ZS:ズィースケーラーの業績
【2025年版】Zscaler (ZS) 徹底分析:ゼロトラストセキュリティの先駆者 – FY2019-FY2024財務データと成長戦略
はじめに
Zscaler (ズィースケーラー) は、クラウドネイティブな「Zero Trust Exchange」プラットフォームを通じて、企業のデジタルトランスフォーメーションを安全に加速させるサイバーセキュリティ業界のリーダーです。従来のネットワーク境界型セキュリティモデルを覆し、ユーザー、デバイス、アプリケーションがどこにあっても安全なアクセスを実現します。
この記事では、Zscalerの過去の会計年度 (主にFY2019~FY2024) の財務データを基に、その急成長の軌跡、革新的なビジネスモデル、AIを活用した戦略、そしてクラウドセキュリティ市場における競争優位性を、投資家の視点から分かりやすく解説します。
【免責事項および出典について】
- 本記事に掲載されている財務情報(特にFY2019からFY2024までの時系列データ)は、主にZscaler, Inc.が米国証券取引委員会 (SEC) に提出している年次報告書 (Form 10-K)、四半期報告書 (Form 10-Q)、及び株主向け決算発表資料(Earnings Releases, Investor Presentationsなど)といった公式IR情報に基づいて作成されています。特にFY2024のデータは、2024年9月6日発表の「Zscaler Reports Fourth Quarter and Fiscal Year 2024 Financial Results」(2024年7月31日締め) および関連するForm 10-Kに基づいています。FY2025 Q3のデータは2025年5月30日発表の決算資料に基づきます。
- 記事内の成長率 (CAGRなど) や一部の経営指標は、これらの公式データに基づき筆者が算出したものです。1株当たり指標は、主に希薄化後加重平均発行済株式数に基づいて算出しています。Non-GAAP指標については、公式発表資料を参照しています。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の購入や売却を推奨または勧誘するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
- データは記事作成時点で入手可能な情報に基づき、正確を期すよう努めておりますが、常に最新かつ完全な情報を保証するものではありません。必ずZscaler社の公式IR情報をご確認ください。
- Zscaler社 投資家向け情報ページ: https://ir.zscaler.com/
会計年度について: Zscalerの会計年度は、前年8月1日から当年7月31日までです。例えば、本記事で「FY2024」と表記する会計年度は、2023年8月1日から2024年7月31日までの期間を指します。表内の年度表記は、この会計年度 (Fiscal Year, FY) に基づいています。
- 1. 1. Zscalerの長期的な業績:急成長と市場リーダーシップの確立
- 2. 2. ビジネスモデル:「Zero Trust Exchange」によるクラウドセキュリティ変革
- 3. 3. 財務の健全性:高成長とキャッシュフロー創出の両立
- 4. 4. 資本効率性と収益性:高い成長を背景に改善
- 5. 5. AI戦略と技術的優位性:Zero Trust ExchangeをAIで強化
- 6. 6. 市場での強みとライバル:クラウドセキュリティ市場のリーダー
- 7. 7. FY2025年の見通しと今後のポイント:プラットフォーム拡大とAIイノベーション
- 8. 8. まとめ:Zscalerはクラウド時代のセキュリティを定義し続けるか?
