LMT(ロッキードマーチン)配当分析:安定成長で有事に強い軍事・防衛銘柄の特色

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【2026年7月版】Lockheed Martin(LMT)徹底分析:過去最高の受注残と安定配当を支える防衛需要


【2026年7月版】Lockheed Martin(LMT)徹底分析:過去最高の受注残と安定配当を支える防衛需要

🔄 2026年7月更新情報

2026年7月23日発表の2026年Q2決算、2026年7月22日宣言のQ3配当、過去最高となった受注残高、引き上げ後の2026年通期ガイダンス、Ultra Maritime買収合意を反映しました。[1][2]

はじめに
Lockheed Martin(ロッキード・マーチン)は、F-35戦闘機、PAC-3、THAAD、精密誘導兵器、ヘリコプター、海軍システム、宇宙システムなどを手がける世界最大級の防衛・航空宇宙企業です。収益の多くは米国政府や同盟国との長期契約に支えられており、一般消費や民間設備投資とは異なる需要サイクルを持ちます。[3]

2026年Q2は、売上高が前年同期比11%増の200.63億ドル、希薄化後EPSが7.94ドル、フリーキャッシュフローが29.17億ドルとなりました。さらに、THAAD迎撃ミサイルの大型複数年契約を含む新規受注により、受注残高は2026年6月28日時点で過去最高の2,304.16億ドルに増加しています。[1]

最重要ポイント:受注残は過去最高。ただし、利益の前年比急増には反動要因もある

2026年Q2末の受注残高は2,304.16億ドルで、2025年通期売上高750.48億ドルの約3.1年分に相当します。特にMissiles and Fire Controlの受注残が、2025年末の466.50億ドルから878.82億ドルへ増加しました。主因は、THAAD迎撃ミサイルを増産する最大350億ドル規模の7年契約です。[4]

一方、2026年Q2の利益が前年同期から大幅に増えた背景には、2025年Q2に計上した航空・ヘリコプター関連の合計約16億ドルの将来損失見積額が反動要因として含まれます。需要増と生産拡大は実質的な追い風ですが、単純な前年比だけで収益力を判断しないことが重要です。[1]

2026年7月24日終値
$582.60
現行四半期配当
$3.45
現行年率配当
$13.80
現行配当利回り
約2.37%

【免責事項および出典について】

  • 財務データは、Lockheed MartinのForm 10-K、Form 10-Q、決算リリース、IR資料を優先して確認しています。株価は2026年7月24日終値を使用しています。[5]
  • 配当性向、FCF配当カバー率、自己資本率などには、会社公表値をもとに筆者が算出した概算を含みます。
  • 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入や売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

1. 株主還元:23年連続増配とFCFが支える配当

Lockheed Martinは2025年に四半期配当を3.30ドルから3.45ドルへ引き上げ、23年連続の増配を達成しました。2026年7月22日に宣言された2026年Q3配当も1株3.45ドルで、支払日は2026年9月25日、基準日は2026年9月1日です。2026年に宣言済みの配当はQ1~Q3合計で10.35ドル、現行年率換算は13.80ドルです。[2]

1.1. 配当指標の推移

会計年度 年間配当
1株あたり、$
配当成長率 GAAP EPS
$
配当性向
EPSベース
2020 9.80 約8.9% 24.50 約40%
2021 10.60 約8.2% 22.76 約47%
2022 11.40 約7.5% 21.66 約53%
2023 12.15 約6.6% 27.55 約44%
2024 12.75 約4.9% 22.31 約57%
2025 13.35 約4.7% 21.49 約62%
2026
現行年率
13.80 約3.4% 29.95~30.65
会社見通し
約45~46%

2026年の年間配当は、四半期3.45ドルを4回受け取ると仮定した年率換算値です。2026年Q4配当は2026年7月26日時点では未宣言です。[2]

注意:決算後の株価上昇で配当利回りは約2.37%へ低下

2026年7月24日終値582.60ドルに対し、現行年率配当13.80ドルで計算した配当利回りは約2.37%です。2026年5月7日時点の約2.7%から低下しており、現在のLMTは「高利回り株」というより、受注成長、FCF、増配継続を評価する配当成長株としての性格が強くなっています。[5]

