OKTA:オクタの業績

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【2025年版】Okta (OKTA) 徹底分析:アイデンティティ・セキュリティのリーダー – FY2018-FY2025財務データと成長戦略


【2025年版】Okta (OKTA) 徹底分析:アイデンティティ・セキュリティのリーダー – FY2018-FY2025財務データと成長戦略

はじめに
Okta (オクタ) は、現代のデジタル世界において不可欠なアイデンティティ管理とアクセスセキュリティを提供するリーディングカンパニーです。従業員や顧客が安全かつシームレスにテクノロジーにアクセスできるようにすることで、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援しています。
この記事では、Oktaの過去の会計年度 (FY2018~FY2025) の財務データを基に、その急成長の軌跡、ビジネスモデル、そして将来の展望を、投資家の視点から分かりやすく解説します。

【免責事項および出典について】

  • 本記事に掲載されている財務情報(特にFY2018からFY2025までの時系列データ)は、主にOkta, Inc.が米国証券取引委員会 (SEC) に提出している年次報告書 (Form 10-K)、四半期報告書 (Form 10-Q)、及び株主向け決算発表資料(Earnings Releases, Investor Presentationsなど)といった公式IR情報に基づいて作成されています。特にFY2025のデータは、2025年3月3日発表の「Okta Announces Fourth Quarter And Fiscal Year 2025 Financial Results」および関連資料に基づいています。 (出典: Okta Investor Relations)
  • 記事内の成長率 (CAGRなど) や一部の経営指標は、これらの公式データに基づき筆者が算出したものです。CFPS(1株当たり営業キャッシュフロー)やその他の1株当たり指標は、報告された数値または「純利益 ÷ EPS」等で算出した推定発行済株式数を基に計算しています。
  • 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の購入や売却を推奨または勧誘するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
  • データは記事作成時点で入手可能な情報に基づき、正確を期すよう努めておりますが、常に最新かつ完全な情報を保証するものではありません。必ずOkta社の公式IR情報をご確認ください。
  • Okta社 投資家向け情報ページ: https://investor.okta.com (こちらから最新の10-K、10-Q報告書、決算関連資料などがご覧いただけます)
  • スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。

会計年度について: Oktaの会計年度は、毎年1月31日に終了します。例えば、本記事で「FY2025」と表記する会計年度は、2024年2月1日から2025年1月31日までの期間を指します。表内の年度表記は、この会計年度 (Fiscal Year, FY) に基づいています。

1. Oktaの長期的な業績:成長と進化の軌跡

Oktaは創業以来、特にIPO(2017年)以降、アイデンティティ管理市場の拡大を背景に目覚ましい成長を遂げてきました。近年は成長を維持しつつ、収益性の改善にも注力しています。

1.1. 売上、利益、キャッシュフローの推移

Oktaの主要な業績の移り変わりを見てみましょう。

会計年度 総売上高(百万$) 売上成長率 サブスク売上(百万$) 営業CF(百万$) 純損失(百万$)
FY2018 259.8 239.0 (27.1) (125.3)
FY2019 399.3 53.7% 369.6 (6.3) (208.8)
FY2020 586.1 46.8% 553.0 42.1 (266.3)
FY2021 835.4 42.5% 797.7 134.8 (557.6)
FY2022 1,300.0 55.6% 1,245.0 (27.0) (848.4)
FY2023 1,858.0 42.9% 1,789.0 73.0 (815.0)
FY2024 2,262.9 21.8% 2,189.8 489.0 (323.0)
FY2025 2,610.0 15.3% 2,551.0 782.0 (43.0)
CAGR (年平均成長率)
過去7年(FY18-25) 39.0% 40.1% N/A N/A
過去5年(FY20-25) 34.8% 35.9% N/A N/A

出典: Okta Inc. 公式IR資料 (年次報告書 Form 10-K、決算発表資料等) より筆者作成。CAGRは上記データに基づき筆者算出。純損失はGAAPベース。FY2025のサブスクリプション収益は推定値。

  • 総売上高: FY2018の約2.6億ドルからFY2025には約26.1億ドルへと約10倍に成長。特にサブスクリプション収益が成長を牽引しています。

    CAGR (Compound Annual Growth Rate / 年平均成長率): 複数年の成長率を平均化したもので、長期的な成長トレンドを示します。
  • 営業キャッシュフロー (営業CF): 事業規模の拡大と収益性改善に伴い、FY2020からプラスに転じ、近年は大きく増加しています。
  • 純損失 (GAAP): 高い成長投資(特にS&M、R&D)や株式報酬費用、買収関連費用などにより、GAAPベースでは損失を計上してきましたが、FY2025には大幅に縮小しています。

