AMT:アメリカンタワーの配当推移
【2025年9月最新版】アメリカンタワー(AMT)徹底分析:通信タワーREITの配当持続力と10年データ
アメリカンタワー(American Tower Corporation)は、22カ国で約15万の通信サイト(2024年末時点)を展開する通信インフラ特化型REITです。REITとしての安定賃料に加え、5G・IoT・データセンター(CoreSite)を取り込み、堅固なキャッシュフローを創出しています。
まず足元の市場感を押さえるため、配当利回りと株価(直近90日)をざっと可視化します。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
(この株価データはグーグルファイナンス関数から取得。直近の配当関連情報はStockprice.comを参照)
用語メモ(必要に応じて開閉)
AFFO(調整後FFO)とは?
REITの分配原資を測る実務指標。FFOは当期純利益に減価償却等の非現金費用を足し戻し、資産売却益等を調整した、REITの基本的な稼ぐ力。AFFOはFFOから直線償却・維持更新投資などを差し引き、株主還元の持続性をみる際に重視される指標。AMTはIRでAFFO attributable to common stockholders per share
を定義・公表しています。「AFFO/株」はAFFOを希薄化後株式数で割った1株値。増資や自社株など株式数の変化を織り込んで比較できる。
テナントビリング成長(Organic Tenant Billings Growth)
為替・買収等を除いた既存契約の増額分。米国は年固定3%程度のエスカレーター、欧州などはCPI連動が多く、契約インフレ耐性が配当安定性を下支えします。
エスカレーター(年次賃料改定)
米国:年約3%固定が一般的/欧州:CPI連動が中心。長期契約×年次改定により、売上・AFFOが自動昇圧される構造です。
【データと免責】
- 四半期・年次データはAMTのIR開示(プレスリリース・補足資料・10-K)と主要データサイトを突合して作成。年額配当は出典記載のヒストリーを基準に集計。
- 金額は米ドル。端数は丸め処理。ガイダンスは会社想定値(レンジ)のため将来確定値ではありません。
1. 業績ハイライト(足元)
- Q2 2025売上:$2,627M(+3.2%)、物件収入:$2,527M(+1.2%)
- 四半期AFFO/株:$2.60(前年同期比▲6.8%)。通期AFFO/株ガイダンス:$10.46–$10.65
- 配当:四半期$1.70を継続(年率換算$6.80)
(詳細は末尾の出典「Q2 2025決算・配当」参照)
1.1 10年データ:売上・AFFO/株・配当
| 会計年度 | 売上高(十億$) | AFFO/株 ($) | 年間配当 ($) | 配当性向AFFOベース |
|---|---|---|---|---|
| 2015 | 4.77 | 4.45 | 1.81 | 41% |
| 2016 | 5.79 | 5.81 | 2.17 | 37% |
| 2017 | 6.66 | 6.72 | 2.62 | 39% |
| 2018 | 7.44 | 7.59* | 3.15 | 41% |
| 2019 | 7.58 | 7.90 | 3.78 | 48% |
| 2020 | 8.04 | 8.49 | 4.53 | 53% |
| 2021 | 9.36 | 9.43 | 5.21 | 55% |
| 2022 | 9.65 | 9.76 | 5.86 | 60% |
| 2023 | 10.01 | 9.87 | 6.45 | 65% |
| 2024 | 10.13 | 10.54 | 6.48 | 61% |
| 2025E | — | 10.46–10.65 | 6.80(年率換算) | ~64%(中点仮置) |
*E=Estimate(予測)、2018はTata和解の一時的押し上げを含む旨がIR資料に注記あり。
見どころ
- 長期で右肩上がり:売上・AFFO/株は10年で継続成長。2024はAFFO/株$10.54。
- 配当性向の管理:AFFOベースでおおむね60%前後を維持。分配余力の目安として妥当。
- 契約構造が下支え:米国3%固定/欧州CPI連動などのエスカレーターが長期の積み上げを形成。
1.2 配当の現況
- 配当は四半期支払。2025年は$1.70を継続中(前期$1.62→増額後据置)。
