OKTA:オクタの業績
【2026年7月版】Okta(OKTA)徹底分析:アイデンティティ・セキュリティの独立系リーダー、GAAP営業黒字化後の成長戦略
はじめに
Okta(オクタ)は、企業の従業員、顧客、パートナー、アプリケーション、AIエージェント、マシンIDなどのアクセスを管理・保護するアイデンティティ・セキュリティ企業です。シングルサインオン、多要素認証、ライフサイクル管理、アイデンティティ・ガバナンス、特権アクセス管理、顧客ID管理を通じて、企業のゼロトラスト戦略とクラウド利用を支えています。
本記事では、OktaのFY2018からFY2026までの財務データと、2026年4月30日に終了したFY2027 Q1を基に、IPO後の高成長、Auth0買収後の統合、GAAP黒字化、フリーキャッシュフロー改善、AI時代のアイデンティティ管理を投資家目線で整理します。
2026年7月15日時点で公表済みの最新決算は、2026年5月28日に発表されたFY2027 Q1です。FY2027 Q1の売上高は7.65億ドル、GAAP営業利益は0.56億ドル、GAAP純利益は0.74億ドル、フリーキャッシュフローは2.71億ドルでした。[1]
最重要ポイント:Oktaは「人間のID」から「AI・マシンを含むすべてのID」へ
Oktaの強みは、特定のクラウド、OS、業務アプリケーションに縛られない中立的なアイデンティティ基盤です。Microsoft Entra IDのような巨大エコシステムとの競争は厳しい一方、複数クラウド、複数SaaS、オンプレミス環境を横断して利用できる独立系プラットフォームとして差別化しています。
- Workforce Identity:従業員、委託先、パートナーのアクセスを管理する領域です。
- Customer Identity:Auth0を含む顧客ID管理領域で、消費者向け・開発者向けサービスの認証と認可を支えます。
- Identity Governance:誰が、どの権限を、なぜ保有しているのかを管理・監査する領域です。
- Privileged Access:管理者などの高権限アカウントを保護する領域です。
- AI Agent Identity:AIエージェントやマシンIDの認証、権限付与、監査、停止を担う新しい成長領域です。
FY2026通期は、売上高29.19億ドル、GAAP営業利益1.49億ドル、GAAP純利益2.35億ドル、フリーキャッシュフロー8.63億ドルを記録しました。GAAP純利益はFY2025に黒字へ転換し、FY2026にはGAAP営業利益も通期黒字となっています。[2]
【免責事項および出典について】
- 財務データは、主にOktaのForm 10-K、Form 10-Q、決算発表、公式IR資料、SEC提出資料に基づいています。
- Oktaの会計年度は毎年1月31日に終了します。例えばFY2027は、2026年2月1日から2027年1月31日までです。
- CAGR、各種利益率、自己資本比率、D/Eレシオ、1株当たり指標、ROA、ROEには、公式数値を基に筆者が算出した概算が含まれます。
- Oktaは2026年7月15日時点で配当を支払っていません。
- 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。
【2026年7月更新】
FY2027 Q1決算を反映しました。FY2027 Q1は売上高7.65億ドル(前年同期比11%増)、サブスクリプション売上7.50億ドル(11%増)、RPO47.19億ドル(16%増)、cRPO24.99億ドル(12%増)でした。
GAAP営業利益は0.56億ドル、GAAP純利益は0.74億ドル、Non-GAAP営業利益は1.91億ドル、営業キャッシュフローは2.77億ドル、フリーキャッシュフローは2.71億ドルでした。FY2027通期ガイダンスは、売上高31.85億~32.05億ドル、Non-GAAP EPS3.79~3.87ドル、Non-GAAPフリーキャッシュフロー8.55億~8.85億ドルへ引き上げられています。[1]
1. Oktaの長期的な業績:高成長から利益と効率を重視する段階へ
OktaはIPO後、サブスクリプション型SaaSとして高い売上成長を続けてきました。FY2022にはAuth0買収の影響もあり売上高が大きく伸びた一方、GAAP損失も拡大しました。
