GMとFを比較:ゼネラルモーターズとフォードモーターの違いとは

消費財,銘柄比較

最終更新:2026年10月8日/株価基準日:2026年10月7日(米国市場終値)

GMとFの違いを踏まえて比較します。ゼネラル・モーターズ(General Motors Company)とフォード・モーター(Ford Motor Company)は、米国自動車産業を代表する二大メーカーです。両社は内燃機関車(ICE)、ハイブリッド、EV、商用車、ソフトウェア・サービスを組み合わせながら、収益構造を見直しています。

本記事では、2025年通期・2026年Q2決算、2026年Q3の米国販売動向、通期業績見通し、配当と自社株買い、EV・商用車戦略を比較します。最新確定決算は両社とも2026年Q2です。[1][2]

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移(XLY:Consumer Discretionary Select Sector SPDR Fundを含めて比較)

※チャート右目盛り:米国10年国債利回り

決算(予想:結果)と配当

【米自動車大手対決】GM vs フォード(F):EV時代の勝者は?配当と戦略を比較

GMとフォードは長年のライバルですが、2026年にはEV需要の変動、関税や原材料、保証費用、商用車、ソフトウェアなどの問題に同時対応しています。GMは北米事業の利益率と自社株買い、フォードはFord Proの商用車・サービスと定期配当が比較上の特徴です。これらはどちらかの株価上昇や減配回避を保証しません。

配当は「確実」ではない

両社とも2020年に配当を停止しました。GMは2022年に復配し、2026年の四半期配当は1株0.18ドルです。フォードは2026年第3回の四半期定期配当を1株0.15ドルとし、9月1日に支払いました。[3][4][5][6]

自動車産業は景気・金利・販売台数・金融子会社の信用状況に左右されるため、配当利回りだけで安全性を判定できません。

EV戦略の違い:再調整するGM、部門損益を分けるFord

  • GM:北米の大型ピックアップとSUVを主な利益源にし、EVの生産能力と電池投資を需要に合わせて調整。ソフトウェア、Super Cruise、OnStarも育成します。2025年にはEV再調整に伴う特別費用を計上しました。[7]
  • フォード:内燃機関・ハイブリッドのFord Blue、EVのFord Model e、商用車のFord Proを分けて損益を管理。2026年Q2はBlueが改善する一方、Model eの赤字とFord Proの減益が残りました。[8]

比較サマリー:EV戦略で未来は変わるか

項目 ゼネラル・モーターズ(GM) フォード・モーター(F)
主な戦略 大型ピックアップ・SUV、EV、ソフトウェア、OnStar/Super Cruise。 Ford Blue/Model e/Proの分業、商用車と継続サービス。
2025年通期売上高 約1,850億ドル(前年比約1.3%減) 約1,873億ドル(前年比約1%増)
2025年通期利益 株主帰属純利益約27億ドル、EBIT-adjusted約127億ドル。 GAAP純損失約82億ドル、Adjusted EBIT約68億ドル。
2026年Q2売上高 480億ドル 483億ドル
2026年Q2利益 株主帰属純利益約13億ドル、EBIT-adjusted約39億ドル。 GAAP純損失約13億ドル、Adjusted EBIT約25億ドル。
2026年通期調整後EBIT見通し 140~160億ドル 100~110億ドル
定期配当(2026年直近) 四半期0.18ドル/年率0.72ドル 四半期0.15ドル/年率0.60ドル
2026年10月7日終値・参考配当利回り 80.99ドル/約0.89% 12.12ドル/約4.95%
投資上の焦点 北米の利益率、EV調整、調整後FCF、自社株買い。 Proの採算、Model eの赤字、供給制約、配当維持。

※2026年Q2決算・会社見通しは各社公式資料、株価は米国市場の2026年10月7日終値です。定期配当利回りは直近配当を4倍して計算した参考値で、将来の配当を保証するものではありません。[9]

2026年Q2決算アップデート

  • GM:売上高480億ドル、EBIT-adjusted約39.4億ドル、調整後自動車FCF約50.3億ドル。2026年通期EBIT-adjusted予想を135~155億ドルから140~160億ドルへ引き上げました。[1]
  • フォード:売上高483億ドル、Adjusted EBIT約25.0億ドル、調整後FCF約21億ドル。2026年通期Adjusted EBIT予想を85~105億ドルから100~110億ドルへ引き上げました。[2]

業績と成長性の詳細分析

2025年通期売上高ではフォードがGMを上回りましたが、比較時には売上規模だけでなく、GAAP利益、調整後EBIT、FCFの定義・質を確認する必要があります。2026年Q2にGMの調整後EBIT率は約8.2%、フォードは約5.2%で、GMの北米利益率が全社の差を支えています。[1][2]

