ABT:アボットラボラトリーズの配当推移
アボット・ラボラトリーズ(ABT)配当関連指標(利回りや成長率、配当性向等の分析)
アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)は、ヘルスケア業界の総合企業として、医療機器、診断機器、栄養製品、医薬品の 4 つの事業部門を通じて、世界 160 カ国以上で事業を展開しています。同社は 53 年連続で配当を増やし続ける「配当王(Dividend King)」の一員であり、長期投資家にとって魅力的な配当成長株として知られています。
データソースに関する注記
本記事の分析には、MacroTrends.com、Abbott の公式IRページ、SEC提出書類(Form 10-K/年次報告)、Koyfin、Dividend.com、Stock Analysis、Google Finance 関数など、複数の信頼できる情報源からのデータを統合して使用しています。
重要な注意事項:MacroTrends.com では、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrends では売上高、EPS、営業キャッシュフロー、純利益などの主要財務データは確認できますが、年次で集計された詳細な配当成長の歴史データは提供されていません。
そのため、53 年連続増配などの具体的な配当成長実績については、Abbott の IR ページや Koyfin、Dividend.com、Stock Analysis 等複数のソースを参照して確認・統合しています。本記事では、MacroTrends とSEC/IRで確認可能な財務データを中心に、配当支払能力の分析等を行っています。
まず、配当利回りと株価をチャート(直近 90 日間)で見てみましょう。
配当利回りと株価の推移:3 ヶ月チャート
(この株価データは Google Finance 関数から取得。直近の配当関連情報は Stockprice.com を参照)
データソースの制約について
重要な注意事項:MacroTrends.com では、年次の詳細な配当データ(配当利回り、配当成長率、配当性向の年次推移)が表形式で直接提供されていません。MacroTrends では売上高、EPS、営業キャッシュフロー、純利益などの主要財務データは確認できますが、年次で集計された詳細な配当成長の歴史データは提供されていません。
そのため、53 年連続増配などの具体的な配当成長実績については、Abbott の IR ページや Koyfin、Dividend.com、Stock Analysis 等複数のソースを参照して確認しています。本記事では、MacroTrends/SECで確認可能な財務データを中心に、配当支払能力の分析等を行っています。
配当成長の実績(複数ソース統合分析)
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)の推移について、MacroTrends と Abbott の IR ページ、および信頼できる配当専門サイトのデータを統合して分析します。
年 | 配当データ* | 平均株価** | 年 EPS** | |||
---|---|---|---|---|---|---|
平均利回り(%) | 成長率(%) | 配当性向(%) | 年間配当($) | |||
2024 | 1.68 | 1.8 | 29.3 | 2.24 | 132.87 | 7.64 |
2023 | 2.10 | 17.0 | 67.5 | 2.20 | 104.76 | 3.26 |
2022 | 1.73 | 4.0 | 48.1 | 1.88 | 108.88 | 3.91 |
2021 | 1.46 | 11.0 | 45.7 | 1.80 | 122.84 | 3.94 |
2020 | 1.59 | 12.5 | 57.6 | 1.62 | 90.34 | 2.81 |
2019 | 1.44 | 14.3 | 65.8 | 1.44 | 88.69 | 2.19 |
2018 | 1.25 | 16.7 | 72.8 | 1.26 | 82.72 | 1.73 |
2017 | 1.60 | 1.9 | 165.7 | 1.08 | 67.58 | 0.65 |
2016 | 2.09 | 10.4 | 68.9 | 1.06 | 50.69 | 1.54 |
2015 | 2.17 | 8.9 | 33.6 | 0.98 | 45.21 | 2.92 |
2014 | 2.06 | 5.9 | 60.8 | 0.90 | 43.75 | 1.49 |
2013 | 1.97 | 1.2 | 52.5 | 0.85 | 43.04 | 1.62 |
2012 | 4.27 | 3.8 | 22.6 | 0.84 | 19.68 | 3.72 |
2011 | 4.83 | 5.2 | 26.9 | 0.81 | 16.76 | 3.01 |
