HPQとHPEを比較:分社後のヒューレットパッカード(事業の違いを解説)

情報技術,銘柄比較






HPQとHPE比較分析 – 2026年5月更新

HPQとHPEを、事業の違い・決算・配当・AI関連需要の観点から比較します。(2026年5月更新)

ヒューレットパッカード(旧Hewlett-Packard Company)は、2015年の分社によって、PC・プリンター中心のHP Inc.(HPQ)と、法人向けITインフラ中心のHewlett Packard Enterprise(HPE)に分かれました。分社では、HP株主にHPE株式が分配され、HPE株は2015年11月2日からNYSEで通常取引を開始する予定と公表されていました。[1]

その株価の推移、決算の予想と結果、配当金と利回り、業績(財務情報)はどうなっているのでしょうか。

これらの銘柄について、今後の見通しや将来性を探ってみます。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移(IYW:iShares U.S. Technology ETFを含めて比較)

※チャート右目盛り:10年国債利回り

決算(予想:結果)

【HP分割対決】HP Inc.(HPQ) vs HPE!PCとプリンターか、サーバー・ネットワーク・AIか?

シリコンバレーの源流とも言える伝説の企業、ヒューレット・パッカード。その遺伝子を受け継ぐ2つの会社が、HP Inc.(HPQ)ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)です。両社はともに「HP」の名を冠しますが、事業内容は大きく異なり、配当を含む株主還元でも特徴が分かれます。

本記事では、2015年の会社分割によって生まれたこの2社の、ビジネスモデル、業績、そして株主還元を比較・分析します。

最重要ポイント:2015年の会社分割

両社を理解するうえで、旧ヒューレット・パッカードが2社に分割された経緯を知ることが不可欠です。

  • HP Inc.(HPQ) → PC・プリンター事業
    パソコン、プリンター、周辺機器、インク・トナーなどの消耗品を中心とする事業を継承しました。個人向け・企業向けの両方に製品を出していますが、投資テーマとしては「PC更新需要」「AI PC」「プリンター消耗品収益」「コスト削減」が中心です。
  • Hewlett Packard Enterprise(HPE) → 法人向けITインフラ事業
    サーバー、ストレージ、ネットワーク、ハイブリッドクラウド、AI向けシステムなど、法人・データセンター向けのITインフラ事業を継承しました。2025年7月にJuniper Networksの買収を完了し、2026年度からはネットワーク事業の存在感が大きく高まりました。[4]

比較サマリー:個人・オフィス機器のHPQ、法人ITインフラのHPE

項目 HP Inc.
(HPQ)
Hewlett Packard
Enterprise(HPE)
主力事業 PC、プリンター、消耗品、周辺機器 サーバー、ストレージ、ネットワーク、AI・クラウド基盤
主要顧客 個人消費者、一般企業、教育・公共機関 大企業、データセンター、通信事業者、政府機関
業績の特性 PC更新サイクル、プリンター需要、部材価格に左右されやすい 企業IT投資、AIサーバー需要、ネットワーク投資に左右されやすい
直近決算の焦点 2026年度Q1は売上高144億ドル、前年比6.9%増。Personal Systemsが好調 2026年度Q1は売上高93億ドル、前年比18%増。Juniper統合後のNetworkingが急伸
配当利回り目安
2026年5月8日終値付近
約5.3%
四半期配当0.30ドル、年率1.20ドル換算[5]
約1.8%
四半期配当0.1425ドル、年率0.57ドル換算[6]
PERの見方 2026年5月8日終値付近では、実績EPSベースで一桁台後半 GAAP実績PERは買収・減損等で歪みやすい。2026年度会社非GAAP EPS見通しを使うと10倍台前半が目安

業績と成長性の詳細分析

両社とも成熟したハードウェア企業という面を持ちますが、成長ドライバーはかなり違います。HPQはAI PCへの移行、Windows更新需要、部材価格・関税影響への対応が焦点です。一方のHPEは、AI・クラウド基盤に加えて、Juniper統合後のネットワーク事業が収益構造を変えつつあります。

