 8% 85% 1.69 39.4 2.00
2011 4.79% 3% 77% 1.56 32.6 2.02
2010 4.42% 0% 543% 1.52 34.4 0.28
2009 5.39% 0% 27% 1.52 28.2 5.65
2008 4.29% 0% 42% 1.52 35.4 3.63

※EPSはGAAPベースです。ただし、2026年は会社が示したNon-GAAP EPS見通しを掲載しています。2026年のNon-GAAP EPS見通し5.04〜5.16ドルには、Cidara買収に伴う一時費用3.62ドル/株が含まれます。2026年の現行年率配当3.40ドルをこのレンジで割ると配当性向は約66%ですが、Cidaraの一時費用を除いた基礎的な利益水準で見れば、配当負担はより軽く見えます。[1]

2025年配当については、元記事の「年間配当3.40ドル」は修正が必要です。2025年の支払ベース年間配当は0.81ドル×4回の3.24ドルであり、3.40ドルは2026年の0.85ドル×4回という現行ランレートです。[2]


配当の持続可能性を測る:現金ベースのカバー比率

指標の読み方

  • 配当総額(現金支出):本来は「普通株主への現金配当支払額」(キャッシュフロー計算書の財務CF内の行)を使います。直近年は10-Kの数値を優先します。
  • 営業CF対配当比率:営業CF / 配当総額。中長期で1.5倍超が一つの目安です。
  • フリーCF対配当比率:(営業CF − CAPEX)/ 配当総額。投資(CAPEX)を控除した残余現金で、どれだけ配当を賄えるかを見ます。

年次:配当総額(概算)とカバー比率

単位は百万ドル(M$)。カバー比率は小数2桁で表記。CFO/配当とFCF/配当の両方を掲示します。

配当総額 営業CF CAPEX フリーCF 営業CF/配当 FCF/配当
2025 8,200 16,472 4,100 12,372 2.01 1.51
2024 7,823 21,468 3,372 18,096 2.74 2.31
2023 7,388 13,006 4,200 8,806 1.76 1.19
2022 6,983 19,095 4,700 14,395 2.73 2.06
2021 6,656 14,109 5,000 9,109 2.12 1.37
2020 6,246 10,253 4,700 5,553 1.64 0.89
2019 5,889 13,440 2,800 10,640 2.28 1.81
2018 5,234 10,922 2,400 8,522 2.09 1.63
2017 5,179 6,451 2,200 4,251 1.25 0.82
2016 5,180 10,376 2,800 7,576 2.00 1.46
2015 5,144 12,538 3,000 9,538 2.44 1.85
2014 5,151 7,989 3,000 4,989 1.55 0.97
2013 5,104 11,654 2,900 8,754 2.28 1.72
2012 5,155 10,022 3,000 7,022 1.94 1.36
2011 4,805 12,383 3,600 8,783 2.58 1.83
2010 4,651 10,822 3,500 7,322 2.33 1.57
2009 4,940 3,392 2,200 1,192 0.69 0.24
2008 4,940 6,572 2,600 3,972 1.33 0.80

2025年の営業CFは164.72億ドルで、2024年の214.68億ドルから低下しました。主因は買収・研究開発関連支出や運転資本の変動です。それでも、2025年の配当支払額は約82億ドル、CAPEXは約41億ドルであり、FCF/配当カバーは約1.51倍を維持しています。[4]

2024年は営業CF・FCFの両面で非常に強く、FCF/配当カバーは約2.31倍でした。2025年は大型投資の影響でカバー倍率が低下したものの、製薬大手としてはなお配当を現金で十分に支える水準です。


キャッシュフロー計算書

読み方(要点)

  1. 営業CF:本業の現金創出力。配当の「元手」。
  2. 投資CF:CAPEXやM&Aなど。マイナス拡大は将来成長への投資を示します。
  3. 財務CF:配当・自社株買い・借入返済などの株主/債権者との現金やり取り。

年次:営業CF・投資CF・財務CF

単位は百万ドル(M$)。

営業CF 投資CF 財務CF
2025 16,472 -13,741 大幅マイナス
(配当・自社株買い等)
2024 21,468 -7,734 -7,032
2023 13,006 -14,083 -4,810
2022 19,095 -4,960 -9,119
2021 14,109 -16,555 2,593
2020 10,253 -9,443 -2,832
2019 13,440 -2,629 -8,861
2018 10,922 4,314 -13,160
2017 6,451 2,679 -10,006
2016 10,376 -3,210 -9,044
2015 12,538 -4,758 -5,387
2014 7,989 -374 -15,242
2013 11,654 -3,148 -5,990
2012 10,022 -6,805 -3,267
2011 12,383 -2,890 -6,904
2010 10,822 -3,497 -5,441
2009 3,392 3,156 -1,638
2008 6,572 -1,834 -5,523
  • 2020〜2021年、2023年、2025年は大型投資・買収により投資CFが大きくマイナスになっています。
  • 2024年は営業CFが214.68億ドルと過去高圏でしたが、2025年は164.72億ドルへ低下しました。それでも配当を賄うには十分な水準です。[4]
  • 2025年は配当約82億ドルに加え、自社株買い約51億ドルを実施しました。2026年見通しでも、会社は約30億ドルの自社株買いを前提にしています。[4][1]

損益・キャッシュ創出の推移(抜粋)

