INTC:インテルの業績
【2026年7月版】インテル(INTC)徹底分析:AI需要で売上25%増、Intel 18A量産とFoundry再建へ―FY2019~FY2025財務データとQ2 FY2026最新動向
はじめに
インテル(Intel Corporation)は、長年にわたりPC・サーバー向けCPUで半導体業界をリードしてきた企業です。しかし、近年は製造技術の遅れ、TSMC・AMD・NVIDIAとの競争激化、大規模な製造設備投資によって収益力が低下しました。2025年3月にCEOへ就任したリップ・ブー・タン(Lip-Bu Tan)氏は、組織の簡素化、エンジニアリング重視への回帰、製品と製造部門の実行力改善を進めています。[1]
FY2025は、FY2024の巨額赤字から業績が改善した一方、Intel Foundryは年間103億ドルを超える営業損失を計上しました。また、Alteraの持分売却、米国政府・NVIDIA・SoftBankによる出資などにより、財務構造と発行済株式数が大きく変化しています。[2]
2026年には、Intel 18Aを採用するPC向け「Core Ultra Series 3(Panther Lake)」の量産が拡大し、サーバー向け「Xeon 6+(Clearwater Forest)」も投入されました。次世代のIntel 18A-Pはリスク生産へ移行し、Intel 14Aの開発も進められています。[3]
さらに、NVIDIAによる50億ドルの出資が2025年12月に完了しました。両社は、NVIDIA NVLinkに対応するデータセンター向けカスタムx86 CPUと、NVIDIA RTX GPUチップレットを統合するPC向けSoCの共同開発を予定しています。ただし、2026年7月時点では、共同開発製品の具体的な発売時期や収益貢献はまだ明らかになっていません。[4]
【免責事項および出典について】
- 本記事の財務データは、主にインテルのForm 10-K、Form 10-Q、決算発表資料、公式IR資料に基づいています。FY2025通期、Q1・Q2 FY2026実績、Q3 FY2026会社見通しまでを反映しています。
- 記事内のCAGR、利益率、自己資本比率、負債資本倍率、BPSなどは、公式開示数値をもとに筆者が計算した概算です。
- 2025年9月12日にAlteraの51%株式売却が完了し、以後Alteraは連結対象から外れています。四半期・前年比較では、この連結範囲変更に注意が必要です。[2]
- Q2 FY2026のGAAP純損失には、米国政府向けエスクロー株式に関する巨額の時価評価損が含まれています。営業損益と最終損益を分けて確認する必要があります。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、投資勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
- スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
会計年度について:インテルの会計年度は通常、12月の最終土曜日に終了します。FY2025は2024年12月29日から2025年12月27日まで、Q2 FY2026は2026年3月29日から6月27日までの期間です。
1. インテルの長期的業績:FY2024の巨額赤字から再建局面へ
インテルはFY2019~FY2021に年間売上高700億ドル超、営業利益190億ドル超を稼ぐ高収益企業でした。しかし、FY2022以降はPC需要の反動減、データセンター向けCPU競争、製造投資負担、Intel Foundryの赤字によって収益構造が急速に悪化しました。
FY2024には普通株主に帰属する純損失が187.6億ドルに達しました。FY2025は売上高が528.5億ドル、営業損失が22.1億ドル、普通株主に帰属する純損失が2.67億ドルとなり、赤字幅は大きく縮小しました。ただし、FY2025の最終損益にはAltera持分売却などの営業外損益も含まれており、本業が完全に回復したわけではありません。[2]
1.1 売上、利益、営業キャッシュフローの推移(FY2019~FY2025)
| 会計年度 | 売上高 百万ドル |
売上 成長率 |
営業利益 損失 百万ドル |
純利益 損失 百万ドル |
営業CF 百万ドル |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2019 | 71,965 | +1.6% | 22,035 | 21,048 | 33,099 |
| FY2020 | 77,867 | +8.2% | 23,876 | 20,899 | 35,378 |
