F:フォードモーターの配当推移
フォード(F)配当利回りと財務分析【2026年8月更新版】
フォード・モーター(Ford Motor Company)の配当利回り、配当性向、キャッシュフロー、財務状況を整理します。Fordは四半期0.15ドルの定期配当を基本としつつ、余剰資金や投資環境に応じて補足配当を実施することがあります。したがって、配当利回りを評価するときは、継続性の高い定期配当と、一時的な補足配当を分けて見る必要があります。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等
年平均の配当利回り、配当成長率、配当性向、年間配当、平均株価、通年EPSの推移を確認します。Fordは定期配当と補足配当が混在するため、配当投資ではまず定期配当を基準にし、補足配当は業績が良好な年の上振れ要因として扱うのが実務的です。[2]
| 年 | 配当 | 平均株価 | 年EPS (GAAP) |
調整EPS | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 定期配当 | 補足配当含む年計 | ||||
| 2026E | 約4.20% (7月末参考) |
0% | — | 0.60 (現行年率) |
0.60 (補足配当を含まず) |
14.30 (7月末参考) |
— | — |
| 2025 | 約6.4% (概算) |
補足配当込みで増加 | GAAP赤字のため 算定困難 調整EPS比 約69% |
0.60 | 0.75 (補足0.15含む) |
約11.7 | -2.06 | 1.09 |
| 2024 | 約6.7% | 補足配当込みで増加 | 約53% | 0.60 | 0.78 (補足0.18含む) |
11.6 | 1.46 | 1.84 |
| 2023 | 8.94% | -12% | 102% | 0.60 | 0.72 | 12.3 | 1.08 | 2.01 |
| 2022 | 3.36% | 400% | GAAP赤字のため算定困難 | 0.50 | 0.50 | 14.9 | -0.49 | — |
| 2021 | 0.70% | -33% | 2% | 0.10 | 0.10 | 14.2 | 4.45 | — |
| 2020 | 2.14% | -75% | GAAP赤字のため算定困難 | 0.15 | 0.15 | 7.0 | -0.32 | — |
| 2019 | 6.52% | -18% | 実質的な評価困難 | 0.60 | 0.60 | 9.2 | 0.01 | — |
| 2018 | 7.02% | 12% | 79% | 0.60 | 0.73 | 10.4 | 0.92 | — |
| 2017 | 5.51% | -24% | 34% | 0.60 | 0.65 | 11.8 | 1.93 | — |
| 2016 | 6.75% | 42% | 74% | 0.60 | 0.85 | 12.6 | 1.15 | — |
| 2015 | 4.00% | 20% | 33% | 0.60 | 0.60 | 15.0 | 1.84 | — |
| 2014 | 3.14% | 25% | 161% | 0.50 | 0.50 | 15.9 | 0.31 | — |
| 2013 | 2.61% | 100% | 14% | 0.40 | 0.40 | 15.3 | 2.94 | — |
| 2012 | 1.82% | — | 14% | 0.20 | 0.20 | 11.0 | 1.41 | — |
※2025年の平均利回りは、補足配当を含む年計0.75ドルを平均株価約11.7ドルで割った概算です。2026Eは、現行の定期配当年率0.60ドルと、2026年7月末に確認した参考株価14.30ドルを用いた概算で、定期配当利回りは約4.20%です。補足配当は毎年保証されないため、将来利回りには含めていません。[3]
Ford Motor Company(F)の配当と財務分析:転換期の株主還元
変動する配当の実績と2026年の状況
Fordの配当は、景気循環、設備投資、品質費用、関税、EV事業の損失などに影響されやすい性質があります。安定増配企業のように毎年の増額を前提とするより、定期配当を維持しながら、余剰キャッシュが生じた年に補足配当を加える政策として理解するのが適切です。
2025年通期は、売上高1,872.67億ドルと過去最高を記録しましたが、EV関連の資産減損やプログラム見直しなどの特別項目によって、GAAP純損失は81.82億ドル、希薄化後EPSはマイナス2.06ドルとなりました。一方、調整EBITは68億ドル、調整EPSは1.09ドル、営業キャッシュフローは212.82億ドル、調整フリーキャッシュフローは35.13億ドルでした。[4]
2026年第1四半期は、売上高433億ドル、純利益25億ドル、調整EBIT35億ドル、調整EPS0.66ドルでした。ただし、利益にはIEEPA関税に関する13億ドルの一時的ベネフィットが含まれています。営業キャッシュフローは13億ドル、調整フリーキャッシュフローはマイナス19億ドルでした。[5]
2026年第2四半期は、売上高が前年同期比約4%減の483億ドルとなりました。GAAPベースでは13.3億ドルの純損失を計上しましたが、調整EBITは前年同期比約20%増の25億ドル、調整EPSは0.42ドルでした。EV電池合弁の解消などに伴う多額の特別費用を除くと、本業の利益は市場予想を上回りました。[1]