1. Zscalerの長期的な業績:急成長と市場リーダーシップの確立
Zscalerは、クラウドセキュリティとゼロトラストというメガトレンドを追い風に、IPO(2018年3月)以来、驚異的な速度で成長を続けています。特にビリングスと大口顧客数の増加が成長を牽引しています。
1.1. 売上、ビリングス、利益、キャッシュフローの推移
Zscalerの主要な業績とKPIの移り変わりを見てみましょう。SaaSビジネスモデルであるため、ビリングスと繰延収益の成長も重要な指標となります。
スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
会計年度 | 総売上高(百万$) | 売上成長率(YoY) | ビリングス(百万$) | ビリングス成長率(YoY) | 営業CF(百万$) | 純損失 (GAAP)(百万$) | Non-GAAP純利益(百万$) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
FY2019 | 302.8 | 59.2% | 367.8 | 55.2% | 33.2 | (28.7) | 11.8 |
FY2020 | 431.3 | 42.4% | 535.7 | 45.6% | 74.4 | (115.3) | 46.9 |
FY2021 | 673.1 | 56.1% | 857.2 | 59.9% | 205.7 | (262.1) | 102.8 |
FY2022 | 1,090.9 | 62.1% | 1,477.5 | 72.4% | 344.9 | (391.2) | 189.1 |
FY2023 | 1,617.4 | 48.3% | 2,030.6 | 37.4% | 555.3 | (201.7) | 344.8 |
FY2024 | 2,028.7 | 25.4% | 2,415.2 | 19.0% | 792.6 | (133.7) | 519.6 |
CAGR (年平均成長率) FY19-FY24 | |||||||
総売上高 | 46.2% | – | – | – | – | – | – |
ビリングス | – | – | 45.7% | – | – | – | – |
出典: Zscaler, Inc. 公式IR資料 (年次報告書 Form 10-K、決算発表資料等) より筆者作成。CAGRは上記データに基づき筆者算出。Non-GAAP純利益は調整後数値。
- 総売上高・ビリングス: FY2019からFY2024の5年間で、売上高は約6.7倍、ビリングスは約6.6倍と、極めて高い成長率を維持しています。
- 営業キャッシュフロー (営業CF): 事業規模の拡大と収益性改善に伴い、急速かつ大幅に増加。FY2024には約7.9億ドルに達しました。
- 純損益: GAAPベースでは成長投資(特に株式報酬費用)により損失を計上していますが、Non-GAAPベースでは一貫して黒字であり、利益額も大きく拡大しています。
1.2. 収益性:成長と利益率のバランス
スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
会計年度 | GAAP 粗利率 |
Non-GAAP 粗利率 |
GAAP 営業利益率 |
Non-GAAP 営業利益率 |
営業CF率 | FCF率 |
---|---|---|---|---|---|---|
FY2019 | 78.8% | 80.2% | -9.7% | 1.7% | 10.9% | 4.4% |
FY2020 | 77.3% | 79.2% | -23.9% | 5.8% | 17.3% | 11.8% |
FY2021 | 77.4% | 80.0% | -32.6% | 9.6% | 30.6% | 25.1% |
FY2022 | 78.0% | 80.6% | -27.9% | 11.9% | 31.6% | 23.4% |
FY2023 | 77.8% | 80.5% | -10.7% | 15.1% | 34.3% | 25.9% |
FY2024 | 77.7% | 80.6% | -4.9% | 18.9% | 39.1% | 32.2% |
出典: Zscaler, Inc. 公式IR資料より筆者作成。各利益率は対応する利益と売上高より算出。FCF率は (営業CF – 設備投資) / 売上高 で算出。
- 粗利率: Non-GAAPベースで80%前後と、SaaS企業として非常に高い水準を安定して維持しています。
- 営業利益率: Non-GAAPベースでは着実に改善し、FY2024には18.9%に達しました。成長投資と収益性向上のバランスが取れています。
- 営業CF率・FCF率: 力強い成長を見せており、FY2024にはそれぞれ39.1%、32.2%と高い水準です。「Rule of 40」の観点からも、FY2024は売上成長率25.4% + FCF率32.2% = 57.6%と優れたパフォーマンスを示しています。
1.3. コスト構造:成長を支える投資配分
Zscalerは、市場リーダーシップの確立と技術革新のため、特に販売・マーケティングと研究開発に重点的に投資しています。
スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
会計年度 | 売上総利益率 (Non-GAAP) |
販売・マーケ費率 (Non-GAAP) |
研究開発(R&D)費率 (Non-GAAP) |
一般管理費率 (Non-GAAP) |
---|---|---|---|---|
FY2022 | 80.6% | 45.2% | 16.0% | 7.5% |
