【LMT】ロッキードマーチンの株価と配当、決算

2019年5月24日

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ロッキードマーティン社(LMT)はアメリカ随一の防衛(軍需)大手企業で、ステルス戦闘攻撃機F35の主要な製造元です。

この戦闘機はNATO諸国や日本などと国際共同開発が進められてきました。

直近の4/23の決算は非常によく、LMTの株価は約6%ほど急騰しました。

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LMTは軍事企業の代表格

LMTについて、そもそもの説明から始めます。

防衛産業やロッキード・マーティン社、F35等についてネットで説明は出ていますが、やや難しいものが多いからです。

疑問①:軍需企業は良いのか悪いのか?

ロッキードと聞くと、歴史の教科書で見た収賄事件(ロッキード事件:田中角栄逮捕)を思い出す方もいるかもしれません。

この種の防衛産業は日本ではよくないイメージが先行しており、ガンダム等のアニメでもよく悪役にされています。

しかし、実際のところ、日本を守っているのは、米国の防衛産業が生んだ高性能な装備です。

例えば、F15戦闘機はボーイング社からのライセンス生産、ミサイル防衛システムはレイセオン社、F16戦闘機はロッキード・マーティン社がつくっています(自衛隊のF2戦闘機はF16の日本向けバージョン)。

80年代以降の日本の平和はF15とF16の大量導入で守られたともいわれており、実際は、日本国民1億2千万人は米国の防衛産業の恩恵にあずかっています。

軍産複合体批判などもあって、日本では米軍需企業について、よいイメージがありませんが、彼らがつくった装備がなければ、日本人は今頃、中国語を話さなければいけなくなっていたのかもしれません。

むろん、軍需企業は「戦争が起きれば儲かる」という危ない構造を抱えているわけですが、日本やNATO、オーストラリアなどの「同盟国の防衛」を支える役割も担ってきました。

実際に、自衛隊が用いるF35Aのお披露目の式典では「この戦闘機は今後の日米同盟の象徴だ」というPRがなされています。

同盟と言っても、それを支える装備がなければお題目になるので、「F35は日米同盟の象徴」になっているわけです。

(F4戦闘機の役割終了に伴い、日本ではF35AをLMT社から購入した)

軍需企業の評価に関しては、功罪を踏まえた判断が必要です。

疑問②:ロッキード・マーティン社(LMT)はどんな企業?

LMT社はアメリカの最大手の防衛系企業です。

「あれっ。ボーイングじゃないの?」と思われた方もいるかもしれませんが、ボーイングは約7割が民間向けの売上です。

LMTの売上の約8割は軍需部門なので、こちらのほうが軍需主体の企業なのです。

LMTはアメリカナンバーワンの軍需企業と言っても過言ではなく、ここで生み出される装備が世界の安全保障と平和、戦争に非常に大きな影響を与えています。

その装備は空軍と宇宙に関わるものが多いので「軍需主体の航空機メーカー」(『米国株速報』)という説明がピッタリ当てはまります。

ジャンルが近いメーカーはノースロップ・グラマン社(NOC)とレイセオン社(RTN)ですが、18年の売上高で見ると、LMTが500億ドル以上、NOCが300億ドル、RTNは270億ドルの規模となっています。

(なお、18年末の地域別売上高は米国が71%、欧州が10.1%、アジア太平洋が9.8%、中東が6.7%)

主な指標を概観

まず、主要指標のデータを見てみます(出所はグーグルファイナンスなど)

1/2株価 258.4
5/10株価 341.4
株価上昇率 32.1%
52週高値 351.4
52週安値 241.2
EPS 19.57
PER 17.06
配当(利回り) 8.80 (2.58%)
時価総額(億$) 944
株式数(億) 2.8

株価推移(チャートと伸び率)

次に、株価の推移を見てみます(青線が株価推移。赤線が200日間の移動平均線)

