BHPビリトングループの株価・配当見通し(将来性)

ADR銘柄,素材

最終更新:2026年10月8日/BHP 2026年6月期通期決算まで反映

2026年度のポイント:売上高は前年比15%増の587.60億ドル、営業キャッシュフローは17%増の217.78億ドル、銅事業はUnderlying EBITDAの過半を占めました。年間配当は普通株1株当たり1.72米ドル、米国ADR1口当たり3.44米ドルです。銅市況の追い風が業績と株主還元を押し上げましたが、カリ事業の大型投資・減損も生じています。[1][2][3]

企業概要

BHPグループ(BHP Group Limited)はオーストラリアを拠点とする世界有数の鉱山会社です。現在の収益の中心は鉄鉱石、銅、製鉄用石炭で、カナダではカリ(ポタッシュ)事業の立ち上げを進めています。ウランや金・銀は銅事業に関連する副産物として生産しています。西オーストラリアのニッケル事業は2024年12月から一時停止しており、主力の稼働鉱山として扱うべきではありません。[4][5]

2001年にBHPとBillitonが二重上場会社(DLC)として統合し、2018年にBHP Groupへ改称しました。2015年にはSouth32を分離、2022年1月にDLC構造を解消してBHP Group Limitedを単一親会社としました。2022年6月には石油・ガス事業をWoodside Energyと統合しています。現在の米国上場銘柄BHPは普通株2株を表す米国預託証券(ADR/ADS)です。[6][7][8]

2026年度は西オーストラリア鉄鉱石事業(WAIO)が記録的な生産・出荷を達成し、銅生産は2年続けて約200万トンとなりました。会社は銅生産拡大と、Jansenポタッシュ鉱山の立ち上げを中長期の成長戦略としています。[1]

年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等

以下は6月期に対応する普通株の年間配当額を2倍して、米国ADR1口相当に換算した表です。EPSも普通株EPSの2倍にそろえました。2019年度は石油資産売却関連の特別配当(普通株1株1.02ドル)を含みます。[9][2]

参考利回り=当該6月期のADR換算年間配当額÷同じ年の米国ADR暦年平均株価です。会計年度と暦年の対象期間が一致しないため、厳密な実現利回りや市場データ提供会社の年平均利回りとは異なります。2026暦年の年間平均株価はまだ確定しないため、2026年行の参考利回りは空欄としました。2008~2025年の株価とEPSの過年度値は元原稿を引き継いだ参考値であり、すべての年について同じ開示基準で再監査したものではありません。[10]

年度(6月期) 米国ADR換算の配当 暦年平均
ADR株価
年EPS
(ADR)
参考利回り 前年比 配当性向 年間配当
米ドル
2026 (確定) — +56% 89% 3.44 — 3.87
2025 4.39% -25% 62% 2.20 50.17 3.56
2024 5.59% -14% 94% 2.92 52.19 3.12
2023 6.43% -48% 67% 3.40 52.87 5.10
2022 13.99% +8% 53% 6.50 46.46 12.18
2021 13.88% +151% 135% 6.02 43.36 4.46
2020 7.88% -49% 38% 2.40 30.45 6.28
2019 10.85% +99% 73% 4.70特別配当を含む 43.30 6.40
2018 5.27% +42% 85% 2.36 44.80 2.78
2017 4.16% +177% 38% 1.66 39.90 4.42
2016 1.90% -76% —(赤字) 0.60 31.50 -4.80
2015 9.39% +2% 172% 2.48 26.40 1.44
2014 5.27% +4% 23% 2.42 45.90 10.36
2013 4.14% +4% 28% 2.32 56.10 8.40
2012 3.83% +11% 19% 2.24 58.50 11.58
2011 3.22% +16% 12% 2.02 62.80 17.08
2010 2.43% +6% 19% 1.74 71.60 9.12
2009 2.81% +17% 39% 1.64 58.40 4.22
2008 3.37% — 13% 1.40 41.60 11.00

変動する配当の実績

BHPは連続増配株ではありません。2016年度は普通株1株当たり0.30ドルまで減配した一方、2021・2022年度には商品市況の高騰を背景に大幅な増配を行いました。その後、2023~2025年度には減配が続き、2026年度は普通株1株当たり1.72ドルと2025年度の1.10ドルから約56%増配となりました。[9][3]

