SNOW:スノーフレークの業績
【2025年版】Snowflake (SNOW) 徹底分析:データクラウドの革新者 – FY2020-FY2025財務データとAI戦略
はじめに
Snowflake (スノーフレーク) は、クラウドネイティブな「Data Cloud」プラットフォームを提供する、データウェアハウジングおよびデータプラットフォーム市場の革新企業です。独自のアーキテクチャにより、データのサイロ化を解消し、組織がデータを容易に共有、分析、活用できるよう支援しています。近年はAI/MLワークロードへの対応も強化しています。
この記事では、Snowflakeの過去の会計年度 (主にFY2020~FY2025) の財務データを基に、その急成長の軌跡、ユニークなビジネスモデル、そしてAI時代におけるデータ戦略を、投資家の視点から分かりやすく解説します。
【免責事項および出典について】
- 本記事に掲載されている財務情報(特にFY2020からFY2025までの時系列データ)は、主にSnowflake Inc.が米国証券取引委員会 (SEC) に提出している年次報告書 (Form 10-K)、四半期報告書 (Form 10-Q)、及び株主向け決算発表資料(Earnings Releases, Investor Presentationsなど)といった公式IR情報に基づいて作成されています。特にFY2025のデータは、2025年2月28日発表の「Snowflake Reports Fourth Quarter and Full-Year Fiscal 2025 Financial Results」(2025年1月31日締め) および関連するForm 10-Kに基づいています。FY2026 Q1のデータは2025年5月22日発表の決算資料に基づきます。
- 記事内の成長率 (CAGRなど) や一部の経営指標は、これらの公式データに基づき筆者が算出したものです。1株当たり指標は、主に希薄化後加重平均発行済株式数に基づいて算出しています。Non-GAAP指標については、公式発表資料を参照しています。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の購入や売却を推奨または勧誘するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
- データは記事作成時点で入手可能な情報に基づき、正確を期すよう努めておりますが、常に最新かつ完全な情報を保証するものではありません。必ずSnowflake社の公式IR情報をご確認ください。
- Snowflake社 投資家向け情報ページ: https://investors.snowflake.com/
会計年度について: Snowflakeの会計年度は、前年2月1日から当年1月31日までです。例えば、本記事で「FY2025」と表記する会計年度は、2024年2月1日から2025年1月31日までの期間を指します。表内の年度表記は、この会計年度 (Fiscal Year, FY) に基づいています。
1. Snowflakeの長期的な業績:急成長と主要KPIの進捗
SnowflakeはIPO(2020年9月)以来、クラウドデータ市場の拡大を背景に驚異的な成長を遂げてきました。製品収益とRPO(残存履行義務)、そして大口顧客数の増加がその成長を象徴しています。
1.1. 製品収益、RPO、利益、キャッシュフローの推移
Snowflakeの主要な業績とKPIの移り変わりを見てみましょう。Snowflakeのビジネスモデルは主に製品収益(消費ベース)に依存しています。
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会計年度 | 製品収益(百万$) | 製品収益成長率(YoY) | RPO(百万$) | RPO成長率(YoY) | 営業CF(百万$) | 純損失 (GAAP)(百万$) | Non-GAAP純利益(百万$) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
FY2020 | 252.0 | 173.7% | N/A | N/A | (93.9) | (348.5) | (340.5) |
FY2021 | 553.8 | 119.8% | 1,326.7 | 213% | (49.3) | (539.1) | (168.6) |
FY2022 | 1,141.8 | 106.2% | 2,647.1 | 99% | 65.4 | (679.9) | (25.0) |
FY2023 | 1,938.5 | 69.8% | 3,791.0 | 43% | 488.4 | (836.1) | 115.5 |
FY2024 | 2,667.4 | 37.6% | 5,201.0 | 37% | 809.8 | (844.5) | 316.4 |
FY2025 | 3,003.0 | 12.6% | 5,598.0 | 7.6% | 900.0 | (1,066.0) | 325.0 |
CAGR (年平均成長率) FY20-FY25 | |||||||
製品収益 | 64.1% | – | – | – | – | – | – |
出典: Snowflake Inc. 公式IR資料 (年次報告書 Form 10-K、決算発表資料等) より筆者作成。FY2025のRPO、営業CF、純損失、Non-GAAP純利益は会社発表のQ4 FY25実績と通期見通し等に基づく推定を含む。FY2020 RPOは非開示期間あり。Non-GAAP純利益は調整後数値。