その後は営業効率、キャッシュフロー、販売体制の改善を進め、FY2025にGAAP純利益が黒字化しました。FY2026にはGAAP営業利益も通期で黒字となり、FY2027 Q1でも黒字を維持しています。
1.1. 売上、利益、キャッシュフローの推移
| 会計年度・期間 | 総売上高 百万$ |
売上成長率 | サブスク売上 百万$ |
営業CF 百万$ |
純損益 GAAP・百万$ |
EPS GAAP・希薄化後$ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| FY2018 | 257 | — | 236 | -25 | -110 | -1.32 |
| FY2019 | 399 | +55.6% | 371 | 15 | -125 | -1.17 |
| FY2020 | 586 | +46.8% | 553 | 56 | -209 | -1.78 |
| FY2021 | 835 | +42.5% | 797 | 128 | -266 | -2.09 |
| FY2022 | 1,300 | +55.6% | 1,249 | 104 | -848 | -5.73 |
| FY2023 | 1,858 | +42.9% | 1,794 | 86 | -815 | -5.16 |
| FY2024 | 2,263 | +21.8% | 2,205 | 512 | -355 | -2.17 |
| FY2025 | 2,610 | +15.3% | 2,556 | 750 | 28 | 0.06 |
| FY2026 | 2,919 | +11.8% | 2,855 | 884 | 235 | 1.31 |
| FY2027 Q1 | 765 | +11% | 750 | 277 | 74 | 0.42 |
| CAGR(年平均成長率) | ||||||
| FY2018→FY2026 | 約35.5% | — | 約36.5% | — | — | — |
| FY2021→FY2026 | 約28.4% | — | 約29.1% | 約47% | 黒字転換 | 黒字転換 |
注)FY2027 Q1は3カ月間の数値です。FY2018~FY2025の数値は各年度のForm 10-Kを基に再確認し、CAGRは筆者が算出しました。[4]
- FY2025にGAAP純利益が黒字化:FY2025のGAAP純利益は0.28億ドル、希薄化後EPSは0.06ドルでした。
- FY2026にGAAP営業利益も黒字化:FY2026のGAAP営業利益は1.49億ドル、GAAP純利益は2.35億ドルでした。[2]
- FY2027 Q1も利益が拡大:GAAP営業利益は前年同期の0.39億ドルから0.56億ドルへ、GAAP純利益は0.62億ドルから0.74億ドルへ増加しました。[1]
- 成長率は低下したが一桁台には落ちていない:FY2026通期の売上成長率は11.8%、FY2027 Q1は11%でした。
- 営業CFは高水準:FY2027 Q1の営業CFは2.77億ドルで、売上高に対する比率は約36%でした。
1.2. 収益性:GAAP黒字の定着と高いFCFマージン
| 会計年度・期間 | 営業CF率 | GAAP営業利益率 | Non-GAAP営業利益率 | GAAP純利益率 | FCFマージン |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2021 | 15.3% | -24.4% | 約1% | -31.9% | 約13% |
| FY2022 | 8.0% | -59.0% | -6% | -65.2% | 6.7% |
| FY2023 | 4.6% | -43.7% | -1% | -43.9% | 3.5% |
| FY2024 | 22.6% | -22.8% | 14% | -15.7% | 21.6% |
| FY2025 | 28.7% | -2.8% | 22% | 1.1% | 28.0% |
| FY2026 | 30.3% | 5.1% | 26% | 8.1% | 29.6% |
| FY2027 Q1 | 36.2% | 7.3% | 25% | 9.7% | 35.4% |
注)FY2027 Q1は四半期ベースです。Non-GAAP営業利益率は会社発表値、その他の比率は公式数値を基に筆者が算出しました。[1][2]
- GAAP営業利益率が改善:FY2026の5.1%からFY2027 Q1は7.3%へ上昇しました。
