GILD(ギリアドサイエンシズ) の配当推移

ヘルスケア,配当

ギリアド・サイエンシズ(GILD)配当投資分析(2026年5月更新)

要旨:ギリアド・サイエンシズはHIV治療薬を中核とするバイオ医薬品企業で、2015年の配当導入以降、増配を続けてきました。2025年通期の総売上高は294.43億ドル、GAAP希薄化後EPSは6.78ドル、非GAAP希薄化後EPSは8.15ドルでした。2026年5月時点の四半期配当は1株0.82ドル、現行年率配当は3.28ドルです。2026年5月8日時点の株価134.06ドルに対する配当利回りは約2.45%です。[1][2][3]

投資判断で重要なのは、ギリアドの配当を「EPSだけ」で見るのではなく、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフロー、M&A・研究開発投資、HIV領域の持続性を合わせて見ることです。2025年通期の営業CFは100.19億ドル、配当支払額は40.03億ドルで、営業CFベースの配当カバーは約2.5倍でした。[1]

まず、ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences, Inc.)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを見る指標)等も確認します。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

配当利回りと権利落ち・配当性向の確認

2026年2月10日、ギリアドは四半期配当を3.8%引き上げ、1株0.82ドルとしました。2026年第1四半期配当の支払日は2026年3月30日、基準日は2026年3月13日です。また、2026年第2四半期も1株0.82ドルの配当が宣言され、支払日は2026年6月29日、基準日は2026年6月15日です。[2][4]

2025年通期の年間配当は1株3.16ドルでした。GAAP希薄化後EPS6.78ドルに対する配当性向は約47%、非GAAP希薄化後EPS8.15ドルに対する配当性向は約39%です。2026年はM&A関連の取得IPR&D費用により通期EPS見通しが赤字に下方修正されているため、2026年の配当安全性はEPSよりもキャッシュフローで確認する必要があります。[1][4]

年次:配当の推移(利回り・成長率・配当性向・年間配当・平均株価・EPS)

増配ピッチと会計ベースの配当性向の振れ幅を掴むための年次テーブルです。2025年通期実績と2026年5月時点の現行配当を追加しました。

配当 平均株価 年EPS
(GAAP)
非GAAP EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計($)
2026E 約2.45%
(5月8日)
3.8% 2026年見通し赤字のため
EPSベースでは算定困難
3.28
(現行年率)
134.06
(5月8日)
-3.25〜-2.85
見通し
-1.05〜-0.65
見通し
2025 約2.9%
(概算)
3% 47%
(GAAP)
39%
(非GAAP)
3.16 約110.0
(概算)
6.78 8.15
2024 3.87% 3% 811%
(GAAP)
67%
(非GAAP)
3.08 79.6 0.38 4.62
2023 3.78% 3% 67% 3.00 81.6 4.50
2022 4.36% 3% 82% 2.92 68.8 3.64
2021 4.20% 4% 58% 2.84 69.5 4.93
2020 3.95% 4% 2,720% 2.72 71.9 0.10
2019 3.84% 11% 60% 2.52 70.9 4.22
2018 3.09% 10% 55% 2.28 81.5 4.17
2017 2.88% 13% 59% 2.08 79.2 3.51
2016 2.20% 43% 19% 1.72 94.5 9.94
2015 1.21% 11% 1.29 124.8 11.91

※EPSはGAAPベースの希薄化後EPSです。2024年は取得IPR&D費用・IPR&D減損などの一時要因でGAAP EPSが0.38ドルまで低下しました。2025年はGAAP EPSが6.78ドルへ回復しました。2026年はArcellx、Ouro Medicines、Tubulis関連の取得IPR&D費用により、会社はGAAP・非GAAPともに通期赤字を見込んでいるため、EPSベースの配当性向は実態を表しにくくなっています。[1][4]


配当の持続可能性を測る:現金ベースのカバー比率

指標の読み方

  • 配当総額(現金支出):キャッシュフロー計算書の「Payments of dividends」を優先して使用します。
  • 営業CF対配当比率= 営業CF ÷ 配当総額。中長期で1.5倍超がひとつの目安です。
  • フリーCF対配当比率=(営業CF − CAPEX)÷ 配当総額。設備投資を控除した残余現金でどれだけ配当を賄えるかを見ます。