1.2. フリーキャッシュフローで見る配当の安全性

期間 営業CF
百万$
設備投資
百万$
FCF
百万$
配当支払
百万$
FCF配当
カバー率
2020 8,183 1,766 6,417 約2,600 約2.5倍
2021 9,221 1,522 7,699 約2,700 約2.9倍
2022 7,802 1,670 6,132 約2,800 約2.2倍
2023 7,920 1,766 6,154 約3,000 約2.1倍
2024 6,972 1,685 5,287 約3,000 約1.8倍
2025 8,557 1,649 6,908 約3,100 約2.2倍
2026年上期 3,455 829 2,626 1,612 約1.6倍
2026年
会社見通し
9,200~9,400 2,000~2,400 7,000~7,200 約3,200 約2.2倍

FCFは会社開示のNon-GAAP指標。2026年上期の配当支払額はキャッシュフロー計算書の実績です。2026年通期の配当総額は現行年率と株式数からの概算です。[1]

  • Q2にキャッシュフローが大きく回復:2026年Q2の営業CFは32.35億ドル、FCFは29.17億ドルでした。顧客からの入金時期と税金支払の減少が改善要因です。
  • 上期累計でも配当をカバー:2026年上期のFCFは26.26億ドル、配当支払は16.12億ドルで、カバー率は約1.6倍でした。
  • 通期見通しを引き上げ:会社は2026年通期FCF見通しを従来の65~68億ドルから70~72億ドルへ引き上げました。現行配当を約2.2倍カバーできる計算です。[1]

2. 業績分析:全事業が増収、ミサイル生産拡大が成長を牽引

期間 売上高
百万$
純利益
百万$
EPS
$
FCF
百万$
受注残
百万$
2020 65,398 6,833 24.50 6,417 147,100
2021 67,044 6,315 22.76 7,699 135,400
2022 65,984 5,732 21.66 6,132 150,000
2023 67,571 6,920 27.55 6,154 160,600
2024 71,043 5,336 22.31 5,287 176,000
2025 75,048 5,017 21.49 6,908 193,622
2026年Q2 20,063 1,836 7.94 2,917 230,416
2026年上期 38,084 3,324 14.38 2,626 230,416
2026年
会社見通し
79,750~81,750 29.95~30.65 7,000~7,200

2026年Q2および上期は2026年6月28日終了期間。2026年通期見通しは2026年7月23日時点です。[1]

2.1. 2026年Q2:売上は11%増、全セグメントが増収

2026年Q2 売上高
百万$
前年比 営業利益
百万$
営業利益率
Aeronautics 8,112 +9% 760 9.4%
Missiles and Fire Control 4,101 +19% 594 14.5%
Rotary and Mission Systems 4,354 +9% 437 10.0%
Space 3,496 +6% 371 10.6%
事業部門合計 20,063 +11% 2,162 10.8%
  • Aeronautics:F-35生産契約の数量増加が寄与し、売上は81.12億ドルとなりました。前年同期の分類プログラム損失の反動で営業利益も改善しました。
  • Missiles and Fire Control:PAC-3、THAAD、PrSMなどの増産により売上は19%増。営業利益率は14.5%で、4事業の中で最も高い水準です。
  • Rotary and Mission Systems:売上は9%増。ただし前年同期に計上したカナダ海上ヘリコプター計画などの損失反動が利益改善の大きな要因です。
  • Space:Fleet Ballistic MissileとNext Generation Interceptorの数量増加により6%増収となりました。[1]

2.2. 2026年通期ガイダンスを引き上げ

項目 2026年4月時点 2026年7月更新
売上高 775.0~800.0億ドル 797.5~817.5億ドル
事業部門営業利益 84.25~86.75億ドル 85.0~87.0億ドル
希薄化後EPS 29.35~30.25ドル 29.95~30.65ドル
営業CF 91.5~94.5億ドル 92.0~94.0億ドル
設備投資 25~28億ドル 20~24億ドル
FCF 65~68億ドル 70~72億ドル

