ABT:アボットラボラトリーズの配当推移

配当






アボット・ラボラトリーズ(ABT)配当分析【2025年最新版】

アボット・ラボラトリーズ(ABT)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析)

アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)は、ヘルスケア業界の総合企業として、医療機器、診断機器、栄養製品、医薬品の 4 つの事業部門を通じて、世界 160 カ国以上で事業を展開しています。同社は 53 年連続で配当を増やし続ける「配当王(Dividend King)」の一員であり、長期投資家にとって魅力的な配当成長株として知られています。

データソースに関する注記

本記事の分析には、MacroTrends.com、Abbott の公式IRページ、SEC提出書類(Form 10-K/年次報告)、Koyfin、Dividend.com、Stock Analysis、Google Finance 関数など、複数の信頼できる情報源からのデータを統合して使用しています。

重要な注意事項:MacroTrends.com では、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrends では売上高、EPS、営業キャッシュフロー、純利益などの主要財務データは確認できますが、年次で集計された詳細な配当成長の歴史データは提供されていません。

そのため、53 年連続増配などの具体的な配当成長実績については、Abbott の IR ページや Koyfin、Dividend.com、Stock Analysis 等複数のソースを参照して確認・統合しています。本記事では、MacroTrends とSEC/IRで確認可能な財務データを中心に、配当支払能力の分析等を行っています。

まず、配当利回りと株価をチャート(直近 90 日間)で見てみましょう。

配当利回りと株価の推移:3 ヶ月チャート

(この株価データは Google Finance 関数から取得。直近の配当関連情報は Stockprice.com を参照)

データソースの制約について

重要な注意事項:MacroTrends.com では、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrends では売上高、EPS、営業キャッシュフロー、純利益などの主要財務データは確認できますが、年次で集計された詳細な配当成長の歴史データは提供されていません。

そのため、53 年連続増配などの具体的な配当成長実績については、Abbott の IR ページや Koyfin、Dividend.com、Stock Analysis 等複数のソースを参照して確認しています。本記事では、MacroTrends/SECで確認可能な財務データを中心に、配当支払能力の分析等を行っています。

配当成長の実績(複数ソース統合分析)

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、MacroTrends と Abbott の IR ページ、および信頼できる配当専門サイトのデータを統合して分析します。

配当データ* 平均株価** 年 EPS**
平均利回り(%) 成長率(%) 配当性向(%) 年間配当($)
2024 1.68 1.8 29.3 2.24 132.87 7.64
2023 2.10 17.0 67.5 2.20 104.76 3.26
2022 1.73 4.0 48.1 1.88 108.88 3.91
2021 1.46 11.0 45.7 1.80 122.84 3.94
2020 1.59 12.5 57.6 1.62 90.34 2.81
2019 1.44 14.3 65.8 1.44 88.69 2.19
2018 1.25 16.7 72.8 1.26 82.72 1.73
2017 1.60 1.9 165.7 1.08 67.58 0.65
2016 2.09 10.4 68.9 1.06 50.69 1.54
2015 2.17 8.9 33.6 0.98 45.21 2.92
2014 2.06 5.9 60.8 0.90 43.75 1.49
2013 1.97 1.2 52.5 0.85 43.04 1.62
2012 4.27 3.8 22.6 0.84 19.68 3.72
2011 4.83 5.2 26.9 0.81 16.76 3.01
2010 4.33 4.0 26.0 0.77 17.78 2.96
2009 4.54 5.4 20.0 0.74 16.31 3.69
2008 4.14 17.3 0.70 16.90 4.05
* 配当データは Abbott IR/Newsroom(直近年の「宣言ベース」含む)および Dividend.com(2016年以前の調整済みデータ)より統合。
** EPS と平均株価は MacroTrends.com より(2008 年は一部推計値、MacroTrendsのデータに基づく)
  • 連続増配年数: 53年
  • 配当成長率(10年平均): 目安 7–10%(年度により変動)
  • 2024年配当性向: 約29.3%
  • 2025年年間配当の足元ランレート: $2.36(四半期$0.59×4。年末の増配があれば更に上振れの可能性)

着実な配当成長の実績

アボット・ラボラトリーズ(ABT)は、ヘルスケア業界の多角化企業として、53 年連続で配当を増額し続けている「配当王(Dividend King)」の地位を確立しています。2008 年から 2024 年にかけて、1 株配当は 0.70 ドルから 2.24 ドルへと 約+220% 増加し、年平均でも堅実な成長を記録しています。

特筆すべきは、2013 年の医薬品事業のスピンオフ(AbbVie 社の分離)後も、着実な配当成長を継続していることです。また、2017 年の St. Jude Medical 買収による一時的な EPS 低下時も、配当は維持・増額されており、経営陣の株主還元への強いコミットメントが表れています。

財務パフォーマンスと成長見通し

主要財務指標の推移

以下の表では、売上高、営業CF、純利益をM$(百万ドル)単位、営業CFマージンは%単位で表示しています。

年度 売上高 (M$) 営業CF (M$) 同マージン (%) 純利益 (M$)
2024 41,950 8,558 20.4 13,402
2023 40,109 7,261 18.1 5,723
2022 43,653 9,581 22.0 6,933
2021 43,075 10,533 24.5 7,071
2020 34,608 7,901 22.8 4,495
2019 31,904 6,136 19.2 3,687
2018 30,578 6,300 20.6 2,368
2017 27,390 5,570 20.3 477
2016 20,853 3,203 15.4 1,400
2015 20,405 2,966 14.5 4,423
2014 20,247 3,675 18.1 2,284
2013 19,657 3,324 16.9 2,576
2012 19,050 9,314 48.9 5,963
2011 21,407 8,970 41.9 4,728
2010 35,167 8,736 24.8 4,626
2009 30,765 7,275 23.6 5,746
2008 29,528 6,994 23.7 4,881
* 2008年のデータは一部推定値(MacroTrendsのデータに基づく)