2026年最新決算ハイライト

  • HPQ 2026年度Q1:売上高は144億ドルで前年比6.9%増、非GAAP希薄化後EPSは0.81ドルで前年比9.5%増でした。Personal Systemsの売上は103億ドルで前年比11%増、Printingは42億ドルで前年比2%減でした。[2]
  • HPQの2026年度見通し:会社は2026年度通期の非GAAP希薄化後EPS見通しを2.90〜3.20ドルに据え置いた一方、メモリー価格や米国通商関連規制によるコスト増を踏まえ、レンジ下限寄りになる可能性を示しました。[2]
  • HPE 2026年度Q1:売上高は93億ドルで前年比18%増、非GAAP希薄化後EPSは0.65ドルでした。Networking売上は27億ドルで前年比151.5%増、Cloud & AI売上は63億ドルで前年比2.7%減でした。[3]
  • HPEの2026年度見通し:会社は2026年度通期の売上成長率見通しを17〜22%に据え置き、Networking売上成長率見通しを68〜73%へ引き上げました。非GAAP希薄化後EPS見通しも2.30〜2.50ドルへ引き上げています。[3]
年・期 HPQ 売上高
(前年比)
HPE 売上高
(前年比)
2026年度Q1 144億ドル
+6.9%[2]
93億ドル
+18%[3]
2025年度 553億ドル
+3.2%[7]
343億ドル
+14%[8]
2024年度 536億ドル
-0.3%[9]
301億ドル
+3.4%[8]
2023年度 538億ドル前後 291億ドル前後
2022年度 630億ドル台後半 280億ドル台後半

※B=10億ドル。各社会計年度に基づく。2026年度Q1は四半期データ、2025年度以前は通期データです。HPEは2025年度にJuniper Networks買収の影響が入り始め、2026年度からネットワーク事業の比較が大きく変化しています。

HPQ(HP Inc.)の現況アップデート

  • PCは回復基調:2026年度Q1のPersonal Systems売上は103億ドルで前年比11%増でした。個人向け・商業向けの両方で増収となり、出荷台数も前年比12%増でした。[2]
  • プリンターはまだ弱い:2026年度Q1のPrinting売上は42億ドルで前年比2%減、消耗品売上も前年比1%減でした。インク・トナーの安定収益は残るものの、プリンター本体の台数減が続いています。[2]
  • AI PCは追い風だが、部材価格が逆風:会社はAI PCの勢いに言及する一方、2026年度はメモリー価格や通商関連コストの上昇により、利益・フリーキャッシュフローが会社見通しの下限寄りになる可能性を示しています。[2]
  • コスト削減策:2025年度通期決算では、2028年度末までに約10億ドルのグロス・ランレートコスト削減を見込む全社施策を発表しました。[7]

HPE(Hewlett Packard Enterprise)の現況アップデート

  • Juniper買収完了:HPEは2025年7月2日にJuniper Networksの買収完了を発表しました。これにより、HPEのネットワーク事業は大きく拡大しました。[4]
  • Networkingが急伸:2026年度Q1のNetworking売上は27億ドルで前年比151.5%増でした。旧Intelligent EdgeとJuniper Networksを含むセグメントとして、HPEの成長の中心になっています。[3]
  • Cloud & AIは利益率改善:2026年度Q1のCloud & AI売上は63億ドルで前年比2.7%減でしたが、営業利益率は10.2%へ改善しました。サーバー売上は42億ドルで前年比2.7%減、ストレージは11億ドルで0.6%増でした。[3]
  • 2026年度見通しを引き上げ:HPEは2026年度Q1決算で、非GAAP希薄化後EPS見通しを2.30〜2.50ドルへ引き上げました。ネットワーク統合効果とコスト管理が鍵になります。[3]

配当の詳細比較

両社とも四半期配当を実施しています。配当利回りだけを見れば、2026年5月時点ではHPQのほうが明確に高くなっています。一方、HPEは2026年度から四半期配当を0.1425ドルへ引き上げており、Juniper統合後も配当を維持・増額する姿勢を示しています。

年・期 HPQ 配当 HPE 配当
2026年度
直近四半期ベース
四半期0.30ドル
年率1.20ドル換算
利回り約5.3%
四半期0.1425ドル
年率0.57ドル換算
利回り約1.8%
2025年度 四半期0.2894ドル中心。2025年度Q4後に0.30ドルへ増配 四半期0.13ドル中心。2025年度Q4後に0.1425ドルへ増配
2024年度 年間約1.10〜1.16ドル水準 年間0.52ドル水準

配当情報アップデート(2026年5月時点)