FY2023 | 80.5% | 42.2% | 15.8% | 7.4% |
FY2024 | 80.6% | 39.7% | 15.0% | 7.0% |
出典: Zscaler, Inc. 公式IR資料より筆者作成。各費用率はNon-GAAPベースの費用を売上高で除して算出。
- 販売・マーケティング費率: 売上高の約40%前後を投資し、グローバルな市場拡大と大口顧客獲得を推進。売上成長に伴い効率化も進んでいます。
- 研究開発(R&D)費率: 売上高の15%程度を継続的に投資し、Zero Trust Exchangeプラットフォームの機能拡張や新技術開発に注力しています。
1.4. 投資家向け指標と主要KPI:1株あたりの価値と顧客基盤の拡大
スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
会計年度 | SPS ($)(1株当たり売上高) | CFPS ($)(1株当たり営業CF) | Non-GAAP EPS ($)(希薄化後) | 顧客数 >$1M ARR | 顧客数 >$100k ARR | DBNRR |
---|---|---|---|---|---|---|
FY2019 | 2.42 | 0.27 | 0.09 | 35 | 390 | 118% |
FY2020 | 3.22 | 0.56 | 0.35 | 58 | 560 | 122% |
FY2021 | 4.76 | 1.46 | 0.71 | 129 | 990 | 126% |
FY2022 | 7.56 | 2.39 | 1.27 | 244 | 1,740 | 125%+ |
FY2023 | 11.07 | 3.80 | 2.29 | 413 | 2,450 | 120%+ |
FY2024 | 13.73 | 5.36 | 3.41 | 493 | 2,838 | 117% |
出典: Zscaler, Inc. 公式IR資料より筆者作成。SPS, CFPSは筆者算出。Non-GAAP EPS、顧客数、DBNRRは公式発表に基づく。
- Non-GAAP EPS: FY2019の0.09ドルからFY2024の3.41ドルへと急成長。高い収益性向上を示しています。
- 大口顧客数: 年間経常収益(ARR)100万ドル超の顧客はFY2024末で493社、10万ドル超の顧客は2,838社と、エンタープライズ市場での浸透が加速しています。
- Dollar-Based Net Retention Rate (DBNRR): 一貫して115%を超える高い水準を維持。既存顧客によるアップセル・クロスセルが極めて好調であることを示し、Zscalerのプラットフォーム戦略の有効性を裏付けています。
2. ビジネスモデル:「Zero Trust Exchange」によるクラウドセキュリティ変革
Zscalerのビジネスモデルは、世界最大級のインライン型クラウドセキュリティプラットフォーム「Zero Trust Exchange」を中核としています。
- Zero Trust Exchange:
- 従来の境界型セキュリティ(城と堀モデル)ではなく、「決して信頼せず、常に検証する」というゼロトラスト原則に基づき、ユーザーとアプリケーション間のアクセスを仲介。
- 世界150以上のデータセンターを通じてサービスを提供し、ユーザーがどこからアクセスしても、高速かつ安全な接続を実現。
- ポリシー適用、脅威防御、データ保護をクラウド上で一元的に実行。
- 主要製品・サービス:
- Zscaler Internet Access (ZIA): 安全なインターネットおよびSaaSアプリケーションへのアクセスを提供。脅威防御、URLフィルタリング、データ損失防止(DLP)など。
- Zscaler Private Access (ZPA): 内部アプリケーションへのセキュアなリモートアクセス(VPN代替)を提供。アプリケーションをインターネットから不可視化。
- Zscaler Digital Experience (ZDX): エンドユーザーのデジタル体験を監視・最適化。アプリケーションやネットワークのパフォーマンス問題を特定。
- Zscaler Data Protection (ZDP): クラウド全体にわたる包括的なデータ保護ソリューション。
- その他、クラウドワークロード保護 (Zscaler Workload Communications) や、最近ではZero Trust for OT/IoT、AIを活用したリスクベースのアクセス制御なども強化。
- SaaSモデルと強力な経済性:
- サブスクリプションベースの収益モデルにより、高い経常収益 (ARR) と予見性を実現。
- 高いDBNRRが示すように、既存顧客へのプラットフォーム拡張(ZIA顧客へのZPAのクロスセルなど)が大きな成長ドライバー。
- 物理的なアプライアンスが不要なため、顧客はTCO削減と運用効率向上を実現可能。
3. 財務の健全性:高成長とキャッシュフロー創出の両立
Zscalerは急成長を維持しながら、財務基盤も着実に強化しています。
3.1. 資産・負債・資本の推移
スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
会計年度 | 総資産(百万$) | 総負債(百万$) | 株主資本(百万$) | 自己資本率 | 現金及び 短期投資(百万$) |
---|---|---|---|---|---|
FY2020 | 1,654 | 882 | 772 | 46.7% | 1,196 |
FY2021 | 2,524 | 1,250 | 1,274 | 50.5% | 1,459 |
