DHRとTMOを比較:ダナハーとサーモフィッシャーサイエンティフィックの違いとは

ヘルスケア,銘柄比較

DHRとTMOを違いを踏まえて比較します。(2025年10月更新)

ダナハー(Danaher Corporation)とサーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific, Inc.)は医療機器製造メーカーです。
その株価の推移(チャート)、決算の予想と結果、配当金と利回り、業績(財務情報)はどうなっているのでしょうか。
これらの銘柄について、今後の見通しや将来性を探ってみます。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移(VHT:Vanguard Health Care Index Fund ETFを含めて比較)

※チャート右目盛り:10年国債利回り

※株価の成長率や52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、PBR、PSR、時価総額などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。今後の見通しの参考情報として目標株価も掲載。

株価推移や成長率比較については以下の関連記事を参照

DHR:ダナハー 今後の見通し

TMO:サーモフィッシャーサイエンティフィックの株価·配当·決算

決算(予想:結果)

決算の予想:結果については以下の関連記事を参照

ダナハー(DHR)決算:予想と結果 売上&EPS

サーモフィッシャーサイエンティフィック(TMO)決算:予想と結果 売上&EPS

【ライフサイエンスの巨人対決】ダナハー(DHR) vs サーモフィッシャー(TMO)!業績重視の徹底比較

長期投資家から絶大な人気を誇る、ライフサイエンス・ヘルスケア業界の2大トップ企業、ダナハー(DHR)サーモフィッシャー・サイエンティフィック(TMO)。両社はM&A(企業の買収)を繰り返して成長する「連続的買収企業」として知られていますが、その経営哲学と事業内容は大きく異なります。

本記事では、ご要望に基づき業績を重視して、この2社のビジネスモデル、収益性、そして将来性を徹底的に比較・分析します。

最重要ポイント:強さの源泉である「経営哲学」の違い

両社の本質的な違いは、その経営スタイルにあります。

  • ダナハー (DHR) →「DBS」という最強の経営システム
    ダナハーの強さの源泉は「ダナハー・ビジネス・システム(DBS)」と呼ばれる独自の経営改善手法。全社での継続的改善(カイゼン)を基盤に、買収先の生産性と収益性を高めます。公式資料でもDBSを中核に据えた実行力を強調しています。[1][2]
  • サーモフィッシャー (TMO) → 科学界の「ワンストップショップ」
    サーモは研究用試薬・分析機器から受託サービスまで幅広く提供し、「Serving Science」のミッションのもと巨大な製品・サービス群で顧客を囲い込みます(2024通期の年次報告・決算)。[3]

比較サマリー:経営のDHR、製品のTMO

項目 ダナハー (DHR) サーモフィッシャー (TMO)
強みの源泉 経営改善システム「DBS」[1] 科学研究分野での圧倒的な製品・サービス網[3]
主力事業 バイオテクノロジー、ライフサイエンス、診断[2] 分析機器、試薬・消耗品、ラボ/受託サービス[3]
成長戦略 M&A+DBSで収益性と規模を強化[2] M&Aで製品・サービス領域を拡張(2024-2025年も継続)[3][8]
配当利回り(直近) 約0.55%(2025-10-25時点)[9] 約0.33%(2025-10-15時点)[10]

業績と収益性の詳細分析

両社ともコロナ禍で伸長後に正常化しましたが、長期の需要ドライバー(創薬・細胞遺伝子治療・学術研究・品質管理など)は堅調です。売上規模はTMOが上回り、DHRはDBSを通じた効率性で強みを維持。2024通期では、DHRが$23.9Bで横ばいTMOが$42.88Bで横ばいでした(いずれもGAAPベース)。[4][11]

DHR 売上高(GAAP、通期) TMO 売上高(GAAP、通期)
2024 $23.88–$23.88B(実績:$23.875B)[4] $42.88B[11]
2023 $23.89B[4] $42.86B[12]
2022 $26.64B[4] $44.92B[13]
2021 (参考)ポートフォリオ再編期につき省略 $39.21B[14]

※B=10億ドル。各社の会計年度(12月期)ベース。DHRの数値は継続事業のみ(Veralto分離後の開示)に基づく再掲。TMOの2024通期GAAP営業利益率は17.1%(2023通期は16.0%)。[11][12]

結論:あなたに合うのはどちら?

両社はともに長期投資における「黄金銘柄」と見なされることも多い超優良企業です。どちらを選ぶかは、どのような「強さ」に投資したいかによります。

「卓越した経営システム」そのものに投資するなら → ダナハー (DHR)

DHRへの投資は、個別製品よりも「DBS」という経営手法への投資に近い発想です。事業ポートフォリオを柔軟に組み替え、収益性改善で価値を積み上げるモデルは2024通期でも健在です。[2]

「科学と研究の未来」全体に投資するなら → サーモフィッシャー (TMO)

TMOは膨大な製品・サービスを束ねるプラットフォームを強化。2024通期は横ばいながら、買収や新製品投入で裾野を広げています。[11][8]


※本ページの分析は2025年10月25日時点の公開情報に基づいています。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。

ミニ解説:2025年はTMOがSolventumの精製・ろ過事業(約$4.1B)買収を発表(クローズ予定は年内〜2025年末)。バイオプロセシングのろ過カテゴリ参入で、DHR等との競合領域を広げる動きです(発表時点の条件・影響見込み)。[8]

【注】(出典リンク)

  1. DBSの位置づけ(投資家向け概要) → Danaher Overview 2024(PDF)
  2. DBSと24年の実行・数値ハイライト → Danaher 2024 Annual Report(PDF)
  3. TMOの事業ミッションとポートフォリオ → Thermo Fisher 2024 Annual Report(PDF)Annual Reports 一覧
  4. DHR:2024通期 売上$23.9B(前年比フラット)等 → FY2024決算リリース / 補足(セグメント別・継続事業の売上表)→ Annual Report 2024(PDF)(該当表:p.87) ↩
  5. DHR:四半期配当の増額($0.32/株、2025年) → Danaher Press Releases(配当増額 2025-02-20 掲載)配当リリース 2025-09-09
  6. TMO:四半期配当の増額($0.43/株、2025年) → 配当増額 2025-02-19Dividend History
  7. TMO:2024年の自己株買い・配当等の資本配分($4.6B還元 含む) → FY2024決算リリース
  8. TMO:Solventumの精製・ろ過事業の買収発表(約$4.1B、クローズ見込み含む) → 一次:Reuters(2025-02-25) / 二次:WSJ
  9. DHR配当利回り(確認日:2025-10-25) → Macrotrends(Dividend Yield)
  10. TMO配当利回り(確認日:2025-10-15) → Macrotrends(Dividend Yield)
  11. TMO:2024通期 売上$42.88B、GAAP営業利益率17.1% → FY2024決算リリース(Full Year項) ↩
  12. TMO:2023通期 売上$42.86B、GAAP営業利益率16.0% → FY2023決算リリース
  13. TMO:2022通期 売上$44.92B → FY2022決算リリース
  14. TMO:2021通期 売上$39.21B → FY2021決算リリース

Posted by 南 一矢