配当の現状:2026年に公式確認できる第1四半期・第2四半期の定期配当はいずれも1株0.15ドルです。年率換算では0.60ドルとなります。補足配当は会社の余剰キャッシュ、投資需要、取締役会の判断によるため、定期配当とは分けて評価します。[2]
配当成長率と政策の推移
- 2008〜2011年:金融危機と再建を背景に配当を停止
- 2012〜2016年:財務回復に伴い定期配当を段階的に再開・増額
- 2017〜2019年:定期配当を維持しつつ、一部年度で補足配当を実施
- 2020〜2021年:パンデミック対応で配当を停止・縮小
- 2022年以降:四半期0.15ドルの定期配当へ復帰
- 2024年:定期配当0.60ドルに補足配当0.18ドルを追加
- 2025年:定期配当0.60ドルに補足配当0.15ドルを追加
- 2026年:確認済みの定期配当は四半期0.15ドルを維持
配当性向と持続可能性
2025年はGAAP EPSがマイナス2.06ドルだったため、GAAP EPSベースの配当性向は意味を持ちにくい状態です。調整EPS1.09ドルに対して補足配当込みの年間配当0.75ドルを比べると、配当性向は約69%です。定期配当0.60ドルだけなら、調整EPS比では約55%となります。[4]
Fordの場合、配当安全性を評価する際はEPSだけでなく、調整フリーキャッシュフロー、資本支出、製造部門の現金、Ford Creditの資金構造を確認する必要があります。2025年の調整FCF35.13億ドルに対して株主分配は30億ドルで、補足配当まで含めると余裕は大きくありませんでした。一方、2026年Q2後の通期調整FCF見通しは60億〜70億ドルへ引き上げられており、定期配当のカバー余力は2025年より改善する見込みです。[1][4]
財務パフォーマンスと成長見通し
以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)、営業CFマージンは%、調整EBITと調整EPSは会社開示の非GAAP指標で表示しています。
主要財務指標の推移
| 年度 | 売上高 | 営業CF | 同マージン | 純利益 | 調整EBIT | 調整EPS |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026 Q2 | 48,300 | — | — | -1,330 | 2,500 | 0.42 |
| 2026 Q1 | 43,300 | 1,300 | 3.0 | 2,500 | 3,500 | 0.66 |
| 2025 | 187,267 | 21,282 | 11.4 | -8,182 | 6,800 | 1.09 |
| 2024 | 184,992 | 15,423 | 8.3 | 5,879 | 10,200 | 1.84 |
| 2023 | 176,191 | 14,918 | 8.5 | 4,347 | — | 2.01 |
| 2022 | 158,057 | 6,853 | 4.3 | -1,981 | — | — |
| 2021 | 136,341 | 15,787 | 11.6 | 17,937 | — | — |
| 2020 | 127,144 | 24,269 | 19.1 | -1,279 | — | — |
| 2019 | 155,900 | 17,639 | 11.3 | 47 | — | — |
| 2018 | 160,338 | 15,022 | 9.4 | 3,677 | — | — |
| 2017 | 156,776 | 18,096 | 11.5 | 7,731 | — | — |
| 2016 | 151,800 | 19,850 | 13.1 | 4,589 | — | — |
| 2015 | 149,558 | 16,226 | 10.8 | 7,373 | — | — |
| 2014 | 144,077 | 14,507 | 10.1 | 1,231 | — | — |
| 2013 | 146,917 | 10,444 | 7.1 | 11,953 | — | — |
| 2012 | 133,559 | 9,045 | 6.8 | 5,613 | — | — |
| 2011 | 135,605 | 9,784 | 7.2 | 20,213 | — | — |
| 2010 | 128,954 | 11,477 | 8.9 | 6,561 | — | — |
| 2009 | 116,283 | 15,477 | 13.3 | 2,717 | — | — |
| 2008 | 143,584 | -263 | -0.2 | -14,766 | — | — |
※2026年Q2の営業CFは、記事更新時点で参照した決算要約では確認できなかったため「—」としています。調整EBITと調整EPSは会社の非GAAP指標です。過年度データはFordの年次報告書・SEC提出資料をもとに整理しています。[1][6]
収益性と効率性の変動
2026年Q2は売上減少とGAAP赤字が目立ちますが、調整EBITは25億ドルへ増加しました。これは、価格・製品構成、コスト改善、品質費用の改善が本業の収益を支えたためです。一方、EV電池合弁解消に伴う36億ドル規模の費用やEVプログラム関連費用により、GAAP利益は大きく押し下げられました。会計上の純利益と、基礎的な事業利益を分けて見る必要があります。[1]
会社は2026年通期の調整EBIT見通しを100億〜110億ドルへ引き上げました。従来見通しの85億〜105億ドルから上方修正されており、アルミ供給制約の緩和、米国市場での価格維持、品質費用の改善、関税還付の一部反映が背景です。ただし、中東情勢の悪化や米国景気の大幅減速は見通しに含まれていません。[1]
