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相続税と譲与税のない国はどこ?

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昨日の所得税に続き、税金の話を書いてみます。

今回は相続税です。

これを取り上げたのは、最近、相続税の対象になる人が増えてきているからです。

2016年末の国税庁発表では、2015年に亡くなった約129万人のうち、相続税が課税されたのは約10万3千人でした。これは全体の8%に相当し、前年度よりも8割増しの数字となりました。相続税の課税方式は相続される財産から基礎控除を引いて計算しますが、15年1月からその仕組みが変わっています。

  • 従来の基礎控除:「5000万円+1000万円×法定相続人の数」
  • 15年1月以降の基礎控除:「3000万円+600万円×法定相続人の数」

いつのまにか「中の上」ぐらいの収入階層でも課税されかねない水準になってきたので、今回は相続税の問題を考えてみます。

相続税がない国はどこ?

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日本にいると相続税があるのが当然だと考えがちですが、世界には、そもそも相続税がない国は意外とたくさんあります。

有名どころで言えば、シンガポール、マレーシア、インド、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、スウェーデンには相続税がありません。

スイスは、昔は相続税なしの国の例でよくあげられましたが、最近は限られた範囲で相続税がかかるようです。

【スイスの相続税は低率で限定的

(出所:スイスの労働市場 - Switzerland Global Enterprise

  • シュビーツ州およびオプヴァルデン準州を除き、全州で相続税と贈与税が課かる。
  • だが、夫婦間の相続や贈与には非課税。
  • 26州のうち3州で親から子への財産の移譲で相続税が課かる(1%~3.5%程度)
  • 親戚や第三者への移譲が相続税の課税対象

中国はまだ相続税がかかりませんが、今後は相続税導入に向かうと報じられています。

【中国は相続税導入に向かう?】

(出所:産経ニュース「中国『相続税』導入へ」 2016.12.25)

  • 習政権は貧富の格差是正を目指し、「遺産税(相続税)」導入を検討。
  • 現状は富裕層が親の富を子供に“世襲”できるため。
  • 富裕層に限定し、税率を15~30%に設定する

そして、米国はトランプ政権発足により、ブッシュ政権以来の相続税廃止を目指しています。

相続税のメリット・デメリット

日本は2015年1月から6段階だった税率が8段階になり、最高税率は世界最高水準の55%となりました。一番、インパクトが大きいのは基礎控除の縮小で、基礎控除(非課税枠)が4割も減っています。

現在、相続税の税率は以下の通りです。

  • 1000万円以下:10% 
  • 3000万円以下:15% 
  • 5000万円以下:20% 
  • 1億円以下:30%
  • 2億円以下:40% 
  • 3億円以下:45% 
  • 6億円以下:50% 
  • 6億円超:55%

そうまでして相続税を課税するのは、格差是正に効果があると考えられているからです。

相続税がない場合は「金持ちの家はずっと金持ち」「貧乏人の家はずっと貧乏人」となり、社会での階層が固定化しやすくなります。貧富の差が大きくなるため、累進課税制度で富の再配分を行うわけです。

また、所得税は所得把握が完全ではないため、よく「とりっぱぐれ」が起きます。

これを補うために国税庁は相続税を使うわけです(死ぬ前に税金を清算しろと言っているように見えますが)。

このあたりが相続税のメリットと見られていますが、デメリットもあります。

相続税は所得税から取ったお金の残りに税金をかけているので、二重課税の疑いが指摘されてきました。

また、相続税や譲与税を重くするとお金持ちが海外に逃げていきます。

さらに、中小企業の事業継承に支障をきたします。

事業承継の際に負担を減らす例外措置も始まりましたが、その場合、雇用の8割を毎年、維持し続けなければいけません。これはなかなか厳しい基準です。

中小企業者には、自分が始めた仕事を有能な子供や親類、見込んだ後継者に譲りたいと思う方が多いのですが、今の税制では均分相続なので、それは困難。贈与にした時には「贈与税」がかかります。

スウェーデンが相続税を廃止した理由とは

日本ではスウェーデンは「高い税金で高い福祉」の国というイメージがあるので、この国が相続税廃止に踏み切ったのは、意外に見えるかもしれません。

その経緯が2012年の「朝日デジタル」の特別版で紹介されていました。

(出所:金持ち税を廃止した「福祉の国」スウェーデン

その内容を四点に絞って整理すると、こうなります。

【①高額所得者の海外逃亡を防ぐ】

  • 首都ストックホルムに近いダンデリード市の高級住宅街に住むP氏(61歳)は言う。2007年に富裕税は廃止されたのは「当然だ」
  • 「高額所得者が国外に出てしまえば、国の競争力が落ちる。無駄を省いて、もっと税金を下げるべきだ」

【②相続税と贈与税はなぜ廃止されたのか】

  • 2007年に廃止に踏み切った政権の財務相ペール・ヌーデル氏はいう。
  • 「中小企業では負担が重く、事業を引き継げない場合が多かった」
  • 相続税と贈与税が国の税収に占める割合も計約0.2%で、歳入に大穴があくほどではなかった。

【③イケアは相続税のために海外移転】

  • おしゃれなデザインの家具で知られるイケア。現在、グループ持ち株会社はオランダにある。三角パックの紙容器を広めたテトラパックも本社はスイスだ。両社とも、創業家はスウェーデンを離れたとされる。
  • 「税金が理由で移転したのだろう。相続税は経済活動にブレーキをかける」

【④現代は資本も資産も海外に移動してしまう時代】

  • ストックホルム大のペーテル・メルツ教授は「経済のグローバル化で資産を国外に移すのが簡単になり、金持ちから税金を取るのが難しくなっている」と話す。
  • スウェーデンは「どうせ取れないなら、せめて逃げ出されないようにしよう」と考えた。
  • 元国税庁長官の渡辺裕泰・早稲田大教授は「海外では、相続税は不公平な税と考えられている」と断言。
  • 大金持ちは専門家に頼んで、把握が難しい金融資産に変えたり、国外に逃げ出したりする。
  • 払うのは大都市に土地を持つような中産階級や小金持ちだけ。「米国では、払いたい人が払う『ボランタリータックス(自発的な税金)』と揶揄される」

・・・

こうしてみると、相続税があることは必ずしも当然ではありません。

格差是正に対する世論が根強い日本は相続税は課税強化に傾きがちですが、社会保障を重視するスウェーデンでも「金のなる木」である企業とその創業者が海外逃亡しないよう、これに関しては注意をはらっています。

格差の固定化が問題視されがちではありますが、同時に、相続税のデメリットについても、しっかりと頭に入れておきたいものです。

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