FY2022 | 2,780 | 1,416 | 1,364 | 49.1% | 1,697 |
FY2023 | 3,352 | 1,745 | 1,607 | 47.9% | 2,062 |
FY2024 | 4,193 | 2,121 | 2,072 | 49.4% | 2,512 |
出典: Zscaler, Inc. 公式IR資料 (年次報告書 Form 10-K) より筆者作成。
- 自己資本比率: 概ね40%台後半から50%程度で安定。
- 現金及び短期投資: FY2024末で約25.1億ドルと非常に潤沢な手元資金を保有。これにより、戦略的投資や事業拡大への柔軟性を確保しています。
3.2. キャッシュフロー分析:フリーキャッシュフローの急拡大
Zscalerは営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフロー(FCF)ともに力強く成長させています。
フリーキャッシュフロー (FCF) = 営業キャッシュフロー (Operating CF) – 設備投資額 (Capital Expenditures, CapEx)
スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
会計年度 | 営業CF(百万$) | 設備投資(CapEx)(百万$) | FCF(百万$) | FCFマージン |
---|---|---|---|---|
FY2019 | 33.2 | 14.8 | 18.4 | 6.1% |
FY2020 | 74.4 | 23.7 | 50.7 | 11.8% |
FY2021 | 205.7 | 36.7 | 169.0 | 25.1% |
FY2022 | 344.9 | 89.2 | 255.7 | 23.4% |
FY2023 | 555.3 | 140.8 | 414.5 | 25.6% |
FY2024 | 792.6 | 139.9 | 652.7 | 32.2% |
出典: Zscaler, Inc. 公式IR資料 (年次報告書 Form 10-K) より筆者作成。FCFマージンはFCF/売上高。
ZscalerのFCFマージンは急速に改善し、FY2024には32.2%という非常に高い水準に達しました。この強力なキャッシュ創出力は、同社のビジネスモデルの効率性とスケーラビリティを証明しており、さらなる成長投資や将来的な株主還元への期待を高めます。
4. 資本効率性と収益性:高い成長を背景に改善
Zscalerは、高い成長を続けながら、資本効率と収益性の向上にも取り組んでいます。Non-GAAPベースでの収益性は特に目覚ましい改善を見せています。
スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
会計年度 | ROA (GAAP)(総資産利益率) | ROE (GAAP)(自己資本利益率) | ROA (Non-GAAP)(推定) | ROE (Non-GAAP)(推定) |
---|---|---|---|---|
FY2020 | -7.0% | -14.9% | 2.8% | 6.1% |
FY2021 | -10.4% | -20.6% | 4.1% | 8.1% |
FY2022 | -14.1% | -28.7% | 6.8% | 13.9% |
FY2023 | -6.0% | -12.5% | 10.3% | 21.5% |
FY2024 | -3.2% | -6.5% | 12.4% | 25.1% |
出典: Zscaler, Inc. 公式IR資料より筆者作成。GAAP ROA/ROEは期末残高ベース。Non-GAAP ROA/ROEはNon-GAAP純利益と期末残高を用いて筆者推定。
- ROE (Non-GAAPベース推定): FY2024で約25.1%と、高い成長企業としては非常に良好な資本効率を示しています。GAAPベースではまだマイナスですが、Non-GAAPでは収益性の高さが顕著です。
- ROA (Non-GAAPベース推定): こちらも着実に改善し、FY2024で約12.4%。
5. AI戦略と技術的優位性:Zero Trust ExchangeをAIで強化
Zscalerは、AIと機械学習をZero Trust Exchangeプラットフォーム全体に深く組み込み、脅威防御能力と運用効率を向上させています。
- 世界最大級のセキュリティクラウド:
- 毎日3,000億件以上のトランザクションを処理し、膨大な脅威インテリジェンスを収集・分析。このデータがAI/MLモデルの精度向上に不可欠な「燃料」となります。
- この大規模なデータセットとAI活用により、新たな脅威やゼロデイ攻撃をリアルタイムで検知・ブロックする能力を高めています。
- AI/MLによる脅威防御とデータ保護:
- ZIAでは、AIを活用して悪意のあるコンテンツやフィッシングサイトを特定・ブロック。
- ZPAでは、AIによるユーザー行動分析に基づき、異常なアクセス試行や内部脅威を検知。
- Zscaler Data Protection (ZDP)では、AI/MLを用いて機密データを自動的に分類し、情報漏洩リスクを低減。
- 生成AIの活用:
- セキュリティ運用を簡素化し、脅威分析やポリシー作成を支援するために生成AI技術の導入を進めています。
- ユーザーが自然言語でセキュリティ状況を問い合わせたり、推奨される対策を得たりすることを可能にする機能開発が期待されます。
- イノベーションへの投資:
- FY2024の研究開発費はGAAPベースで4.5億ドル(売上の22.3%)、Non-GAAPベースで3.0億ドル(売上の15.0%)。AIを含む先端技術への継続的な投資が、技術的リーダーシップを支えています。