変動するキャッシュフロー基盤
| 年度 | 営業CF | 成長率 | 資本支出 | 調整フリーCF | 株主分配 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026 Q1 | 1,300 | — | — | -1,900 | — |
| 2025 | 21,282 | 38 | 8,694 | 3,513 | 3,000 |
| 2024 | 15,423 | 3 | 8,590 | 6,672 | 3,500 |
| 2023 | 14,918 | 118 | 8,152 | 6,801 | 5,300 |
| 2022 | 6,853 | -57 | — | — | — |
| 2021 | 15,787 | -35 | — | — | — |
| 2020 | 24,269 | 38 | — | — | — |
| 2019 | 17,639 | 17 | — | — | — |
| 2018 | 15,022 | -17 | — | — | — |
| 2017 | 18,096 | -9 | — | — | — |
| 2016 | 19,850 | 22 | — | — | — |
| 2015 | 16,226 | 12 | — | — | — |
| 2014 | 14,507 | 39 | — | — | — |
| 2013 | 10,444 | 15 | — | — | — |
| 2012 | 9,045 | -8 | — | — | — |
| 2011 | 9,784 | -15 | — | — | — |
| 2010 | 11,477 | -26 | — | — | — |
| 2009 | 15,477 | — | — | — | — |
| 2008 | -263 | — | — | — | — |
キャッシュフロー分析のポイント:2025年は営業CFが212.82億ドルに増えた一方、調整FCFは35.13億ドルにとどまり、株主分配30億ドルに対する余裕は限定的でした。2026年Q1は季節性や運転資本の影響で調整FCFがマイナス19億ドルでしたが、Q2決算後、会社は2026年通期の調整FCF見通しを60億〜70億ドルへ引き上げました。定期配当は維持可能と考えられるものの、補足配当の有無は、実際のFCF、設備投資、EV関連費用、関税還付の受領時期に左右されます。[1][5]
財務の健全性と資本構成
Fordは自動車製造事業に加えてFord Creditを持つため、連結ベースの負債は一般的な製造業より大きく見えます。配当安全性を評価する際は、Ford Creditの金融債務と、自動車事業の債務・現金を分けて確認する必要があります。
| 年度 | 総資産 | 総負債 | 株主資本 | 自己資本率 | 負債比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025 | 289,160 | 253,180 | 35,980 | 12 | 704 |
| 2024 | 285,196 | 240,338 | 44,858 | 16 | 536 |
| 2023 | 273,310 | 230,512 | 42,798 | 16 | 539 |
| 2022 | 255,884 | 212,717 | 43,167 | 17 | 493 |
| 2021 | 257,035 | 208,413 | 48,622 | 19 | 429 |
| 2020 | 267,261 | 236,450 | 30,690 | 11 | 770 |
| 2019 | 258,537 | 225,307 | 33,185 | 13 | 679 |
| 2018 | 256,540 | 220,474 | 35,932 | 14 | 614 |
| 2017 | 258,496 | 222,792 | 35,578 | 14 | 626 |
| 2016 | 237,951 | 208,668 | 29,170 | 12 | 715 |
| 2015 | 224,925 | 196,174 | 28,642 | 13 | 685 |
| 2014 | 208,615 | 183,808 | 24,438 | 12 | 752 |
| 2013 | 202,179 | 175,703 | 26,112 | 13 | 673 |
| 2012 | 189,406 | 173,095 | 15,947 | 8 | 1085 |
| 2011 | 178,348 | 163,277 | 15,028 | 8 | 1086 |
| 2010 | 164,687 | 165,329 | -673 | マイナス | — |
| 2009 | 192,040 | 199,822 | -7,820 | マイナス | — |
| 2008 | 218,298 | 232,825 | -15,722 | マイナス | — |
2025年末の総資産は2,891.60億ドル、総負債は2,531.80億ドル、株主資本は359.80億ドルでした。自己資本率は約12%で、2024年末の約16%から低下しています。主因は2025年のGAAP純損失や株主分配です。もっとも、Ford Creditの資産と負債を連結しているため、自己資本率だけで一般製造業と単純比較するのは適切ではありません。[4]
まとめ:長期配当投資家にとってのFordとは?