年次:配当総額とカバー比率

単位は百万ドル(M$)。カバー比率は小数2桁で表記しています。

配当支払額 営業CF CAPEX フリーCF 営業CF/配当 FCF/配当
2025 4,003 10,019 563 9,456 2.50 2.36
2024 3,918 10,828 523 10,305 2.76 2.63
2023 3,809 8,006 585 7,421 2.10 1.95
2022 3,750 9,072 2.42
2021 3,650 11,384 3.12
2020 3,450 8,168 2.37
2019 3,250 9,144 2.81
2018 3,150 8,400 2.67
2017 2,750 11,898 4.33
2016 2,350 17,047 7.25
2015 1,950 21,250 10.90

2025年の営業CFは100.19億ドル、配当支払額は40.03億ドルで、営業CFベースの配当カバーは約2.5倍でした。設備投資5.63億ドルを控除したフリーCFは94.56億ドルで、FCFベースでも配当を約2.36倍カバーしています。したがって、2025年実績を見る限り、通常配当の支払余力は維持されています。[1]


キャッシュフロー計算書

読み方(要点)

  1. 営業CF:本業の現金創出力。配当の元手です。
  2. 投資CF:設備投資やM&Aなど。マイナス拡大は、将来成長への投資を意味します。
  3. 財務CF:配当・自社株買い・借入返済など、株主・債権者との現金やり取りです。

年次:営業CF・投資CF・財務CF

単位は百万ドル(M$)。

営業CF 投資CF 財務CF 配当支払 自社株買い
2025 10,019 -4,793 -7,745 4,003 1,922
2024 10,828 -3,449 -3,433 3,918 1,150
2023 8,006 -2,265 -5,125 3,809 1,000
2022 9,072 -2,466 -6,469
2021 11,384 -3,131 -8,877
2020 8,168 -14,615 770
2019 9,144 -7,817 -7,634
2018 8,400 14,355 -12,318
2017 11,898 -16,069 3,393
2016 17,047 -11,985 -9,725
2015 21,250 -12,475 -5,884
2014 12,818 -1,823 -3,025
2013 3,105 -254 -2,544
2012 3,195 -11,846 563
2011 3,639 3,590 1,764
2010 2,834 -1,938 -1,339
2009 3,080 -2,216 -1,051
2008 2,143 -179 -1,475
  • 2025年の営業CFは100.19億ドルで、2024年の108.28億ドルから減少しました。
  • 2025年の投資CFはマイナス47.93億ドルで、買収・提携関連支出と有価証券投資が影響しています。
  • 2025年の財務CFはマイナス77.45億ドルで、配当40.03億ドル、自社株買い19.22億ドル、債務返済17.88億ドルが含まれます。
  • 2026年第1四半期は営業CF25億ドル、配当10億ドル、自社株買い4.19億ドルでした。[4]

損益・キャッシュ創出の推移(抜粋)

売上・営業CF・純利益の長期推移です。単位はM$(百万ドル)です。

売上 営業CF 純利益 GAAP EPS 非GAAP EPS
2026 Q1 6,946 2,500 2,020 1.61 2.03
2025 29,443 10,019 8,510 6.78 8.15
2024 28,754 10,828 480 0.38 4.62
2023 27,116 8,006 5,665 4.50
2022 27,281 9,072 4,592 3.64
2021 27,305 11,384 6,225 4.93
2020 24,689 8,168 123 0.10
2019 22,449 9,144 5,386 4.22
2016 30,390 17,047 13,501 9.94
2015 32,639 21,250 18,108 11.91
2014 24,890 12,818 12,101 7.35
2010 7,949 2,834 2,901
2008 5,336 2,143 1,979

2025年通期の総売上高は294.43億ドルで、2024年から2%増加しました。製品売上は289.15億ドルで、そのうちHIV製品売上は208億ドル、Biktarvy売上は143億ドルでした。HIV領域がなお中核であり、配当の原資となるキャッシュ創出力を支えています。[1]

2026年第1四半期は、製品売上が前年同期比5%増の69.46億ドル、HIV製品売上は10%増の50億ドルでした。Biktarvy売上は34億ドル、Descovy売上は8.07億ドル、Trodelvy売上は4.02億ドルでした。一方、Cell Therapyは競争の影響で12%減となっています。[4]