株価の推移を1年ごとに見てみましょう

★1:各年の株価伸び率(※19年終値は5/10)
LMT 初値 最安 最高 終値 上昇率
2019 258.4 258.1 309.7 341.4 32%
2018 322.0 245.2 361.0 261.8 -19%
2017 251.2 250.9 322.8 321.1 28%
2016 214.0 206.1 267.6 249.9 17%
2015 192.1 185.5 226.4 217.2 13%
2014 147.1 146.1 196.8 192.6 31%
2013 93.8 86.7 148.8 148.7 58%
2012 82.1 80.0 94.9 92.3 12%
2011 70.2 66.9 82.3 80.9 15%
2010 75.9 68.0 86.9 69.9 -8%
2009 84.3 58.2 86.2 75.4 -11%
2008 105.8 68.0 119.6 84.1 -21%
★2:各年初から2019/5/10までの伸び率
19年~ 18年~ 17年~ 16年~ 15年~ 14年~
29% 4% 33% 56% 74% 127%
13年~ 12年~ 11年~ 10年~ 09年~ 08年~
256% 307% 376% 340% 296% 216%

配当利回りと配当性向

さらに、配当利回りを見てみます

権利落ち日 1株配当 配当利回り 当日株価
2019/06/03 2.2 #N/A #N/A
2019/03/01 2.2 2.7% 309.5
2018/12/03 2.2 2.8% 296.8
2018/09/04 2 2.5% 321.9
2018/06/01 2 2.5% 316.63
2018/03/01 2 2.2% 339.69
2017/12/01 2 2.4% 313.57
2017/09/01 1.82 2.4% 302.19
2017/06/01 1.82 2.5% 280.96
2017/03/01 1.82 2.6% 268.38
2016/12/01 1.82 2.5% 266.4
2016/09/01 1.65 2.7% 243.61
2016/06/01 1.65 2.7% 238.08
2016/03/01 1.65 2.9% 218.13

配当性向の推移もモーニングスター(MS)社のデータで確認してみましょう。

★配当性向=1株当たり配当÷EPS×100〔純利益から配当金を支払っている割合〕

★MS社は非GAAPのEPSで配当性向を試算。GAAP基準のEPS試算〔=単純計算〕の箇所は筆者挿入。

年/月 EPS 配当 配当性向
(GAAP) 単純計算 MS試算
2008/12 7.78 1.83 23.3 23.3
2009/12 7.64 2.34 30.6 30.1
2010/12 7.81 2.64 33.8 36.8
2011/12 7.81 3.25 41.6 37.2
2012/12 8.36 4.15 49.6 49.6
2013/12 9.13 4.78 52.4 49.6
2014/12 11.21 5.49 49 53.8
2015/12 11.46 6.15 53.7 53.2
2016/12 17.49 6.77 39.7 49.6
2017/12 6.75 7.46 110.5 59
2018/12 17.59 8.2 46.6 75.8

四半期決算(予想と実値)

さらに、ロイターが調べた四半期決算のEPSと売上の予想を見ていきます。(2019/4/25、売上単位は100万ドル)。

19年第1四半期では、通年売上ガイダンスが558~573億$から568~583億$に改定されました。

EPS:予想と結果

EPS予想 平均 上限 下限 期間
2020 24.38 26.85 21.4 1年
2019 19.58 20.3 19.2 1年
9-19 5.09 5.38 4.78 3カ月
6-19 4.84 5.05 4.63 3カ月
EPS 予想 結果
3-19 4.34 5.73 1.39 32.0
12-18 4.40 4.39 0.01 0.2
9-18 4.31 5.14 0.83 19.3
6-18 3.92 4.31 0.39 9.9
3-18 3.40 4.02 0.62 18.4
12-17 4.07 3.87 0.20 4.8
9-17 1.23 1.34 0.11 0.6

売上高:予想と結果

売上予想 平均 上限 下限 期間
2020 60253 62815 58281 1年
2019 57039 58456 55624 1年
9-19 14626 15201 13908 3カ月
6-19 14143 14361 13885 3カ月
売上 予想 結果
3-19 12585 14336 1751 13.9
12-18 13753 14411 658 4.8
9-18 13073 14318 1245 9.5
6-18 12737 13398 661 5.2
3-18 11242 11635 393 3.5
12-17 14726 15137 411 2.8
9-17 12807 12169 638 5.0

