ABT:アボットラボラトリーズの配当推移

配当






アボット・ラボラトリーズ(ABT)配当分析

アボット・ラボラトリーズ(ABT)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析)

アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)は、ヘルスケア業界の総合企業として、医療機器、診断機器、栄養製品、医薬品の 4 つの事業部門を通じて、世界 160 カ国以上で事業を展開しています。同社は 52 年連続で配当を増やし続ける「配当王(Dividend King)」の一員であり、長期投資家にとって魅力的な配当成長株として知られています。

データソースに関する注記

本記事の分析には、MacroTrends.com、Abbott の公式IRページ、Koyfin、Dividend.com、Stock Analysis、Google Finance 関数など、複数の信頼できる情報源からのデータを統合して使用しています。

重要な注意事項:MacroTrends.com では、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrends では売上高、EPS、営業キャッシュフロー、純利益などの主要財務データは確認できますが、年次で集計された詳細な配当成長の歴史データは提供されていません。

そのため、52 年連続増配などの具体的な配当成長実績については、Abbott の IR ページや Koyfin、Dividend.com、Stock Analysis 等複数のソースを参照して確認・統合しています。本記事では、MacroTrends で確認可能な財務データを中心に、配当支払能力の分析等を行っています。

まず、配当利回りと株価をチャート(直近 90 日間)で見てみましょう。

配当利回りと株価の推移:3 ヶ月チャート

(この株価データは Google Finance 関数から取得。直近の配当関連情報は Stockprice.com を参照)

データソースの制約について

重要な注意事項:MacroTrends.com では、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrends では売上高、EPS、営業キャッシュフロー、純利益などの主要財務データは確認できますが、年次で集計された詳細な配当成長の歴史データは提供されていません。

そのため、52 年連続増配などの具体的な配当成長実績については、Abbott の IR ページや Koyfin、Dividend.com、Stock Analysis 等複数のソースを参照して確認しています。本記事では、MacroTrends で確認可能な財務データを中心に、配当支払能力の分析等を行っています。

配当成長の実績(複数ソース統合分析)

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、MacroTrends と Abbott の IR ページ、および信頼できる配当専門サイトのデータを統合して分析します。

配当データ* 平均株価** 年 EPS**
平均利回り 成長率 配当性向 年間配当
2024 1.67 0.9 29.1 2.22 132.87 7.64
2023 2.10 17.0 67.5 2.20 104.76 3.26
2022 1.73 4.0 48.1 1.88 108.88 3.91
2021 1.46 11.0 45.7 1.80 122.84 3.94
2020 1.59 12.5 57.6 1.62 90.34 2.81
2019 1.44 14.3 65.8 1.44 88.69 2.19
2018 1.25 16.7 72.8 1.26 82.72 1.73
2017 1.60 1.9 165.7 1.08 67.58 0.65
2016 2.09 10.4 68.9 1.06 50.69 1.54
2015 2.17 8.9 33.6 0.98 45.21 2.92
2014 2.06 5.9 60.8 0.90 43.75 1.49
2013 1.97 1.2 52.5 0.85 43.04 1.62
2012 4.27 3.8 22.6 0.84 19.68 3.72
2011 4.83 5.2 26.9 0.81 16.76 3.01
2010 4.33 4.0 26.0 0.77 17.78 2.96
2009 4.54 5.4 20.0 0.74 16.31 3.69
2008 4.14 17.3 0.70 16.90 4.05
* 配当データは Abbott IR ページ(2017–2024 年の実績)および Dividend.com(2016 年以前の調整済みデータ)より統合。
** EPS と平均株価は MacroTrends.com より(2008 年は一部推計値、MacroTrendsのデータに基づく)
  • 連続増配年数: 52年
  • 配当成長率(10年平均): 9.5%
  • 2024年配当性向: 29.1%
  • 2025年年間配当予測: $2.28 (過去の平均成長率に基づいた予測値)

着実な配当成長の実績

アボット・ラボラトリーズ(ABT)は、ヘルスケア業界の多角化企業として、52 年連続で配当を増額し続けている「配当王(Dividend King)」の地位を確立しています。2008 年から 2024 年にかけて、1 株配当は 0.70 ドルから 2.22 ドルへと 217% 増加し、年平均成長率は約 7.5% という堅実な成長を記録しています。

特筆すべきは、2013 年の医薬品事業のスピンオフ(AbbVie 社の分離)後も、着実な配当成長を継続していることです。また、2017 年の St. Jude Medical 買収による一時的な EPS 低下時も、配当は維持・増額されており、経営陣の株主還元への強いコミットメントが表れています。