- Non-GAAP営業利益率は25%:FY2027 Q1は前年同期の27%から低下しました。売上が伸びる一方、Non-GAAP営業費用が14%増えたことが影響しています。[1]
- FCFマージンは35%:FY2027 Q1のFCFは2.71億ドル、FCFマージンは35%でした。
- GAAPとNon-GAAPの差は残る:FY2027 Q1のGAAP営業利益は0.56億ドル、Non-GAAP営業利益は1.91億ドルで、株式報酬などの調整項目による差があります。
1.3. コスト構造:粗利益率の改善と営業費用の管理
| 会計年度・期間 | サブスク 粗利益率 |
販売・マーケ費率 対売上高 |
研究開発費率 対売上高 |
一般管理費率 対売上高 |
株式報酬 百万$ |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2022 | 73.7% | 59.3% | 36.1% | 33.2% | 約565 |
| FY2023 | 74.1% | 57.4% | 33.4% | 22.0% | 約677 |
| FY2024 | 77.2% | 45.8% | 29.0% | 19.9% | 約684 |
| FY2025 | 78.5% | 37.0% | 24.6% | 17.2% | 約565 |
| FY2026 | 79.8% | 34.9% | 21.9% | 15.3% | 544 |
| FY2027 Q1 | 80.0% | 36.3% | 21.3% | 12.8% | 117 |
注)サブスクリプション粗利益率と費用率は、各期間のGAAP数値から筆者が算出しました。株式報酬は丸めを含む概算です。[3][4]
- サブスクリプション粗利益率は80%:FY2027 Q1はサブスクリプション売上7.50億ドルに対し、同原価は1.50億ドルでした。[3]
- 販売効率は長期で改善:販売・マーケティング費率はFY2023の57.4%からFY2026には34.9%まで低下しました。
- Q1は販売・マーケ費率がやや上昇:FY2027 Q1は36.3%となり、成長再加速に向けた投資とのバランスが注目されます。
- 株式報酬は減少傾向にあるが依然大きい:FY2027 Q1の株式報酬は1.17億ドルで、同期間のGAAP純利益0.74億ドルを上回っています。[3]
1.4. 投資家向け指標:1株当たりの改善
| 会計年度・期間 | SPS 1株当たり売上高$ |
CFPS 1株当たり営業CF$ |
GAAP EPS $ |
Non-GAAP EPS $ |
BPS 1株当たり純資産$ |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2022 | 約8.78 | 約0.70 | -5.73 | -0.46 | — |
| FY2023 | 約11.76 | 約0.54 | -5.16 | -0.04 | — |
| FY2024 | 約13.83 | 約3.13 | -2.17 | 1.60 | 約35.23 |
| FY2025 | 約14.91 | 約4.28 | 0.06 | 2.81 | 約36.93 |
| FY2026 | 約16.28 | 約4.93 | 1.31 | 3.50 | 約39.46 |
| FY2027 Q1 | 約4.31 | 約1.56 | 0.42 | 0.91 | 約39.34 |
注)SPSとCFPSは希薄化後加重平均株式数、BPSは期末株式数を用いた概算です。FY2027 Q1のSPSとCFPSは四半期値であり、通期換算値ではありません。[1][2][4]
2. ビジネスモデル:アイデンティティクラウドの力
Oktaは、Workforce IdentityとCustomer Identityを提供する中立系アイデンティティ・プラットフォームです。従業員向けにはSSO、MFA、ライフサイクル管理、デバイス情報、特権アクセス、ガバナンスを提供し、顧客向けにはAuth0を中心に柔軟な認証・認可基盤を提供します。
主要KPI(FY2027 Q1・2026年4月30日時点)
- RPO:47.19億ドル、前年同期比16%増。
- cRPO:24.99億ドル、前年同期比12%増。
- DBNRR:107%。
- ACV10万ドル以上の顧客:5,180社、前年同期比6%増。