- キャッシュ創出とレバレッジ抑制の両立を重視し、増配より持続性を優先する局面。
2. 成長戦略:タワー×データセンター
AMTはマルチテナント型タワー賃貸に、CoreSite(データセンター)を重ねた二軸で需要を取り込みます。米国はミッドバンド帯の密度化、欧州はCPI連動契約での積み上げが効き、アフリカ・南米はテナント追加による高い限界収益が寄与します。
| 投資領域 | 配分の目安 | 主なドライバー | 期待収益率 |
|---|---|---|---|
| 米国データセンター | ~35% | AI/クラウドの相互接続需要(CoreSite) | 10–12% |
| 米国タワー | ~30% | 5G密度化・機器更新 | 8–10% |
| 国際タワー | ~25% | 新興国のテナント追加 | 12–15% |
| インフラ高度化 | ~10% | 電力・バックホール等の最適化 | 6–8% |
(配分は直近の開示・補足資料からの整理であり、年度により変動)
3. 財務健全性
3.1 キャッシュフローと配当カバー
| 年度 | 営業CF ($bn) | 配当支払額 ($bn) | カバー率 (営業CF/配当) |
|---|---|---|---|
| 2015 | 2.18 | 0.50 | 4.36x |
| 2016 | 2.53 | 0.55 | 4.61x |
| 2017 | 3.14 | 1.14 | 2.76x |
| 2018 | 3.57 | 1.62 | 2.21x |
| 2019 | 3.63 | 1.94 | 1.87x |
| 2020 | 3.61 | 2.22 | 1.63x |
| 2021 | 3.51 | 2.28 | 1.54x |
| 2022 | 3.70 | 2.83 | 1.30x |
| 2023 | 4.72 | 3.09 | 1.53x |
| 2024 | 5.29 | 3.18 | 1.66x |
出典:Macrotrends「Operating Cash Flow」「Dividends Paid」。
格付け・流動性
- S&P:BBB+(見通し安定)/Fitch:BBB+(見通し安定)
- 固定金利比率が高く、金利上昇耐性を確保。
- インド事業の売却完了に伴い、サイト数は約15万/22カ国体制へ再編。
4. 配当持続性の視点
4.1 タワーREITの安定化メカニズム
ポイント
- 長期契約×年次改定:5–10年程度の契約期間に、米国3%固定・欧州CPI連動のエスカレーター。
- 解約障壁:設備移設のコスト/工期が大きく、スイッチングが起きにくい。
- マルチテナント:同一タワーにテナント追加で限界利益率が高い(増設ほどAFFOに効く)。
4.2 競合比較(参考)
| 項目 | AMT | Crown Castle (CCI) | 所見 |
|---|---|---|---|
| 配当方針(2025) | $1.70/四半期を維持 | 年$4.25へ約32%減配 | AMTは持続性重視 |
| 事業範囲 | 22カ国・約15万サイト+CoreSite | 米国中心・約4万サイト | AMTは地理分散 |
| 格付け | S&P: BBB+ | (投資適格) | 調達耐性はAMT良好 |
主なリスク
- 金利感応度:REIT全般のディスカウント率上昇でバリュエーションが揺れやすい。
- 投資サイクル:5G投資一巡局面の需要変動。
- 為替:海外売上の比率が高い。
- 技術代替:衛星等の新技術浸透スピード。
5. まとめ
AMTは長期契約×年次改定×マルチテナントでAFFOを着実に積み上げ、配当は持続性を最優先して運営。2024–2025はCoreSiteを含む二軸体制で成長投資を継続しつつ、格付けはBBB+まで改善。金利・為替などの外部要因はあるものの、配当原資(AFFO)の質と見通しは一貫して堅固と評価できます。
6. 出典情報
公式情報・決算資料
- American Tower Reports Q2 2025 Financial Results
- American Tower Reports Q1 2025 Financial Results
- Q2 2025 Earnings Materials(スライド/補足)
- Stock Information(Dividend History)
- Annual Reports / 10-K
配当・株価データ
10年系列(売上・AFFO/株の参考)
事業規模・国別展開
契約エスカレーターの参考
格付け
競合(CCI)の配当方針