| FY2021 | 79,024 | +1.5% | 19,456 | 19,868 | 29,998 |
| FY2022 | 63,054 | -20.2% | 2,334 | 8,014 | 15,372 |
| FY2023 | 54,228 | -14.0% | 93 | 1,689 | 11,471 |
| FY2024 | 53,101 | -2.1% | (11,678) | (18,756) | 8,288 |
| FY2025 | 52,853 | -0.5% | (2,214) | (267) | 9,697 |
| CAGR(年平均成長率) | |||||
| FY2019~FY2025 | -5.0% | ― | N/A | N/A | -18.5% |
注)純利益は普通株主に帰属する純利益。FY2025の連結ベースの純利益は2,600万ドルの黒字でしたが、非支配株主持分を差し引いた普通株主帰属ベースでは2.67億ドルの損失です。[2]
- FY2024のポイント:製造設備の減損、リストラ費用、繰延税金資産に対する評価性引当金、Intel Foundryの損失などが重なり、普通株主に帰属する純損失は187.6億ドルまで拡大しました。
- FY2025のポイント:売上高は528.5億ドルで前年比ほぼ横ばいでしたが、営業損失は22.1億ドル、普通株主に帰属する純損失は2.67億ドルまで縮小しました。
- 営業キャッシュフロー:FY2025は97.0億ドルで、FY2024の82.9億ドルから改善しました。ただし、FY2019~FY2021の年間300億ドル前後の水準には戻っていません。
1.2 FY2025四半期推移とQ1・Q2 FY2026実績
| 四半期 | 売上高 百万ドル |
前年同期比 | 粗利益率 GAAP |
営業利益 損失 百万ドル |
純利益 損失 百万ドル |
EPS GAAP |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Q1 FY2025 | 12,667 | -1% | 36.9% | (301) | (821) | (0.19) |
| Q2 FY2025 | 12,859 | 横ばい | 27.5% | (3,176) | (2,918) | (0.67) |
| Q3 FY2025 | 13,653 | +3% | 38.2% | 683 | 4,063 | 0.90 |
| Q4 FY2025 | 13,674 | -4% | 36.1% | 580 | (591) | (0.12) |
| Q1 FY2026 | 13,577 | +7% | 39.4% | (3,136) | (3,728) | (0.73) |
| Q2 FY2026 | 16,128 | +25% | 40.4% | 1,796 | (11,033) | (2.16) |
注)純利益・損失は普通株主に帰属するGAAP損益。元記事のQ2・Q3・Q4 FY2025の粗利益率、営業損益、純損益には誤りがあったため、Intelの公式四半期資料とFY2025通期資料に基づいて修正しました。[2][5][6]
1.3 Q1 FY2026:リストラ費用で営業赤字が拡大
Q1 FY2026の売上高は135.8億ドルで前年同期比7%増、GAAP粗利益率は39.4%となりました。一方、営業損失は31.4億ドル、普通株主に帰属する純損失は37.3億ドルに達しました。[5]
Q1 FY2026の営業損失には、40.70億ドルのリストラ・その他費用が含まれています。したがって、Q1のGAAP営業損失を通常の製品事業の採算性だけで説明することはできません。Non-GAAP EPSは0.29ドルでした。[5]
1.4 Q2 FY2026:営業黒字でもGAAP純損失は110億ドル
Q2 FY2026は、AI関連のサーバー需要とPC向け製品需要を背景に、売上高が161.3億ドルへ増加しました。前年同期比では25%増となり、GAAP粗利益率は40.4%、営業利益は18.0億ドル、営業利益率は11.1%まで改善しました。[6]
一方、普通株主に帰属するGAAP純損失は110.3億ドル、希薄化後EPSはマイナス2.16ドルでした。主因は、米国政府向けにエスクローされた株式を発行する義務に関する125.3億ドルの時価評価損です。これは営業外で認識された会計上の評価損であり、Q2の製品販売や製造事業の営業損益とは性質が異なります。[7]
この評価損などを除いたQ2 FY2026のNon-GAAP純利益は22.0億ドル、Non-GAAP EPSは0.42ドルでした。Q2決算を評価する際は、「営業利益が黒字化したこと」と「政府向け株式の評価によってGAAP最終損益が大幅赤字になったこと」を分けて考える必要があります。[6]
