金銀・プラチナ・パラジウムETFを比較する(GLD・SLV・PPLT・PALL)
コモディティ
金、銀、プラチナ、パラジウムなどの貴金属に投資する、米国上場商品(ETP)のデータを比較してみます。
このページでは資産運用の参考となるように、各商品の仕組み、連動対象、投資する金属の違い、経費率などを整理します。
【貴金属ETF】金・銀・プラチナ・パラジウムへの投資法を徹底比較!
金(ゴールド)をはじめとする貴金属は、インフレや金融不安に備える資産として注目される一方、銀・プラチナ・パラジウムは工業製品に欠かせない素材としての性格も持っています。この記事では、主要な貴金属へ手軽に投資できる米国上場商品を、それぞれの特徴とともに解説します。
2026年7月時点の貴金属市場:年初の急騰後、調整色が強まる
・金は2026年1月に1トロイオンス5,500ドルを超える場面がありましたが、2026年6月下旬には4,000ドルを割り込みました。World Gold Councilは2026年7月1日公表の見通しで、2026年上期の金価格が約7%下落したと整理しています。
・2026年7月16日のReuters報道では、スポット価格は金4,032.19ドル、銀56.82ドル、プラチナ1,654.38ドル、パラジウム1,294.43ドルでした。いずれも2026年1月の高値からは調整した水準です。
・2026年7月時点では、中東情勢の緊迫化が安全資産需要を生む一方、原油高を通じてインフレ懸念と金利上昇観測を強めるという、相反する材料が価格を動かしています。[1]
貴金属の種類と特徴
- 金(Gold):「安全資産」の代表格で、地政学リスク、金融不安、通貨価値への懸念が強まる局面で選好されやすい金属です。
- 銀(Silver):金融資産としての側面に加えて、太陽光パネル、電子部品、電気設備などの工業用需要が大きい金属です。
- プラチナ(Platinum):自動車触媒、化学触媒、宝飾品などに使われます。産地が限られ、鉱山・精錬の供給制約が価格変動要因になりやすい金属です。
- パラジウム(Palladium):ガソリン車向け排ガス浄化触媒の需要比率が高く、自動車販売、排ガス規制、プラチナへの代替、電気自動車の普及などで需給が変化しやすい金属です。
「ETF」という呼び方について
本記事では分かりやすさを優先して「貴金属ETF」と表記しますが、厳密には商品ごとに法的な仕組みが異なります。GLD、IAU、IAUM、SLV、PPLT、PALL、GLTRは主に現物地金を保有する信託で、通常の株式ETFや投資信託と同じ1940年投資会社法上の投資会社ではありません。DBPは商品先物を扱うコモディティ・プールです。[2]
重要:ここで紹介する現物保有型の貴金属信託には、原則として定期的な分配金(配当)はありません。主な投資リターンは価格変動による売却益です。また、信託の費用を支払うために保有地金の一部が売却されるため、長期的には1口あたりの地金保有量が少しずつ減少します。IAU、IAUM、SLVの公式ページでは、分配頻度が「None」と表示されています。[2]
① 単一の貴金属に投資するETF
【GLD】SPDR® ゴールド・シェア
金地金を保有し、信託費用を差し引いた金価格の推移を反映する代表的な金商品です。基準価格の算定にはLBMA Gold Price PM(ロンドン午後金価格)が用いられます。
経費率は0.40%です。2026年7月15日時点の純資産総額は約1,308億ドル、30日間のビッド・アスク・スプレッド中央値は0.01%でした。規模と取引のしやすさを重視する場合に有力な選択肢です。[3]
| 経費率 | 0.40%(2026年7月16日時点) |
|---|---|
| 投資対象 | 金の現物地金 |
| 参照価格 | LBMA Gold Price PM |
| 純資産総額 | 約1,308億ドル(2026年7月15日時点) |
金ETFはGLD以外にも選択肢がある
iShares Gold Trust(IAU)のスポンサー手数料は0.25%、iShares Gold Trust Micro(IAUM)は0.09%です。2026年7月15日時点の純資産総額は、IAUが約603億ドル、IAUMが約63.6億ドルでした。
