LMT(ロッキードマーチン)配当分析:安定成長で有事に強い軍事・防衛銘柄の特色

資本財,軍事株,配当

【2026年版】Lockheed Martin (LMT) 徹底分析:防衛の巨人、その安定性と配当力の源泉

はじめに
Lockheed Martin(ロッキード・マーチン)は、F-35戦闘機などで知られる世界最大級の防衛・航空宇宙企業です。収益は各国政府との長期大型契約に支えられ、一般的な景気循環と異なるサイクルで動きます。[1]
本記事では、同社がいかにして地政学的な需要を捉えて成長し、同時に23年連続で増配する優良配当株の地位を築いたのかを、時系列データで検証します。

【免責事項および出典について】

  • 財務データは主にLockheed MartinのIR資料(決算ニュースリリース・Form 10-K/10-Q)を一次情報とし、MacroTrends等の系列データも補助的に参照しています。詳細出典は末尾参照。
  • 会計年度は12月締め。比率・CAGRは筆者算出。
  • 本記事は情報提供であり、特定銘柄の売買を推奨しません。

1. 株主還元の核心:23年連続増配の実力

同社は23年連続増配を継続。2025年10月に四半期配当を$3.45へ引き上げ(5%増配)、2025年の年間配当は$13.35となりました。[3]

1.1. 配当指標の推移(2014年-2025年)

過去10年以上の配当関連指標の推移です(2025年は実績値)。

会計年度 年間配当
(1株あたり, $)
配当成長率
(前年比)
EPS
(希薄化後, $)
配当性向
(純利益ベース)
平均配当利回り
(年平均株価ベース)
2014 5.49 12.9% 11.21 49.0% 3.3%
2015 6.15 12.0% 11.46 53.7% 3.0%
2016 6.77 10.1% 17.07 39.7% 2.9%
2017 7.46 10.2% 6.75 110.5% 2.5%
2018 8.20 9.9% 17.59 46.6% 2.6%
2019 9.00 9.8% 21.95 41.0% 2.5%
2020 9.80 8.9% 24.30 40.3% 2.7%
2021 10.60 8.2% 22.76 46.6% 2.9%
2022 11.40 7.5% 21.66 52.6% 2.6%
2023 12.15 6.6% 27.55 44.1% 2.7%
2024 12.90 6.2% 22.31 57.8%
2025 13.35 3.5% 21.49 62.1%
CAGR (年平均成長率)
過去10年 (FY15-24) 7.7% 6.9%
過去5年 (FY20-24) 7.1% -1.7%

出典: 公式決算リリース/SEC。[4] 2025年は実績(EPS $21.49、年配当$13.35、配当性向62.1%)。2017年の配当性向急騰は税制改革の一時要因。2025年のEPSは年金移管費用$4.79億ドル(税引後$1.63/株)を含む。

  • 安定した配当成長: 2014-2025で年額配当は5.49→13.35へ、23年連続増配を継続。
  • 配当性向は上昇傾向: 2025年は年金費用影響でやや上振れ(約62%)。中期的には40~55%レンジが目安。

1.2. フリーキャッシュフローで見る配当の安全性

配当の原資はフリーキャッシュフロー(FCF)。2025年は年金拠出を織り込みつつもFCFが配当総額を大幅に上回りました。

会計年度 営業CF
(百万$)
フリーCF
(百万$)
配当支払総額
(百万$)
FCF配当カバー率
(フリーCF / 配当総額)
2014 3,866 2,504 1,701 1.5倍
2015 5,101 3,825 1,847 2.1倍
2016 5,189 3,820 1,988 1.9倍
2017 6,476 5,263 2,118 2.5倍
2018 3,138 1,833 2,301 0.8倍
2019 7,311 5,897 2,504 2.4倍
2020 8,183 6,838 2,735 2.5倍
2021 9,221 7,700 2,875 2.7倍
2022 7,802 6,108 3,025 2.0倍
2023 7,920 6,204 3,121 2.0倍
2024 6,972 5,287 3,059 1.7倍
2025 8,557 6,908 3,131 2.2倍

出典: 公式決算リリース。[5] 2025年は営業CF $85.6億、FCF $69.1億(年金拠出$8.6億を控除後)、年間配当支払$31.3億。

2. 業績分析:緩やかだが磐石な成長

売上は安定的に拡大。2025年はネットセールス$75.0B(前年比+6%)、年金移管費用を含む特別損失の影響でEPSは$21.49に低下するも、年末受注残高は$194.0Bと過去最高を更新し、将来の売上見通しは一層強固になっています。[6]