1.5 セグメント別業績
FY2025には、旧Network and Edge Group(NEX)の機能が主にClient Computing GroupとData Center and AIへ統合されました。また、Alteraは2025年9月12日の51%株式売却完了後、連結対象から外れています。[2]
FY2025のセグメント別業績
| セグメント | FY2025 売上高 百万ドル |
FY2024 売上高 百万ドル |
前年比 | FY2025 営業利益 損失 百万ドル |
|---|---|---|---|---|
| Intel Products | ||||
| Client Computing Group(CCG) | 32,228 | 33,346 | -3% | 9,317 |
| Data Center and AI(DCAI) | 16,919 | 16,125 | +5% | 3,422 |
| Intel Products合計 | 49,147 | 49,471 | -1% | 12,739 |
| Intel Foundry | ||||
| Intel Foundry | 17,826 | 17,317 | +3% | (10,318) |
| その他 | ||||
| All Other(Mobileyeなど) | 3,563 | 3,601 | -1% | 264 |
注)Intel Foundryの売上高には、Intel Productsなどへの社内売上が含まれます。連結売上高は内部取引消去後の528.5億ドルです。[2]
Q2 FY2026のセグメント別業績
| セグメント | Q2 FY2026 売上高 百万ドル |
前年同期比 | Q2 FY2026 営業利益 損失 百万ドル |
|---|---|---|---|
| Client Computing and Physical AI(CCPG) | 8,877 | +13% | 2,343 |
| Data Center and AI(DCAI) | 6,262 | +59% | 2,474 |
| Intel Products合計 | 15,139 | +28% | 4,817 |
| Intel Foundry | 5,765 | +31% | (2,089) |
| All Other | 701 | -33% | 230 |
| 内部取引消去 | (5,477) | ― | ― |
| 連結合計 | 16,128 | +25% | 1,796 |
注)2026年にClient Computing GroupはClient Computing and Physical AI Groupへ名称変更されています。Intel Foundryの売上高には大部分の社内取引が含まれ、Q2 FY2026の外部顧客向け売上は2.93億ドルでした。[6]
- CCPG:Q2 FY2026売上高は88.8億ドルで前年同期比13%増でした。Core Ultra Series 3を含むAI PC製品の売上が前四半期比26%増となり、クライアント部門売上の約3分の2を占めました。
- DCAI:Q2 FY2026売上高は62.6億ドルで前年同期比59%増、営業利益は24.7億ドルでした。AIサーバー向けCPU需要と製品構成の改善が寄与しました。
- Intel Foundry:Q2 FY2026の営業損失は20.9億ドルでした。Q1 FY2026の24.4億ドルの営業損失からは改善しましたが、依然として全社利益を大きく押し下げています。
2. 収益性とコスト構造:営業利益は回復したが、会計上の変動が大きい
FY2019~FY2021のインテルは、営業利益率20~30%台の高収益企業でした。しかし、FY2022以降は製品競争力の低下、製造設備の低稼働、次世代プロセスへの投資負担によって粗利益率が低下しました。
FY2024は営業利益率がマイナス22.0%まで悪化しました。FY2025には粗利益率が34.8%へ改善し、営業損失率もマイナス4.2%まで縮小しました。Q2 FY2026には四半期の粗利益率が40.4%、営業利益率が11.1%まで改善しましたが、Intel Foundryの赤字と今後の設備投資負担を考えると、安定的な収益回復が確立したとはまだ言えません。[2][6]
2.1 利益率の推移(FY2019~FY2025)
| 会計年度 | 売上総利益率 | 営業利益率 | 純利益率 |
|---|---|---|---|
| FY2019 | 58.6% | 30.6% | 29.2% |
| FY2020 | 56.0% | 30.7% | 26.8% |
| FY2021 | 55.4% | 24.6% | 25.1% |