同日時点の30日間のビッド・アスク・スプレッド中央値は、IAUが0.01%、IAUMが0.02%です。長期保有では経費率の低さが重要ですが、実際の売買では取引量、スプレッド、利用する証券会社での取扱状況も確認する必要があります。[4]
【SLV】iシェアーズ シルバー・トラスト
銀地金の現物を保有し、銀価格へのエクスポージャーを提供する商品です。参照価格はLBMA Silver Priceです。
銀は金融資産と工業用素材の両方の性格を持ちます。景気拡大や工業需要の増加が追い風になる場合がある一方、景気後退への懸念が強まると工業需要の減少が意識されるため、金より値動きが大きくなりやすい点に注意が必要です。
スポンサー手数料は0.50%です。2026年7月15日時点の純資産総額は約279億ドル、30日間のビッド・アスク・スプレッド中央値は0.02%でした。[5]
| スポンサー手数料 | 0.50%(2026年7月15日時点) |
|---|---|
| 投資対象 | 銀の現物地金 |
| 参照価格 | LBMA Silver Price |
| 分配頻度 | なし(2026年7月15日時点) |
【PPLT】abrdn フィジカル・プラチナ・シェアーズ ETF
プラチナ地金を保有し、信託費用控除後のプラチナ価格への連動を目指す商品です。参照価格はLBMA Platinum Price PMです。
2026年3月31日時点の総経費率は0.60%。現物プラチナはロンドンの保管庫で保管され、ICBC Standard Bankがカストディアン、The Bank of New York Mellonが受託者です。2026年7月15日時点の純資産総額は約18.8億ドルでした。[6]
PPLTでは10対1の株式分割が実施され、2026年5月18日から分割後の価格で取引されています。分割前に1口を保有していた投資家は、分割後に10口を保有する形となりました。保有口数と1口あたり価格が変わるだけで、分割そのものによって投資家の経済的価値やファンドの投資対象が変わるわけではありません。[7]
| 総経費率 | 0.60%(2026年3月31日時点) |
|---|---|
| 投資対象 | プラチナの現物地金 |
| 参照価格 | LBMA Platinum Price PM |
| 複製方法 | 現物保有型 |
| 株式分割 | 10対1(2026年5月18日から分割後価格で取引) |
【PALL】abrdn フィジカル・パラジウム・シェアーズ ETF
パラジウム地金を保有し、信託費用控除後のパラジウム価格への連動を目指す商品です。参照価格はLBMA Palladium Price PMです。
2026年3月31日時点の総経費率は0.60%です。現物パラジウムはロンドンで保管され、ICBC Standard Bankがカストディアンを務めます。2026年7月15日時点の純資産総額は約6.32億ドルでした。PPLTや主要な金・銀商品より規模が小さいため、売買時には出来高とスプレッドを確認した方がよいでしょう。[8]
PALLでは5対1の株式分割が実施され、2026年5月18日から分割後の価格で取引されています。分割前の1口は、分割後の5口に相当します。[7]
| 総経費率 | 0.60%(2026年3月31日時点) |
|---|---|
| 投資対象 | パラジウムの現物地金 |
| 参照価格 | LBMA Palladium Price PM |
| 複製方法 | 現物保有型 |
| 株式分割 | 5対1(2026年5月18日から分割後価格で取引) |
② 複数の貴金属にまとめて投資するETF
どの金属を選ぶか迷う場合や、貴金属全体に分散投資したい場合にはバスケット型の商品が便利です。ただし、投資対象が現物か先物かによって、価格の動き方や長期保有時のコストが異なります。
【GLTR】abrdn フィジカル・プレシャス・メタルズ・バスケット・シェアーズ ETF(現物保有型)
金、銀、プラチナ、パラジウムの現物地金をまとめて保有する商品です。信託が実際に保有している金属の価値に応じて構成比率が変わるため、4金属を均等に保有する商品ではありません。
2026年3月31日時点の金属構成比率は、金58.9%、銀34.1%、プラチナ3.7%、パラジウム3.3%でした。金と銀だけで約93%を占めており、実際には「金と銀を中心に、プラチナとパラジウムを少量加えた商品」と見る方が実態に近いでしょう。
