GEエアロスペースの業績

業績,資本財,軍事株


【2026年7月版】GEエアロスペース(GE)徹底分析:航空宇宙のリーダー、分社化後の成長戦略―過去5年財務データと2026年最新動向

はじめに
GEエアロスペース(GE Aerospace)は、民間航空機および軍用機向けジェットエンジン、コンポーネント、システムを手がける航空宇宙企業です。2024年4月のGE Vernova分社化完了により、航空宇宙事業に集中する会社として再出発しました。[1]
本記事では、過去5年(FY2021~FY2025)の売上・利益、バランスシート、キャッシュフローを同じ年次でそろえたうえで、2026年Q1・Q2実績と最新の会社ガイダンスを踏まえ、事業内容、成長戦略、財務状況、将来展望を投資家目線で整理します。[2][3][4]

【2026年7月更新】
FY2025通期実績と2026年Q1に加え、2026年7月16日発表のQ2 2026決算を反映しました。Q2 2026は受注165億ドル(前年同期比17%増)、調整後売上126億ドル(24%増)、営業利益27億ドル(18%増)、調整後EPS 2.02ドル(22%増)、フリーキャッシュフロー30億ドル(43%増)でした。会社は2026年通期ガイダンスを全面的に引き上げています。[4]

【免責事項および出典について】

  • 本記事の財務情報は、主にGE AerospaceのAnnual Report/Form 10-K、Form 10-Q、決算発表資料、投資家向け資料に基づいて作成しています。[1][2][3][4]
  • 売上・利益、バランスシート、キャッシュフローの年次表は、原則としてFY2021~FY2025の過去5年で統一しています。
  • ただし、GEヘルスケアおよびGE Vernovaの分社化により、FY2021~FY2023の旧GEベースの数値と、FY2024以降のGE Aerospace単独ベースの数値は、完全に同一条件では比較できません。本文中では、比較上の制約を明記したうえで整理しています。[5]
  • 記事内の成長率、CAGR、利益率などには、公開情報に基づき筆者が算出した参考値を含みます。
  • 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の購入や売却を推奨または勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
  • スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。

会計年度について:GEエアロスペースの会計年度は暦年(1月1日~12月31日)です。例えば「FY2025」は2025年1月1日から2025年12月31日までを指します。[1]

1. GEエアロスペースの業績:需要回復とサービス主導の成長

GEエアロスペースは、民間航空機の稼働回復、防衛需要、そしてアフターマーケットサービスの拡大を背景に、分社化後も高い成長を続けています。特に、稼働中エンジンの整備・補修・部品交換などのサービス収入は、同社の収益安定性と利益率を支える中核です。FY2025は調整後売上423億ドル、営業利益91億ドル、フリーキャッシュフロー77億ドルを達成しました。[2]

1.1 売上・利益の推移(過去5年:FY2021~FY2025)

FY2021は旧GEのAviationセグメント、FY2022以降はGE Aerospace相当の開示を中心に整理しています。分社化前後で完全な連続比較には制約がありますが、航空宇宙事業の成長トレンドを把握するうえでは有用です。[1][5]

会計年度 調整後売上
百万$
成長率 営業利益*
百万$
成長率 営業利益率*
FY2021 21,310 2,882 13.5%
FY2022 26,802 +25.8% 4,470 +55.1% 16.7%
FY2023 32,816 +22.4% 7,253 +62.3% 22.1%
FY2024 35,121 +7.0% 7,253 横ばい 20.7%
FY2025 42,322 +20.5% 9,055 +24.8% 21.4%
CAGR(年平均成長率)FY2021→FY2025(参考)
過去4年 約18.7% 約33.1%

注)*はNon-GAAP指標。FY2021は旧GE Aviation、FY2022~FY2025はGE Aerospace開示を中心に整理。CAGRと利益率は筆者計算。[2][5]

  • 調整後売上:FY2025は423億ドルで、FY2024比21%増。サービス収入と機器収入がともに伸びました。[2]
  • 営業利益*:FY2025は91億ドルで、FY2024比25%増。高付加価値サービスの拡大により、利益成長が売上成長を上回りました。[2]
  • 受注残:FY2025末の残存履行義務は約1,906億ドルでした。2026年Q2末には約2,108億ドルへ増加しています。[1][4]