6. 市場での強みとライバル:クラウドセキュリティ市場のリーダー
Zscalerは、Security Service Edge (SSE) およびSecure Access Service Edge (SASE) 市場において、リーダーとしての地位を確立しています。
市場シェアや評価に関する記述は、Gartner、Forresterなどの各種業界レポートに基づく一般的な認識です。
- 市場での評価:
- GartnerのMagic Quadrant for Security Service Edge (SSE) において、長年にわたりリーダーとして評価されています。
- Forrester Wave™: Zero Trust Edge Solutions (旧称 Zero Trust eXtended Ecosystem Platform Providers) でもリーダーとして位置づけられています。
- 競合環境:
- SSE/SASE市場: Palo Alto Networks (Prisma Access), Netskope, Fortinet, Cisco (Umbrella), Broadcom (Symantec/Blue Coat) など、ネットワークセキュリティ大手や専門ベンダーとの競争。
- クラウドワークロード保護 (CWPP) / CNAPP市場: 新たに参入・強化している分野であり、Palo Alto Networks (Prisma Cloud), CrowdStrike, Wiz, Laceworkなどと競合。
Zscalerの強み:
- クラウドネイティブなZero Trustアーキテクチャ: パフォーマンス、スケーラビリティ、信頼性に優れる。
- 世界最大級のインライン型セキュリティクラウド: 膨大なトラフィック処理能力と脅威インテリジェンス。
- 実績のあるテクノロジーとブランド: 大規模エンタープライズでの豊富な導入実績。
- 強力なプラットフォーム効果: ZIA, ZPA, ZDXなどの連携による包括的なセキュリティ提供と高いDBNRR。
- ゼロトラストのパイオニアとしての思想的リーダーシップ。
7. FY2025年の見通しと今後のポイント:プラットフォーム拡大とAIイノベーション
Zscaler経営陣は、FY2025年も力強い成長と収益性改善の継続を見込んでいます。(下記は、FY2025 Q3決算発表時(2025年5月30日)に更新されたFY2025年度通期ガイダンスです。)
FY2025年度 会社予想 (2025年5月30日更新):
- 総売上高: $21.40億ドル ~ $21.42億ドル (前年度比 約32%増)
- ビリングス: $26.13億ドル ~ $26.16億ドル (前年度比 約29-30%増)
- Non-GAAP営業利益: $4.75億ドル ~ $4.77億ドル (Non-GAAP営業利益率 約22.2%-22.3%)
- Non-GAAP EPS (希薄化後): $2.99 ~ $3.01
上記ガイダンスは、Zscaler社が発表した情報に基づくものであり、将来の業績を保証するものではありません。
投資家が注目すべきポイントとリスク:
- プラットフォームのクロスセル・アップセル: ZIA、ZPAに続くZDX、ZDP、Emerging Productsの成長と、それによるARRおよびDBNRRの持続性。
- AIを活用した新製品・機能の市場浸透: AIドリブンなセキュリティソリューションが競争優位性をさらに高められるか。
- マクロ経済環境: 企業のIT投資意欲の変動が、大型案件の成約サイクルに影響を与える可能性。
- 競争激化: 特にSASE市場における大手ネットワークベンダーとの競争や、新興企業の台頭。
- 株式報酬費用 (SBC): GAAP利益への影響が依然として大きい。Non-GAAP指標との乖離に注意。
- 営業体制の強化とグローバル展開: 特に大口顧客獲得と国際市場での成長加速。
8. まとめ:Zscalerはクラウド時代のセキュリティを定義し続けるか?
Zscalerは、ゼロトラストという先進的なコンセプトを具現化したクラウドネイティブプラットフォームで、サイバーセキュリティ市場に革命をもたらしました。その結果、驚異的な成長と高い顧客からの評価を獲得しています。
- 強み: 先駆的なZero Trust Exchangeアーキテクチャ、世界最大級のセキュリティクラウド、強力なプラットフォーム効果と高いDBNRR、堅実な財務基盤とキャッシュ創出力。
- 今後の鍵: プラットフォームのさらなる拡張(データ保護、OT/IoTセキュリティ等)、AIイノベーションの加速と収益貢献、大口顧客への深耕とグローバル市場での成長、そして競争が激化する中でのリーダーシップ維持。
デジタルトランスフォーメーションとクラウドシフトが加速する中で、ゼロトラストセキュリティの重要性はますます高まっています。Zscalerがこの巨大な市場機会を捉え、技術革新と事業拡大を通じて、クラウド時代のセキュリティを定義し続けられるか、その動向から目が離せません。
本記事は、公開情報に基づき筆者の分析を加えたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行うようにしてください。本分析は、Zscaler, Inc.の公式IR情報および信頼できると考えられる情報源に基づいていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。常に最新の公式情報をご参照ください。
最終更新日時: 2025年6月4日