財務パフォーマンスと成長見通し

主要財務指標の推移

以下の表では、売上高、営業CF、純利益をM$(百万ドル)単位、営業CFマージンは%単位で表示しています。

年度 売上高 (M$) 営業CF (M$) 同マージン (%) 純利益 (M$)
2024 41,950 8,558 20.4 13,402
2023 40,109 7,261 18.1 5,723
2022 43,653 9,581 22.0 6,933
2021 43,075 10,533 24.5 7,071
2020 34,608 7,901 22.8 4,495
2019 31,904 6,136 19.2 3,687
2018 30,578 6,300 20.6 2,368
2017 27,390 5,570 20.3 477
2016 20,853 3,203 15.4 1,400
2015 20,405 2,966 14.5 4,423
2014 20,247 3,675 18.1 2,284
2013 19,657 3,324 16.9 2,576
2012 19,050 9,314 48.9 5,963
2011 21,407 8,970 41.9 4,728
2010 35,167 8,736 24.8 4,626
2009 30,765 7,275 23.6 5,746
2008 29,528 6,994 23.7 4,881
* 2008年のデータは一部推定値(MacroTrendsのデータに基づく)

配当支払能力の分析

営業キャッシュフローによる配当カバー分析

アボット・ラボラトリーズの配当支払能力は極めて堅固です。2024年の営業キャッシュフローは86億ドルで、推定配当支払額約39億ドルを大幅に上回っています。これは2.2倍の配当カバー比率を意味し、配当の持続可能性を強く示しています。

配当支払余力の推移(2008年以降)

以下の表では、営業CF、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。

年度 営業CF (M$) 年間配当支払額 (M$) 配当カバー比率
2024 8,558 3,881 2.2
2023 7,261 3,848 1.9
2022 9,581 3,305 2.9
2021 10,533 3,178 3.3
2020 7,901 2,869 2.8
2019 6,136 2,591 2.4
2018 6,300 2,284 2.8
2017 5,570 1,911 2.9
2016 3,203 1,863 1.7
2015 2,966 1,714 1.7
2014 3,675 1,570 2.3
2013 3,324 1,496 2.2
2012 9,314 1,480 6.3

配当支払余力の分析結果:

  • **安定したカバー比率**:過去17年間で1.7〜6.4倍を維持し、常に配当を十分にカバー
  • **事業再編の影響**:2013年のAbbVie分離後は事業規模が縮小したが、配当支払能力は健全
  • **M&A後の回復**:2017年のSt. Jude Medical買収後も、着実にキャッシュフロー創出力を回復

強固なキャッシュフロー創出力と資金配分戦略

以下の表では、営業CF、フリーCF、FCF転換率を示しています。

年度 営業CF (M$) フリーCF (M$) FCF転換率 (%)
2024 8,558 6,200* 72.5
2023 7,261 5,059 69.7
2022 9,581 7,804 81.5
2021 10,533 8,648 82.1
2020 7,901 5,725 72.5

* 2024年は推計値

キャッシュフロー分析のポイント

**営業キャッシュフロー**:

  • **安定した創出力**:パンデミック期間中のCOVID-19検査需要により一時的に急増
  • **事業の多角化効果**:医療機器、診断機器、栄養製品の各部門がバランスよく貢献
  • **高い利益率**:営業CFマージン18-25%を維持し、業界平均を上回る

**フリーキャッシュフロー**:

  • **効率的な設備投資**:FCF転換率70-82%と高水準を維持
  • **研究開発との両立**:イノベーション投資を継続しながら高いFCFを創出
  • **株主還元の原資**:配当と自社株買いの原資として十分な水準

バランスシート分析と財務健全性評価

以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率およびROEを%単位で表示しています。

年度 総資産 (M$) 総負債 (M$) 株主資本 (M$) 自己資本率 (%) ROE (%) 負債比率 (%)
2024 74,500* 26,600* 47,900 64.3 32.2 56
2023 73,214 34,384 38,830 53.0 15.1 89
2022 74,438 37,533 36,905 49.6 19.1 102
2021 75,196 39,172 36,024 47.9 20.4 109
2020 72,548 39,545 33,003 45.5 14.3 120
2019 67,887 36,586 31,301 46.1 11.7 117
2018 67,174 36,450 30,724 45.7 7.6 119
2017 76,249 45,140 31,109 40.8 1.5 145
2016 41,248 20,520 20,728 50.3 6.7 99
2015 41,208 19,875 21,333 51.8 20.2 93
2014 41,208 18,558 22,650 55.0 9.9 82
2013 42,953 17,683 25,270 58.8 10.9 70
2012 67,025 40,215 26,810 40.0 22.9 150
2011 59,826 35,296 24,530 41.0 18.8 144
2010 52,417 29,647 22,770 43.4 21.7 130
2009 52,417 29,198 23,219 44.3 27.9 126
2008 51,227* 29,017* 22,210* 43.4 22.5* 131