1.1.1 2025年Q4実績(2026年1月22日発表)

2025年Q4は、受注、売上、利益、キャッシュフローがそろって拡大しました。特に受注270億ドル、前年同期比74%増は、航空需要とサービス需要の強さを示しています。[2]

項目 Q4 2025 前年同期比
受注(Total orders) $27.0B +74%
売上(GAAP) $12.7B +18%
調整後売上* $11.9B +20%
営業利益* $2.3B +14%
営業利益率* 19.2% -90bps
EPS(GAAP・継続事業) $2.31 +32%
調整後EPS* $1.57 +19%
営業キャッシュフロー $2.1B +59%
フリーキャッシュフロー* $1.8B +15%

出典:GE Aerospace 2025年Q4 Earnings Release。*はNon-GAAP指標。[2]

1.2 FY2025通期ハイライト

FY2025は、分社化後初の完全年度として非常に好調な結果となりました。調整後売上、営業利益、調整後EPS、フリーキャッシュフローがいずれも二桁成長し、フリーキャッシュフロー転換率は113%でした。[2]

項目 FY2025 前年比
受注(Total orders) $66.2B +32%
売上(GAAP) $45.9B +18%
調整後売上* $42.3B +21%
利益(GAAP) $10.0B +31%
営業利益* $9.1B +25%
営業利益率* 21.4% +70bps
調整後EPS* $6.37 +38%
営業キャッシュフロー $8.5B +47%
フリーキャッシュフロー* $7.7B +24%
FCF転換率* 113%

出典:GE Aerospace Q4 2025 Earnings Release。*はNon-GAAP指標。[2]

1.2.1 2026年Q1実績(2026年4月21日発表)

2026年Q1も好調なスタートとなりました。受注は230億ドルで前年同期比87%増、調整後売上は116億ドルで29%増、営業利益は25億ドルで18%増でした。会社はQ1時点で、当初の2026年通期ガイダンスのレンジ上限寄りで推移していると説明していました。[3]

項目 Q1 2026 前年同期比
受注(Total orders) $23.0B +87%
売上(GAAP) $12.4B +25%
調整後売上* $11.6B +29%
利益(GAAP) $2.2B -2%
営業利益* $2.5B +18%
営業利益率* 21.8% -200bps
EPS(GAAP・継続事業) $1.83 横ばい
調整後EPS* $1.86 +25%
営業キャッシュフロー $1.9B +21%
フリーキャッシュフロー* $1.7B +14%

出典:GE Aerospace Q1 2026 Earnings Release。*はNon-GAAP指標。[3]

1.2.2 2026年Q2実績(2026年7月16日発表)

2026年Q2は、商用サービスの強い成長を背景に、売上、利益、EPS、キャッシュフローが二桁成長しました。Q2単独の受注は165億ドル、2026年上半期累計では395億ドルとなり、前年同期比49%増でした。[4]

項目 Q2 2026 前年同期比 2026年上半期
受注(Total orders) $16.5B +17% $39.5B/+49%
売上(GAAP) $13.3B +21% $25.7B/+23%
調整後売上* $12.6B +24% $24.2B/+27%
利益(GAAP) $2.8B +17% $5.0B/+8%
営業利益* $2.7B +18% $5.3B/+18%
営業利益率* 21.7% -130bps 21.8%/-160bps
EPS(GAAP・継続事業) $2.30 +23% $4.13/+12%
調整後EPS* $2.02 +22% $3.88/+24%
営業キャッシュフロー $3.3B +39% $5.1B/+32%
フリーキャッシュフロー* $3.0B +43% $4.7B/+31%

出典:GE Aerospace Q2 2026 Earnings Release/Form 10-Q。*はNon-GAAP指標。[4]