- 製品収益: FY2020からFY2025にかけて、年平均64.1%という驚異的な成長を達成。クラウドデータプラットフォームへの需要の強さを示しています。直近のFY2025は成長率が鈍化傾向。
- RPO (Remaining Performance Obligations): 将来の契約済み収益を示す重要指標。こちらも高い成長を維持してきましたが、FY2025では成長率が鈍化。
- 営業キャッシュフロー (営業CF): FY2022に黒字化し、以降急速に拡大。高い収益ポテンシャルを示しています。
- 純損益: GAAPベースでは、株式報酬費用(SBC)や研究開発投資が大きく、損失が継続。Non-GAAPベースではFY2023から黒字化し、利益額も伸長しています。
1.2. 収益性:高い成長とマージン改善のバランス
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会計年度 | GAAP製品 粗利率 |
Non-GAAP製品 粗利率 |
GAAP 営業利益率 |
Non-GAAP 営業利益率 |
営業CF率 | FCF率 |
---|---|---|---|---|---|---|
FY2020 | 59.2% | 62.1% | -134.5% | -74.9% | -37.3% | -46.1% |
FY2021 | 63.7% | 67.2% | -93.5% | -31.8% | -8.9% | -14.1% |
FY2022 | 68.6% | 72.1% | -55.5% | -4.2% | 5.7% | 3.6% |
FY2023 | 71.6% | 75.2% | -39.5% | 2.6% | 25.2% | 23.1% |
FY2024 | 74.0% | 77.4% | -28.0% | 6.1% | 30.3% | 27.9% |
FY2025 | 73.2% | 76.4% | -31.8% | 4.1% | 30.0% | 27.4% |
出典: Snowflake Inc. 公式IR資料より筆者作成。各利益率は対応する利益と製品収益または総収益より算出。FCF率は (営業CF – 設備投資) / 製品収益 で算出。
- 製品粗利率: Non-GAAPベースで75%を超える高い水準へと改善。プラットフォームの効率性とスケーラビリティを示します。
- 営業利益率: Non-GAAPベースではFY2023に黒字転換し、FY2024には6.1%まで改善しましたが、FY2025はやや低下。成長投資と収益性のバランスが注目されます。
- 営業CF率・FCF率: FY2022以降プラスに転じ、急速に改善。FY2025ではFCF率(対製品収益)27.4%と、高いキャッシュ創出力を有しています。
1.3. コスト構造:成長を支える投資配分
Snowflakeは、市場シェア拡大、製品開発、エコシステム構築のために積極的な投資を継続しています。
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会計年度 | 製品粗利率 (Non-GAAP) |
販売・マーケ費率 (Non-GAAP, 対製品収益) |
研究開発(R&D)費率 (Non-GAAP, 対製品収益) |
一般管理費率 (Non-GAAP, 対製品収益) |
---|---|---|---|---|
FY2022 | 72.1% | 45.3% | 22.3% | 8.6% |
FY2023 | 75.2% | 41.3% | 22.6% | 8.7% |
FY2024 | 77.4% | 39.1% | 23.0% | 9.2% |
FY2025 | 76.4% | 39.4% | 24.6% | 8.3% |
出典: Snowflake Inc. 公式IR資料より筆者作成。各費用率はNon-GAAPベースの費用を製品収益で除して算出。
- 販売・マーケティング費率: 製品収益の約40%前後を投資。グローバルな顧客基盤拡大とパートナーエコシステム強化に注力。
- 研究開発(R&D)費率: 製品収益の20%台前半と高水準を維持。Data Cloudプラットフォームの機能拡張、Snowpark、AI/ML機能への投資が活発です。
1.4. 投資家向け指標と主要KPI:1株あたりの価値と顧客基盤の拡大
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会計年度 | SPS (製品)(1株当たり製品収益) | CFPS ($)(1株当たり営業CF) | Non-GAAP EPS ($)(希薄化後) | 総顧客数 | 顧客数 >$1M 製品収益 | NRR |
---|---|---|---|---|---|---|
FY2021 | 1.99 | (0.18) | (0.70) | 4,139 | 65 | 168% |
FY2022 | 3.77 | 0.22 | (0.08) | 5,944 | 184 | 178% |
FY2023 | 6.16 | 1.55 | 0.36 | 7,828 | 330 | 158% |
FY2024 | 8.26 | 2.51 | 0.98 | 9,437 | 461 | 131% |
FY2025 | 9.10 | 2.73 | 0.98 | 9,822 (Q1’26時点) | 485 (Q1’26時点) | 128% (Q1’26時点) |
出典: Snowflake Inc. 公式IR資料より筆者作成。SPS, CFPSは筆者算出。Non-GAAP EPS、顧客数、NRRは公式発表に基づく。FY2025の顧客数とNRRはQ1 FY2026時点の最新値。