バランスシート:自己資本・負債の時系列

単位は百万ドル(M$)。自己資本率=株主資本/総資産、負債比率=総負債/株主資本です。

総資産 総負債 株主資本 自己資本率 負債比率 長期債務
2025 59,023 36,405 22,618 38% 161% 22,129
2024 58,995 39,749 19,246 33% 207% 24,896
2023 62,125 39,376 22,749 37% 173%
2022 63,171 41,962 21,209 34% 198%
2021 67,952 46,888 21,064 31% 223%
2020 68,407 50,186 18,202 27% 276%
2019 61,627 38,977 22,525 37% 173%
2018 63,675 42,141 21,387 34% 197%
2017 70,283 49,782 20,442 29% 244%
2016 56,977 37,614 18,887 33% 199%
2015 51,716 32,603 18,534 36% 176%
2014 34,664 18,845 15,426 45% 122%
2012 21,240 11,696 9,303 44% 126%
2010 11,593 5,471 5,864 51% 93%
2008 6,937 2,471 4,273 62% 58%
  • 2025年末の総資産は590.23億ドル、株主資本は226.18億ドル、自己資本率は約38%でした。
  • 2025年末の長期債務は221.29億ドルで、2024年末の248.96億ドルから減少しました。
  • 2025年末の現金・現金同等物および市場性債券は106.05億ドルでした。
  • 2026年第1四半期末の現金・現金同等物および市場性債券は86億ドルで、2025年末の106億ドルから減少しました。主因は28億ドルの債務返済、10億ドルの配当支払い、4.19億ドルの自社株買いです。[4]

投資家向け分析

  • 配当安全度:2025年通期の営業CF/配当カバーは約2.5倍、FCF/配当カバーは約2.36倍でした。2024年よりカバーはやや低下しましたが、通常配当を支える水準は維持しています。[1]
  • 配当成長の持続性:2015年の配当導入以降、増配を続けています。2026年は四半期配当を0.79ドルから0.82ドルへ3.8%引き上げました。ただし、2026年通期は大型M&Aに伴う取得IPR&D費用でGAAP・非GAAPともに赤字見通しのため、増配余地は短期的にはキャッシュフロー次第です。[2][4]
  • 事業基盤の安定性:HIV領域は2025年通期で208億ドル、2026年第1四半期で50億ドルの売上を生み、主力のBiktarvyも2025年通期で143億ドル、2026年第1四半期で34億ドルを売り上げています。HIV領域は引き続き配当原資の中核です。[1][4]
  • バランスシート:2025年末の自己資本率は約38%に改善し、長期債務も減少しました。一方、2026年はArcellx、Ouro Medicines、Tubulis関連の取得IPR&D費用が利益を大きく圧迫するため、M&Aによる財務負担は注意点です。[5]
  • 成長性:2026年通期の製品売上見通しは300億〜304億ドルへ引き上げられました。長期作用型HIV予防薬Yeztugo、Biktarvy、Descovy、Trodelvy、Livdelziなどが成長の柱ですが、Cell Therapyは競争激化で減少しており、成長分野の入れ替わりを確認する必要があります。[4]

ミニ解説:GILDは、2026年時点では「利回り2%台半ばの配当成長株」と見るのが自然です。2026年はM&A関連費用によりEPSが赤字見通しとなるため、配当性向だけを見ると判断を誤ります。配当安全性は、HIV領域の売上、営業CF、FCF、債務水準、M&A後の研究開発負担をセットで確認する必要があります。

【注】(出典リンク)

  1. 2025年通期決算・売上高・EPS・営業CF・配当支払・バランスシート → 一次情報:Gilead「Fourth Quarter and Full Year 2025 Financial Results」Gilead 2025 Form 10-K(確認日:2026-05-08)
  2. 2026年3.8%増配・四半期配当0.82ドル → 一次情報:Gilead「3.8 Percent Increase in First Quarter 2026 Dividend」Gilead Investors(確認日:2026-05-08)
  3. 株価・配当利回り計算・長期株価補助 → 参考情報:Google Finance「GILD:NASDAQ」 → 補助:Macrotrends「Gilead Sciences Stock Price History」(確認日:2026-05-08)
  4. 2026年第1四半期決算・第2四半期配当・2026年通期見通し → 一次情報:Gilead「First Quarter 2026 Financial Results」Business Wire「Q1 2026 Results」(確認日:2026-05-08)
  5. 長期財務データ・過去年次比較・バランスシート補助 → 一次情報:Gilead Financials → 補助:Macrotrends「GILD Financial Statements」(確認日:2026-05-08)