1.3 受注残高とサービス事業

航空宇宙産業では、受注残高に相当する残存履行義務(RPO)は将来の収益安定性を示す重要指標です。GEエアロスペースのRPOは、FY2025末の約1,906億ドルから、2026年Q2末には2,108億ドルへ11%増加しました。このうちサービスは約1,787億ドル、機器は約321億ドルです。[1][4]

Commercial Engines & Services(CES)だけを見ると、2026年Q2末のRPOは約1,799億ドルで、そのうちサービスが約1,703億ドルを占めます。長期サービス契約、整備、部品交換が、同社の長期的な収益基盤になっていることが分かります。[4]

  • LEAPエンジン:FY2025は1,802基を出荷し、FY2024比28%増でプログラム史上最高を更新しました。[2]
  • 2026年上半期の出荷:商用エンジンは1,299基で前年同期比約37%増、LEAPは1,030基で約41%増でした。[4]
  • CESサービス:2026年Q2のサービス収入は前年同期比26%増、内部ショップビジット収入は25%増、スペアパーツ収入は25%超の増加でした。[4]
  • ショップビジット:2026年上半期の内部ショップビジット収入は前年同期比30%増で、Q2は過去最高の処理量を記録しました。[4]
  • 防衛エンジン:2026年上半期のDefense & Systemsエンジン出荷は384基で、前年同期の335基から約15%増加しました。[4]

2. 収益性:サービス比率と価格が利益を支える

GEエアロスペースの収益性は、稼働中エンジンに連動するサービス収入、価格改善、供給制約の緩和、研究開発、新エンジンの立ち上げ費用のバランスで決まります。FY2025の営業利益率*は21.4%で、FY2024から70bps改善しました。[2]

2026年Q2の営業利益率*は21.7%で、前年同期比130bps低下しました。サービス量と価格は利益を押し上げましたが、GE9Xを含む新造機搭載エンジンの増加、成長投資、インフレが利益率を押し下げました。2026年上半期の営業利益率*も21.8%で、前年同期比160bps低下しています。[4]

会計年度・期間 調整後売上* 営業利益* 営業利益率* 主な要因
FY2021 $21.3B $2.9B 13.5% 航空需要回復初期
FY2022 $26.8B $4.5B 16.7% 商用航空回復、出荷増
FY2023 $32.8B $7.3B 22.1% サービス拡大、価格改善
FY2024 $35.1B $7.3B 20.7% 分社化後の投資・供給制約
FY2025 $42.3B $9.1B 21.4% サービス増、価格改善、出荷増
2026年上半期 $24.2B $5.3B 21.8% サービス・出荷増、成長投資も拡大

注)*はNon-GAAP指標。年次表はFY2021~FY2025、2026年上半期はQ2決算資料に基づく。[2][4][5]

2.1 セグメント別の収益性

セグメント Q2 2026売上 前年同期比 Q2 2026利益 利益率
Commercial Engines & Services $9.73B +27% $2.66B 27.3%
Defense & Propulsion Technologies $3.44B +16% $0.48B 13.8%
  • CES:2026年Q2はサービス収入が26%増、機器収入が30%増、営業利益が20%増でした。一方、新造機搭載エンジン増加の影響で利益率は160bps低下しました。[4]
  • DPT:2026年Q2はDefense & Systemsが12%増収、Propulsion & Additive Technologiesが23%増収となり、利益率は30bps改善しました。[4]

3. コスト構造と研究開発

航空機エンジン事業では、燃費効率、耐久性、整備性、認証対応が長期競争力を左右します。GEエアロスペースは、会社負担とパートナー負担を含むエンジニアリング投資に年間約30億ドル規模を投じ、CFM RISE、Open Fan、ハイブリッド電動、次世代防衛エンジンなどの開発を進めています。FY2026上半期の損益計算書上の研究開発費は9.0億ドルで、前年同期の7.2億ドルから増加しました。[1][4]