- Non-GAAP EPS: FY2023に黒字化し、FY2024には0.98ドルに。FY2025も同水準を維持。
- 総顧客数 & 大口顧客数: 総顧客数はFY2025 Q1末で9,822社。特に年間製品収益100万ドル超の大口顧客は485社と力強く成長しており、エンタープライズ市場での浸透を示しています。
- Net Revenue Retention Rate (NRR): 常に120%を大幅に超える非常に高い水準を維持 (FY2025 Q1末で128%)。既存顧客による利用拡大(消費増)がSnowflakeの成長モデルの核心です。ただし、直近はやや低下傾向にあり注視が必要です。
2. ビジネスモデル:「Data Cloud」と消費ベースの収益モデル
Snowflakeのビジネスモデルの核心は、マルチクラウドで提供される「Data Cloud」プラットフォームと、その利用量に応じた消費ベースの収益モデルです。
- Data Cloud プラットフォーム:
- データのサイロ化を解消し、単一のプラットフォームでデータウェアハウジング、データレイク、データエンジニアリング、データサイエンス、データ共有、データアプリケーション開発を実現。
- 独自のアーキテクチャにより、ストレージとコンピュート(処理能力)を分離・独立してスケーリング可能。これにより、パフォーマンスとコスト効率を最適化。
- AWS, Azure, GCPの主要クラウド上で利用可能。
- 消費ベース収益モデル:
- 顧客は、実際に利用(消費)したコンピュートリソース量とストレージ量に応じて料金を支払う。
- 初期費用が低く導入しやすい反面、利用量の予測が難しい場合もある。顧客のデータ活用が進むほどSnowflakeの収益も増加する仕組み。
- 主要ワークロードとエコシステム:
- データウェアハウジング/レイクハウス: 中核機能。構造化・半構造化・非構造化データの統合分析。
- Snowpark: Python, Java, Scalaなどの言語でデータ処理や機械学習モデル開発が可能。データサイエンティストや開発者の利用を促進。
- データ共有: Snowflake内外の組織間で安全かつ容易にデータを共有・コラボレーション。
- Snowflake Marketplace: データセットやデータサービス、Snowflake Native Appsを売買・利用できるマーケットプレイス。
- Unistore: トランザクションデータと分析データを単一プラットフォームで扱うハイブリッドテーブル。
- Native Applications: Snowflake上で直接アプリケーションを構築・配布・収益化できるフレームワーク。
3. 財務の健全性:豊富な手元資金と成長投資の継続
SnowflakeはIPOで調達した資金と、事業活動によるキャッシュフローにより、潤沢な手元資金を保有しています。
3.1. 資産・負債・資本の推移
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会計年度 | 総資産(百万$) | 総負債(百万$) | 株主資本(百万$) | 自己資本率 | 現金及び 短期投資(百万$) |
---|---|---|---|---|---|
FY2021 | 6,846 | 815 | 6,031 | 88.1% | 5,131 |
FY2022 | 6,986 | 974 | 6,012 | 86.1% | 5,099 |
FY2023 | 6,715 | 1,200 | 5,515 | 82.1% | 3,955 |
FY2024 | 7,460 | 1,555 | 5,905 | 79.1% | 4,372 |
FY2025 | 7,428 | 1,827 | 5,601 | 75.4% | 3,607 |
出典: Snowflake Inc. 公式IR資料 (年次報告書 Form 10-K) より筆者作成。
- 自己資本比率: 75%以上と非常に高い水準を維持。強固な財務基盤を示しています。
- 現金及び短期投資: FY2025末で約36.1億ドルと潤沢。戦略的投資や事業拡大のための十分な余力を有しています。
3.2. キャッシュフロー分析:フリーキャッシュフローの急成長
Snowflakeは、営業キャッシュフローとフリーキャッシュフロー(FCF)を急速に拡大させています。
フリーキャッシュフロー (FCF) = 営業キャッシュフロー (Operating CF) – 設備投資額 (Capital Expenditures, CapEx)
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会計年度 | 営業CF(百万$) | 設備投資(CapEx)(百万$) | FCF(百万$) | FCFマージン(対製品収益) |
---|---|---|---|---|
FY2021 | (49.3) | 28.5 | (77.8) | -14.0% |
FY2022 | 65.4 | 24.1 | 41.3 | 3.6% |
FY2023 | 488.4 | 40.2 | 448.2 | 23.1% |
FY2024 | 809.8 | 60.0 | 749.8 | 28.1% |
FY2025 | 900.0 | 80.0 | 820.0 | 27.3% |
出典: Snowflake Inc. 公式IR資料 (年次報告書 Form 10-K、決算発表資料等) より筆者作成。FCFマージンはFCF/製品収益。FY2025の営業CF、CapEx、FCFは推定を含む。