年・期間 GM 売上高・利益 フォード 売上高・利益
2026年Q2 売上480億ドル、純利益約13億ドル、EBIT-adjusted約39億ドル。 売上約483億ドル、GAAP純損失約13億ドル、Adjusted EBIT約25億ドル。
2026年Q1 売上436億ドル、EBIT-adjusted約43億ドル。[10] 売上433億ドル、Adjusted EBIT約35億ドル。[11]
2025年通期 売上約1,850億ドル、純利益約27億ドル、EBIT-adjusted約127億ドル。 売上約1,873億ドル、GAAP純損失約82億ドル、Adjusted EBIT約68億ドル。
2024年通期 売上約1,874億ドル、株主帰属純利益約60億ドル、EBIT-adjusted約149億ドル。 売上約1,850億ドル、Adjusted EBIT約102億ドル。

※B=10億ドル。両社とも12月決算。GMのEBIT-adjusted、フォードのAdjusted EBITとAdjusted FCF、自動車事業FCFは定義が同一ではありません。数値は端数を丸めています。

セグメント比較:利益の出どころが違う

項目 GM Ford
主力利益源 GM North America。2026年Q2のEBIT-adjustedは約34.5億ドル、利益率8.6%。 Ford BlueとFord Pro。2026年Q2のEBITはBlue約11.4億ドル、Pro約17.2億ドル。
EV事業 EV設備・投資計画を需要に合わせて再調整。専業EV部門の独立損益指標とは区別が必要。 2026年Q2のFord Model e EBITは約9.2億ドルの赤字。2026年通期は約40億ドルの赤字予想。
商用車・ソフトウェア Super Cruise、OnStar、車両連携サービス。 Ford Proの商用車、フリート管理、有料ソフトウェア。2026年9月末の有料ソフト契約は170万件超。
2026年Q2の課題 GAAP純利益は前年より減少。EV再調整・需要変化と北米販売動向を監視。 Ford ProのEBITが前年同期比約6億ドル減。アルミ供給制約や部材費用が重荷。

フォードは2026年Q2にFord BlueのEBITを前年の約6.6億ドルから約11.4億ドルへ伸ばしました。一方、Ford Proは約23.2億ドルから約17.2億ドルへ減少し、Model eの赤字は約13.3億ドルから約9.2億ドルへ縮小しました。改善と悪化が同時に生じており、単一部門だけでは全社評価を誤ります。[2]

配当の詳細比較:復活した配当、その中身は?

GMの直近四半期配当は0.18ドルで、2026年9月17日に支払われました。フォードの直近宣言済み定期配当は0.15ドルで、2026年9月1日が支払日です。10月8日時点で確認できる情報に基づいており、次回分は今後の取締役会発表を待つ必要があります。[5][6]

項目 GM フォード(F)
直近四半期配当 0.18ドル 0.15ドル
年率換算 0.72ドル 0.60ドル
2026年10月7日終値 80.99ドル 12.12ドル
参考表面利回り 約0.89% 約4.95%
直近支払日 2026年9月17日 2026年9月1日
株主還元の軸 自社株買い・増配 定期配当・業績に応じた追加還元

フォードの利回りは高いものの、配当額が変化しない限り株価下落でも利回りは上昇します。利回りが高いことは経営の安全性を示すものではありません。配当と調整後FCFに加え、GAAP利益、設備投資、財務健全性を確認します。

株主還元:GMは自社株買い、Fordは配当の存在感

GMは2026年1月に60億ドルの新たな自社株買い枠を承認しました。株式数の減少はEPSを押し上げる可能性がありますが、事業利益の成長とは分けて評価する必要があります。2026年通期の調整後自動車FCF見通しは95~115億ドルです。[7][1]

フォードの2026年Q2調整後FCFは約21億ドル、2026年通期の調整後FCF見通しは60~70億ドルです。定期配当の継続余力を考える際には、Ford Proの利益やModel eの赤字のほか、工場・電池関連の投資負担を見ます。[2]

EV戦略の現在地:投資の「再調整」とハイブリッド需要

GMは2025年にEV生産能力・電池投資計画を見直しました。フォードもF-150 Lightningの終了や従来型EV生産計画の縮小などを通じて、需要と採算に合ったモデルへ組み替えています。フォードはUniversal EV PlatformやFord Energyへの投資を継続しています。[7][2]

2026年10月上旬に公表された米国販売速報では、GMの2026年Q3販売台数は670,974台(前年同期比約5.5%減)、フォードは509,764台(約6.6%減)でした。これは販売台数であり、まだ発表されていない2026年Q3の売上高・利益実績と混同してはいけません。[12][13]

フォードはEscapeとLincoln Corsairの計画的終了が総販売減少の一因と説明し、Maverick HybridやF-Seriesの需要、Ford Proのソフトウェア契約拡大を強調しています。GMもEV市場縮小と廃止モデルの影響を挙げる一方、ピックアップや小型SUVなどの需要を報告しています。

EV戦略の確認点:販売台数だけでなく、価格・製品構成、1台当たり利益、電池コスト、補助金・関税、保証費用、ハイブリッド需要、商用車・ソフトウェアサービスの採算を確認する必要があります。