  • CFM RISE/Open Fan:2026年上半期には、シンガポール民間航空庁およびAirbusと、Open Fanを中心とするRISE技術の世界初の空港テストベッドを設けました。[4]
  • LEAP-1B耐久性:高圧タービンブレードなどを更新した耐久性改善キットの認証を完了しました。GE Aerospaceは、翼上時間を約2倍へ改善し、2027年初めから全面的な切り替えを始める見通しです。[4]
  • ハイブリッド電動:NASAのElectrified Powertrain Flight Demonstrationを通じて開発したメガワット級ハイブリッド電動エンジンシステムの初の地上試験を完了しました。[4]
  • 防衛技術:XA102エンジンのAssembly Readiness Reviewを完了し、米空軍から中推力級Autonomous Collaborative Platform向けGE426の予備設計審査までを進める契約を獲得しました。[4]

4. 投資家向け指標:1株あたりの価値

FY2025の調整後EPSは6.37ドルで、FY2024比38%増でした。2026年上半期の調整後EPSは3.88ドルで前年同期比24%増となり、会社はFY2026の調整後EPS見通しを従来の7.10~7.40ドルから7.65~7.85ドルへ引き上げました。[2][4]

項目 FY2025 2026年上半期 FY2026会社予想
継続事業EPS(GAAP) $8.05 $4.13 非提示
調整後EPS* $6.37 $3.88 $7.65~$7.85
フリーキャッシュフロー* $7.7B $4.7B $8.9~$9.2B
FCF転換率* 113% 115% 100%超

注)*はNon-GAAP指標。FY2026会社予想は2026年7月16日のQ2決算時点。[2][4]

5. 事業概要と市場:航空宇宙の巨人

GEエアロスペースは、民間・防衛の両市場で製品とサービスを提供します。2026年からは、Commercial Engines & Services(CES)に商用エンジンの製品管理、エンジニアリング、サプライチェーン、製造、アフターマーケットサービスなどを統合し、エンジンのライフサイクル全体をより一体的に管理する体制へ移行しました。[1][4]

  • Commercial Engines & Services(CES):商用エンジンとアフターマーケットサービスが中核です。Q2 2026の受注は129億ドル、売上は97億ドル、利益は27億ドルでした。[4]
  • Defense & Propulsion Technologies(DPT):防衛エンジン、航空機システム、推進・アディティブ技術を扱います。Q2 2026の受注は41億ドル、売上は34億ドル、利益は4.75億ドルでした。[4]
  • 設置基盤:駐機中の機体を含め、商用エンジン約50,000基、軍用エンジン約30,000基の設置基盤があります。[4]
  • サービス比率:2026年Q2のForm 10-Qでは、アフターマーケットサービス事業が売上高の約70%を占めると説明されています。[4]
  • 従業員:2026年Q1時点で全世界に約57,000人の従業員を有しています。[3]

6. 財務の健全性:バランスシートとキャッシュフロー

ここでは、売上・利益表と同じくFY2021~FY2025の過去5年でバランスシートとキャッシュフローをそろえ、直近の2026年Q2末データを追加します。ただし、FY2021~FY2023は旧GE連結または分社化前のGE Aerospace相当ベース、FY2024以降はGE Aerospace単独化後の開示であるため、年度間の比較には注意が必要です。[1][4][5]

6.1 バランスシート主要項目(FY2021~FY2025・2026年Q2末)

会計年度末・期末 現金等
百万$
総資産
百万$
総負債
百万$
株主資本
百万$
総借入
百万$
FY2021 20,283 旧GE連結ベース 旧GE連結ベース 旧GE連結ベース 旧GE連結ベース
FY2022 19,196 旧GE連結ベース 旧GE連結ベース 旧GE連結ベース 旧GE連結ベース
FY2023 12,632 分社化前ベース 分社化前ベース 分社化前ベース 20,500
FY2024 13,619 123,140 103,576 19,342 19,273
FY2025 12,392 130,169 111,271 18,677 20,494
2026年Q2末 9,345 127,672 109,805 17,640 19,157

注)現金等はCash, cash equivalents and restricted cash。2026年Q2末の総借入は短期借入20.0億ドルと長期借入171.6億ドルの合計。FY2021~FY2023は分社化前の比較制約があります。[1][4][5]