2026年度の配当日程と米国ADR換算

配当 普通株1株 米国ADR1口 支払日
中間配当 0.73ドル 1.46ドル 2026年3月26日
期末配当 0.99ドル 1.98ドル 2026年9月23日
FY2026合計 1.72ドル 3.44ドル —

2026年度期末配当の米国市場権利落ち日は2026年9月4日、基準日は同日です。BHPが発表する期末配当性向72%は、その期末配当に対する会社所定の指標であり、年間配当をGAAPの年間EPSで割った比率とは一致しません。米国ADRの実受取額は手数料・税金などで異なる場合があります。[3]

配当性向の持続可能性

2026年度のGAAP基本EPSは普通株1株1.936ドル(ADR換算3.872ドル)、Underlying EPSは普通株1株2.60ドルです。したがって、年間配当1.72ドルを用いるとGAAPベースの参考配当性向は約89%、Underlying EPSベースでは約66%になります。2025年度の参考GAAP配当性向は約62%でした。利益調整後の配当性向が比較的低くても、調整対象となる損失を無視してよいわけではありません。[2]

営業CF、資本支出、フリーCF、純負債を併せて見る必要があります。2026年度は最終配当を含む年間の決定配当総額約87億ドルに対し、会社公表のFCFは約98億ドルでした。ただし、期中の実際の配当支払額と、当該年度の業績に対して決定された配当額は別の概念です。[1]

財務パフォーマンスと成長見通し

表の単位は百万米ドル(US$M)です。純利益は「BHP株主帰属純利益」を使用し、営業CFマージンは営業CF÷売上高で計算しています。2008~2023年は旧原稿の時系列データを維持し、2024~2026年度について公式の年次財務資料で再照合しました。事業分離・会計表示の変更があるため、長期間の単純な連続比較には注意が必要です。[2]

主要財務指標の推移

年度 売上高 営業CF 同マージン 純利益
2026 58,760 21,778 37 9,833
2008 59,473 17,817 30 15,390
2009 50,211 17,854 36 5,877
2010 52,798 16,890 32 12,722
2011 71,739 30,080 42 23,648
2012 70,477 25,259 36 15,473
2013 53,860 20,154 37 11,223
2014 56,762 25,364 45 13,832
2015 44,636 19,296 43 1,910
2016 28,567 10,625 37 -6,385
2017 35,740 16,804 47 5,890
2018 43,129 18,461 43 3,705
2019 44,288 17,871 40 8,306
2020 38,924 15,706 40 7,956
2021 57,255 27,234 48 11,304
2022 65,415 32,174 49 30,900
2023 54,184 18,701 35 12,921
2024 55,658 20,665 37 7,897
2025 51,262 18,692 36 9,019

FY2026は売上高587.60億ドル(前年比15%増)、株主帰属純利益98.33億ドル(同9%増)、営業CF217.78億ドル(同17%増)でした。Underlying EBITDAは329.47億ドル(同27%増)となり、銅事業のUnderlying EBITDAは約182億ドルで、全社の過半を占めています。[1]

一方で、FY2026の株主帰属純利益にはJansen事業の約23億ドルの減損と、Samarco鉱滓ダム事故関連の約11億ドルの特別損失などが含まれます。Underlying利益だけでなく、プロジェクトの投資回収見通しや将来費用も確認する必要があります。[2]

キャッシュフロー:実際の投資CFとFCFを区別

投資CFは財務諸表上の投資活動によるキャッシュフロー(Net investing cash flows)です。FCF=営業CF+投資CFという近似計算は、投資CFに鉱山投資以外の資産処分や企業買収・投資持分の取引等も含むため、会社定義のFCFと常に一致するわけではありません。2025年の旧原稿で使われていた投資CF「営業CF-FCFからの逆算値」は、公式財務諸表の数値に修正しました。[2]