| FY2022 | 42.6% | 3.7% | 12.7% |
| FY2023 | 40.0% | 0.2% | 3.1% |
| FY2024 | 32.7% | -22.0% | -35.3% |
| FY2025 | 34.8% | -4.2% | -0.5% |
注)純利益率は、普通株主に帰属する純利益を売上高で除した概算です。[2]
2.2 主要コスト費率の推移(FY2019~FY2025)
| 会計年度 | 研究開発費 百万ドル |
R&D費率 | 販管費 百万ドル |
販管費率 |
|---|---|---|---|---|
| FY2019 | 13,362 | 18.6% | 6,350 | 8.8% |
| FY2020 | 13,556 | 17.4% | 6,180 | 7.9% |
| FY2021 | 15,190 | 19.2% | 6,543 | 8.3% |
| FY2022 | 17,528 | 27.8% | 7,814 | 12.4% |
| FY2023 | 16,046 | 29.6% | 5,634 | 10.4% |
| FY2024 | 16,546 | 31.2% | 5,507 | 10.4% |
| FY2025 | 13,774 | 26.1% | 4,624 | 8.7% |
注)FY2025は研究開発費・販管費ともに削減が進みました。一方、研究開発費の削減が将来の製品・製造技術開発に影響しないかは継続的に確認する必要があります。[2]
2.3 Q2 FY2026の利益構造
| 項目 | Q2 FY2026 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 16,128百万ドル | +25% |
| GAAP粗利益率 | 40.4% | +12.9ポイント |
| 研究開発費+販管費 | 4,543百万ドル | 減少 |
| GAAP営業利益 | 1,796百万ドル | 黒字転換 |
| GAAP営業利益率 | 11.1% | 改善 |
| 普通株主帰属GAAP純損失 | (11,033)百万ドル | 赤字拡大 |
| Non-GAAP純利益 | 2,197百万ドル | 黒字 |
Q2 FY2026は本業の営業損益が改善した一方、政府向けエスクロー株式の時価評価によって最終損益が大幅な赤字となりました。今後もIntel株価の変動や政府との契約条件により、営業外損益が大きく変動する可能性があります。[7]
3. Intel 18AとIntel Foundry:再建の中心だが損失はなお大きい
インテル再建の中心は、製造技術の競争力を取り戻し、自社製品だけでなく外部顧客からも十分な受注を獲得できるかどうかです。Intel 18Aでは、ゲート・オール・アラウンド型トランジスタのRibbonFETと、裏面電源供給技術のPowerViaを採用しています。[3]
- Core Ultra Series 3(Panther Lake):Intel 18Aを採用するPC向けプロセッサです。2026年Q2時点で一部製品が高量産段階に入り、ノートPC、携帯型ゲーム機、産業機器、ロボティクスなどへの採用が進んでいます。
- Xeon 6+(Clearwater Forest):Intel 18Aで製造されるサーバー向けE-core製品です。2026年Q2に投入され、インテル初のサーバー向けIntel 18A製品となりました。
- Intel 18A-P:Intel 18Aを拡張したプロセスで、2026年Q2にリスク生産へ移行しました。
- Intel 14A:2026年Q2時点でPDK 0.5が完成し、PDK 0.9は2026年10月の提供が目標とされています。会社は2027年下半期の社内リスク生産、2028年の本格量産を計画しています。
- 米国製造拠点:アリゾナ州Fab 52などでIntel 18Aの量産が進んでいます。2026年Q2のIntel 18A生産量は会社計画を約25%上回り、前四半期比では50%超増加したと経営陣は説明しています。
注)Intel 18Aの生産量、歩留まり、Intel 14Aの開発時期は、2026年7月時点の会社説明・計画を含みます。将来の量産時期や性能を保証するものではありません。[3]
3.1 Foundry部門の赤字
Intel FoundryはFY2025に178.3億ドルのセグメント売上を計上しましたが、その大部分はIntel Productsなどへの社内売上です。営業損失は103.2億ドルに達しました。Q2 FY2026の営業損失は20.9億ドルで、前四半期から改善したものの、依然として全社利益を大きく押し下げています。[2][6]
