金銀・プラチナ・パラジウムETFを比較する(GLD・SLV・PPLT・PALL)

コモディティ






貴金属ETF徹底比較

金、銀、プラチナ、パラジウム等の貴金属に投資する米国ETFのデータを比較してみます。

このページでは資産運用の参考となるように、ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や株価チャート等の情報を整理してみましょう

【貴金属ETF】金・銀・プラチナ・パラジウムへの投資法を徹底比較!

金(ゴールド)をはじめとする貴金属は、インフレヘッジや安全資産として、また工業製品に不可欠な素材として、多様な顔を持つ資産クラスです。この記事では、金・銀・プラチナ・パラジウムといった主要な貴金属に手軽に投資できるETFを、それぞれの特徴とともに詳しく解説します。

🏆 2025年の貴金属市場:歴史的な高騰

金価格が史上初の4,000ドル突破(2025年10月)1

• 銀価格も年初から約60%上昇し、48ドル付近で推移2

• プラチナも2025年に83%上昇と大幅な値上がりを記録3

貴金属の種類と特徴

  • 金 (Gold): 通貨価値の裏付けや宝飾品として長い歴史を持つ。「安全資産」の代表格で、経済不安時に特に需要が高まります。
  • 銀 (Silver): 金と同様に金融資産の側面と、太陽光パネルや電子部品など工業用需要が大きい側面を併せ持ちます。
  • プラチナ (Platinum): 主にディーゼル車の排ガス浄化触媒や宝飾品として利用されます。供給の70%が南アフリカに集中しています。
  • パラジウム (Palladium): 主にガソリン車の排ガス浄化触媒として利用されます。EV化の影響を受けやすい金属です。

重要:これらのETFは、基本的に分配金(配当)はありません。価格変動による売却益が主な投資リターンとなります。

① 単一の貴金属に投資するETF

【GLD】SPDR® ゴールド・シェア

金地金の価格(LBMA金価格)に連動する、世界最大級の金ETF。圧倒的な流動性が特徴です。2025年は年初から50%以上の値上がりを記録しています。

経費率 0.40%
投資対象 金の現物地金

出典: SPDR® ゴールド・シェア (GLD) 公式サイト

【SLV】iシェアーズ シルバー・トラスト

銀地金の価格(LBMA銀価格)に連動します。銀の価格は、金融資産としての側面と工業用需要の両方に影響されます。太陽光パネル需要の拡大が追い風となっています。

経費率 0.50%
投資対象 銀の現物地金

出典: iShares Silver Trust (SLV) 公式サイト

【PPLT】abrdn フィジカル・プラチナ・シェアーズ ETF

プラチナ地金の価格に連動するETF。プラチナの需要は自動車産業(特にディーゼル車)の動向に大きく左右されます。2025年は工業需要の回復と供給制約により大幅な値上がりを見せています。

経費率 0.60%
投資対象 プラチナの現物地金

出典: abrdn Physical Platinum Shares ETF (PPLT) 公式サイト

【PALL】abrdn フィジカル・パラジウム・シェアーズ ETF

パラジウム地金の価格に連動するETF。パラジウムの需要はガソリン車の生産動向に大きく影響され、近年価格の変動が大きくなっています。電気自動車(EV)への移行が長期的な逆風となる可能性があります。

経費率 0.60%
投資対象 パラジウムの現物地金

出典: abrdn Physical Palladium Shares ETF (PALL) 公式サイト


② 複数の貴金属にまとめて投資するETF

どの金属を選ぶか迷う場合や、貴金属全体に分散投資したい場合に便利なバスケット型ETFです。ただし、投資対象が「現物」か「先物」かで大きな違いがあります。

【GLTR】abrdn フィジカル・プレシャス・メタルズ・バスケット・シェアーズ ETF (現物保有型)

金、銀、プラチナ、パラジウムの4つの貴金属の現物にまとめて投資します。それぞれの金属の価格に連動するため、貴金属全体の値動きを捉えたい場合に適した、分かりやすい仕組みのETFです。2025年は年初から55%以上の上昇を記録しています。

経費率 0.60%
投資対象 金・銀・プラチナ・パラジウムの現物地金
構成比率(目安) 金と銀で約85%を占める

出典: abrdn Physical Precious Metals Basket Shares ETF (GLTR) 公式サイト

【DBP】インベスコ DB プレシャス・メタルズ・ファンド (先物型)

金と銀の「先物契約」に投資します。現物保有型とは異なり、定期的に先物契約を乗り換える(ロールオーバー)必要があります。

DBPの注意点:「先物型」のリスク

DBPは先物に投資するため、将来の価格が高い「コンタンゴ」という状況下では、ロールオーバーの度にコストが発生し、金属価格が横ばいでもETFの価値が目減りするリスクがあります。このリスクを軽減する仕組み(オプティマムイールド)を採用していますが、リスクがゼロになるわけではありません。長期保有には向かない可能性があります。

経費率 0.75%
投資対象 金・銀の先物契約
リバランス 年1回(11月)

出典: Invesco DB Precious Metals Fund (DBP) 公式サイト

まとめ:投資のポイント

  • 安全資産として備えたい → 金に特化したGLD(流動性重視)や、より低コストなIAU(iシェアーズ・ゴールド・トラスト、経費率0.25%)が基本。
  • 工業用需要の成長も狙いたい → 金融・産業の両面を持つ銀に投資するSLV。太陽光パネルや電子機器の需要拡大が追い風。
  • 自動車産業の動向を読む → 排ガス触媒として重要なプラチナ(PPLT)やパラジウム(PALL)に特化。EVシフトなどの長期的な変化も考慮が必要。
  • 貴金属全体に分散したい → シンプルな現物保有型のGLTRが分かりやすい。先物の仕組みを理解した上で、異なる値動きを期待するならDBPも選択肢。

💡 2025年の投資環境

追い風要因:

  • 米政府の財政不安と政治的不確実性
  • 各国中央銀行による金の継続的な購入
  • インフレヘッジとしての需要増加
  • 米ドル安の進行

注意点:

  • 貴金属価格は10-15%程度のボラティリティ(価格変動)があります
  • 配当収入がないため、値上がり益のみが収益源です
  • 金利上昇局面では相対的に魅力が低下する可能性があります

📊 経費率比較

ETF 経費率 投資対象
GLD 0.40% 金(現物)
SLV 0.50% 銀(現物)
PPLT 0.60% プラチナ(現物)
PALL 0.60% パラジウム(現物)
GLTR 0.60% 4貴金属バスケット(現物)
DBP 0.75% 金・銀(先物)

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。記載されているデータは2025年10月時点のものであり、変動する可能性があります。貴金属投資にはリスクが伴いますので、投資前に十分な調査を行い、必要に応じて専門家にご相談ください。


参考文献

  1. CNBC. “Gold price reaches $4,000 an ounce for the first time ever" (2025年10月7日)
  2. CBC News. “Gold prices hit record high as anxious investors seek safe haven for money" (2025年10月7日)
  3. ETF.com. “PPLT: Why Platinum Is Outshining Gold and Silver in 2025" (2025年6月18日)
  4. J.P. Morgan Research. “A new high? Gold price predictions from J.P. Morgan Research" (2025年)


株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。



Posted by 南 一矢