  • HPQ:2026年1月27日、四半期配当0.30ドルを公表しました。支払日は2026年4月1日、基準日は2026年3月11日でした。[5]
  • HPE:2026年度Q1決算で、四半期配当0.1425ドルを公表しました。支払日は2026年4月23日前後、基準日は2026年3月24日でした。[6]
  • 利回りの差:2026年5月8日終値付近では、HPQが22.68ドル、HPEが31.35ドルでした。四半期配当を年率換算すると、HPQは約5.3%、HPEは約1.8%となります。株価が動けば利回りも変わります。

2026年の市場動向と展望(要点)

  • HPQ:PC市場の回復、Windows更新需要、AI PCの普及は追い風です。ただし、プリンター事業の縮小圧力、メモリー価格上昇、通商関連コストは利益率の逆風です。配当利回りは魅力的ですが、利益とフリーキャッシュフローが会社見通しの下限寄りになるリスクを見ておく必要があります。[2]
  • HPE:Juniper統合によりネットワーク事業の規模が拡大し、2026年度Q1ではNetworkingが大幅増収となりました。一方で、Cloud & AI内のサーバー売上は前年比で減少しており、AIサーバー需要だけで一本調子に伸びる銘柄ではありません。統合効果、コスト削減、ネットワーク事業の利益率維持が焦点です。[3][4]

結論:あなたに合うのはどちら?

両社への投資は、どちらの市場の将来性を信じ、どのようなリターンを求めるかで選択が分かれます。

「高い配当利回り」と「PC・プリンターのキャッシュ創出力」を重視するなら → HP Inc.(HPQ)

HPQは、PCとプリンターという成熟事業を中心にしながら、AI PCやハイブリッドワーク向け製品で成長機会を探る銘柄です。2026年度Q1はPC事業が回復し、売上高は前年比で増加しました。一方、プリンター事業は弱く、メモリー価格や通商コストの上昇も利益率の重しです。配当利回りは2026年5月時点で約5%台と高く、インカム重視の投資家にとっては検討対象になりますが、減益局面での配当余力とフリーキャッシュフローの推移は確認が必要です。[2][5]

「企業のAI投資・ネットワーク投資・Juniper統合」に乗るなら → Hewlett Packard Enterprise(HPE)

HPEは、サーバー、ストレージ、ネットワーク、ハイブリッドクラウドを中心とする法人向けITインフラ企業です。2025年にJuniper Networks買収を完了したことで、2026年度からNetworkingの比重が大きくなりました。2026年度Q1ではNetworking売上が前年比151.5%増と急伸し、会社は2026年度の非GAAP EPS見通しも引き上げています。一方、買収関連費用や無形資産償却、減損などでGAAP利益はぶれやすく、実績PERだけでは評価しにくい局面です。成長性を重視するなら、ネットワーク事業の統合効果とCloud & AIの利益率改善が続くかを見たいところです。[3][4]


※本ページの分析は2026年5月9日時点で確認できる公開情報に基づいています。株価・配当利回り・PERなどの市場データは日々変動します。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。

【注】(出典リンク)

  1. HP分社の概要 → 一次情報:HP Inc.「HP Board of Directors Approves Separation」(確認日:2026-05-09)
  2. HPQ 2026年度Q1決算 → 一次情報:HP Inc.「HP Inc. Reports Fiscal 2026 First Quarter Results」(確認日:2026-05-09)
  3. HPE 2026年度Q1決算 → 一次情報:HPE IR「HPE reports fiscal 2026 first quarter results」(確認日:2026-05-09)
  4. HPEのJuniper買収完了 → 一次情報:HPE「Hewlett Packard Enterprise closes acquisition of Juniper Networks」(確認日:2026-05-09)
  5. HPQ配当 → 一次情報:HP Inc.「HP Inc. Declares Dividend」/補助情報:Yahoo Finance「HPQ株価」(確認日:2026-05-09)
  6. HPE配当 → 一次情報:HPE IR「HPE reports fiscal 2026 first quarter results」/補助情報:Yahoo Finance「HPE株価」(確認日:2026-05-09)
  7. HPQ 2025年度通期決算 → 一次情報:HP Inc.「HP Inc. Reports Fiscal 2025 Full Year and Fourth Quarter Results」(確認日:2026-05-09)
  8. HPE 2025年度通期決算 → 一次情報:HPE IR「HPE reports fiscal 2025 fourth quarter results」(確認日:2026-05-09)
  9. HPQ 2024年度通期決算 → 一次情報:HP Inc.「HP Inc. Reports Fiscal 2024 Full Year and Fourth Quarter Results」(確認日:2026-05-09)



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Posted by 南 一矢