2010 | 4.33 | 4.0 | 26.0 | 0.77 | 17.78 | 2.96 |
2009 | 4.54 | 5.4 | 20.0 | 0.74 | 16.31 | 3.69 |
2008 | 4.14 | – | 17.3 | 0.70 | 16.90 | 4.05 |
* 配当データは Abbott IR/Newsroom(直近年の「宣言ベース」含む)および Dividend.com(2016年以前の調整済みデータ)より統合。 | ||||||
** EPS と平均株価は MacroTrends.com より(2008 年は一部推計値、MacroTrendsのデータに基づく) |
- 連続増配年数: 53年
- 配当成長率(10年平均): 目安 7–10%(年度により変動)
- 2024年配当性向: 約29.3%
- 2025年年間配当の足元ランレート: $2.36(四半期$0.59×4。年末の増配があれば更に上振れの可能性)
着実な配当成長の実績
アボット・ラボラトリーズ(ABT)は、ヘルスケア業界の多角化企業として、53 年連続で配当を増額し続けている「配当王(Dividend King)」の地位を確立しています。2008 年から 2024 年にかけて、1 株配当は 0.70 ドルから 2.24 ドルへと 約+220% 増加し、年平均でも堅実な成長を記録しています。
特筆すべきは、2013 年の医薬品事業のスピンオフ(AbbVie 社の分離)後も、着実な配当成長を継続していることです。また、2017 年の St. Jude Medical 買収による一時的な EPS 低下時も、配当は維持・増額されており、経営陣の株主還元への強いコミットメントが表れています。
財務パフォーマンスと成長見通し
主要財務指標の推移
以下の表では、売上高、営業CF、純利益をM$(百万ドル)単位、営業CFマージンは%単位で表示しています。
年度 | 売上高 (M$) | 営業CF (M$) | 同マージン (%) | 純利益 (M$) |
---|---|---|---|---|
2024 | 41,950 | 8,558 | 20.4 | 13,402 |
2023 | 40,109 | 7,261 | 18.1 | 5,723 |
2022 | 43,653 | 9,581 | 22.0 | 6,933 |
2021 | 43,075 | 10,533 | 24.5 | 7,071 |
2020 | 34,608 | 7,901 | 22.8 | 4,495 |
2019 | 31,904 | 6,136 | 19.2 | 3,687 |
2018 | 30,578 | 6,300 | 20.6 | 2,368 |
2017 | 27,390 | 5,570 | 20.3 | 477 |
2016 | 20,853 | 3,203 | 15.4 | 1,400 |
2015 | 20,405 | 2,966 | 14.5 | 4,423 |
2014 | 20,247 | 3,675 | 18.1 | 2,284 |
2013 | 19,657 | 3,324 | 16.9 | 2,576 |
2012 | 19,050 | 9,314 | 48.9 | 5,963 |
2011 | 21,407 | 8,970 | 41.9 | 4,728 |
2010 | 35,167 | 8,736 | 24.8 | 4,626 |
2009 | 30,765 | 7,275 | 23.6 | 5,746 |
2008 | 29,528 | 6,994 | 23.7 | 4,881 |
* 2008年のデータは一部推定値(MacroTrendsのデータに基づく) |
配当支払能力の分析
営業キャッシュフローによる配当カバー分析
アボット・ラボラトリーズの配当支払能力は極めて堅固です。2024年の営業キャッシュフローは85.6億ドルで、配当支払額(キャッシュアウト)約38.4億ドルを大幅に上回っています。これはおよそ2.2倍の配当カバー比率を意味し、配当の持続可能性を強く示しています。
配当支払余力の推移(2012年以降の代表値)
以下の表では、営業CF、年間配当支払額をM$(百万ドル)単位、配当カバー比率を倍数で表示しています。
年度 | 営業CF (M$) | 年間配当支払額 (M$) | 配当カバー比率 |
---|---|---|---|
2024 | 8,558 | 3,836 | 2.2 |
2023 | 7,261 | 3,623 | 2.0 |
2022 | 9,581 | 3,072 | 3.1 |
2021 | 10,533 | 2,845 | 3.7 |
2020 | 7,901 | 2,593 | 3.0 |
強固なキャッシュフロー創出力と資金配分戦略
以下の表では、営業CF、フリーCF、FCF転換率を示しています。
年度 | 営業CF (M$) | フリーCF (M$) | FCF転換率 (%) |
---|---|---|---|
2024 | 8,558 | 6,200* | 72.5 |