Q2 FY2026のIntel Foundry外部売上は2.93億ドルで、セグメント売上57.7億ドルの一部にとどまりました。したがって、社内製品のIntel 18A移行だけでなく、外部の大口顧客を獲得できるかが重要です。
インテルはIntel 14Aについて、十分な外部顧客を確保できなければ、開発・量産計画を見直す可能性をリスク要因として開示しています。Intel Foundryの評価では、技術ロードマップだけでなく、外部受注、契約金額、設備稼働率、製造原価、歩留まりを確認する必要があります。[2]
3.2 設備投資の再拡大
インテルは2026年の設備投資額を200億ドル超と見込んでいます。また、2027年の設備投資は2026年を大幅に上回る可能性があり、その大部分を米国内の製造設備に振り向ける方針です。[3]
製造能力への投資は18A・14Aの競争力を確保するうえで必要ですが、Foundry部門が赤字のまま設備投資だけが増えれば、フリーキャッシュフローと財務負担が再び悪化します。
4. 投資家向け指標:1株あたりの価値
| 会計年度 | EPS 希薄化後GAAP |
EPS Non-GAAP |
BPS 1株当たり純資産 |
配当 年間・1株 |
|---|---|---|---|---|
| FY2019 | 4.71 | 4.87 | 13.92 | 1.26 |
| FY2020 | 4.94 | 5.30 | 19.95 | 1.32 |
| FY2021 | 4.86 | 5.47 | 23.19 | 1.39 |
| FY2022 | 1.94 | 2.10 | 25.03 | 1.46 |
| FY2023 | 0.40 | 0.97 | 25.03 | 0.74 |
| FY2024 | (4.38) | (0.13) | 22.92 | 0.00 |
| FY2025 | (0.06) | 0.42 | 22.88 | 0.00 |
注)BPSはIntel株主に帰属する資本を期末発行済株式数で除した概算です。普通株配当は2024年Q4から停止され、FY2025および2026年上半期にも普通株配当は支払われていません。[2][6]
4.1 Q1・Q2 FY2026の1株指標
| 四半期 | GAAP EPS | Non-GAAP EPS | 期末BPS 概算 |
普通株配当 |
|---|---|---|---|---|
| Q1 FY2026 | (0.73) | 0.29 | 約19.50 | 0.00 |
| Q2 FY2026 | (2.16) | 0.42 | 約17.36 | 0.00 |
Q2 FY2026末のIntel株主資本は875.4億ドル、発行済株式数は約50.4億株でした。政府、NVIDIA、SoftBankなどへの株式発行によって発行済株式数が増加しているため、企業全体の業績回復だけでなく、1株あたり利益と1株あたり純資産の推移も重要です。[6][7]
5. 財務の健全性:流動性は厚いが、現金減少と負債に注意
インテルの総資産はFY2019末の1,365億ドルからFY2025末の2,114億ドルまで拡大しました。一方、製造設備への大型投資によって有形固定資産と負債も増加し、FY2022以降は調整後フリーキャッシュフローの赤字が続いています。
FY2025末の現金・現金同等物と短期投資の合計は374.2億ドルでした。NVIDIAとSoftBankによる出資、米国政府との取引、Altera持分売却、パートナーからの拠出などが財務を支えました。[2][4][7]
5.1 資産・負債・資本の推移
| 会計年度末 | 現金・短期投資 百万ドル |
総資産 百万ドル |
総負債 百万ドル |
株主資本 百万ドル |
自己資本比率 | 総負債/ 株主資本 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| FY2019 | 13,123 | 136,524 | 59,020 | 77,504 | 56.8% | 0.76 |
| FY2020 | 23,895 | 153,091 | 72,053 | 81,038 | 52.9% | 0.89 |
| FY2021 | 29,253 | 168,406 | 73,843 | 94,563 | 56.2% | 0.78 |
| FY2022 | 28,338 | 182,103 | 78,392 | 103,711 | 56.9% | 0.76 |
| FY2023 | 25,034 | 191,572 | 86,675 | 104,897 | 54.8% | 0.83 |
| FY2024 | 22,062 | 196,485 | 91,453 | 105,032 | 53.5% | 0.87 |