  • 流動性:2026年Q2末の現金等は93.5億ドルです。これに満期3カ月超の定期預金10億ドルを加えた流動性は103億ドルでした。[4]
  • 総資産:2026年Q2末は1,276.7億ドルで、FY2025末の1,301.7億ドルから減少しました。[4]
  • 総借入:2026年Q2末は191.6億ドルで、FY2025末の204.9億ドルから13億ドル減少しました。[4]
  • 信用枠:2026年Q2末時点で、2029年満期の30億ドルの無担保リボルビング信用枠があり、借入残高はありません。[4]
  • 信用格付け:2026年2月にMoody’sが長期格付けをA3からA2へ引き上げ、2026年4月にはS&PがA-を据え置きつつ見通しを「ポジティブ」へ変更しました。[4]

ミニ解説:2026年上半期は自社株買いと債務返済により現金と株主資本が減少しましたが、総借入も減っています。財務健全性を評価する際は、現金残高だけでなく、借入、年間FCF、信用格付け、株主還元を組み合わせて確認する必要があります。

6.2 キャッシュフロー推移(FY2021~FY2025・2026年上半期)

会計年度・期間 営業CF
百万$
設備・ソフト投資
百万$
フリーCF*
百万$
FCF転換率* 備考
FY2021 旧GE連結ベース 旧GE連結ベース 旧GE連結ベース 分社化前で比較制約あり
FY2022 旧GE連結ベース 旧GE連結ベース 旧GE連結ベース 分社化前で比較制約あり
FY2023 4,609 862 GE Aerospace相当ベース GE Vernova分社化前
FY2024 5,817 1,032 6,203 100%超 GE Aerospace単独化初年度
FY2025 8,543 1,273 7,694 113% 営業CF+47%、FCF+24%
2026年上半期 5,126 666 4,685 115% FCF+31%

注)*はNon-GAAP指標。FCFには設備投資のほか、分社化・事業再編に関する現金支出などの調整が含まれるため、営業CFから設備投資を単純に差し引いた金額とは一致しない場合があります。[1][2][4][5]

FY2025のフリーキャッシュフローは76.9億ドルで、FY2024比24%増でした。2026年上半期も46.9億ドルで、前年同期比31%増となっています。Q2単独では30.3億ドル、前年同期比43%増を記録しました。[2][4]

7. 資本効率性と株主還元

GEエアロスペースは、分社化後に航空宇宙専業会社としての資本配分を明確にしています。研究開発、MRO能力、製造設備、サプライチェーンへの再投資を優先しつつ、余剰キャッシュを配当と自社株買いに回す方針です。[1][4]

指標 FY2025 2026年上半期 読み方
調整後EPS* $6.37 $3.88 2026年上半期は前年同期比24%増。
フリーCF* $7.7B $4.7B 2026年上半期は前年同期比31%増。
FCF転換率* 113% 115% 利益をキャッシュへ変える力は高い。
自社株買い $7.6B $4.5B Q2単独では20億ドルを買い戻した。
配当支払額 $0.9B 2026年上半期のキャッシュフロー計算書ベース。

注)*はNon-GAAP指標。2026年上半期の自社株買いは会計上のtreasury stock purchasesで45.3億ドル。2026年Q2末時点で、200億ドルの買い戻し承認枠のうち約179.9億ドルが残っています。[1][2][4]

8. 技術開発とイノベーション戦略:「Future of Flight」の実現へ

次世代エンジン、耐久性向上、代替燃料対応、製造技術高度化、デジタルによる予兆保全・整備最適化は、中長期の競争軸です。GEエアロスペースは、現在のCFM56・LEAPなどの設置基盤から得るサービス収益を活用し、次世代技術に投資しています。[1][4]