2026年Q3決算の確認時期

GMは2026年10月20日午前6時30分(米東部時間)にQ3決算資料を公開し、午前8時30分に説明会を開催する予定です。フォードのQ3決算日時は、2026年10月8日時点で確認した公式開示からは確定日を特定できなかったため、予想日を掲載していません。[14]

結論:どちらが投資スタイルに合うか

自社株買い、北米利益率、調整後FCFを重視するなら → GM

GMは2026年Q2の北米EBIT-adjusted利益率が8.6%で、調整後自動車FCFも約50億ドルを計上しました。通期調整後EBIT見通しは140~160億ドルです。配当利回りよりも、自社株買いと利益・FCFの持続性を重視する見方と相性があります。[1]

ただし、EV調整費用や販売台数の減少、金融子会社、関税・金利上昇への感応度が高く、Non-GAAP指標だけで判断しないことが重要です。

配当利回りと商用車・サービス事業を重視するなら → フォード(F)

フォードは2026年10月7日終値からの参考配当利回りが約4.95%とGMより高く、Ford Proと有料ソフトウェアを利益の柱として育成しています。通期調整後EBIT見通しも100~110億ドルへ上方修正しています。[2][13]

一方で2026年Q2はFord Proの利益が縮小し、Model eは赤字が続きました。BlueOval SK関連の非現金費用が示すように、EV・電池戦略の変更は会計損失や将来の現金負担につながる可能性があります。

まとめ:GMは資本効率、Fordは配当と商用事業

投資家の重視点 比較上の特徴 理由
配当利回り フォード 2026年10月7日終値ベースの参考利回り約4.95%。ただし減配の可能性あり。
自社株買い GM 2026年の新規60億ドル買戻し枠。実施状況と購入価格にも注意。
北米収益力 GM 2026年Q2のGMNA EBIT-adjusted利益率8.6%。
商用・サービス フォード Ford Proおよび有料ソフトウェア。ただし2026年Q2はPro減益。
EV戦略の課題 両社とも要注意 GMは投資再調整、フォードはModel eの赤字と事業再編費用。

両社とも、EV一本で伸びる銘柄とは言い切れません。今後は既存車種の収益力を維持しつつ、ハイブリッド、商用車、ソフトウェア・サービス、電池への投資をどこまで現金収益に結び付けられるかが重要です。


※本記事は2026年10月8日時点の公開情報に基づいています。2026年Q3の販売速報は決算とは別の指標です。株価、配当、会社見通しは変動します。本記事は個別銘柄の購入や売却を推奨するものではありません。

用語メモ:EBIT-adjusted/Adjusted EBITは各社の調整後利益指標です。GAAP利益や実際の現金収支を代替するものではありません。GMの調整後自動車FCFとフォードの調整後FCFは集計対象・調整項目が異なるため、数値の単純比較には注意してください。

【注】(出典リンク)

  1. GM 2026年Q2決算・通期見通し・GMNA・キャッシュフロー → GM SEC提出決算リリース(2026-07-21) → GM日本語決算要約(確認日:2026-10-08) ↩
  2. Ford 2026年Q2決算・セグメント利益・特別損失・通期見通し → Ford SEC提出決算リリース(2026-07-28) → Ford Form 10-Q(2026年6月期)(確認日:2026-10-08) ↩
  3. GMの2020年配当停止 → GM公式2020年4月の流動性確保策(確認日:2026-10-08) ↩
  4. Fordの2020年配当停止 → Ford Proxy Statement 2022(PDF)(確認日:2026-10-08) ↩
  5. GMの2026年配当日程・配当履歴 → GM Investor Relations「Historical Dividends」(確認日:2026-10-08) ↩
  6. Fordの2026年第3回配当・支払予定 → Ford SEC提出Q2決算リリース(確認日:2026-10-08) ↩
  7. GM 2025年通期業績・EV関連特別費用 → GM SEC提出2025年度決算(確認日:2026-10-08) ↩
  8. Ford 2025年通期業績・Ford Pro/Model e → Ford 2025年度決算説明資料(PDF)(確認日:2026-10-08) ↩
  9. 2026年10月7日のGM・Ford株価終値 → Stock Analysis「GM株価履歴」 → Stock Analysis「F株価履歴」(確認日:2026-10-08) ↩
  10. GM 2026年Q1決算実績 → GM Investor Relations「Q1 2026 Press Release」(確認日:2026-10-08) ↩
  11. Ford 2026年Q1決算実績 → Ford「Q1 2026 Press Release」(PDF)(確認日:2026-10-08) ↩
  12. GMの2026年Q3米国販売 → GM公式販売発表(2026-10-01)(確認日:2026-10-08) ↩
  13. Fordの2026年Q3米国販売・商用車・ハイブリッド → Ford公式販売発表(2026-10-02)(確認日:2026-10-08) ↩
  14. GMの2026年Q3決算発表予定日 → GM Investor Relations(2026-09-15)(確認日:2026-10-08) ↩

Posted by 南 一矢