免責

本記事は投資判断の参考として財務データを整理・分析したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。数値は信頼できる情報源に基づきますが、エラーや改定により変更される可能性があります。投資にあたっては、バイオ医薬品業界特有のリスク(規制変更、開発失敗、特許切れ、競合激化、M&A関連費用等)を十分理解したうえで、分散投資をご検討ください。

変更箇所(今回)

  • 記事タイトルの更新時点を「2025年11月更新」から「2026年5月更新」へ変更しました。
  • 2025年Q3中心の記述を、2025年通期決算と2026年第1四半期決算中心へ更新しました。
  • 2025年通期総売上高を29,443Mドルへ更新しました。
  • 2025年通期製品売上高28,915Mドルを追加しました。
  • 2025年通期HIV製品売上20,800Mドル、Biktarvy売上14,300Mドルを追加しました。
  • 2025年通期GAAP希薄化後EPSを6.78ドルへ更新しました。
  • 2025年通期非GAAP希薄化後EPSを8.15ドルへ更新しました。
  • 2025年の年間配当を3.16ドルへ更新しました。
  • 2025年のGAAP EPSベース配当性向を約47%、非GAAP EPSベース配当性向を約39%へ更新しました。
  • 2026E行を配当表に追加し、現行年率配当3.28ドル、2026年5月8日時点株価134.06ドル、配当利回り約2.45%を反映しました。
  • 2026年第1四半期配当として0.82ドル、支払日2026年3月30日、基準日2026年3月13日を追加しました。
  • 2026年第2四半期配当として0.82ドル、支払日2026年6月29日、基準日2026年6月15日を追加しました。
  • 2026年通期見通しを、製品売上300億〜304億ドル、GAAP EPSマイナス3.25〜マイナス2.85ドル、非GAAP EPSマイナス1.05〜マイナス0.65ドルへ更新しました。
  • 2026年見通しがM&A関連の取得IPR&D費用で赤字化しているため、EPSベースの配当性向だけでは判断しにくい点を追加しました。
  • 2025年の営業CFを10,019Mドルへ更新しました。
  • 2025年の設備投資を563Mドルへ更新しました。
  • 2025年のフリーCFを9,456Mドルへ更新しました。
  • 2025年の配当支払額を4,003Mドルへ更新しました。
  • 2025年の営業CF/配当カバーを2.50倍、FCF/配当カバーを2.36倍へ更新しました。
  • 2025年の投資CFを-4,793Mドルへ更新しました。
  • 2025年の財務CFを-7,745Mドルへ更新しました。
  • 2025年の自社株買い1,922Mドルを追加しました。
  • 2026年第1四半期の製品売上6,946Mドル、GAAP EPS1.61ドル、非GAAP EPS2.03ドルを追加しました。
  • 2026年第1四半期のHIV製品売上5,000Mドル、Biktarvy売上3,400Mドル、Descovy売上807Mドル、Trodelvy売上402Mドルを追加しました。
  • 2026年第1四半期末の現金・現金同等物および市場性債券8.6Bドルを追加しました。
  • 2025年末の総資産を59,023Mドルへ更新しました。
  • 2025年末の総負債を36,405Mドルへ更新しました。
  • 2025年末の株主資本を22,618Mドルへ更新しました。
  • 2025年末の自己資本率を約38%へ更新しました。
  • 2025年末の長期債務22,129Mドルを追加しました。
  • 旧記事の「2024年EPS0.38ドルで配当性向811%」という説明を維持しつつ、非GAAP EPS4.62ドルベースでは約67%であることを追加しました。
  • 旧記事の2025年Q3売上・配当・ガイダンス記述を、2025年通期実績および2026年Q1実績に置き換えました。
  • 脚注を本文末の「【注】(出典リンク)」に統一し、本文中の生URLや旧式の出典表記を削除しました。
  • 元記事の構成を維持しつつ、2025年通期実績、2026年第1四半期決算、最新配当、最新株価、2026年通期見通しを反映しました。:contentReference[oaicite:0]{index=0}

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Posted by 南 一矢