1.2. 収益性:効率性と改善のトレンド

会計年度 営業CF率 GAAP営業利益率 Non-GAAP営業利益率 GAAP純利益率
FY2018 -10.4% -46.4% -26.3% -48.2%
FY2019 -1.6% -45.8% -19.5% -52.3%
FY2020 7.2% -42.5% -9.8% -45.4%
FY2021 16.1% -64.0% -4.8% -66.7%
FY2022 -2.1% -61.9% -0.5% -65.3%
FY2023 3.9% -35.9% 5.8% -43.9%
FY2024 21.6% -9.0% 13.7% -14.3%
FY2025 30.0% -0.3% 22.5% -1.6%

出典: Okta Inc. 公式IR資料より筆者作成。各利益率は対応する利益と売上高より算出。Non-GAAP営業利益率はOkta社の開示に基づく。

  • 営業CF率: FY2025には30.0%に達し、強力なキャッシュ創出力が顕著になっています。
  • GAAP営業利益率・純利益率: 長らくマイナスでしたが、FY2024以降、急速に改善傾向にあります。
  • Non-GAAP営業利益率: 株式報酬費用や買収関連の無形資産償却費などを除いた指標で、Oktaはこちらを重視。FY2023にプラス転換し、FY2025には22.5%と大幅に向上。

1.3. コスト構造:成長投資と効率化

OktaはSaaS企業として、サブスクリプション・グロスマージンが高く、営業費用の中では販売・マーケティング費と研究開発費の比率が高い特徴があります。

会計年度 サブスク
グロスマージン率
販売・マーケ費率(対売上高) 研究開発費率(対売上高) 一般管理費率(対売上高)
FY2021 78.2% 51.6% 28.1% 14.6%
FY2022 76.1% 52.0% 28.1% 10.6%
FY2023 77.8% 49.6% 27.6% 9.9%
FY2024 79.8% 43.6% 25.1% 9.3%
FY2025 80.5% 40.1% 22.0% 8.8%

出典: Okta Inc. 公式IR資料より筆者作成。各費用率は売上高に対する比率。FY2025の費用率は推定を含む場合あり。

  • サブスクリプション・グロスマージン率: 80%前後と高い水準を維持。
  • 販売・マーケティング費率: 市場拡大と顧客獲得のため高い比率を維持してきましたが、近年は効率化が進み低下傾向。
  • 研究開発(R&D)費率: 製品イノベーションと競争力維持のため、継続的に高い水準の投資を行っていますが、こちらも効率化の兆しが見られます。

1.4. 投資家向け指標:1株あたりの価値 (GAAPベース)

会計年度 SPS ($)(1株当たり売上高) CFPS ($)(1株当たり営業CF) EPS ($)(1株当たり純損失) BPS ($)(1株当たり純資産)
FY2021 6.30 1.02 (4.20) 23.02
FY2022 8.71 (0.18) (5.68) 41.90
FY2023 11.93 0.47 (5.23) 40.11
FY2024 14.23 3.08 (2.03) 39.32
FY2025 16.12 4.83 (0.27) 39.56
EPS 改善 大幅改善

出典: Okta Inc. 公式IR資料より筆者作成。各指標は期中平均発行済株式数(希薄化後、損失の場合は基本)を基に算出または推定。BPSは期末純資産と期末発行済株式数に基づく。OktaはNon-GAAP EPSも開示しており、FY2025は$2.90でした。

  • SPS (Sales Per Share / 1株当たり売上高): 安定して成長。
  • CFPS (Cash Flow Per Share / 1株当たり営業CF): 近年、急速に改善しプラス成長。
  • EPS (Earnings Per Share / 1株当たり純損失 – GAAP): GAAPベースでは損失が継続していましたが、FY2025には大幅に縮小。Non-GAAPベースではFY2023から黒字化し、FY2025は$2.90と大きく成長しています。
  • BPS (Book-value Per Share / 1株当たり純資産): 比較的安定して推移。