  • CFM RISE:Open Fanなどの次世代技術を検証するプログラムです。2026年上半期にはシンガポールで空港テストベッドを設定しました。[4]
  • LEAP耐久性改善:LEAP-1Bの耐久性改善キットの認証を完了し、翼上時間を約2倍へ改善することを目指しています。[4]
  • MRO投資:グローバルMROネットワークに10億ドル超を投資し、LEAP対応能力を拡大しています。2026年上半期にはIberiaを7社目のLEAP Premier MROへ加え、Delta TechOpsのLEAP-1A・1B対応能力も拡大しました。[2][4]
  • サプライチェーン改善:2026年Q2は優先サプライヤーからの材料投入量が前四半期比・前年同期比とも二桁増となりました。ショップのターンアラウンドタイムもFY2025末から約1週間短縮しています。[4]
  • 防衛・自律機:XA102、GE426、F404、CT7、T408など、防衛・自律航空機向けの推進技術と受注も成長領域です。[4]

9. 市場での強みとライバル

GEエアロスペースは、商用・軍用エンジンの大規模な設置基盤とサービス網を強みに持ちます。競合はPratt & Whitney(RTX傘下)、Rolls-Royceなどです。競争の焦点は、燃費、翼上時間、整備性、耐久性、納期、認証対応、アフターマーケットでの顧客接点です。[1]

  • 設置基盤:商用約50,000基、軍用約30,000基のエンジン設置基盤があり、長期サービス収入の基盤になっています。[4]
  • LEAP:ナローボディ機向けで重要なエンジンファミリーです。2026年上半期の出荷は1,030基で前年同期比41%増でした。[4]
  • サービス優位性:FY2025はCESサービス収入がFY2024比26%増、2026年上半期も前年同期比32%増と、アフターマーケットの強さが続いています。[2][4]
  • 顧客獲得:2026年上半期にはUnited AirlinesとDelta Air LinesがGEnx、American AirlinesとCopa AirlinesがLEAPを選定しました。Ryanairとは約2,000基のCFM56・LEAPエンジンを対象とする長期部品サービス契約を締結しています。[4]

10. FY2026年の見通しと今後のポイント

会社は2026年1月22日にFY2026ガイダンスを公表し、2026年4月21日のQ1決算では当初ガイダンスを維持しました。その後、2026年7月16日のQ2決算では、上半期の好調な業績と下半期の可視性を理由に、売上、利益、EPS、フリーキャッシュフローの見通しを全面的に引き上げました。[2][3][4]

FY2026会社予想(2026年Q2決算時点)

指標 従来予想 2026年Q2後の予想
調整後売上成長率* 低二桁成長 10%台後半
営業利益* $9.85~$10.25B $10.55~$10.75B
調整後EPS* $7.10~$7.40 $7.65~$7.85
フリーキャッシュフロー* $8.0~$8.4B $8.9~$9.2B
FCF転換率* 100%超 100%超

注)*はNon-GAAP指標。[4]

セグメント別のFY2026見通し

  • CES売上:約20%増。従来予想の10%台半ばから引き上げ。
  • CESサービス売上:20%台前半の成長。従来予想の10%台半ばから引き上げ。
  • CES機器売上:約20%増。従来予想の10%台半ば~後半から引き上げ。
  • CES営業利益:102.5億~103.5億ドル。従来予想の96億~99億ドルから引き上げ。
  • DPT売上:10%台前半の成長。従来予想の1桁台半ば~後半から引き上げ。
  • DPT営業利益:16億~17億ドル。従来予想の15.5億~16.5億ドルから引き上げ。[4]

なお、FY2026のLEAP出荷について、Q1時点の記事では約2,000基の目標を記載していましたが、Q2決算の最新ガイダンス表では具体的な年間出荷基数は再掲されていません。本記事では、最新の確定実績である2026年上半期1,030基を中心に確認します。