| FY2025 | 37,416 | 211,429 | 85,069 | 126,360 | 59.8% | 0.67 |
| Q2 FY2026 | 29,727 | 202,439 | 99,296 | 103,143 | 50.9% | 0.96 |
注)株主資本は非支配株主持分を含む総株主資本。総負債は総資産から総株主資本を差し引いて算出しています。「総負債/株主資本」は総負債を使う倍率であり、有利子負債だけを使う一般的なDebt-to-Equityレシオとは異なります。元記事の「D/Eレシオ」という表記を修正しました。[2][6]
5.2 Q2 FY2026時点の流動性と負債
- 現金・現金同等物:128.7億ドル。
- 短期投資:168.5億ドル。
- 現金・短期投資合計:297.3億ドル。
- 短期債務:19.9億ドル。
- 長期債務:485.5億ドル。
- 有利子負債合計:約505.4億ドル。
- 現金・短期投資控除後の実質有利子負債:約208.1億ドル。
Q2 FY2026末の現金・短期投資はFY2025末から約76.9億ドル減少しました。依然として流動性は大きいものの、設備投資の再拡大、Foundry赤字、パートナーとの資金精算、債務返済を考えると、現金残高だけで財務の安全性を判断することはできません。[6]
5.3 キャッシュフロー分析(FY2019~FY2025)
| 会計年度 | 営業CF 百万ドル |
設備投資 純額 百万ドル |
調整後FCF 百万ドル |
投資CF 百万ドル |
財務CF 百万ドル |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2019 | 33,099 | 16,213 | 16,886 | (14,405) | (17,894) |
| FY2020 | 35,378 | 14,253 | 21,125 | (21,524) | (12,218) |
| FY2021 | 29,998 | 18,728 | 11,270 | (25,817) | (6,315) |
| FY2022 | 15,372 | 24,764 | (9,392) | (24,830) | 6,194 |
| FY2023 | 11,471 | 23,228 | (11,853) | (24,041) | 8,505 |
| FY2024 | 8,288 | 10,515 | (2,228) | (18,256) | 11,138 |
| FY2025 | 9,697 | 11,204 | (1,612) | (14,821) | 11,587 |
注)設備投資純額と調整後FCFは、IntelがNon-GAAP指標で用いるNet capital expenditures、ファイナンスリース支払い、パートナー拠出などを反映しています。単純な「営業CF-有形固定資産取得額」と一致しない年度があります。[2]
FY2019~FY2021のインテルは、年間100億ドルを超える調整後フリーキャッシュフローを生み出していました。しかし、FY2022以降は設備投資負担が重く、FY2025まで4年連続で調整後FCFがマイナスとなっています。
5.4 Q1・Q2 FY2026のキャッシュフロー
| 期間 | 営業CF 百万ドル |
調整後FCF 百万ドル |
主な特徴 |
|---|---|---|---|
| Q1 FY2026 | 1,096 | (2,016) | 営業CFが低水準 |
| Q2 FY2026 | 7,006 | (8,419) | パートナー関連資金流出の影響 |
| 2026年上半期 | 8,102 | ― | 有形固定資産取得額6,192百万ドル |
Q2 FY2026の営業キャッシュフローは70.1億ドルまで増加しました。一方、Intelが示す調整後FCFはマイナス84.2億ドルでした。これは通常の設備投資だけでなく、半導体工場共同投資プログラムに関するパートナー拠出・返還など、122.2億ドルの資金流出を反映したためです。[6]
したがって、Q2の調整後FCFだけを見て、本業から84億ドルの現金が流出したと解釈するのは適切ではありません。ただし、製造設備投資とパートナー資金の返還を含め、インテルの資本需要が非常に大きいことは変わりません。
6. AI戦略と市場競争:CPU、AI PC、カスタム半導体を組み合わせる
AI半導体市場ではNVIDIAが圧倒的な地位を持っています。インテルは、NVIDIAのGPUと正面から競うだけでなく、サーバーCPU、AI PC、エッジAI、カスタムASIC、Foundry、NVIDIAとの共同開発を組み合わせる戦略へ軸足を移しています。
- Xeon 6+:Intel 18Aを採用するサーバー向けCPUで、2026年Q2に投入されました。DCAI部門の売上高は前年同期比59%増となっています。