Fordは、四半期0.15ドルの定期配当によって比較的高い利回りを提供する一方、景気循環、EV投資、品質費用、供給制約、関税などによって利益とキャッシュフローが変動しやすい銘柄です。2026年Q2はGAAP赤字でしたが、調整EBITは25億ドルへ増加し、通期の調整EBITと調整FCF見通しは上方修正されました。[1]
同社の強みは以下の点にあります:
- F-Series、Bronco、商用車など北米で強い製品群
- Ford Proの車両・サービス・ソフトウェアを組み合わせた収益基盤
- 2026年Q2の調整EBIT25億ドルと、本業利益の改善
- 2026年通期の調整EBIT見通し100億〜110億ドル
- 2026年通期の調整FCF見通し60億〜70億ドル
- Ford Creditによる販売金融と収益源の多様化
一方、注意すべき点は以下です:
- 過去に配当停止・減配を経験しており、連続増配株ではない
- 2025年と2026年Q2にEV関連の大規模特別費用を計上
- Model eを含むEV事業は依然として赤字
- 関税、アルミ供給、商品価格、品質・保証費用で収益が変動
- 補足配当は毎年保証されない
- 調整指標とGAAP指標の差が大きく、両方を確認する必要がある
投資家へのポイント:Fordは「安定増配株」ではなく、「高めの定期配当を維持しながら事業再編を進める景気敏感株」です。2026年7月末参考株価14.30ドルに対する定期配当利回りは約4.20%ですが、利回りだけで判断せず、調整FCF、Ford Proの利益、EV損失、品質費用、設備投資、会社本体の流動性を継続して確認する必要があります。
よくある質問
2026年Q2のGAAP赤字は、配当危機を意味しますか?
直ちに定期配当の停止を示すものではありません。Q2の赤字は、EV電池合弁解消などの特別費用の影響が大きく、調整EBITは25億ドルでした。さらに会社は通期調整FCF見通しを60億〜70億ドルへ引き上げています。ただし、大規模な特別費用が続けば財務余力を削るため、定期配当よりも補足配当のほうが影響を受けやすいと考えられます。[1]
補足配当は2026年も期待できますか?
補足配当は保証されません。2024年と2025年には実施されましたが、Fordの基本配当は四半期0.15ドルです。2026年のFCF見通しは改善していますが、EV関連費用、設備投資、関税還付、景気動向を踏まえて取締役会が判断します。利回り計算では、まず年率0.60ドルの定期配当を使うのが安全です。
2026年Q2で最も重要な改善点は何ですか?
GAAP純損失ではなく、調整EBITが25億ドルへ増え、通期見通しが上方修正された点です。特に価格維持、品質費用の改善、アルミ供給の正常化が今後の利益回復に結びつくかが重要です。一方で、EV関連の特別費用と継続的な赤字は引き続き監視が必要です。
※本記事は投資判断の参考として財務データを整理・分析したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。
ミニ解説: Fordの配当分析では、「定期配当0.60ドル」と「補足配当」を分けることが重要です。2026年Q2後の通期FCF見通しは改善しましたが、GAAP赤字とEV関連費用も大きく、補足配当まで恒常的に期待するのは慎重であるべきです。
【注】(出典リンク)
- 2026年Q2決算・通期見通し・EV関連費用 → 一次情報:Ford Investor Relations「Quarterly Results」 → 二次情報:Reuters「Ford lifts annual guidance」(確認日:2026-08-03) ↩
- 定期配当・配当履歴 → 一次情報:Ford Investor Relations「Dividend History」 → Ford「Second-Quarter 2026 Dividend」(確認日:2026-08-03) ↩
- 参考株価・配当利回り計算 → 参考情報:Yahoo Finance「Ford Motor Company」 → Ford Investor Relations「Stock Information」(確認日:2026-08-03) ↩
- 2025年通期業績・キャッシュフロー・バランスシート → 一次情報:Ford 2025 Form 10-K(SEC) → Ford Annual Reports(確認日:2026-08-03) ↩
- 2026年Q1決算・関税ベネフィット・キャッシュフロー → 一次情報:Ford Q1 2026 Earnings Release(SEC) → Ford Q1 2026 Form 10-Q(SEC)(確認日:2026-08-03) ↩
- 長期財務データ → 一次情報:Ford Annual Reports → SEC EDGAR「Ford filings」(確認日:2026-08-03) ↩