投資家が注目すべきリスク

  • サプライチェーンと生産制約:材料・部品供給が遅れれば、エンジン納入とサービス収入の成長に影響します。供給状況は改善していますが、会社は制約とインフレが続くとみています。[4]
  • GE9Xプログラム:Boeing 777X向けGE9Xは重要な将来製品ですが、777X認証・納入スケジュールの遅れは収益化時期に影響します。
  • 新造機搭載エンジンの採算:新造機向けエンジンは初期採算が低くなりやすく、2026年上半期もGE9Xを含む搭載エンジン増加がCESの利益率を押し下げました。[4]
  • 航空需要の変動:景気後退、燃料価格、航空会社の財務悪化、投資計画変更は、新造機・サービス需要に影響します。
  • 中東情勢:2026年上半期には業績への重大な影響はありませんでしたが、紛争による航空機稼働率低下や燃料価格上昇は、ショップビジット、スペアパーツ、長期サービス契約の採算に影響する可能性があります。[4]
  • 防衛予算・地政学:防衛需要は追い風ですが、予算配分、輸出規制、国際情勢の変化に左右されます。
  • 技術・品質・認証:新技術の開発遅延、品質問題、認証遅延は長期の競争力と収益性に影響します。
  • 関税・貿易政策:航空宇宙分野の関税政策や返金の扱いは、仕入れコストや長期契約の採算に影響する可能性があります。[4]
  • 旧GE由来の負債・年金・保険関連:航空宇宙専業会社になった後も、年金、ランオフ保険、訴訟関連のリスクは完全には消えていません。[1]

11. まとめ:GEエアロスペースはこれからも成長できるか?

GEエアロスペースは、分社化によって航空宇宙事業に集中し、設置基盤とサービス収益をテコに成長するモデルがより明確になりました。FY2025は調整後売上21%増、営業利益25%増、調整後EPS38%増、FCF転換率113%と、非常に強い業績を示しました。[2]

2026年上半期も受注49%増、調整後売上27%増、営業利益18%増、調整後EPS24%増、FCF31%増となり、成長は継続しています。受注残に相当するRPOもFY2025末から2026年Q2末までに約202億ドル増え、2,108億ドルへ拡大しました。[4]

  • 強み:約80,000基の商用・軍用エンジン設置基盤、アフターマーケットサービス網、価格決定力、2,100億ドル超の受注残、次世代技術への投資。
  • 今後の鍵:生産能力の拡大、サプライチェーン改善、GE9Xと777Xの進展、LEAPの出荷拡大、サービス収入の持続的成長。
  • 短期の焦点:引き上げ後のFY2026ガイダンス、特に営業利益105.5億~107.5億ドルとFCF89億~92億ドルの実現です。

投資家目線では、GEエアロスペースは「航空機需要の回復に乗るメーカー」というだけでなく、稼働中エンジンの長期サービス収益でキャッシュを生む航空宇宙プラットフォーム企業と見るべきです。一方、利益率は新造エンジンの出荷構成や成長投資によって変動し、株価には高い成長期待が織り込まれやすいため、サプライチェーン、認証、品質、航空需要、地政学リスクには注意が必要です。

ミニ解説:売上成長と利益率を分けて見る
GEエアロスペースでは、新造機向けエンジンの出荷が増えると売上は伸びても、初期採算の低さから利益率が低下することがあります。その後、稼働エンジンが増え、整備・交換部品・長期サービス契約の収入が積み上がることで、ライフサイクル全体の収益性が高まる構造です。

本記事は、公開情報に基づき筆者の分析を加えたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

最終更新日時:2026年7月18日(FY2025通期決算/2025年10-K/Q1・Q2 2026決算反映)

【注】(出典リンク)

  1. GE Aerospace FY2025年次報告・分社化・財務・事業概要 → GE Aerospace 2025 Annual Report and 10-KSEC Form 10-K(FY2025)(確認日:2026-07-18)
  2. GE Aerospace 2025年Q4・FY2025決算 → GE Aerospace Q4 2025 Earnings ReleaseQ4 2025 Investor Presentation(確認日:2026-07-18)
  3. GE Aerospace 2026年Q1決算 → GE Aerospace Q1 2026 Earnings ReleaseQ1 2026 Press Release PDF(確認日:2026-07-18)
  4. GE Aerospace 2026年Q2決算・上半期実績・最新ガイダンス・財務諸表 → GE Aerospace Q2 2026 Earnings ReleaseQ2 2026 Investor PresentationGE Aerospace Form 10-Q(2026年6月30日終了期)(確認日:2026-07-18)
  5. 旧GE・過年度データ・分社化前後の比較制約 → GE Aerospace Annual ReportsGE Annual Reports Archive(確認日:2026-07-18)

Posted by 南 一矢