2023 | 7,261 | 5,059 | 69.7 |
2022 | 9,581 | 7,804 | 81.5 |
2021 | 10,533 | 8,648 | 82.1 |
2020 | 7,901 | 5,725 | 72.5 |
* 2024年のフリーCFは推計値(公表値の範囲内で算出)。
キャッシュフロー分析のポイント
営業キャッシュフロー:
- 安定した創出力:パンデミック期の検査需要により一時的に高水準となった後、基礎事業の伸長で持続的に厚いCFOを確保
- 事業の多角化効果:医療機器・診断・栄養・医薬の各部門がバランス良く貢献
- 利益率:営業CFマージンは概ね18–25%のレンジで推移
フリーキャッシュフロー:
- 効率的な投資:FCF転換率は70–82%と高水準
- 株主還元の原資:配当と自社株買いを十分に賄える水準を継続
バランスシート分析と財務健全性評価
以下の表では、総資産、総負債、株主資本をM$(百万ドル)単位、自己資本率およびROEを%単位で表示しています。
年度 | 総資産 (M$) | 総負債 (M$) | 自己資本率 (%) | ROE (%) | 負債比率 (%) | |
---|---|---|---|---|---|---|
2024 | 81,414 | 33,513 | 47,901 | 58.8 | 32.2 | 70 |
2023 | 73,214 | 34,384 | 38,830 | 53.0 | 15.1 | 89 |
2022 | 74,438 | 37,533 | 36,905 | 49.6 | 19.1 | 102 |
2021 | 75,196 | 39,172 | 36,024 | 47.9 | 20.4 | 109 |
2020 | 72,548 | 39,545 | 33,003 | 45.5 | 14.3 | 120 |
注:2024年はSEC 10-Kの連結貸借対照表。ROEはMacroTrendsの年次ROEに整合。
バランスシート分析の重要な観点
自己資本率の推移と戦略的意味:
- 堅実な財務基盤:自己資本率は概ね45–60%の範囲で推移
- M&Aの影響:2017年のSt. Jude Medical買収で一時的に低下、その後回復
- 為替分散:海外売上比率は約61%とグローバル分散が効く
ROE(自己資本利益率)の特徴:
- 安定した収益性:2017年を除き10–30%台のROEを維持、2024年は約32%
- 改善基調:買収後の統合効果と新製品成長(例:FreeStyle Libre)で収益性が向上
総合評価
アボット・ラボラトリーズの財務戦略は「健全性と成長性のバランス」重視。保守的な財務基盤を維持しながら、医療機器・診断でのイノベーション投資と選択的M&Aで中期成長を確保。配当原資のフリーCFも厚く、今後も安定増配が期待できます。
配当重視投資家にとっての投資価値
インカム投資家への魅力:
- 卓越した配当履歴:53年連続増配という「配当王」の実績
- 持続的な配当成長:おおむね年率1桁後半の増配を継続
- 保守的な配当政策:2024年の配当性向は約29%と余力大
- 事業の多角化:4部門のバランスで景気耐性と安定CF
配当投資戦略における位置づけ
成長型配当銘柄として最適
- ポートフォリオの成長エンジン:高いFCFと安定増配で長期の収入成長を牽引
- ヘルスケアセクターのコア:高齢化・慢性疾患増で構造追い風
- インフレ耐性:医療機器・診断の価格決定力
- 長期保有の報酬:時間分散でYOC(取得価格利回り)向上
投資リスクと対策
主要リスク要因:
- 規制リスク:医療機器・診断薬の承認や価格規制
- 競争激化:大手との技術・臨床データ競争
- 為替リスク:海外売上約61%に伴う為替影響
- COVID-19検査需要の減少:一時的追い風の剥落
- 品質/リコールリスク:医療機器特有の安全性リスク
リスク軽減策:
- 事業の多角化:4部門で収益源を分散
- 継続的なイノベーション:売上の約7%をR&Dに投資
- グローバル展開:160+カ国で地域分散
- 保守的な財務運営:低い配当性向と高い自己資本比率
まとめ:配当投資家にとってのアボット・ラボラトリーズ
アボット・ラボラトリーズは、53年連続増配、厚いフリーCF、多角化事業を兼ね備えた、長期の資産形成に適した成長型配当銘柄です。足元の四半期配当は$0.59(年率$2.36)で、年末にかけての追加増配余地も残ります。長期投資の中核候補として引き続き注目に値します。
出典
公式IR/SEC(最新決算・年次報告):
- Abbott Investor Relations – Annual Reports(2024 Annual Report/10-K)
- Form 10-K(2024年12月期)主要数値
- 2024通期リリース(2025/1/22)
配当関連(公式):
MacroTrends(補助データ):
補足資料:
本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。過去の実績は将来の結果を保証するものではありません。