- AI PC:Core Ultra Series 3を中心にAI PC製品を拡大しています。Q2 FY2026にはAI PC関連売上が前四半期比26%増となり、クライアント部門売上の約3分の2を占めました。
- Physical AI:Core Ultra Series 3について、ロボティクス、産業機器、エッジAI用途で130社を超える顧客が採用または評価を進めています。[3]
- カスタム半導体:クラウド事業者や大口顧客向けのASIC・カスタムCPUを強化し、汎用CPU以外の収益機会を広げています。
- NVIDIA提携:NVIDIA NVLink対応のカスタムx86 CPUと、NVIDIA RTX GPUチップレットを組み込むPC向けSoCを共同開発する計画です。[4]
6.1 NVIDIA提携の意味
NVIDIAは2025年12月26日、インテル株約2億1,478万株を1株23.28ドルで取得し、50億ドルの出資を完了しました。これによりインテルは財務基盤を強化し、NVIDIAはx86 CPUとGPUをより緊密に組み合わせられるようになります。[4]
ただし、NVIDIAがインテルのIntel Foundryを大規模に利用することが確約されたわけではありません。共同開発製品の製造拠点、発売時期、利益配分、販売数量は2026年7月時点で十分に開示されていません。
6.2 組織再編と人材
2026年5月、インテルはQualcomm出身のAlex Katouzian氏をClient Computing and Physical AI Groupの責任者に起用しました。PC事業を従来型CPUだけでなく、エッジAI、ロボティクス、自律機械へ広げる狙いがあります。[8]
2026年6月には、製造技術・高度パッケージング分野の経営体制も強化しました。一方、Q2 FY2026末の従業員数はIntel本体で7万7,600人、子会社を含む全体で8万2,300人となり、Q2 FY2025末の10万1,400人から大きく減少しています。[6][8]
人員削減は固定費の削減につながりますが、半導体設計、プロセス開発、製造、ソフトウェアなどの専門人材まで失えば、中長期の競争力を損なう可能性があります。
7. FY2026の見通しと今後のポイント
Q2 FY2026は売上高、粗利益率、営業利益のいずれも大きく改善しました。会社はQ3 FY2026について、売上高158億~168億ドル、GAAP粗利益率41.0%、GAAP EPS 0.31ドルを見込んでいます。[6]
7.1 Q3 FY2026会社予想(2026年7月発表)
- 売上高:158億~168億ドル。
- GAAP粗利益率:41.0%。
- Non-GAAP粗利益率:42.0%。
- GAAP EPS:0.31ドル。
- Non-GAAP EPS:0.38ドル。
会社は、2026年通期のPC市場における消費台数が前年比で10%台前半減少する一方、サーバーCPUの出荷台数は2026年と2027年に2桁の高い伸びを示すと予想しています。これは会社見通しであり、市場需要、供給制約、競合製品によって変化する可能性があります。[3]
7.2 投資家が注目すべきポイントとリスク
- 18Aの量産実行力:Core Ultra Series 3とXeon 6+の性能、歩留まり、製造原価、供給量が計画通り改善するか。
- 14Aの外部顧客:Intel 14Aを採用する大口外部顧客を獲得できなければ、次世代製造投資の採算性が悪化する可能性があります。
- Foundry損失の縮小:FY2025のFoundry営業損失は103億ドル超でした。Q2 FY2026も20.9億ドルの赤字であり、外部売上の拡大と製造原価の低下が必要です。
- 設備投資:2026年は200億ドル超、2027年はさらに大きな設備投資が見込まれています。投資拡大とフリーキャッシュフロー改善を両立できるかが焦点です。
- 米国政府との株式取引:政府向けエスクロー株式の時価評価によって、GAAP純利益と株主資本が大きく変動する可能性があります。潜在的な株式希薄化にも注意が必要です。[7]
- NVIDIA提携:共同開発製品の発売時期、製造場所、販売数量、利益貢献が明確になるか。
- AI競争:データセンターではNVIDIA・AMD、製造ではTSMC、PCではAMD・Qualcomm・Appleとの競争が続きます。
- 人員削減:コスト削減を進めながら、製品開発と製造技術に必要な人材を維持できるか。
- 輸出規制・関税:中国向け半導体輸出規制、米中対立、関税、台湾海峡をめぐる地政学リスクは、売上と供給網の双方に影響します。