- ACV100万ドル以上の顧客:570社、前年同期比19%増。
- 現金・現金同等物・短期投資:25.89億ドル。
RPOは契約済みで将来売上として認識される残高、cRPOはそのうち今後12カ月以内に売上として認識される見込みの残高です。FY2027 Q1のRPO平均契約期間は約2.5年でした。[1]
- 大口顧客が成長を支える:ACV10万ドル以上の顧客は総ACVの約85%を占めています。
- 100万ドル超顧客の伸びが速い:ACV100万ドル以上の顧客は19%増え、顧客群の合計ACVは10億ドルを超えました。[1]
- DBNRRは107%:既存顧客からの売上は増加していますが、過去の高成長期と比べると拡張率は低く、再加速が課題です。
- Auth0:2021年の買収により、Customer Identityと開発者向け認証の強みを補完しました。
- OIGとOPA:Okta Identity GovernanceとOkta Privileged Accessは、既存顧客へのクロスセルを広げる重要製品です。
- 中立性:特定クラウドやOSに依存しない点は、複数ベンダー環境を持つ大企業にとって価値があります。
3. 財務の健全性:キャッシュ創出力の向上と債務圧縮
OktaはAuth0買収後に多額ののれんと転換社債を抱えましたが、利益とキャッシュフローの改善に伴って、負債に対する財務余力は高まっています。
FY2027 Q1末の現金・短期投資は25.89億ドルで、同時点の転換社債残高3.50億ドルを大きく上回っていました。[3]
3.1. 資産・負債・資本の推移
| 会計年度末・四半期末 | 総資産 百万$ |
総負債 百万$ |
株主資本 百万$ |
自己資本比率 | D/Eレシオ |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2023 | 9,307 | 3,841 | 5,466 | 58.7% | 0.70 |
| FY2024 | 8,989 | 3,101 | 5,888 | 65.5% | 0.53 |
| FY2025 | 9,437 | 3,032 | 6,405 | 67.9% | 0.47 |
| FY2026 | 9,710 | 2,711 | 6,999 | 72.1% | 0.39 |
| FY2027 Q1 | 9,347 | 2,448 | 6,899 | 73.8% | 0.35 |
注)自己資本比率は株主資本÷総資産、D/Eレシオは総負債÷株主資本で筆者が算出しました。過年度の数値は各Form 10-Kの比較財務諸表に合わせて修正しています。[2][3][4]
- 自己資本比率は上昇:FY2023末の58.7%から、FY2027 Q1末には73.8%へ上昇しました。
- 手元流動性:2026年4月30日時点の現金・現金同等物は7.62億ドル、短期投資は18.27億ドルでした。[3]
- 負債は縮小:総負債はFY2023末の38.41億ドルから、FY2027 Q1末には24.48億ドルへ減少しました。
2026年満期転換社債の扱い
2026年4月30日時点では、2026年6月15日満期の転換社債3.50億ドルが流動負債として計上されていました。会社は満期時に現金で決済する方針を示していました。[3]
2026年7月15日時点では満期日を過ぎていますが、公表済みの最新財務諸表は2026年4月30日時点です。そのため、本記事では残高が正式に消滅したとは断定せず、次回のForm 10-Qで実際の決済状況を確認する必要があるものとして扱います。
3.2. キャッシュフロー分析:FCFと資本配分
| 会計年度・期間 | 営業CF 百万$ |
設備投資等 百万$ |
FCF 百万$ |
FCFマージン | 自社株買い 百万$ |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2022 | 104 | 17 | 87 | 6.7% | — |
| FY2023 | 86 | 21 | 65 | 3.5% | — |
| FY2024 | 512 | 23 | 489 | 21.6% | — |
| FY2025 | 750 | 20 | 730 | 28.0% | — |
| FY2026 | 884 | 21 | 863 | 29.6% | 73 |
| FY2027 Q1 | 277 | 6 | 271 | 35.4% | 241 |
