VCR・XLY・RXI(消費財セクターETF)を比較する

セクターETF

米国の消費財ETFのデータを比較してみます。

その代表は、バンガード社の【VCR】、ステート・ストリート社の【XLY】ですが、世界各国の消費財企業に投資する【RXI】の内容も紹介してみます。

ブラックロック社の【RXI】は米国比率が約60%と高く、グローバル消費財ETFの中でも米国への投資比重が大きい点が特徴です。

このページでは積立や資産運用の参考となるように、ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や株価チャート、配当利回り、ポートフォリオ等の詳細を整理してみましょう

【徹底比較】一般消費財ETF VCR vs XLY おすすめは?景気敏感セクターを解説

自動車、アパレル、ホテル、レストラン、贅沢品など、私たちの生活を豊かにする「一般消費財・サービスセクター」。景気が良い時には大きな成長が期待できるこのセクターに、手軽に投資できるのがVCRやXLYといったETFです。

しかし、このセクターへの投資は、景気の波に大きく左右されることを意味します。また、代表的なETFであるVCRとXLYは、どちらも特定銘柄への集中度が高いという共通点と、分散性という重要な違いがあるため、その中身を理解することが重要です。

この記事では、まず一般消費財セクターの基本的な特性とリスクを解説し、その上で代表的なETFの戦略の違いを徹底的に比較します。

【はじめに】一般消費財セクターは「景気の体温計」

一般消費財・サービスセクターとは、生活に必須ではない「欲しいもの(Wants)」に関連する企業群です。このセクターは、景気が良く、消費者のマインドが上向いている時に大きく成長し、景気後退の懸念が高まると真っ先に買い控えられて業績が悪化しやすいという、典型的な「景気循環セクター」です。まさに「景気の体温計」とも言えるでしょう。

主要 一般消費財ETF 比較一覧表

まずは、今回ご紹介するETFの「個性」が一目でわかる比較表をご覧ください。「トップ2銘柄への集中度」が、これらのETFを理解する上で非常に重要なポイントです。

ティッカー 投資戦略 経費率(年率) トップ2集中度(目安) キーワード
XLY 【超大型・集中型】 0.09% 約38% AMZN,TSLAに超集中。S&P500の巨人達。
VCR 【トップ集中・幅広分散型】 0.10% 約39% トップ2は集中、以下は中小まで分散。
RXI 【グローバル型】 0.41% 約20% LVMHなど世界のブランドにも投資。

※データは2025年6月時点のものを参考にしています。トップ2集中度はAMZN,TSLAの合計比率の目安。各種データは変動します。


【米国一般消費財ETF対決】XLY vs VCR

米国一般消費財セクターに投資するなら、この2つが中心的な選択肢となります。どちらもアマゾンとテスラへの集中度が高い点は共通していますが、ポートフォリオの「幅」が異なります。

【XLY】一般消費財セレクト・セクターSPDRファンド (超大型・集中型)

  • 投資対象: S&P500指数に含まれる一般消費財企業(約50銘柄)だけに投資します。
  • ポートフォリオの特徴: アマゾン(AMZN)とテスラ(TSLA)の2社だけで、資産の約4割を占めるという極端な集中投資が最大の特徴です。パフォーマンスはこの2社の株価に大きく左右されます。
  • 結論: 巨大2社の成長に強く賭けたい、ハイリスク・ハイリターンを狙う投資家向けの選択肢です。経費率は0.09%と非常に低コストです。
  • 出典: SSGA

【VCR】バンガード・米国消費財・サービスセクターETF (トップ集中・幅広分散型)

  • 投資対象: 大・中・小型株まで含む、米国の一般消費財関連企業約370銘柄に幅広く投資します。
  • ポートフォリオの特徴: 注意すべきは、VCRもまた、アマゾンとテスラの上位2銘柄で資産の約4割近くを占めている点です。このトップ2への集中度はXLYと非常に似通っています。XLYとの最大の違いは、トップ2以外の部分で、XLYが残りの約50銘柄の巨大企業で構成されるのに対し、VCRは残りの約370銘柄に中小型の小売店やレストランチェーンなども含んでいる、という点です。
  • 結論: 「トップ2への集中」というリスクを取りつつも、それ以外の部分では「より幅広い米国消費経済全体」の成長を取り込みたい、という少し複雑なニーズに応えるETFです。経費率は0.10%と、こちらも非常に低コストです。
  • 出典: Vanguard