会計年度 売上高(百万$) 純利益(百万$) EPS ($)(1株当たり利益) 受注残高(百万$)
2014 45,600 3,614 11.21 80,500
2015 46,132 3,605 11.46 99,600
2016 47,248 5,302 17.07 96,200
2017 51,048 2,004 6.75 99,900
2018 53,762 5,046 17.59 130,500
2019 59,812 6,230 21.95 144,000
2020 65,398 6,833 24.30 147,100
2021 67,044 6,315 22.76 135,400
2022 65,984 5,732 21.66 150,000
2023 67,571 6,920 27.55 160,600
2024 71,043 5,336 22.31 176,000
2025 75,048 5,017 21.49 193,622
CAGR (年平均成長率)
過去10年 (FY15-24) 4.4% 4.0% 6.9% 5.9%
過去5年 (FY20-24) 2.1% -4.8% -1.7% 4.6%

出典: 公式決算リリース。[7] 2025年は売上$750億、純利益$50.2億、EPS$21.49、受注残高$1,936億。2025年のEPSには年金移管費用(税引後$3.77億、$1.63/株相当)を含む。

2026年度ガイダンス

2026年度の会社予想は以下の通りです。[8]

  • 売上高: $775億〜$800億(前年比+5%程度)
  • 希薄化後EPS: $29.35〜$30.25
  • フリーキャッシュフロー: $65億〜$68億

3. 財務分析:防衛企業特有のバランスシート

最重要ポイント:なぜ自己資本比率が低く見えるのか?

LMTは巨額の年金債務の計上と長年の自社株買いにより、自己資本が会計上圧縮されやすい構造です。政府契約によりコスト転嫁の仕組みがあるため、直ちに財務不安に結びつくものではありません。一般製造業の尺度で自己資本比率やROEを評価するのは適切ではなく、受注残高とキャッシュ創出力を重視すべきです。

4. 投資判断のヒント:LMTの強みとリスク

Lockheed Martinの強み (事業の優位性)

  • 圧倒的な事業規模と技術力:F-35やミサイル防衛など代替困難な大型プログラムを多数保有。2025年にはF-35を過去最高の191機納入。[9]
  • 極めて高い参入障壁:政府との信頼・高度技術・巨額資本が必要で新規参入は実質困難。
  • 長期的な収益の安定性:2025年末受注残高$1,940億と年商の約2.6倍。
  • 強力な株主還元:23年連続増配、FCFが配当を十分にカバー。

注意すべきリスク要因

  1. 政府予算への依存:財政・政権の方針変更による防衛費の振れ。
  2. プログラムリスク:大型案件の遅延・コスト超過(2024年・2025年は機密プログラム損失を計上)。
  3. サプライチェーン:エンジン・推進系・弾薬の増産体制整備の遅れ。
  4. ESG観点:一部投資家層の投資対象外化。

5. まとめ

2025年は売上6%成長と記録的な受注残$1,940億で将来収益の見通しが一層強化。一方、年金移管費用やプログラム損失の計上でEPSは一時的に低下しました。FCFは配当の2.2倍をカバーしており、配当の持続性は高いと評価できます。2026年度ガイダンスではEPS $29〜$30への回復を見込んでおり、投資判断では受注の質と進捗、政府予算の動向を継続モニタリングしましょう。

【注】(出典リンク)

  1. Lockheed Martin会社概要 → Lockheed Martin公式サイト(確認日:2026-02-06)
  2. 2025年通期決算(受注残高$194B) → 2025年通期決算ニュースリリース(確認日:2026-02-06)
  3. 2025年Q4配当引き上げ(23年連続増配) → 配当発表リリース(確認日:2026-02-06)
  4. 配当履歴・EPS推移 → Lockheed Martin Dividend HistorySEC EDGAR Form 10-K(確認日:2026-02-06)
  5. 2025年キャッシュフロー実績 → 2025年通期決算ニュースリリース(確認日:2026-02-06)
  6. 2025年売上・純利益・受注残高 → 2025年通期決算ニュースリリース(確認日:2026-02-06)
  7. 過去業績推移 → SEC EDGAR Form 10-KMacroTrends(補助)(確認日:2026-02-06)
  8. 2026年度ガイダンス → 2025年通期決算ニュースリリース(確認日:2026-02-06)
  9. 2025年F-35納入実績(191機) → 2025年通期決算ニュースリリース(確認日:2026-02-06)


Posted by 南 一矢