会社は売上、EPS、FCFの見通しを引き上げました。特に設備投資見通しを引き下げたことで、FCF見通しは従来レンジから5億ドル前後上方修正されています。ただし、このガイダンスには、2026年7月に発表したUltra Maritime買収の影響は含まれていません。[1]

2.3. 受注残高:THAAD契約でMFCが急拡大

セグメント 2025年末
百万$
2026年Q2末
百万$
増減
Aeronautics 59,435 54,356 -5,079
Missiles and Fire Control 46,650 87,882 +41,232
Rotary and Mission Systems 47,715 48,454 +739
Space 39,822 39,724 -98
合計 193,622 230,416 +36,794

受注残の増加は、主に最大350億ドル規模のTHAAD複数年契約によるものです。長期の需要確度が高まる一方、受注残が売上や利益へ変わるには、生産設備、人材、部品調達、顧客との価格確定、納入実行が必要です。受注残の大きさだけでなく、営業利益率とキャッシュ回収を継続して確認する必要があります。[4]

3. バランスシートと資本配分:自己資本は改善、上期の自社株買いはゼロ

時点 総資産
百万$
総負債
百万$
株主資本
百万$
自己資本率 長期債務
百万$
2024年末 55,617 49,284 6,333 11.4% 19,627
2025年末 59,840 53,119 6,721 11.2% 20,532
2026年Q1末 59,238 51,749 7,489 12.6% 20,529
2026年Q2末 62,450 53,682 8,768 約14.0% 20,538
  • 現金:2026年Q2末の現金・現金同等物は37.91億ドルです。
  • 自己資本:株主資本は87.68億ドル、自己資本率は約14.0%へ改善しました。ただし、一般的な大型企業と比べれば依然として低い水準です。
  • 債務返済:2026年上期に11.68億ドルの長期債務を返済しました。
  • 自社株買い:2026年上期の自社株買いは0ドルでした。前年同期は12.50億ドルを実施しています。配当、設備投資、債務返済、将来の買収資金とのバランスを優先した資本配分とみられます。[1]

4. 成長戦略:ミサイル増産とUltra Maritime買収

4.1. ミサイル・防空生産能力の拡大

Lockheed MartinはPAC-3、THAAD、PrSMなどの需要拡大に対応するため、生産設備とサプライチェーンへ投資しています。2026年6月には、THAAD迎撃ミサイルの生産を最大4倍へ拡大することを目的とした、最大350億ドル・7年間の契約を獲得しました。これは受注残の急増だけでなく、長期的な設備投資と生産量の可視性を高める契約です。[4]

4.2. Ultra Maritimeを34.5億ドルで買収へ

2026年7月6日、Lockheed Martinは海中戦・対潜水艦戦に強みを持つUltra Maritimeを34.5億ドルで買収する契約を発表しました。Ultra Maritimeはソナー、ソノブイ、魚雷防御、レーダー、自律型海洋センシングなどを手がけ、買収完了後はRotary and Mission Systemsへ編入される予定です。[6]

この買収は、海中監視と対潜戦能力を強化する戦略的な意味があります。一方、2026年Q2末時点では未完了であり、規制承認、資金調達、統合コスト、買収後の収益性がリスクです。会社の2026年ガイダンスには買収影響が含まれていません。

5. 投資判断のヒント:LMTの強みとリスク

Lockheed Martinの強み

  • 過去最高の受注残:2026年Q2末の受注残は2,304.16億ドルで、長期的な売上の可視性を支えます。
  • F-35という基幹プログラム:生産、維持、アップグレードが長期収益源となり、2026年Q2も生産契約の数量増加が増収に寄与しました。
  • ミサイル・防空需要:PAC-3、THAAD、PrSMなどの増産がMFCの成長と高い利益率を支えています。
  • 配当余力:2026年の会社FCF見通しは70~72億ドルで、現行配当を約2.2倍カバーできる見込みです。
  • 通期見通しの上方修正:売上、EPS、FCFの見通しを2026年7月に引き上げました。

