VOX・XLC・IYZ・IXP(通信セクターETF)を比較する

セクターETF

電気通信サービスセクターETFの情報を見てみます。

このページでは積立や資産運用の参考となるように、米国に投資する【VOX】と【XLC】【IYZ】、全世界に投資する【IXP】の内容を比較してみます。

ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や株価チャート、配当利回り、ポートフォリオ等の詳細を整理してみましょう

(【IXP】を入れたのは、ブラックロック社の世界投資型ETFは、どのセクターでも米国比率が高いため)

【徹底比較】通信サービスETF VOX vs XLC vs IYZ vs IXP!デジタル変革時代の投資戦略

現代社会のインフラを支える「通信・コミュニケーションサービス」セクター。5G、動画配信、SNS、クラウドサービスなど、私たちの生活に欠かせない分野への投資機会を提供するのが、通信サービスETFです。

しかし、一見似たように見えるこれらのETFですが、その投資戦略は大きく異なります。従来の通信キャリアに特化したETFもあれば、Meta(旧Facebook)やAlphabetといった巨大IT企業に40%以上も集中投資するETFもあります。さらに、世界9ヶ国に分散投資するグローバル戦略のETFも存在します。

この記事では、主要4つの通信サービスETFの戦略的な違いを徹底解説し、あなたの投資目標に最適な選択肢を見つけるための情報をお届けします。

主要通信サービスETF 比較一覧表

まずは、今回ご紹介するETFの「個性」が一目でわかる比較表をご覧ください。「経費率」と、「投資戦略」の違いが特に重要な比較ポイントです。

ティッカー 投資戦略 経費率(年率) 銘柄数(目安) 地域分散
VOX 米国・幅広分散型 0.10% 約110 米国のみ
XLC 米国・超大型集中型 0.08% 約23 米国のみ
IYZ 米国・伝統的通信特化型 0.42% 約45 米国のみ
IXP グローバル分散型 0.43% 約66 世界9ヶ国

※データは2025年6月時点のものを参考にしています。各種データは変動します。経費率は最新の情報に基づきます。


米国通信サービスETFの選択:分散か、集中か、それとも伝統回帰か

【VOX】バンガード米国通信サービス・セクターETF (分散・変化型)

  • 特徴: 約110銘柄に幅広く投資し、大型株から中型株、小型株まで網羅的にカバーしています。最大の注目点は、Meta(16%)とAlphabet(25%)の2社だけで40%以上を占める構造です。2018年のセクター再編により、従来の高配当通信キャリア中心から、急成長するデジタルプラットフォーム企業主体へと大きく変貌しました。
  • 出典: Vanguard

【XLC】コミュニケーション・サービス・セレクト・セクターSPDRファンド (超大型・集中型)

  • 特徴: S&P500の中からコミュニケーション・サービス関連のわずか23社だけに厳選投資します。Meta(16.8%)、Alphabet Class A(8.8%)、Netflix(7.6%)の上位3社だけで約33%を占める極端な集中投資が特徴です。2025年1月に経費率が0.08%に引き下げられ、コスト面でのメリットがさらに向上しました。
  • 出典: SSGA

【IYZ】iシェアーズ 米国電気通信サービスETF (伝統的通信・特化型)

  • 特徴: Russell 1000 Telecommunications RIC 22.5/45 Capped指数に連動し、約45の企業に投資します。VoxやXLCとは対照的に、伝統的な電気通信サービス業により特化しており、AT&T、Verizon、T-Mobileなどの通信キャリアにより多く投資する傾向があります。ただし、経費率が0.42%と他の選択肢より4倍以上高い点がデメリットです。
  • 出典: iShares

グローバル投資という戦略:なぜ世界に目を向けるのか?

「米国企業だけに投資するのは、地政学リスクの観点から集中しすぎている」と考える投資家にとって、グローバルな分散投資は重要な戦略です。世界各国の優良通信企業にアクセスし、特定国の政策リスクや経済変動を分散する効果が期待できます。

【IXP】iシェアーズ グローバル・コミュニケーションサービス ETF

IXPは、そのグローバル戦略を実現するための具体的な選択肢です。米国のトップ企業に加えて、世界9ヶ国の代表的な通信・コミュニケーション企業にも投資します。

  • 世界的なリーダー企業へのアクセス: 米国企業が約3分の2を占めながらも、各国の代表的な通信企業約66社に分散投資できます。地域特化型の通信企業や、米国市場では買えない優良企業への投資機会を提供します。
  • 配当収益の魅力: グローバル分散の効果により、配当利回りは約3.5%と、米国特化型ETFよりも高い水準を実現しています。
  • コストとのトレードオフ: IXPの経費率は0.43%であり、VOX/XLCの約4-5倍です。このコストを支払ってでもグローバル分散のメリットを享受したいか、という視点での検討が必要になります。