| FY2027会社見通し | — | — | 855~885 | 27~28% | — |
注)FCFは、会社が示す営業CFから資本化ソフトウェアおよび有形固定資産購入を差し引いた指標です。FY2027見通しは2026年5月28日時点です。[1][2]
- FCFは拡大:FY2022の0.87億ドルからFY2026には8.63億ドルへ増加しました。
- FY2027 Q1のFCFは2.71億ドル:前年同期の2.38億ドルから増加し、FCFマージンは35%でした。[1]
- FY2027のFCF見通しを引き上げ:当初の8.50億~8.80億ドルから、8.55億~8.85億ドルへ上方修正されました。
10億ドルの自社株買い枠
Oktaは2026年1月5日、最大10億ドルの自社株買い枠を承認しました。固定された終了日はなく、市場環境や資金需要に応じて実施する方針です。[5]
FY2026には0.73億ドル、FY2027 Q1には2.41億ドルの自社株買いを実施しました。FY2027 Q1は平均約79.56ドルで約303万株を取得し、2026年4月30日時点の残り枠は約6.80億ドルでした。[3]
FY2027 Q1の自社株買い額は同期間の株式報酬1.17億ドルを上回りました。ただし、今後も株式報酬による希薄化を完全に相殺できるかは、発行株式数の推移と合わせて確認する必要があります。
4. 資本効率性と収益性:黒字化後の改善余地
OktaはFY2025にGAAP純利益が黒字化し、FY2026にはGAAP営業利益も黒字となりました。ROAとROEもプラスへ転じましたが、利益水準は株主資本に対してまだ高くありません。
| 会計年度 | ROA GAAP純利益÷期末総資産 |
ROE GAAP純利益÷期末株主資本 |
|---|---|---|
| FY2023 | -8.8% | -14.9% |
| FY2024 | -3.9% | -6.0% |
| FY2025 | 0.3% | 0.4% |
| FY2026 | 2.4% | 3.4% |
注)ROAとROEは期末総資産・期末株主資本を用いた簡便計算です。FY2027 Q1は3カ月間の数値であるため、通期ROA・ROEの表には含めていません。
ミニ解説:OktaのNon-GAAP利益では、株式報酬、転換社債関連費用、買収に伴う無形資産償却などが調整されます。事業の営業効率を見るにはNon-GAAP利益が役立ちますが、株主に残る価値を考える際は、GAAP利益、株式報酬、自社株買い、発行株式数、FCFをセットで確認する必要があります。
5. Oktaの戦略:ゼロトラスト、AIエージェント、プラットフォーム拡張
Oktaの戦略は、アイデンティティを企業セキュリティの中心に置くことです。ユーザー、デバイス、アプリ、API、顧客、特権アカウント、AIエージェント、マシンIDを一貫して管理することで、ゼロトラストの基盤を提供します。
- ゼロトラスト:SSO、MFA、リスクベース認証、デバイス情報、ライフサイクル管理を通じて、アクセスの妥当性を継続的に検証します。
- Okta Identity Governance:アクセス権の申請、承認、棚卸し、監査を支援します。
- Okta Privileged Access:管理者権限や高リスク権限を保護し、PAMに近い市場へ事業領域を広げます。
- Identity Threat Protection:複数のリスクシグナルをID管理に統合し、セッション中の脅威にも対応します。
- Identity Security Posture Management:過剰権限、休眠アカウント、設定不備などを可視化します。
- AIエージェントの保護:Okta for AI AgentsやAuth0 for AI Agentsを通じ、AIエージェントの認証、認可、ガバナンスを提供します。[1]
- Okta Integration Network:多数のアプリケーション連携が、導入の速さとベンダー中立性を支えています。
AIエージェントがアイデンティティ市場を広げる理由
AIエージェントは、人間の代わりにデータを読み、アプリケーションを操作し、取引や更新処理を行う可能性があります。そのため、単にログインできるだけでなく、以下の管理が必要になります。
- エージェントを誰が作成・所有しているか
- どのデータやアプリへアクセスできるか
- どの操作を実行できるか
- 権限をいつ停止・失効させるか