※決算予想では米国会計基準(GAAP)とは異なる「非GAAP基準」の数値が多用されています。これは各社が経営実態を踏まえて調整した数値です(売上とEPSの数値が後述のGAAP基準での数値と異なる場合は、非GAAP基準の数値)

通年決算(GAAP基準)

最後に、通年決算の数字を見てみます(売上、利益、資産、負債、資本、キャッシュフローなどの単位は百万ドル。EPS=希薄化後EPS)。

損益計算(売上、純利益等)

売上高 営業CF 同マージン 純利益
2008/12 41212 4724 11.5% 3185
2009/12 43867 3487 7.9% 2973
2010/12 45671 3801 8.3% 2878
2011/12 46499 4253 9.1% 2655
2012/12 47182 1561 3.3% 2745
2013/12 39243 4546 11.6% 2981
2014/12 39946 3866 9.7% 3614
2015/12 40536 5101 12.6% 3605
2016/12 47248 5189 11.0% 5302
2017/12 49960 6476 13.0% 1963
2018/12 53762 3138 5.8% 5046

※同マージン=営業キャッシュフローマージン。15%以上あれば優良な数値。通常、売上高>営業CF>純利益となる。営業CF<純利益となる企業は粉飾決算の可能性あり。

EPSや営業利益率など

営業利益率 EPS DSO
2008/12 8.5% 7.78 49.6
2009/12 9.8% 7.64 45.9
2010/12 11.1% 7.81 47.1
2011/12 11.6% 7.81 46.4
2012/12 10.6% 8.36 48.8
2013/12 9.7% 9.13 49.9
2014/12 8.0% 11.21 46.9
2015/12 8.6% 11.46 55.2
2016/12 8.5% 17.49 62.8
2017/12 7.4% 6.75 60.1
2018/12 7.3% 17.59 37.5

※DSO(デイズ・セールス・アウトスタンディング):売掛金回収に必要な日数。売掛金÷1日平均売上高で計算。期末に無理して売込みをかけてEPSをよい数値にした企業の場合は、売掛金が増え、DSOの数値が大きくなる。上記DSOの出所はモーニングスター社。

バランスシート

総資産 総負債 株主資本 自己資本率
2008/12 33495 30742 2753 8.22%
2009/12 35167 31201 3966 11.28%
2010/12 35113 31616 3497 9.96%
2011/12 37908 36907 1001 2.64%
2012/12 38657 38618 39 0.10%
2013/12 36352 31434 4918 13.53%
2014/12 37190 33790 3400 9.14%
2015/12 49304 46207 3097 6.28%
2016/12 47806 46200 1606 3.36%
2017/12 46620 47396 -850 -1.82%
2018/12 44876 43427 1394 3.11%

ROAとROEなど

ROA ROE 流動比率
単位 倍率
2008/12 10.3 50.8 1.01
2009/12 8.8 86.5 1.17
2010/12 8.3 74.7 1.15
2011/12 7.3 112.8 1.16
2012/12 7.2 527.9 1.14
2013/12 8 120.3 1.2
2014/12 9.9 86.9 1.11
2015/12 8.4 111 1.15
2016/12 10.9 230.1 1.2
2017/12 4.2 483.6 1.38
2018/12 11 ? 1.12

★ROE=当期純利益÷自己資本 ※投下資本に対して企業が上げた利益を見る

★ROA=当期純利益÷総資産 ※総資産を用いて企業が上げた利益を見る

★流動比率=流動資産÷流動負債 ※短期的な支払い能力を見る(表では資本が負債の何倍かを表記)

キャッシュフロー

営業CF 投資CF 財務CF
2008/12 4724 -1210 -3994
2009/12 3487 -1832 -1432
2010/12 3801 -573 -3358
2011/12 4253 -813 -2119
2012/12 1561 -1177 -2023
2013/12 4546 -1121 -2706
2014/12 3866 -1723 -3314
2015/12 5101 -9734 4277
2016/12 5189 -985 -3457
2017/12 6476 -1147 -4305
2018/12 3138 -1075 -4152

LMTはF35とF22の製造元

LMTの社運をかけた事業としては、F35の製造が挙げられます。

軍事の話に戻りますが、そもそも、このF35戦闘機というのは、どういう戦闘機なのでしょうか。

疑問①:F22もF35もステルス機だが、いったい、何が違うんだ?