出典: iShares


投資前に理解すべき通信サービスセクターのリスク

高い成長ポテンシャルが期待できる一方、通信サービスセクターへの集中投資には特有のリスクが伴います。

  1. セクター再編の影響: 2018年に実施されたセクター分類の見直しにより、Meta、Alphabet、Netflixなどが通信サービスセクターに移管されました。この結果、従来の「安定した高配当セクター」から「成長重視セクター」へと性格が大きく変化しています。
  2. 巨大IT企業への集中リスク: VOXやXLCでは、Meta・Alphabetの2社だけで40%以上を占めており、これらの企業の業績や株価変動が、ETF全体のパフォーマンスに大きく影響します。
  3. 規制リスク: 世界各国で、巨大IT企業に対する独占禁止法や個人情報保護などの規制強化の動きが強まっており、これが株価の重しになる可能性があります。特に、Meta、Alphabetなどは規制当局の注目度が高い企業です。
  4. 金利敏感性: 成長株の比重が高いため、金利上昇局面では売られやすい傾向があります。一方、伝統的な通信キャリア株は金利上昇に対して比較的安定的です。

通信サービスETFの進化:従来型から次世代型へ

通信サービスセクターは、技術革新とともに急速に変化しています。従来の「電話・インターネット回線事業」中心から、「デジタルプラットフォーム・コンテンツ配信・クラウドサービス」中心へとシフトしており、投資家はこの変化を理解した上で投資戦略を立てる必要があります。

【まとめ】あなたの投資スタイルに合うのは?

  • 低コストでデジタル変革の恩恵を幅広く狙うなら → VOX
  • 超低コストで巨大IT企業の成長に集中投資するなら → XLC
  • 伝統的な通信キャリアの安定性を重視するなら → IYZ
  • 高い配当利回りとグローバル分散を両立させたいなら → IXP

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。ETFの投資には元本毀損のリスクがあります。投資前には必ず最新の目論見書をご確認ください。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。



配当(分配金)と利回り

年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算するので、通常の定期的な配当だけで計算した時よりも利回りが高くなることがあります)

VOXの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.19% 1.63 37% 137.4 33.7%
2023 1.16% 1.19 70% 102.8 1.4%
2022 0.69% 0.7 -44% 101.4 -26.3%
2021 0.91% 1.25 45.3% 137.5 40.2%
2020 0.88% 0.86 3.6% 98.1 13.1%
2019 0.96% 0.83 -58.9% 86.7 2.1%
2018 2.38% 2.02 -42% 84.9 -9.6%
2017 3.71% 3.48 30.3% 93.9 1.4%
2016 2.88% 2.67 -10.1% 92.6 7.8%
2015 3.46% 2.97 32% 85.9 0.2%
2014 2.63% 2.25 -30.6% 85.7 8.5%
2013 4.1% 3.24 31.7% 79 16.3%
2012 3.62% 2.46 23% 67.9 3.3%
2011 3.04% 2 5.3% 65.7 13.1%
2010 3.27% 1.9 25.8% 58.1 18.8%
2009 3.09% 1.51 10.2% 48.9 -16.3%
2008 2.35% 1.37 58.4

XLCの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.12% 0.96 65.5% 85.6 36.5%
2023 0.93% 0.58 16% 62.7 7%
2022 0.85% 0.5 -10.7% 58.6 -24.7%
2021 0.72% 0.56 27.3% 77.8 37.7%
2020 0.78% 0.44 7.3% 56.5 15.3%
2019 0.84% 0.41 -62.7% 49 3.6%
2018 2.33% 1.1 47.3

IYZの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 2.22% 0.52 4% 23.4 5.4%
2023 2.25% 0.5 -9.1% 22.2 -15.3%
2022 2.1% 0.55 -32.1% 26.2 -19.9%
2021 2.48% 0.81 5.2% 32.7 16%
2020 2.73% 0.77 13.2% 28.2 -3.8%
2019 2.32% 0.68 23.6% 29.3 3.9%
2018 1.95% 0.55 -46.1% 28.2 -11.9%
2017 3.19% 1.02 34.2% 32 2.6%
2016 2.44% 0.76 2433.3% 31.2 5.4%
2015 0.1% 0.03 -95.3% 29.6 -0.3%
2014 2.15% 0.64 -15.8% 29.7 11.2%
2013 2.85% 0.76 24.6% 26.7 16.1%
2012 2.65% 0.61 -1.6% 23 1.3%
2011 2.73% 0.62 -10.1% 22.7 10.7%
2010 3.37% 0.69 1.5% 20.5 17.1%
2009 3.89% 0.68 -6.8% 17.5 -21.5%
2008 3.27% 0.73 22.3

IXPの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.48% 1.3 42.9% 87.9 31.2%
2023 1.36% 0.91 18.2% 67 4.5%
2022 1.2% 0.77 -47.6% 64.1 -23.5%
2021 1.75% 1.47 113.% 83.8 31.3%
2020 1.08% 0.69 -47.7% 63.8 11.1%
2019 2.3% 1.32 -38.9% 57.4 1.8%
2018 3.83% 2.16 5.4% 56.4 -5.5%
2017 3.43% 2.05 -12.8% 59.7 -1.5%
2016 3.88% 2.35 4.9% 60.6 -1.3%
2015 3.65% 2.24 -69.9% 61.4 -5.5%
2014 11.45% 7.44 220.7% 65 4.2%
2013 3.72% 2.32 -14.4% 62.4 8.7%
2012 4.72% 2.71 -10.3% 57.4 -2%
2011 5.15% 3.02 22.8% 58.6 8.7%
2010 4.56% 2.46 11.8% 53.9 9.6%
2009 4.47% 2.2 -7.6% 49.2 -20%
2008 3.87% 2.38 61.5


ポートフォリオの比較

次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率、組入れ上位10銘柄はチャールズシュワブのサイト内のページを参照。

Posted by 南 一矢