- 実行内容を誰が監査するか
これはOktaにとって新しい市場機会ですが、AIエージェント関連製品が売上高をどの程度押し上げるかは、2026年7月時点ではまだ判断できません。
6. 競争環境とOktaの優位性
アイデンティティ管理は、クラウド、SaaS、ゼロトラスト、生成AI、マシンIDの普及に伴い、企業セキュリティの中心的な市場になっています。一方、Microsoft Entra ID、CyberArk、Ping Identityなどとの競争は厳しくなっています。
Oktaの強み
- 独立性と中立性:複数クラウド、SaaS、OSを組み合わせる企業にとって、特定ベンダーに偏らないID基盤は価値があります。
- WorkforceとCustomerの両輪:従業員IDと顧客IDを同時に提供できます。
- 大口顧客基盤:FY2027 Q1時点でACV100万ドル以上の顧客は570社となり、前年同期比19%増えました。[1]
- 製品拡張:OIG、OPA、ITP、ISPM、Customer Identity、AI Agent Identityを既存顧客へ追加販売できます。
- 高いFCF創出力:FY2026のFCFマージンは30%、FY2027 Q1は35%でした。
- 財務余力:2026年4月30日時点の現金・短期投資は25.89億ドルでした。
注意すべきリスク要因
- 売上成長率の鈍化:FY2027通期の会社見通しは9~10%増です。IPO後の40~50%成長期からは大きく低下しています。
- Microsoftとの競争:Entra IDはMicrosoft 365やAzureとの統合を背景に強い販売力を持ちます。
- DBNRRの低下:FY2027 Q1のDBNRRは107%で、既存顧客からの拡張余地は残るものの、高成長を支えるには再加速が必要です。
- Non-GAAP営業利益率の低下:FY2027 Q1は25%で、前年同期の27%から低下しました。
- セキュリティインシデント:アイデンティティ企業は信頼が重要であり、侵害やサービス障害は顧客維持とブランドに大きく影響します。
- 株式報酬と希薄化:FY2027 Q1の株式報酬は1.17億ドルでした。自社株買いだけでなく、発行株式数の純増減を確認する必要があります。
- AIエージェント市場の不確実性:市場の成長は期待できますが、標準規格、競争環境、収益化の速度はまだ不透明です。
- 大口顧客への依存度上昇:ACV10万ドル以上の顧客が総ACVの約85%を占めるため、大企業のIT予算や契約更新の影響が大きくなります。
- 高金利・景気減速:顧客の契約期間、導入範囲、IT予算の承認が慎重になる可能性があります。
7. FY2027の見通しと今後のポイント
FY2027会社見通し(2026年5月28日更新)
| 指標 | FY2027 Q2見通し | FY2027通期見通し |
|---|---|---|
| 売上高 | 7.90億~7.94億ドル 前年同期比+9% |
31.85億~32.05億ドル 前年比+9~10% |
| cRPO | 25.05億~25.15億ドル 前年同期比+11% |
— |
| Non-GAAP営業利益 | 2.04億~2.08億ドル | 8.06億~8.26億ドル |
| Non-GAAP営業利益率 | 26% | 25~26% |
| Non-GAAP EPS | 0.95~0.97ドル | 3.79~3.87ドル |
| Non-GAAP FCF | 1.55億~1.65億ドル | 8.55億~8.85億ドル |
| FCFマージン | 20~21% | 27~28% |
FY2027の売上見通しには、プロフェッショナルサービス事業をパートナーへ移行する影響が、売上成長率を約1ポイント押し下げる前提が含まれています。[1]
当初見通しからの変更
| FY2027通期指標 | 2026年3月4日時点 | 2026年5月28日時点 | 変更 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 31.70億~31.90億ドル | 31.85億~32.05億ドル | 下限・上限を各0.15億ドル引き上げ |
| Non-GAAP営業利益 | 7.95億~8.15億ドル | 8.06億~8.26億ドル | 下限・上限を各0.11億ドル引き上げ |
| Non-GAAP EPS | 3.74~3.82ドル | 3.79~3.87ドル | 0.05ドル引き上げ |