配当支払能力の分析

営業キャッシュフローによる配当カバー分析

アボット・ラボラトリーズの配当支払能力は極めて堅固です。2024年の営業キャッシュフローは85.6億ドルで、配当支払額(キャッシュアウト)約38.4億ドルを大幅に上回っています。これはおよそ2.2倍の配当カバー比率を意味し、配当の持続可能性を強く示しています。

配当支払余力の推移(2012年以降の代表値)

以下の表では、営業CF、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。


年度 営業CF (M$) 年間配当支払額 (M$) 配当カバー比率
2024 8,558 3,836 2.2
2023 7,261 3,623 2.0
2022 9,581 3,072 3.1
2021 10,533 2,845 3.7
2020 7,901 2,593 3.0

強固なキャッシュフロー創出力と資金配分戦略

以下の表では、営業CF、フリーCF、FCF転換率を示しています。

年度 営業CF (M$) フリーCF (M$) FCF転換率 (%)
2024 8,558 6,200* 72.5
2023 7,261 5,059 69.7
2022 9,581 7,804 81.5
2021 10,533 8,648 82.1
2020 7,901 5,725 72.5

* 2024年のフリーCFは推計値(公表値の範囲内で算出)。

キャッシュフロー分析のポイント

営業キャッシュフロー

  • 安定した創出力:パンデミック期の検査需要により一時的に高水準となった後、基礎事業の伸長で持続的に厚いCFOを確保
  • 事業の多角化効果:医療機器・診断・栄養・医薬の各部門がバランス良く貢献
  • 利益率:営業CFマージンは概ね18–25%のレンジで推移

フリーキャッシュフロー

  • 効率的な投資:FCF転換率は70–82%と高水準
  • 株主還元の原資:配当と自社株買いを十分に賄える水準を継続

バランスシート分析と財務健全性評価

以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率およびROEを%単位で表示しています。

株主資本 (M$)

年度 総資産 (M$) 総負債 (M$) 自己資本率 (%) ROE (%) 負債比率 (%)
2024 81,414 33,513 47,901 58.8 32.2 70
2023 73,214 34,384 38,830 53.0 15.1 89
2022 74,438 37,533 36,905 49.6 19.1 102
2021 75,196 39,172 36,024 47.9 20.4 109
2020 72,548 39,545 33,003 45.5 14.3 120

注:2024年はSEC 10-Kの連結貸借対照表。ROEはMacroTrendsの年次ROEに整合。

バランスシート分析の重要な観点

自己資本率の推移と戦略的意味

  • 堅実な財務基盤:自己資本率は概ね45–60%の範囲で推移
  • M&Aの影響:2017年のSt. Jude Medical買収で一時的に低下、その後回復
  • 為替分散海外売上比率は約61%とグローバル分散が効く

ROE(自己資本利益率)の特徴

  • 安定した収益性:2017年を除き10–30%台のROEを維持、2024年は約32%
  • 改善基調:買収後の統合効果と新製品成長(例:FreeStyle Libre)で収益性が向上

総合評価

アボット・ラボラトリーズの財務戦略は「健全性と成長性のバランス」重視。保守的な財務基盤を維持しながら、医療機器・診断でのイノベーション投資と選択的M&Aで中期成長を確保。配当原資のフリーCFも厚く、今後も安定増配が期待できます。

配当重視投資家にとっての投資価値

インカム投資家への魅力:

  1. 卓越した配当履歴:53年連続増配という「配当王」の実績
  2. 持続的な配当成長:おおむね年率1桁後半の増配を継続
  3. 保守的な配当政策:2024年の配当性向は約29%と余力大
  4. 事業の多角化:4部門のバランスで景気耐性と安定CF

配当投資戦略における位置づけ

成長型配当銘柄として最適

  • ポートフォリオの成長エンジン:高いFCFと安定増配で長期の収入成長を牽引
  • ヘルスケアセクターのコア:高齢化・慢性疾患増で構造追い風
  • インフレ耐性:医療機器・診断の価格決定力
  • 長期保有の報酬:時間分散でYOC(取得価格利回り)向上

投資リスクと対策

主要リスク要因:

  1. 規制リスク:医療機器・診断薬の承認や価格規制
  2. 競争激化:大手との技術・臨床データ競争
  3. 為替リスク:海外売上約61%に伴う為替影響
  4. COVID-19検査需要の減少:一時的追い風の剥落
  5. 品質/リコールリスク:医療機器特有の安全性リスク

リスク軽減策:

  • 事業の多角化:4部門で収益源を分散
  • 継続的なイノベーション:売上の約7%をR&Dに投資
  • グローバル展開:160+カ国で地域分散
  • 保守的な財務運営:低い配当性向と高い自己資本比率

まとめ:配当投資家にとってのアボット・ラボラトリーズ

アボット・ラボラトリーズは、53年連続増配厚いフリーCF多角化事業を兼ね備えた、長期の資産形成に適した成長型配当銘柄です。足元の四半期配当は$0.59(年率$2.36)で、年末にかけての追加増配余地も残ります。長期投資の中核候補として引き続き注目に値します。

免責事項
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。


Posted by 南 一矢