QCOM/AVGOを比較:クアルコムとブロードコムの戦略の違いとは 

AI(人工知能),半導体,情報技術,銘柄比較

クアルコム(QUALCOMM, Inc., NASDAQ: QCOM)とブロードコム(Broadcom Inc, NASDAQ: AVGO)は、AI時代の半導体市場を牽引する2つの巨大企業です。本記事では、その違いを両社の株価推移、財務データ、事業構造、そして将来性を、客観的なデータに基づいて比較・分析します。

※本記事は2025年10月18日時点の公開情報に基づき作成しており、投資助言を目的としたものではありません。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。

株価・主要指標サマリー

※以下の表やチャートは準リアルタイムで更新される指標です。本文中の詳細分析は2025年6月8日時点のデータに基づいているため、数値に多少の差異が生じる場合があります。

※チャート左目盛り:株価推移(SOXX:iShares Semiconductor ETFを含めて比較)

※チャート右目盛り:10年国債利回り

決算サマリー(予想:結果)

業績と財務指標の詳細分析

5年間の業績推移

過去5年間の売上高推移を見ると、両社ともに力強い回復・成長を示しています。特にブロードコムはVMware買収効果とAI関連需要の拡大で伸びが際立ちました(注1, 注2)

年度 クアルコム (QCOM) 前年比 ブロードコム (AVGO) 前年比
2024年 $38.96 B +8.8% $51.57 B +44.0%
2023年 $35.82 B -19.0% $35.82 B +7.9%
2022年 $44.20 B +31.7% $33.20 B +21.0%
2021年 $33.57 B +42.7% $27.45 B +15.1%
2020年 $23.54 B $23.89 B
5年間成長率 (CAGR, 2020→2024) クアルコム: 約13.4% / ブロードコム: 約21.2%

※B=10億ドル。売上は米ドル、各社公表の会計年度。

主要財務指標の比較(最新値の目安)

時価総額ではブロードコムが大きく先行。一方、バリュエーション(PER/PBR)はクアルコムの方が相対的に割安水準にあります。直近ROEはデータ提供元により振れ幅があるため、ここでは信頼できる複数ソースのレンジを併記しています(注3〜注8)

指標 クアルコム ブロードコム
売上高(直近四半期) $11.0 B(FY25 Q2) $15.00 B(FY25 Q2)
純利益(直近四半期) $2.8 B(FY25 Q2) $5.0 B(FY25 Q2)
時価総額(2025年10月) 約$176 B 約$1.65 T
PER(TTM目安) 約15.5〜16.6倍 約67〜87倍
PBR(TTM目安) 約6.4〜6.5倍 約21〜23倍
ROE(TTM目安) 約42%前後 約27〜37%程度

配当と株主還元

両社とも連続増配を継続中ですが、利回り水準と原資(会計上利益 vs. キャッシュフロー)の見え方に違いがあります(注9〜注13)

項目 クアルコム(20年連続増配) ブロードコム(13年連続増配)
年間配当 $3.56 $2.36(10分割後ベースで$0.59×4)
配当利回り(目安) 約2.1〜2.4% 約0.7%
ペイアウト比率(TTM目安) 約33%前後 約59%前後
  • クアルコム:配当性向が低めで余力あり。安定配当に加えて自社株買いも活用し、株主還元と成長投資のバランスが良好です。
  • ブロードコム:会計上のEPSは大型M&A影響で変動しますが、原資となるフリーキャッシュフローは潤沢。分割後も四半期$0.59の配当を継続し、増配年数を重ねています。

事業構造と強み・弱み

クアルコム:技術ライセンス+多角化

スマホ向け半導体に加え、特許ライセンス収入の安定性と、自動車・IoT分野の拡大が牽引。FY25 Q2は自動車+IoTの合算が前年比+38%と成長が続きました(注14)

  • 強み:高収益なライセンスモデル、オートモーティブ/IoTの成長、ファブレスによる資本効率。
  • 弱み:スマホ市況の影響、特定顧客依存、地政学リスク。

ブロードコム:インフラ半導体+ソフト+AI

データセンター向け半導体とインフラソフトの二本柱。VMware買収でソフト比率が上昇しつつ、AI向けカスタム半導体やネットワークで追い風。FY25 Q2も売上YoY+20%、AI関連の寄与が拡大しました(注15, 注16)。直近ではOpenAIとの10GW規模のカスタムAIチップ提携も報じられ、AIインフラ領域での存在感が一段と高まっています(注17, 注18)

  • 強み:AIデータセンター関連の強い需要、M&Aと統合の実績、ハイパースケーラーとの深い関係。
  • 弱み:高バリュエーション、統合・価格改定に伴う顧客反応のリスク。

まとめ:投資判断のポイント

データに基づく両社の特徴は以下の通り。

  1. 成長性(売上・AI露出):直近5年と現在のAI追い風ではブロードコム優位。
  2. 収益性・資本効率(ROE):直近TTMの指標ではクアルコムが高水準。
  3. 株価の割安性(PER/PBR):相対的にクアルコムが割安。
  4. 配当投資の魅力:利回りと配当余力の観点からクアルコムに分あり。

クアルコムは、多角化で安定成長と株主還元を両立したいバリュー/配当志向に好相性。ブロードコムは、AIという巨大テーマの中核で高成長を狙うグロース志向に魅力的な選択肢と言えます。


データ更新日: 2025年10月18日(日本時間)

  1. クアルコム 年間売上(2011–2025)Macrotrends。FY2024: $38.96B、FY2023: $35.82B 等。
  2. ブロードコム 年間売上(2011–2025)Macrotrends。FY2024: $51.57B(+44%)、FY2023: $35.82B 等。公式IRのFY2024開示も参照:Broadcom IR
  3. クアルコム FY2025 Q2 速報(売上$11.0B、EPS等)QCOM IR(PDF)
  4. ブロードコム FY2025 Q2(売上$15.0B、GAAP純利益$4.97B)AVGO IR(PDF)。要旨記事:Network World
  5. 時価総額(2025年10月時点目安):クアルコム約$176B CompaniesMarketCap。ブロードコム約$1.65T CompaniesMarketCapTradingEconomics
  6. PER(TTM目安):QCOM 約15.5〜16.6倍 MacrotrendsFullratio。AVGO 約67〜87倍 MacrotrendsFullratio
  7. PBR(TTM目安):QCOM 約6.4〜6.5倍 CompaniesMarketCap。AVGO 約21〜23倍 CompaniesMarketCapGuruFocus
  8. ROE(TTMの参考):QCOM 約42% FinanceCharts。AVGO 約27〜37%のレンジ情報 WisesheetsZacks
  9. クアルコム配当(連続増配・支払実績)QCOM IR/配当性向の参考 Fullratio
  10. ブロードコム配当(10分割後$0.59/四半期、年$2.36)MorningstarNasdaq
  11. ブロードコム配当性向(TTM)目安 FullratioFinanceCharts
  12. AVGO FY2024通期の伸長(VMware寄与)Broadcom IR
  13. QCOM FY25 Q2 セグメントの伸び(Auto/IoT)QCOM IR(PDF)
  14. AVGO FY25 Q2 ハイライト(AI関連寄与)AVGO IR(PDF)
  15. AI需要・顧客反応に関する外部記事(参考)Network World
  16. OpenAIとBroadcomの大型パートナーシップ報道(10GW)Financial Times。関連ニュースで直近の株価反応も報道 Reuters

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Posted by 南 一矢