レーダーに映らないステルス技術は湾岸戦争の時に爆撃機に採用され、その後、戦闘機にも活かされるようになりました。

その結果、誕生した世界最強の戦闘機がF22ラプターです。アメリカでは、このラプターを海外に売るか売らまいかという議論が繰り広げられ、最後は「アメリカが最強国の地位を維持するためには、売らないほうがよい」という落ちになります。

しかし、同盟国にもステルス機のニーズがあるので、何か対策が必要でした(欧州のユーロタイフーンという高性能戦闘機でも完全なステルス性を確保できていない)。

こうしてステルス機の新バージョンの開発が始まりました。

そして、「新しい戦闘機をつくるなら、新しい実験をしなければ」という話になり、F35ライトニングにはF22とは違うコンセプトとミッションが定められます。

ざっくり言えば、F22戦闘機は制空権を確保するための最強の戦闘機です。

そして、F35は空中戦をしながらも、高性能のレーダーや情報ネットワークを生かして対地、対艦への攻撃をこなす多用途の戦闘攻撃機です(空中戦能力はF22に劣る)。

「それって、要するに何でも屋ってこと?」と思われた方もいるかもしれません。

制空権確保の空中戦能力はF22が最強ですが、F35はどちらかと言えば、空中戦の後、地上や海上の目標を攻撃することに力点が置かれています。

「多用途戦闘機=マルチロールファイター」なので、言葉の意味合い的には、”何でも屋の戦闘機”というのは、ある意味では、当たっています。

要するに、アメリカとしては、空中戦で最強の能力を持つ機体(F22)は同盟国にも売れない。しかし、空中戦能力はそこそこで、対地・対艦攻撃に強みのある機体を同盟国とシェアすることにしました。そして、これを国際共同開発で完成させようとしたのです。

疑問②:F35って結局、強いのか? 弱いのか?

「ふーん、じゃあ、さほど強くないってわけ?」という声もあろうかと思いますが、この機体の戦闘能力には、恐らく、従来の戦闘機では太刀打ちできないでしょう。

LMT社やNOC社の動画を見ると、このF35ライトニングの恐るべきコンセプトが鮮やかに描かれていました。その内容をざっとまとめると、以下の通りです。

敵のレーダー網をかいくぐって気づかれぬ間に敵基地上空に侵入可能。

ステルス機の特性を生かし、気付かれる前に敵機を先制攻撃で撃墜。

高性能のレーダーを持つ数機のF35が四方八方に電波を飛ばし、空中から地上までの敵を全て把握。敵機の情報をA機、B機、C機も共有し、攻撃することが可能なので、撃ち漏らしが出にくい。

高速移動しながらも各機が発見した敵・味方の識別情報を共有し、同じ情報を基に戦っているので、間違えて味方にミサイルを発射する可能性は低い。

敵はF35を発見できないまま撃墜され、やっと発見した敵機が後ろから攻撃をしかけても、F35は前方に向けて発射したミサイルをUターンさせて敵機を逆に撃墜

(※参照動画)

https://www.youtube.com/watch?v=Q7ufjQ6Eyj8

このコンセプトが実現したら、ステルス能力のない戦闘機の群れがF35の編隊に対抗するのは、かなり難しいでしょう。見えないところから、高性能ミサイルの第一波攻撃を必ず受けてからの不利な戦いを強いられるからです。

F35は空中戦もできますが、360度を見渡せる高性能の遠距離レーダーで敵機を発見し、気づかれる前に先制攻撃をしかけてくるので、空中戦以前に敵機に対して「お前はすでに死んでいる」という北斗の拳のような状態を作り出してしまうわけです。