* 2008年と2024年の一部は推計値

バランスシート分析の重要な観点

**自己資本率の推移と戦略的意味**:

  • **堅実な財務基盤**:自己資本率は40-65%の範囲で推移、ヘルスケア業界では健全な水準
  • **M&Aの影響**:2017年のSt. Jude Medical買収により一時的に自己資本率が低下
  • **回復傾向**:2020年代に入り自己資本率は改善傾向、財務健全性が向上
  • **業界比較**:ヘルスケア機器業界では45-55%が標準的で、アボットは適正範囲内

**ROE(自己資本利益率)の特徴**:

  • **安定した収益性**:2017年を除き10-30%台の健全なROEを維持
  • **2017年の異常値**:St. Jude Medical買収関連の一時費用によりROEが大幅低下
  • **2024年の回復**:32.2%と高水準に回復、効率的な経営を実現
  • **継続的な改善**:買収後の統合効果により収益性が着実に向上

総合評価

アボット・ラボラトリーズの財務戦略は**「健全性と成長性のバランス」**を重視したものと評価できます。自己資本率50%超という保守的な財務基盤を維持しながら、戦略的なM&Aによる成長を実現しています。特に、診断機器事業でのCOVID-19検査需要への迅速な対応や、医療機器事業での継続的なイノベーションにより、安定した収益成長を達成しています。

配当重視投資家にとっての投資価値

インカム投資家への魅力:

  1. **卓越した配当履歴**:52年連続増配という「配当王」の実績
  2. **持続的な配当成長**:年平均7.5%前後の堅実な配当成長率
  3. **保守的な配当政策**:配当性向29%と将来の成長余地を残す
  4. **事業の多角化**:4つの事業部門によるリスク分散とシナジー効果

配当投資戦略における位置づけ

成長型配当銘柄として最適

  • **ポートフォリオの成長エンジン**:高い配当成長率により長期的な収入増加を実現
  • **ヘルスケアセクターへの分散**:高齢化社会の恩恵を受ける優良銘柄
  • **インフレヘッジ機能**:医療機器・診断薬の価格決定力によりインフレ対応可能
  • **長期保有の報酬**:時間とともに配当利回りが大幅に向上

投資リスクと対策

主要リスク要因:

  1. **規制リスク**:医療機器・診断薬の承認プロセスや価格規制
  2. **競争激化**:大手医療機器メーカーとの技術競争
  3. **為替リスク**:海外売上比率約60%による為替変動影響
  4. **COVID-19検査需要の減少**:パンデミック収束による診断事業への影響
  5. **製品リコールリスク**:医療機器特有の品質問題リスク

リスク軽減策:

  • **事業の多角化**:医療機器、診断、栄養、医薬品の4部門でリスク分散
  • **継続的なイノベーション**:年間売上の約7%を研究開発に投資
  • **グローバル展開**:160カ国以上での事業展開により地域リスクを分散
  • **強固なブランド力**:FreeStyleLibre(血糖値モニター)などの革新的製品
  • **保守的な財務運営**:低い配当性向と健全な自己資本率

まとめ:配当投資家にとってのアボット・ラボラトリーズ

アボット・ラボラトリーズは、**52年連続増配の実績**、**年平均7.5%の配当成長率**、**多角化されたヘルスケア事業ポートフォリオ**を兼ね備えた、配当重視投資家にとって極めて魅力的な投資対象です。

特に、医療機器事業での継続的なイノベーション(FreeStyleLibre、MitraClipなど)、診断事業での市場リーダーシップ、栄養製品事業での安定収益、医薬品事業での新興市場での成長により、長期的な配当成長の継続が期待できます。配当性向29%という保守的な水準は、将来の配当成長余地が十分にあることを示しています。

投資判断のポイント

配当投資家にとって、アボット・ラボラトリーズは**「成長性と安定性を両立する配当王銘柄」**として、ポートフォリオの中核に位置づけることができる銘柄です。現在の配当利回り1.67%は市場平均を下回りますが、高い配当成長率により、長期保有による利回り向上が期待できます。ヘルスケアセクターへの分散投資と、高齢化社会の恩恵を享受する手段として、優れた選択肢といえるでしょう。

免責事項
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。


Posted by 南 一矢