アメリカ金融ETF(VFH·XLF·IYF·IXG)の株価・配当・構成銘柄

セクターETF

米国の金融セクターETFのデータを比較してみます。

その代表は、バンガード社の【VFH(バンガード・米国金融セクターETF)】、ステート・ストリート社の【XLF(金融セレクト・セクター SPDR ファンド)】、ブラックロック社の【IYF(iシェアーズ 米国金融 ETF)】ですが、世界各国の金融企業に投資する【IXG(iシェアーズ グローバル金融 ETF)】も紹介してみます。

このページでは積立や資産運用の参考となるように、ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や株価チャート、配当利回り、ポートフォリオ等の詳細を整理してみましょう。

【徹底比較】金融ETF XLF vs VFH おすすめは?景気・金利で動くセクターを解説

銀行、保険、証券といった、経済の血液とも言える「金融セクター」。景気拡大や金利上昇の局面で注目されるこのセクターに手軽に投資できるのが、XLFやVFHといった金融ETFです。

しかし、金融セクターへの投資は、マクロ経済の動向を理解することが不可欠な、やや上級者向けの投資とも言えます。

この記事では、まず金融セクターの基本的な特性とリスクを解説し、その上で代表的なETFを投資戦略ごとに分類し、あなたに合った一本を見つけるお手伝いをします。

【はじめに】金融セクターは「景気と金利」で動く

金融セクターは、景気の動向と、中央銀行の金融政策(特に金利)に極めて敏感に反応するという特徴があります。好景気や金利上昇は銀行の収益を押し上げる一方、景気後退や予期せぬ金利の低下は業績に大きな打撃を与えます。このダイナミズムを理解することが、このセクターへの投資の第一歩です。

主要 金融ETF 比較一覧表

まずは、今回ご紹介するETFの「個性」が一目でわかる比較表をご覧ください。「投資戦略」「経費率」が特に重要な比較ポイントです。

ティッカー 投資戦略 経費率(年率) 銘柄数(目安)
XLF 米国・超大型集中型 0.09% 約70
VFH 米国・幅広分散型 0.10% 約400
IYF 米国・幅広分散型 (高コスト) 0.40% 約180
IXG グローバル分散型 (高コスト) 0.41% 約190

※データは2025年6月時点のものを参考にしています。各種データは変動します。


投資戦略①:米国金融市場に賭ける

【集中投資】巨大企業に強気なら:XLF

S&P500指数に含まれる金融機関(約70銘柄)だけに投資します。ポートフォリオは、バークシャー・ハサウェイ、JPモルガン・チェース、ビザ、マスターカードといった、各分野のトップ企業に資産が集中するのが特徴です。米国の「金融ジャイアンツ」の動向に強く賭けたい投資家向けの選択肢と言えるでしょう。経費率は0.09%と非常に低コストです。

出典: SSGA

【分散投資】セクター全体に網を張るなら:VFH

大・中・小型株まで含む、米国の金融関連企業約400銘柄に幅広く投資します。XLFよりもはるかに多くの企業に分散されており、中小型の地方銀行なども多く含みます。セクター全体の値動きを捉えやすい反面、2023年の地銀破綻のように、小規模な銀行の経営危機といったリスクも内包することになります。経費率は0.10%と、こちらも非常に低コストです。

出典: Vanguard

(補足:iシェアーズ社のIYFもVFHと似た分散型のETFですが、経費率が0.40%と割高なため、特別な理由がなければVFHやXLFが合理的な選択肢となります。出典はこちら


投資戦略②:グローバル金融市場に視野を広げる

「米国の金利政策や規制動向だけに、資産を集中させるのは避けたい」と考える投資家にとって、グローバルな視点を持つことは有効なリスク分散戦略です。

【国際分散】世界の金融リーダーに投資するなら:IXG

iシェアーズ グローバル金融ETF (IXG)は、そのグローバル戦略を実現するための具体的な選択肢です。米国のトップ企業に加えて、各国の代表的な金融機関にも投資することで、地政学的なリスクや特定国の経済・政策リスクを分散する効果が期待できます。

IXGに投資する主なメリット

  • カントリーリスクの分散: 米国企業の比率は約5割で、残りを欧州、カナダ、オーストラリアなどの企業に分散します。
  • 世界的なリーダー企業へのアクセス: 米国市場にはない、カナダのロイヤルバンク、ドイツのアリアンツ(保険)、オーストラリアのコモンウェルス銀行といった、世界のトップ金融機関に投資できます。

注意点:コストとのトレードオフ

IXGの経費率は0.41%であり、VFH/XLFの約4倍です。このコストを支払ってでもグローバル分散のメリットを享受したいか、という視点での検討が必要になります。