- 株式希薄化:政府、NVIDIA、SoftBankなどへの株式発行によって発行済株式数が増えています。企業価値が回復しても、1株あたり価値の回復が遅れる可能性があります。
8. まとめ:営業回復は見え始めたが、Foundry再建はまだ途上
インテルは、FY2019~FY2021の高収益企業から、FY2022以降の低迷・再建局面へ大きく姿を変えました。FY2025にはFY2024の巨額赤字から改善しましたが、Intel Foundryは年間103億ドルを超える営業損失を計上し、調整後フリーキャッシュフローも4年連続で赤字となりました。
Q2 FY2026は売上高が前年同期比25%増となり、粗利益率40.4%、営業利益18.0億ドルを確保しました。DCAI売上高は59%増、CCPG売上高も13%増となり、AIサーバー需要とAI PCの拡大が業績を押し上げています。[6]
一方、米国政府向けエスクロー株式に関する評価損によって、普通株主帰属GAAP純損失は110.3億ドルに達しました。この損失は製品事業の営業不振によるものではありませんが、政府との資本関係が最終損益、株主資本、発行済株式数に大きな影響を及ぼすことを示しています。
インテル再建を判断するうえで重要なのは、第一にIntel 18A製品が市場で競争力を示せるか、第二にFoundryの営業損失が継続的に縮小するか、第三にIntel 14Aで外部大口顧客を獲得できるか、第四に200億ドルを超える設備投資を行いながらフリーキャッシュフローを改善できるかです。
NVIDIAとの提携とAI需要の拡大は大きな追い風です。ただし、2026年7月時点のインテルは「復活を完了した企業」ではなく、製品事業の回復が見え始めた一方、製造事業の採算性と資本効率がまだ検証段階にある企業と評価するのが妥当です。
本記事は、公開情報に基づき筆者の分析を加えたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。正確性・完全性には注意していますが、内容を保証するものではありません。常に最新の公式情報をご確認ください。
最終更新日時:2026年7月26日(FY2025 Form 10-K/Q1・Q2 FY2026決算/Q3 FY2026会社見通し反映)
【注】(出典リンク)
- リップ・ブー・タンCEO就任 → Intel IR「Intel Appoints Lip-Bu Tan as Chief Executive Officer」(確認日:2026-07-26) ↩
- Intel FY2025通期・過年度データ・Altera連結除外 → Intel FY2025 Form 10-K → Intel Q4 and Full-Year 2025 Financial Results → Intel Annual Reports(確認日:2026-07-26) ↩
- Intel 18A・18A-P・14A・AI製品進捗 → Intel Q2 2026 Earnings Call Prepared Remarks → Intel AI Innovations at Computex 2026(確認日:2026-07-26) ↩
- NVIDIA・Intel戦略提携と50億ドル出資 → NVIDIA IR「NVIDIA and Intel to Develop AI Infrastructure and Personal Computing Products」 → Intel Form 8-K(出資完了)(確認日:2026-07-26) ↩
- Intel Q1 FY2026実績 → Intel Q1 2026 Financial Results → Intel Q1 FY2026 Form 10-Q(確認日:2026-07-26) ↩
- Intel Q2 FY2026実績・Q3見通し → Intel Q2 2026 Financial Results → Intel Quarterly Reports → Intel Q2 2026 Prepared Remarks(確認日:2026-07-26) ↩
- 米国政府とのCHIPS・株式取引 → Intel Form 8-K(米国政府との取引) → Intel FY2025 Form 10-K(Escrowed Shares) → Intel Q2 2026 Financial Results(確認日:2026-07-26) ↩
- Client Computing・Physical AI・Foundry部門人事 → Intel「Leadership Appointments to Advance Client and Data Center Businesses」 → Intel Foundry Leadership Appointment(確認日:2026-07-26) ↩