2. ビジネスモデル:アイデンティティクラウドの力

Oktaの成長の核は、強力なサブスクリプションベースの「Okta Identity Cloud」プラットフォームです。

  • Okta Identity Cloud:
    • 従業員向けアイデンティティ (Workforce Identity Cloud) と顧客向けアイデンティティ (Customer Identity Cloud, 旧Auth0製品群を含む) の両方を提供。
    • 主な機能:シングルサインオン (SSO)、多要素認証 (MFA)、ライフサイクル管理、APIアクセス管理、Universal Directoryなど。
    • SaaS (Software as a Service)モデルで提供され、継続的な収益(ARR)を生み出します。
  • 主要KPI:
    • ARR (Annual Recurring Revenue / 年間経常収益): FY2025末で$27.2億ドル (前年比16%増)。Oktaの成長を示す最重要指標の一つ。(出典:Okta FY25 Q4 Earnings Call)
    • 顧客数: 総顧客数は19,100社以上 (FY2025 Q4時点)。うち、年間契約額 (ACV) 10万ドル以上の大口顧客は4,800社 (FY2025末)。
    • Dollar-Based Net Retention Rate (DBNRR): 既存顧客からの売上拡大を示す指標。FY2025 Q4時点で107%。FY2026 Q1では106%。以前の120%超のレベルからは低下傾向にあるものの、依然として100%を超えており、既存顧客からのアップセル・クロスセルが続いていることを示します。
    • Remaining Performance Obligations (RPO): 未認識の契約収益残高。FY2025末で$42.15億ドル (前年比25%増)、うち今後12ヶ月以内に認識されるcRPOは$22.48億ドル (前年比15%増)。将来の収益の安定性を示します。
  • Auth0の買収 (2021年完了): 開発者中心のCustomer Identity (CIAM) 市場でのリーダーシップを強化。Oktaの成長戦略において重要な役割を果たしています。

現在の主要事業 (FY2025)

Oktaは主にサブスクリプション収益と一部プロフェッショナルサービス収益で構成。セグメント別の詳細な売上構成は Workforce Identity と Customer Identity に大別されます。

  1. サブスクリプション収益: 売上の約98% (FY2025)。Okta Identity Cloudプラットフォームの利用料。
  2. プロフェッショナルサービス他: 売上の約2% (FY2025)。導入支援やトレーニングなど。

FY2025の売上高 約26.1億ドルのうち、約半分ずつがWorkforce IdentityとCustomer Identityから生み出されていると推定されます(詳細な比率は決算資料で変動)。

3. 財務の健全性:キャッシュ創出力の向上

Oktaは成長投資を継続しつつ、財務基盤の強化とキャッシュフローの改善を進めています。

3.1. 資産・負債・資本の推移

会計年度末 総資産(百万$) 総負債(百万$) 株主資本(百万$) 自己資本率 D/Eレシオ
FY2021 (Jan 31, ’21) 4,220 2,613 1,607 38.1% 1.63
FY2022 (Jan 31, ’22) 9,793 3,371 6,422 65.6% 0.52
FY2023 (Jan 31, ’23) 9,112 3,133 5,979 65.6% 0.52
FY2024 (Jan 31, ’24) 9,437 3,032 6,405 67.9% 0.47
FY2025 (Jan 31, ’25) 9,321 2,848 6,473 69.5% 0.44

出典: Okta Inc. 公式IR資料 (年次報告書 Form 10-K) より筆者作成。自己資本率、D/Eレシオは上記データより算出。FY2025データは2025年1月31日時点。

  • 自己資本比率: Auth0買収時に大きく変動しましたが、その後は60%台後半で安定しており、健全な水準を維持しています。FY2025末で69.5%
  • D/Eレシオ (Debt to Equity Ratio / 負債資本倍率): 低い水準でコントロールされています。
  • 現金及び現金同等物・短期投資: FY2025末(2025年1月31日)時点で約25.2億ドルと豊富。Q1 FY2026末(2025年4月30日)では約27.3億ドルとさらに増加しており、財務的な柔軟性を示しています。(出典:Okta決算資料)

3.2. キャッシュフロー分析:フリーキャッシュフローと戦略的投資

Oktaは営業キャッシュフローを大幅に改善させ、フリーキャッシュフロー(FCF)の創出を本格化させています。FCFは、事業運営に必要な投資を行った後に残る、企業が自由に使える現金であり、成長投資や財務基盤の強化に充てられます。

フリーキャッシュフロー (FCF) = 営業キャッシュフロー (Operating CF) – 設備投資額 (Capital Expenditures, CapEx)