年度 営業CF 成長率 投資CF 財務CF
2026 21,778 +17% -12,011 -3,280
2008 17,817 57 -9,064 -6,999
2009 17,854 0 -10,042 -1,180
2010 16,890 -5 -9,985 -5,307
2011 30,080 78 -16,464 -16,018
2012 25,259 -16 -32,485 2,039
2013 20,154 -20 -18,726 -198
2014 25,364 26 -15,834 -6,468
2015 19,296 -24 -13,154 -8,276
2016 10,625 -45 -7,245 284
2017 16,804 58 -4,161 -9,133
2018 18,461 10 -5,921 -10,891
2019 17,871 -3 2,607 -20,528
2020 15,706 -12 -7,616 -9,752
2021 27,234 73 -7,845 -17,922
2022 32,174 18 -6,959 -22,767
2023 18,701 -42 -13,065 -10,315
2024 20,665 +11% -8,762 -11,669
2025 18,692 -10% -13,350 -5,971

2026年度の実際の営業CFは217.78億ドル、投資CFはマイナス120.11億ドル、財務CFはマイナス32.80億ドルです。会社が示すFCFは約98億ドル(FY2025の約53億ドルから83%増)でした。資本・探鉱支出は102.57億ドルに増えています。2026年度の財務CFには資金調達・返済・配当・ストリーミング契約関連の入出金が含まれます。[2][1]

負債水準と資本構成

総資産・総負債・株主資本はUS$M、自己資本率は株主資本÷総資産、負債比率は総負債÷株主資本で計算した参考値です。この「負債比率」は金融債務だけの比率ではなく、買掛金・引当金等を含む総負債の比率である点に注意してください。[2]

年度 総資産 総負債 株主資本 自己
資本率
負債
比率
2026 121,387 65,066 56,321 46% 116%
2008 76,008 36,965 38,335 50 96
2009 78,770 38,059 39,954 51 95
2010 88,852 39,523 48,525 55 81
2011 102,920 45,165 56,762 55 80
2012 129,273 62,188 65,870 51 94
2013 139,178 63,887 70,667 51 90
2014 151,413 66,031 79,143 52 83
2015 124,580 54,035 64,768 52 83
2016 118,953 58,882 54,290 46 108
2017 117,006 54,280 57,258 49 95
2018 111,993 51,323 55,592 50 92
2019 100,861 49,037 47,240 47 104
2020 105,733 53,558 47,865 45 112
2021 108,927 53,322 55,605 51 96
2022 95,166 46,400 48,766 51 95
2023 101,296 52,766 48,530 48 109
2024 102,362 53,242 49,120 48 108
2025 108,790 56,572 52,218 48 108

FY2026末の総資産は1,213.87億ドル、株主資本は563.21億ドル、自己資本率は約46%でした。より重要な純負債は86.94億ドルで、FY2025末の129.24億ドルから約33%減少しました。会社の純負債目標レンジは100億~200億ドルであり、FY2026末の純負債は目標レンジの下限を下回っています。[2]

銅とポタッシュへの成長投資

FY2026は銅事業が利益の中心となり、会社はチリ・南オーストラリア・アルゼンチン・米国で銅鉱山の成長機会を追求しています。資本・探鉱支出は中期的に年平均約110億ドルを見込み、その過半を銅関連の成長に充てる方針です。[1]

カナダのJansenポタッシュ事業は、2026年6月末時点でStage 1の進捗が84%、初生産は2027年半ばの予定です。一方、Stage 2の予想投資額は従来の49億ドルから69億ドルへ引き上げられ、初生産はFY2031の後半を見込んでいます。大型案件のコスト増・減損は、銅価格上昇が続いても配当・財務余力を圧迫しかねない点に注意が必要です。[11][1]

また、西オーストラリアのNickel WestとWest Musgraveは2024年12月から操業・建設を一時停止しています。2027年2月までに方針を見直す計画であり、2026年時点の稼働中の主要収益源には含めません。[5]

まとめ:長期配当投資家にとってのBHPとは?