2026年3月31日時点の総経費率は0.60%、純資産総額は約29.1億ドルでした。保有地金はロンドンの保管庫で管理されます。[9]
| 総経費率 | 0.60%(2026年3月31日時点) |
|---|---|
| 投資対象 | 金・銀・プラチナ・パラジウムの現物地金 |
| 構成比率 | 金58.9%/銀34.1%/プラチナ3.7%/パラジウム3.3%(2026年3月31日時点) |
| 純資産総額 | 約29.1億ドル(2026年3月31日時点) |
【DBP】インベスコ DB プレシャス・メタルズ・ファンド(先物型)
金と銀の先物契約に投資する商品です。DBIQ Optimum Yield Precious Metals Index Excess Returnを参照し、指数ルールに基づいて先物の限月を選択します。
現物保有型と異なり、先物には満期があるため、保有契約を定期的に次の契約へ乗り換える「ロール」が発生します。先物曲線がコンタンゴ(期先価格が高い状態)の場合はロールコストが発生しやすく、バックワーデーション(期近価格が高い状態)の場合はロールがプラスに働く可能性があります。
2026年7月時点の公式商品ページでは、総経費率が0.76%、純経費率が0.70%と表示されています。費用、先物価格、ロール損益、担保資産の収益などが組み合わさるため、長期的なリターンは金・銀の現物価格と一致しません。[10]
DBPの注意点:「先物型」のリスク
先物型では、金属価格がほぼ横ばいでも、ロールコストによって基準価額が下落する可能性があります。一方、バックワーデーションの局面ではロールがプラスに寄与することもあります。短期から中期の戦略では有効な場合がありますが、現物価格へ長期的に連動することを目的とする場合は、現物保有型との違いを理解しておく必要があります。[10]
| 経費率 | 総経費率0.76%/純経費率0.70%(2026年7月時点の公式表示) |
|---|---|
| 投資対象 | 金・銀の先物契約 |
| 参照指数 | DBIQ Optimum Yield Precious Metals Index Excess Return |
| 主な留意点 | ロール損益、担保収益、先物価格の影響により現物価格と乖離する場合がある |
まとめ:投資のポイント
- 取引のしやすさや市場規模を重視する → 金に特化したGLD。2026年7月15日時点で純資産総額は約1,308億ドル、30日間のスプレッド中央値は0.01%です。[3]
- 金へ低コストで長期投資する → スポンサー手数料0.25%のIAUや、0.09%のIAUM。ただし、経費率だけでなく出来高やスプレッドも比較します。[4]
- 金融資産と工業用素材の両面を取り込みたい → 銀に投資するSLV。金より値動きが大きくなりやすいため、投資比率の管理が重要です。
- 金属固有の需給を重視する → プラチナのPPLT、パラジウムのPALL。供給地域や自動車需要の変化で価格が急変する可能性があります。
- 貴金属をまとめて現物で保有する → GLTR。ただし、2026年3月31日時点では金と銀が構成比率の約93%を占めています。[9]
- 先物の限月選択やロールを含む運用を利用する → DBP。現物保有型より仕組みが複雑で、現物価格との乖離が起こり得ます。
2026年7月時点の投資環境
追い風になり得る要因:
- 地政学リスクや金融市場の不安定化による安全資産需要
- 中央銀行による金購入の継続
- 景気減速やインフレ鈍化によって、市場の金利見通しが低下する局面
- 銀の太陽光発電、電子部品、電力関連需要
- プラチナやパラジウムの鉱山・精錬供給が制約される局面
注意すべき要因:
- 2026年1月の急騰後であり、高値からの調整が続く可能性
- 原油高や供給ショックがインフレを押し上げ、金利上昇観測につながる可能性
- ドル高と実質金利上昇は、利息を生まない金・銀の逆風になりやすい
- 銀、プラチナ、パラジウムは工業需要の影響が大きく、景気後退局面で下落しやすい
- 分配金が原則としてないため、投資収益は価格上昇に依存する
- 先物型は金属価格だけでなく、ロール損益や担保収益にも左右される