Oktaの設備投資額は売上高比で比較的低く、営業CFの改善が直接的にFCFの増加に繋がっています。

会計年度 営業CF(百万$) 設備投資(CapEx)(百万$) FCF(百万$) FCFマージン
FY2022 (27.0) 26.1 (53.1) -4.1%
FY2023 73.0 30.0 43.0 2.3%
FY2024 489.0 37.0 452.0 20.0%
FY2025 782.0 52.0 730.0 28.0%

出典: Okta公式IR資料 (年次報告書、決算発表資料) より。FCFは営業CF-設備投資額で筆者算出。FCFマージンはFCF/総売上高。

FY2025にはFCFが7.3億ドル、FCFマージンは28.0%に達しました。これはOktaのビジネスモデルの収益性と効率性が大きく向上していることを示しています。Oktaは現在配当を行っておらず、生成されたキャッシュは主に事業成長のための研究開発、市場拡大、戦略的な機会(過去のAuth0買収など)への再投資に活用されています。

4. 資本効率性と収益性:改善の兆し

Oktaは成長企業として長らくGAAPベースでの利益はマイナスでしたが、Non-GAAPベースでの収益性改善と共に、資本効率の指標も変化の兆しを見せています。

会計年度 ROA (%)(総資産利益率, GAAP) ROE (%)(自己資本利益率, GAAP)
FY2021 -13.2% -34.7%
FY2022 -8.7% -13.2%
FY2023 -8.9% -13.6%
FY2024 -3.4% -5.0%
FY2025 -0.5% -0.7%

出典: Okta Inc. 公式IR資料より筆者作成。ROA, ROEはGAAP純損失と期中平均総資産・自己資本より算出。過去の損失計上のためマイナスとなっています。

  • ROE (Return On Equity / 自己資本利益率 – GAAP): FY2025は-0.7%。GAAP純損失が大幅に縮小したことで、マイナス幅は大きく改善しました。Non-GAAP純利益ベースで見ると、ROEはプラスに転じ、高い成長を示しています(例:FY2025 Non-GAAP純利益 $475M、期末自己資本 $6,473Mで計算すると約7.3%)。
  • ROA (Return On Assets / 総資産利益率 – GAAP): FY2025は-0.5%。こちらも同様に改善傾向。

Oktaのような高成長SaaS企業の場合、特に成長段階ではGAAPのROE/ROAはマイナスになることが一般的です。投資家はNon-GAAP指標やFCF、ARR成長率、DBNRRなどを重視する傾向があります。GAAP利益が安定的にプラスに転じてくると、これらの資本効率指標もより意味を持つようになります。

5. Oktaの戦略:ゼロトラストとプラットフォームの進化

Oktaの成長戦略は、アイデンティティ・セキュリティ市場におけるリーダーシップを強化し、プラットフォームを進化させることにあります。

  • ゼロトラスト・セキュリティの中核:
    • 「決して信用せず、常に検証する」というゼロトラストの概念において、アイデンティティは中核的な役割を担います。Oktaは、あらゆるユーザー、デバイス、アプリケーションへのアクセスを安全に管理することで、ゼロトラスト戦略の実現を支援します。
    • 連邦政府機関向けのOMB M-22-09指令など、ゼロトラストへの移行は世界的な潮流であり、Oktaにとって大きな機会です。
  • プラットフォームの拡大と深化:
    • Workforce Identity Cloud: 従業員の生産性とセキュリティを両立。IGA (Identity Governance and Administration) や PAM (Privileged Access Management) といった隣接市場への展開も強化。
    • Customer Identity Cloud (Auth0含む): 開発者フレンドリーなAPIとツールで、企業が顧客向けアプリケーションにシームレスで安全な認証・認可機能を組み込むことを支援。パスキーなどの最新認証技術も積極的に導入。
    • Okta Integration Network: 7,500以上の事前統合されたアプリケーションやITインフラとの連携を提供し、顧客の導入を容易にし、エコシステムの価値を高めています。
  • イノベーションへの投資:
    • AIや機械学習を活用した脅威検知、適応型MFA、リスクベース認証などの高度な機能開発に注力。
    • FY2025の研究開発費は売上の約22%(約5.7億ドル)に相当し、継続的なイノベーションへのコミットメントを示しています。

6. 市場での強みとライバル:競争環境とOktaの優位性

Oktaは急成長するアイデンティティ管理市場でリーダーとしての地位を確立していますが、競争も激化しています。

市場シェアに関する記述は、各種業界レポートやアナリスト評価 (Gartner Magic Quadrantなど) に基づく一般的な認識ですが、具体的な数値や調査時期は変動します。