【グローバルな選択肢】RXI

【RXI】iシェアーズ グローバル消費財サービス ETF

  • 特徴: 米国企業(約6割)に加え、フランスのLVMH(ルイ・ヴィトンなど)、日本のトヨタ自動車、ドイツのメルセデス・ベンツといった、米国外の高級ブランドや自動車メーカーにも分散投資し、世界の消費動向を捉えたい場合の選択肢です。
  • 注意点: 経費率が0.41%と、米国のETFに比べて高めです。
  • 出典: BlackRock

【重要】一般消費財セクター投資の主なリスク

景気の動向に敏感なこのセクターには、特有のリスクが伴います。

  1. 景気後退リスク: これが最大のリスクです。失業率の上昇や消費マインドの低下が、旅行、外食、高価な商品の購入といった「選択的な消費」を直撃し、セクター全体の業績に大きな打撃を与えます。
  2. 集中リスク: 特にXLYとVCRは、特定の巨大企業(アマゾン、テスラ)の業績、株価、あるいは経営者の動向が、ETF全体のパフォーマンスを大きく左右します。
  3. 金利上昇リスク: 金利が上昇すると、自動車ローンや住宅関連の消費(家具など)の需要が減少し、関連企業の業績に影響が出る可能性があります。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。




配当(分配金)と利回り

年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算するので、通常の定期的な配当だけで計算した時よりも利回りが高くなることがあります)

VCRの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 0.86% 2.79 10.3% 323.2 21.5%
2023 0.95% 2.53 18.8% 266.1 0.6%
2022 0.81% 2.13 -20.5% 264.5 -15.4%
2021 0.86% 2.68 -42.9% 312.8 48.7%
2020 2.23% 4.69 114.2% 210.4 19.2%
2019 1.24% 2.19 7.4% 176.5 5.8%
2018 1.22% 2.04 9.7% 166.9 17.7%
2017 1.31% 1.86 -8.8% 141.8 15%
2016 1.65% 2.04 27.5% 123.3 0.3%
2015 1.3% 1.6 11.9% 122.9 13.5%
2014 1.32% 1.43 57.1% 108.3 17.1%
2013 0.98% 0.91 -20.9% 92.5 29.9%
2012 1.62% 1.15 35.3% 71.2 15%
2011 1.37% 0.85 41.7% 61.9 18.1%
2010 1.15% 0.6 39.5% 52.4 39.4%
2009 1.14% 0.43 -44.9% 37.6 -15.9%
2008 1.74% 0.78 44.7

XLYの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 0.86% 1.62 17.4% 189.3 19.9%
2023 0.87% 1.38 8.7% 157.9 -0.8%
2022 0.8% 1.27 18.7% 159.1 -11.9%
2021 0.59% 1.07 -17.7% 180.5 35.6%
2020 0.98% 1.3 -17.7% 133.1 13.8%
2019 1.35% 1.58 20.6% 117 8.9%
2018 1.22% 1.31 12% 107.4 19.6%
2017 1.3% 1.17 -14.6% 89.8 14.1%
2016 1.74% 1.37 25.7% 78.7 2.7%
2015 1.42% 1.09 18.5% 76.6 15%
2014 1.38% 0.92 21.1% 66.6 16%
2013 1.32% 0.76 2.7% 57.4 28.7%
2012 1.66% 0.74 27.6% 44.6 15.8%
2011 1.51% 0.58 23.4% 38.5 17.4%
2010 1.43% 0.47 6.8% 32.8 36.1%
2009 1.83% 0.44 10% 24.1 -14.8%
2008 1.41% 0.4 28.3

RXIの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.19% 1.98 25.3% 166.5 12.9%
2023 1.07% 1.58 26.4% 147.5 4.9%
2022 0.89% 1.25 -20.9% 140.6 -16.9%
2021 0.93% 1.58 58.% 169.2 34.7%
2020 0.8% 1 -45.9% 125.6 7.4%
2019 1.58% 1.85 6.3% 116.9 2.8%
2018 1.53% 1.74 27.9% 113.7 14.%
2017 1.36% 1.36 -13.9% 99.7 14.1%
2016 1.81% 1.58 54.9% 87.4 -3.2%
2015 1.13% 1.02 -29.7% 90.3 9.3%
2014 1.76% 1.45 43.6% 82.6 13%
2013 1.38% 1.01 18.8% 73.1 28.7%
2012 1.5% 0.85 -2.3% 56.8 7.2%
2011 1.64% 0.87 55.4% 53 13.2%
2010 1.2% 0.56 0% 46.8 27.9%
2009 1.53% 0.56 -47.7% 36.6 -17.4%
2008 2.42% 1.07 44.3


ポートフォリオの比較

次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率、組入れ上位10銘柄はチャールズシュワブのサイト内のページを参照。

Posted by 南 一矢