注意すべきリスク要因

  1. 固定価格契約リスク:複雑な開発・製造案件でコストが想定を上回ると、将来損失を一括認識する可能性があります。2025年Q2の巨額損失が典型例です。
  2. 利益の前年比に反動が含まれる:2026年Q2の利益急増は、需要拡大だけでなく前年同期の損失反動による部分が大きく、基礎的な利益率を分けて見る必要があります。
  3. 生産能力とサプライチェーン:受注が増えても、部品、人材、設備、政府支給品の不足が納入とキャッシュ回収を遅らせる可能性があります。
  4. 政府予算への依存:米国政府・同盟国の防衛予算、調達政策、継続予算、政府閉鎖、輸出承認の影響を受けます。
  5. 自己資本の薄さ:2026年Q2末の自己資本率は約14.0%で、財務レバレッジは高めです。
  6. 買収リスク:Ultra Maritime買収には規制承認、資金調達、統合、期待したシナジーを実現できないリスクがあります。
  7. バリュエーション:2026年7月24日終値582.60ドルは、2026年EPS見通し中間値30.30ドルに対して約19倍です。決算後の株価上昇により、配当利回りは約2.37%へ低下しています。

6. まとめ:過去最高の受注残を利益とFCFへ転換できるか

Lockheed Martinは、F-35、ミサイル防空、精密打撃、ヘリコプター、海軍・宇宙システムを持つ防衛・航空宇宙セクターの中核企業です。2026年Q2は全事業が増収となり、売上高200.63億ドル、FCF29.17億ドルを計上しました。THAAD大型契約により、受注残は過去最高の2,304.16億ドルへ増加しています。

配当面では、四半期3.45ドル、現行年率13.80ドルを維持しています。2026年7月24日終値582.60ドルに対する利回りは約2.37%で、高配当株というより配当成長株に近い水準です。2026年FCF見通し70~72億ドルに対し、配当総額は約32億ドル規模とみられ、配当の安全性は高いと判断できます。

一方、2026年Q2の利益改善には前年同期の巨額損失反動が含まれます。受注残を実際の売上、営業利益、FCFへ変えるには、生産拡大、サプライチェーン、固定価格契約の管理が不可欠です。LMTを評価する際は、受注額だけでなく、事業部門利益率、FCF、納入実績、プログラム損失をあわせて確認することが重要です。

ミニ解説:LMTを見るときの実務的なチェックポイント

四半期ごとに、①受注残高、②MFCとAeronauticsの売上・利益率、③営業CFとFCF、④固定価格契約の損失、⑤自社株買いと債務、⑥買収の進捗を確認すると、需要の強さが株主価値へつながっているか判断しやすくなります。

【注】(出典リンク)

  1. 2026年Q2決算・受注残・セグメント実績・CF・BS・通期見通し → 一次情報:Lockheed Martin「Second Quarter 2026 Financial Results」Lockheed Martin 2026 Q2 Form 10-Q(確認日:2026-07-26)
  2. 2026年Q3配当・配当履歴 → 一次情報:Lockheed Martin「Third Quarter 2026 Dividend」Lockheed Martin Dividend History(確認日:2026-07-26)
  3. 会社概要・2025年通期・事業構成 → 一次情報:Lockheed Martin 2025 Form 10-KLockheed Martin Investor Relations(確認日:2026-07-26)
  4. THAAD最大350億ドル複数年契約 → 一次情報:Lockheed Martin「THAAD Seven-Year Procurement Award」(確認日:2026-07-26)
  5. 2026年7月24日株価・配当利回り計算 → 一次情報:Lockheed Martin Historical Price Lookup → 補助:Investing.com「LMT Historical Data」(確認日:2026-07-26)
  6. Ultra Maritime買収合意 → 一次情報:Lockheed Martin「To Acquire Ultra Maritime Solutions」(確認日:2026-07-26)


Posted by 南 一矢