BHPは高収益の鉄鉱石事業を土台にしながら、銅の利益比率を高め、ポタッシュ事業の立ち上げを進める資源企業です。2026年度は銅価格と事業運営の改善を背景に配当が回復しましたが、資源価格サイクルから独立した安定増配企業ではありません。[1]

  • 強み:低コストのWAIO鉄鉱石資産、銅事業の規模、2026年度の営業CF回復、純負債の削減。
  • 成長機会:送配電・データセンター・電化に伴う銅需要、Jansen完成後のポタッシュ供給、既存鉱山の増産。
  • 主なリスク:中国の鉄鋼需要と鉄鉱石価格、銅市況の反落、資本支出超過、Jansenの減損・遅延、鉱山災害や規制・労働コスト。

中国のインフラ・鉄鋼需要、インドなどの工業化、米国の電力インフラ投資は長期需要の支えになりますが、長期需要の強さが直近の利益や株価上昇を保証するわけではありません。資源価格・生産数量・単位コスト・キャッシュフローを継続的に確認する必要があります。[12]

結論:安定した毎年の配当額よりも、資源市況に合わせた変動配当と長期の総リターンを評価する銘柄です。FY2026のADR換算配当3.44ドルを将来の固定配当とみなすべきではありません。

よくある質問

BHPの2026年度配当はいくらですか?

普通株1株1.72米ドル、米国ADR1口(普通株2株相当)で3.44米ドルです。2026年の期末配当0.99米ドル(ADR1口1.98米ドル)は2026年9月23日に支払われました。[3]

BHPは連続増配株ですか?

いいえ。2016年度や2023~2025年度に減配しており、2026年度は増配へ転じました。資源価格の変動を背景に配当額が大きく変わります。[9]

BHPとRIO、VALEの違いは何ですか?

いずれも鉄鉱石を重要な事業とする大手資源企業ですが、BHPはFY2026に銅事業が全社Underlying EBITDAの過半となるなど、銅の利益寄与が大きい点に特徴があります。個別の比較では、各社の鉄鉱石・銅売上比率、鉱山コスト、資本支出、配当方針を同一年度で比べる必要があります。[1]

Jansenの初生産はいつですか?

Stage 1は2027年半ば、Stage 2はFY2031後半が会社見込みです。Stage 2の投資額は69億ドルへ上方修正されており、遅延や追加費用に注意が必要です。[11]

次回の操業報告はいつですか?

2026年9月期の四半期操業レビューは、BHPの予定表では2026年10月20日です。これは通期・半期の決算発表と異なり、主に生産状況を確認するための資料です。[13]

※本記事は2026年10月8日までに公表された資料をもとに作成しました。過年度の参考株価・EPSなど、記事原稿から引き継いだ長期時系列には会計基準・事業構成・集計期間の違いがあります。BHPの配当、株価、資源価格、業績見通しは変化します。投資勧誘を目的とせず、投資判断はご自身の責任で行ってください。

【注】(出典リンク)

  1. BHP FY2026通期決算・生産・見通し → BHP「FY2026 Full Year Results」(確認日:2026-10-08) ↩
  2. FY2026監査済財務諸表・キャッシュフロー・財務状況 → SEC「BHP Annual Report 2026」(確認日:2026-10-08) ↩
  3. 2026年配当・ADR換算と支払日 → BHP「Dividends」(確認日:2026-10-08) ↩
  4. 事業構成・鉱産物 → BHP「Products」(確認日:2026-10-08) ↩
  5. Western Australia Nickel事業の一時停止 → BHP「Annual Report 2026」(確認日:2026-10-08) ↩
  6. 2001年合併・2022年企業構造統合 → BHP「Unified Corporate Structure」(確認日:2026-10-08) ↩
  7. 2015年South32分離 → BHP「South32 Demerger」(確認日:2026-10-08) ↩
  8. 石油・ガス事業の分離 → BHP「Petroleum and Woodside Merger Completion」(確認日:2026-10-08) ↩
  9. 2008~2026年の過去の配当履歴 → BHP「Historical Dividend List」(2026年4月20日版)(確認日:2026-10-08) ↩
  10. 米国ADRの暦年平均株価(参考) → Macrotrends「BHP Stock Price History」(確認日:2026-10-08) ↩
  11. Jansen Stage 2コストと工程見通し → SEC「BHP Jansen Stage 2 Update, June 2026」(確認日:2026-10-08) ↩
  12. 2026年の資源市況・長期需要分析 → BHP「Economic and Commodity Outlook 2026」(確認日:2026-10-08) ↩
  13. FY2027第1四半期操業レビュー予定 → BHP「Financial Calendar」(確認日:2026-10-08) ↩

Posted by 南 一矢