売上・営業CF・純利益の長期推移(M$)。

売上 営業CF 純利益
2026 Q1 16,286 -4,240
2025 65,011 16,472 約18,250
2024 64,168 21,468 17,117
2023 60,115 13,006 365
2022 59,283 19,095 14,519
2021 48,704 14,109 13,049
2019 39,121 13,440 9,843
2014 42,237 7,989 11,920
2010 45,987 10,822 861
2009 27,428 3,392 12,899
2008 23,850 6,572 7,808

2026年Q1は売上が増加した一方、Cidara買収費用の一括計上によりGAAP純損失42.40億ドルとなりました。この赤字は本業悪化というより、買収費用の会計処理による一時的な影響が中心です。[1]


バランスシート:自己資本・負債の時系列

単位は百万ドル(M$)。自己資本率=株主資本/総資産、負債比率=総負債/株主資本。

総資産 総負債 株主資本 自己資本率(%) 負債比率(%)
2025 136,900 84,290 52,610 38 160
2024 117,106 70,734 46,372 40 153
2023 106,675 69,040 37,635 35 183
2022 109,160 63,102 46,058 42 137
2021 105,694 67,437 38,257 36 176
2020 91,588 66,184 25,317 28 261
2019 84,397 58,396 25,907 31 225
2018 82,637 55,755 26,701 32 209
2016 95,377 55,069 40,088 42 137
2014 98,167 49,376 48,647 50 101
2012 106,132 50,669 53,020 50 96
2010 105,781 48,976 54,376 51 90
2009 112,314 50,829 59,058 53 86
2008 47,196 26,029 18,758 40 139
  • 2020年に自己資本率が28%まで低下した後、2024年は40%へ回復しました。
  • 2025年末はVerona Pharmaなどの買収の影響で総資産・総負債が増加しましたが、自己資本率は約38%であり、製薬大手としては比較的安定した水準です。[4]
  • 2026年はCidara買収およびTerns買収予定により、一時的に利益・キャッシュフロー・債務が振れやすくなります。配当投資家は、2026年通期の営業CFと買収後のレバレッジを確認する必要があります。

投資家向け所感(要約)

  • 配当安全度:営業CFベースの配当カバーは中長期で1.5〜2.7倍が中心レンジです。2025年は営業CF/配当が約2.01倍、FCF/配当が約1.51倍で、2024年より低下したものの、現金ベースでは配当をカバーしています。
  • 2025年業績:売上650.11億ドル、GAAP EPS 7.28ドル。キイトルーダ/キイトルーダQLEXの2025年売上は316.41億ドルで、引き続き最大の成長ドライバーです。[4]
  • 2026年Q1:売上162.86億ドル、KEYTRUDA/KEYTRUDA QLEX売上80.34億ドル、WINREVAIR売上5.25億ドル、Animal Health売上17.91億ドルと、複数領域で成長が確認できます。[1]
  • 研究開発・投資との両立:Verona Pharma、Cidara、Ternsなどの買収により、キイトルーダ依存からの脱却を進めています。ただし、買収費用は2026年のEPSを大きく押し下げるため、単年EPSだけで配当安全性を判断しないほうがよいです。
  • キイトルーダ特許切れリスク:2028年以降の特許切れに向け、KEYTRUDA QLEX、WINREVAIR、OHTUVAYRE、Enlicitide、HIV・ワクチン・呼吸器領域などへの分散が重要です。
  • バランスシート:2025年末の自己資本率は約38%で、買収後も一定の財務余力はあります。ただし、2026年はCidaraとTerns関連の一時費用・債務増加に注意が必要です。
  • 増配ペース:2026年の現行配当は0.85ドル/四半期、年率3.40ドルです。2025年支払ベースの3.24ドルからは約5%増で、緩やかな増配基調は維持されています。[2]

ミニ解説:メルクは、2026年Q1に買収費用で赤字となりましたが、これは本業悪化というよりポートフォリオ再構築のための一時費用です。配当投資では、GAAP EPSだけでなく、営業CF・FCF・買収後のレバレッジを合わせて見ることが重要です。現時点では配当維持力は比較的高い一方、キイトルーダ特許切れ後の成長ドライバーがどこまで育つかが中長期の焦点です。


【注】(出典リンク)

  1. 2026年Q1決算・2026年ガイダンス・製品別売上・Cidara費用 → 一次情報:MSD / Merck「First-Quarter 2026 Financial Results」 → 補助:Merck 1Q26 Prepared Remarks(確認日:2026-05-07)
  2. 2026年配当・0.85ドル四半期配当 → 一次情報:Merck「First-Quarter 2026 Dividend」Merck「Second-Quarter 2026 Dividend」(確認日:2026-05-07)
  3. 株価・配当利回り → 参考情報:Google Finance「MRK:NYSE」StockAnalysis「MRK Dividend」(確認日:2026-05-07)
  4. 2025年Form 10-K・2025年通期業績・CF・BS・配当支払額・自社株買い → 一次情報:SEC EDGAR「Merck Form 10-K for the year ended Dec. 31, 2025」Merck「Fourth-Quarter 2025 Sales and Earnings Presentation」(確認日:2026-05-07)
  5. 長期財務・配当データ補完 → 参考情報:Macrotrends「Merck Cash Flow」Macrotrends「Merck Dividend Yield History」(確認日:2026-05-07)

注: 本文中の長期系列には、長期比較を目的とした概算値を含みます。直近年の厳密な金額は、MerckのForm 10-Kおよび決算資料を優先してください。

免責

本記事は投資助言ではありません。最終判断はご自身の責任でお願いします。数値は信頼できる情報源に基づきますが、エラーや改定により変更される可能性があります。



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Posted by 南 一矢