出典: BlackRock


金融セクター投資に共通するリスク

景気や金利の動向に敏感なこのセクターには、特有のリスクが伴います。

  1. 金利変動リスク: 中央銀行の利上げ・利下げといった金融政策の変更は、銀行の収益モデルや保有債券の価値に大きな影響を与えます。
  2. 信用リスク(景気後退リスク): 景気が悪化すると、企業の倒産や個人のローン延滞が増え(貸し倒れ)、銀行の業績が直接的な打撃を受けます。これが最大のリスクです。
  3. 規制リスク: 金融業界は政府による厳しい監督下にあります。金融危機などを背景に、自己資本比率の引き上げといった規制が強化されると、収益が圧迫される可能性があります。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。




配当(分配金)と利回り

年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算するので、通常の定期的な配当だけで計算した時よりも利回りが高くなることがあります)

VFHの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.97% 2.07 8.9% 105.1 27.1%
2023 2.3% 1.9 0.5% 82.7 -3.8%
2022 2.2% 1.89 6.2% 86 -4.6%
2021 1.98% 1.78 12.7% 90.1 44.6%
2020 2.54% 1.58 -3.1% 62.3 -9.3%
2019 2.37% 1.63 20.7% 68.7 -1%
2018 1.95% 1.35 27.4% 69.4 10%
2017 1.68% 1.06 10.4% 63.1 28.8%
2016 1.96% 0.96 2.1% 49 -0.6%
2015 1.91% 0.94 3.3% 49.3 6.9%
2014 1.97% 0.91 15.2% 46.1 14.7%
2013 1.97% 0.79 11.3% 40.2 26.8%
2012 2.24% 0.71 31.5% 31.7 3.9%
2011 1.77% 0.54 28.6% 30.5 -0.3%
2010 1.37% 0.42 -14.3% 30.6 23.4%
2009 1.98% 0.49 -62.6% 24.8 -38.5%
2008 3.25% 1.31 40.3


XLFの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.6% 0.69 9.5% 43.2 26.7%
2023 1.85% 0.63 -7.4% 34.1 -2.8%
2022 1.94% 0.68 9.7% 35.1 -3.6%
2021 1.7% 0.62 6.9% 36.4 43.9%
2020 2.29% 0.58 5.5% 25.3 -8%
2019 2% 0.55 17% 27.5 -0.4%
2018 1.7% 0.47 20.5% 27.6 10.8%
2017 1.57% 0.39 5.4% 24.9 29.%
2016 1.92% 0.37 2.8% 19.3 -2%
2015 1.83% 0.36 20% 19.7 7.1%
2014 1.63% 0.3 20% 18.4 16.5%
2013 1.58% 0.25 13.6% 15.8 29.5%
2012 1.8% 0.22 29.4% 12.2 2.5%
2011 1.43% 0.17 70% 11.9 -1.7%
2010 0.83% 0.1 -44.4% 12.1 22.2%
2009 1.82% 0.18 -70.5% 9.9 -43.1%
2008 3.51% 0.61 17.4


IYFの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.45% 1.43 2.1% 98.7 29.9%
2023 1.84% 1.4 1.4% 76 -2.2%
2022 1.78% 1.38 27.8% 77.7 -3.5%
2021 1.34% 1.08 -23.9% 80.5 36.7%
2020 2.41% 1.42 27.9% 58.9 -5.8%
2019 1.78% 1.11 13.3% 62.5 4.7%
2018 1.64% 0.98 15.3% 59.7 9.9%
2017 1.57% 0.85 1.2% 54.3 23.1%
2016 1.9% 0.84 18.3% 44.1 -1.3%
2015 1.59% 0.71 18.3% 44.7 7.7%
2014 1.45% 0.6 17.6% 41.5 15.3%
2013 1.42% 0.51 6.2% 36 27.7%
2012 1.7% 0.48 20% 28.2 5.2%
2011 1.49% 0.4 37.9% 26.8 0%
2010 1.08% 0.29 -31% 26.8 22.4%
2009 1.92% 0.42 -59.6% 21.9 -38.8%
2008 2.91% 1.04 35.8


IXGの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.45% 1.43 2.1% 98.7 29.9%
2023 1.84% 1.4 1.4% 76 -2.2%
2022 3.59% 2.59 93.3% 72.1 -6.2%
2021 1.74% 1.34 -2.9% 76.9 36.3%
2020 2.45% 1.38 -29.6% 56.4 -11.5%
2019 3.08% 1.96 10.7% 63.7 -4.9%
2018 2.64% 1.77 20.4% 67 5.2%
2017 2.31% 1.47 16.7% 63.7 25.6%
2016 2.49% 1.26 -13.7% 50.7 -9.6%
2015 2.6% 1.46 9.8% 56.1 -0.9%
2014 2.35% 1.33 11.8% 56.6 10.5%
2013 2.32% 1.19 6.3% 51.2 25.8%
2012 2.75% 1.12 -6.7% 40.7 -4.9%
2011 2.8% 1.2 25% 42.8 -3.4%
2010 2.17% 0.96 17.1% 44.3 16.3%
2009 2.15% 0.82 -59% 38.1 -36.3%
2008 3.34% 2 59.8


ポートフォリオの比較

次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率、組入れ上位10銘柄はチャールズシュワブのサイト内のページを参照。

Posted by 南 一矢