  • 市場機会:
    • デジタルトランスフォーメーション、クラウド移行、リモートワークの普及、サイバーセキュリティ脅威の増大などを背景に、アイデンティティ管理市場は数十億ドル規模の大きな成長市場です。Oktaの推定するTAM(Total Addressable Market)は約800億ドルに上ります。
  • 主な競合:
    • Microsoft (Azure Active Directory / Entra ID): 特にMicrosoftエコシステム内での強固な地位。
    • Ping Identity (ForgeRockと統合): 大企業向けの包括的なIAMソリューションを提供。
    • その他、CyberArk (特にPAM)、SailPoint (IGA)、Oracle、IBM、小規模な専門ベンダーなど多数。

Oktaの強み:

  • 独立系ベンダーとしての中立性と幅広いテクノロジーへの対応力。
  • 使いやすさと迅速な導入を可能にするクラウドネイティブなプラットフォーム
  • 豊富なOkta Integration Networkによるエコシステムの強さ。
  • WorkforceとCustomer Identityの両方をカバーする包括的な製品ポートフォリオ
  • 業界アナリストからの高い評価とブランド認知度

7. FY2026年の見通しと今後のポイント:収益性と成長のバランス

Okta経営陣は、FY2026(2025年2月1日~2026年1月31日)も持続的な成長と収益性改善の両立を目指しています。(下記は、FY2025第4四半期およびFY2026第1四半期決算発表時などに示されたFY2026年度に関する会社ガイダンスや目標値に基づく一般的な記述です。最新のガイダンスはOkta社のIR情報をご確認ください。)

FY2026年度 会社予想(2025年5月発表のQ1 FY26決算時点):

  • 総売上高: $2.915億~$2.935億ドル (前年同期比 約10-11%増を見込む) (これはQ2 FY26のガイダンスであり、通期は別途更新される可能性あり。通期ガイダンスは売上高 $2.915B-$2.935B、成長率10-11%を維持)
  • Non-GAAP営業利益率: 約21.0%~21.3% (通期見通し)
  • Non-GAAP EPS: $2.58~$2.63 (通期見通し)
  • フリーキャッシュフロー・マージン: 約22% (通期見通し、保守的な見通しとコメントあり)

上記ガイダンスは、Okta社が過去に発表した情報に基づくものであり、将来の業績を保証するものではありません。最新情報はOkta社のIR資料をご確認ください。

投資家が注目すべきリスク:

  • マクロ経済の不確実性によるIT投資の抑制と、それがOktaの成長率(特にDBNRR)に与える影響。
  • Microsoftなどの巨大IT企業との競争激化。
  • セキュリティ侵害インシデントが過去に発生しており、レピュテーションリスクと顧客信頼の維持。
  • 成長率の鈍化と収益性改善のバランス。高成長を維持しつつ利益を拡大できるか。
  • M&A戦略の成否(過去のAuth0統合の進捗と将来の買収リスク)。

8. まとめ:Oktaはアイデンティティ市場の成長を捉え続けられるか?

Oktaは、アイデンティティ管理という現代の最重要課題の一つに取り組むことで、急速な成長を遂げてきました。クラウドネイティブなプラットフォーム、包括的な製品群、そして強力なエコシステムを武器に、市場リーダーとしての地位を固めています。

  • 強み: 中立性、使いやすさ、豊富な連携、Workforce/Customer両対応のプラットフォーム、そして改善する収益性と強力なFCF創出力。
  • 今後の鍵: ゼロトラスト市場でのリーダーシップ維持、Customer Identity分野での成長加速、イノベーションによる競合優位性の確保、そして成長と利益の最適なバランスを追求し続けること。DBNRRの安定化・再上昇も重要。

サイバーセキュリティの脅威が増し、デジタルトランスフォーメーションが加速する中で、信頼性の高いアイデンティティ管理の重要性はますます高まっています。Oktaがこの大きな市場機会を捉え、持続的な成長と価値創造を実現できるか、その戦略と実行力に引き続き注目が集まります。

本記事は、公開情報に基づき筆者の分析を加えたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行うようにしてください。本分析は、Okta, Inc.の公式IR情報および信頼できると考えられる情報源に基づいていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。常に最新の公式情報をご参照ください。

最終更新日時: 2025年6月4日


Posted by 南 一矢