World Gold Councilは2026年7月1日時点の基本シナリオとして、金価格が当面おおむね一定の範囲で推移する可能性を示す一方、景気悪化、地政学的ショック、金利見通しの低下が再上昇の材料になるとしています。ただし、金であっても地政学リスクが常に価格上昇へ直結するわけではありません。2026年7月には、中東情勢による原油高と金利上昇懸念が金価格を押し下げる場面も見られました。[1]
経費率比較
| 商品 | 経費率・手数料 | 投資対象 |
|---|---|---|
| GLD | 0.40%(2026年7月16日時点) | 金(現物) |
| IAU | 0.25%(2026年7月15日時点) | 金(現物) |
| IAUM | 0.09%(2026年7月15日時点) | 金(現物) |
| SLV | 0.50%(2026年7月15日時点) | 銀(現物) |
| PPLT | 0.60%(2026年3月31日時点) | プラチナ(現物) |
| PALL | 0.60%(2026年3月31日時点) | パラジウム(現物) |
| GLTR | 0.60%(2026年3月31日時点) | 4貴金属バスケット(現物) |
| DBP | 総経費率0.76%/純経費率0.70%(2026年7月時点) | 金・銀(先物) |
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。記載した貴金属価格は2026年7月16日までに確認できる公表情報、各商品の経費率、純資産総額、構成比率などは本文および注に記載した時点の情報に基づきます。市場価格、経費率、商品構造、税務上の取扱いは変更される可能性があるため、投資前に必ず公式ページ、目論見書、ファクトシートなどの一次情報を確認してください。
【注】(出典リンク)
- 2026年上期の金市場と2026年7月16日の貴金属価格 → World Gold Council「Gold Mid-Year Outlook 2026」 → Reuters(2026年7月16日、貴金属市況)(確認日:2026-07-16) ↩
- 商品構造と分配頻度 → iShares IAU公式ページ → iShares IAUM公式ページ → iShares SLV公式ページ → Aberdeen PPLT Fact Sheet → Invesco Commodity ETPs公式ページ(確認日:2026-07-16) ↩
- GLD:経費率・純資産・スプレッド・参照価格 → State Street SPDR Gold Shares公式ページ → SPDR Gold Shares商品サイト(確認日:2026-07-16) ↩
- IAU・IAUM:スポンサー手数料・純資産・スプレッド → iShares IAU公式ページ → iShares IAUM公式ページ(確認日:2026-07-16) ↩
- SLV:スポンサー手数料・純資産・分配頻度・参照価格 → iShares SLV公式ページ → iShares SLV Fact Sheet(確認日:2026-07-16) ↩
- PPLT:経費率・投資対象・保管体制・純資産 → Aberdeen PPLT Fact Sheet(2026年3月31日) → Aberdeen PPLT公式ページ(確認日:2026-07-16) ↩
- PPLT・PALLの株式分割 → Aberdeen Investments株式分割発表(2026年4月22日) → PPLT公式ページ → PALL公式ページ(確認日:2026-07-16) ↩
- PALL:経費率・投資対象・保管体制・純資産 → Aberdeen PALL Fact Sheet(2026年3月31日) → Aberdeen PALL公式ページ(確認日:2026-07-16) ↩
- GLTR:経費率・構成比率・純資産・投資対象 → Aberdeen GLTR Fact Sheet(2026年3月31日)(確認日:2026-07-16) ↩
- DBP:先物投資・参照指数・経費率・商品構造 → Invesco DBP公式ページ → Invesco DBP Fact Sheet(確認日:2026-07-16) ↩
株価:過去~現在
※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。
Posted by 南 一矢