| Non-GAAP FCF | 8.50億~8.80億ドル | 8.55億~8.85億ドル | 0.05億ドル引き上げ |
FY2027 Q1は当初の売上高見通し7.49億~7.53億ドルを上回る7.65億ドルとなり、通期ガイダンスも小幅に引き上げられました。ガイダンスの引き上げは前向きですが、通期の成長率は9~10%にとどまるため、再び二桁成長を安定して維持できるかが焦点です。[1][2]
投資家が注目すべきポイント
- 売上成長率:FY2027 Q1の11%成長を、Q2以降も維持できるか。
- cRPO:Q1の12%増から、Q2会社見通しの11%増へ減速するか。
- DBNRR:107%から再加速できるか。
- 大口顧客:ACV100万ドル以上の顧客が引き続き二桁成長するか。
- Non-GAAP営業利益率:成長投資を増やしながら25~26%を維持できるか。
- FCF:Q2は季節要因によりFCFマージン20~21%の見通しですが、通期27~28%を達成できるか。
- OIG・OPA・AI Agent Identity:新製品が売上成長率やDBNRRを押し上げるか。
- 自社株買い:株式報酬による希薄化をどの程度相殺できるか。
- 転換社債:2026年6月15日満期分の現金決済が、次回Form 10-Qでどのように反映されるか。
8. まとめ:Oktaは「独立系アイデンティティ基盤」として再加速できるか
Oktaは、アイデンティティ・セキュリティ市場の独立系大手です。FY2026は売上高29.19億ドル、GAAP営業利益1.49億ドル、GAAP純利益2.35億ドル、Non-GAAP営業利益7.66億ドル、FCF8.63億ドルを記録しました。[2]
FY2027 Q1は売上高7.65億ドル、GAAP営業利益0.56億ドル、GAAP純利益0.74億ドル、FCF2.71億ドルとなり、会社の事前見通しを上回りました。RPOは16%増、cRPOは12%増で、契約残高は売上高より速いペースで成長しています。[1]
投資家目線では、以下がOktaの主な魅力です。
- 特定のクラウドに依存しない独立系アイデンティティ基盤
- Workforce IdentityとCustomer Identityの両輪
- ACV100万ドル以上の大口顧客が19%増加
- OIG、OPA、ITP、ISPM、AI Agent Identityによるクロスセル余地
- FY2027 Q1で35%に達したFCFマージン
- 25.89億ドルの現金・短期投資と低下したD/Eレシオ
- 10億ドルの自社株買い枠
一方、売上成長率はFY2022の55.6%から、FY2027通期見通しでは9~10%へ低下しています。DBNRRは107%にとどまり、Microsoftとの競争、株式報酬、過去のセキュリティインシデント、AIエージェント市場の不確実性も残ります。
今後の投資判断では、売上高だけでなく、cRPO、DBNRR、大口顧客数、GAAP営業利益率、Non-GAAP営業利益率、FCF、株式報酬、自社株買い、発行株式数をセットで確認することが重要です。
【注】(出典リンク)
- FY2027 Q1決算・最新KPI・更新後ガイダンス → Okta:FY2027 Q1 Financial Results(一次情報) → Okta:Q1 FY2027 Posted Commentary(一次情報) 確認日:2026-07-15 ↩
- FY2026通期決算・FY2027当初見通し → SEC:Okta FY2026 Form 10-K(一次情報) → Okta:Q4 and Fiscal Year 2026 Results(一次情報) 確認日:2026-07-15 ↩
- FY2027 Q1財務諸表・株式報酬・自社株買い・転換社債 → SEC:Okta FY2027 Q1 Form 10-Q(一次情報) → Okta:SEC Filings(一次情報) 確認日:2026-07-15 ↩
- FY2018~FY2025の過年度財務データ → Okta:Annual Reports(一次情報) → SEC EDGAR:Okta提出書類(一次情報) 確認日:2026-07-15 ↩
- 10億ドルの自社株買い枠 → Okta:$1 Billion Share Repurchase Program(一次情報) → SEC:FY2027 Q1の買付実績(一次情報) 確認日:2026-07-15 ↩