SnowflakeのFCFマージンは急速に改善し、FY2025には製品収益に対して約27.3%と高い水準に達する見込みです。この強力なキャッシュ創出力は、さらなるプラットフォーム開発やエコシステム拡大を支える重要な基盤となります。
4. 資本効率性と収益性:成長に伴う改善期待
Snowflakeは高成長企業であり、現在は利益成長よりも売上(製品収益)と市場シェア拡大を優先しています。そのためGAAPベースでのROE/ROAはマイナスですが、Non-GAAPベースでは改善の兆しが見られます。
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会計年度 | ROA (GAAP)(総資産利益率) | ROE (GAAP)(自己資本利益率) | ROA (Non-GAAP)(推定) | ROE (Non-GAAP)(推定) |
---|---|---|---|---|
FY2021 | -7.9% | -8.9% | -2.5% | -2.8% |
FY2022 | -9.7% | -11.3% | -0.4% | -0.4% |
FY2023 | -12.5% | -15.2% | 1.7% | 2.1% |
FY2024 | -11.3% | -14.3% | 4.2% | 5.4% |
FY2025 | -14.3% | -19.0% | 4.4% | 5.8% |
出典: Snowflake Inc. 公式IR資料より筆者作成。GAAP ROA/ROEは期末残高ベース。Non-GAAP ROA/ROEはNon-GAAP純利益と期末残高を用いて筆者推定。
- ROE (Non-GAAPベース推定): FY2025で約5.8%とプラス圏で改善。将来的な収益性向上が期待されます。
- ROA (Non-GAAPベース推定): こちらも同様に改善傾向。
- 消費ベースモデルの特性上、顧客の利用拡大が直接収益と利益に繋がるため、今後のNRRの動向とコストコントロールが資本効率向上の鍵となります。
5. SnowflakeのAI戦略:Data CloudをAI/ML基盤へ
Snowflakeは、Data CloudをAIおよび機械学習ワークロードの最適な基盤とすべく、戦略的に機能を拡張しています。
- Snowpark:
- Python, Java, Scalaなどの使い慣れた言語で、Snowflake上で直接データ処理、フィーチャーエンジニアリング、モデルトレーニングを実行可能にする開発者フレームワーク。
- 外部へのデータ移動を不要にし、セキュリティとガバナンスを維持しながらAI/ML開発を加速。Snowparkの利用拡大が重要な成長ドライバー。
- LLMと生成AIへの対応:
- Snowflake Cortex AI: 大規模言語モデル(LLM)を活用したインテリジェントな機能群をSQLやPythonから簡単に呼び出し可能に。文書分類、翻訳、要約、異常検知など。
- 外部のLLMとの連携や、Snowflake上でのカスタムLLMの実行をサポート。
- NVIDIAとのパートナーシップ強化により、Snowflake内でNVIDIA AI EnterpriseソフトウェアやNeMoフレームワークを活用したAIアプリケーション開発を支援。
- データセントリックAI:
- 質の高い、ガバナンスの効いたデータがAIモデルの性能を左右するという考えに基づき、Snowflakeは「データセントリックAI」を推進。
- Data Cloud上の統合されたデータを活用し、信頼性の高いAIアプリケーション開発を支援。
- エコシステムの拡大:
- データサイエンス、機械学習、BIツールなど、多くのパートナーソリューションとの連携を強化。
- Snowflake Native App Frameworkにより、サードパーティがSnowflake上でアプリケーションを開発・提供し、顧客がData Cloud内で直接利用できるエコシステムを構築。
6. 市場での強みとライバル:クラウドデータプラットフォーム市場の競争
Snowflakeはクラウドデータプラットフォーム市場で独自の地位を築いていますが、競争も激化しています。
市場シェアや評価に関する記述は、各種業界レポートやアナリスト評価に基づく一般的な認識です。
- 市場機会:
- 企業のデータドリブンな意思決定、デジタルトランスフォーメーション、AI/ML活用への需要は依然として強力。クラウドベースのデータプラットフォーム市場は大きな成長が見込まれます。
- Snowflakeは自社のTAMを2027年までに約2900億ドルと推定しています。
- 主な競合:
- クラウドハイパースケーラー: Amazon Web Services (Redshift, S3, Glue, SageMaker), Microsoft Azure (Synapse Analytics, Fabric, Azure Databricks), Google Cloud Platform (BigQuery, Vertex AI)。これらはインフラ提供者であると同時に競合でもある。
- Databricks: データレイクハウスのコンセプトを提唱し、特にデータエンジニアリングや機械学習ワークロードで強力な競合。オープンソース技術(Delta Lake, Spark)を基盤とする。
- 従来のデータウェアハウスベンダー: Teradata, Oracleなど。クラウドへの移行を進めている。
- その他、Cloudera, MongoDBなどのデータプラットフォーム企業。
Snowflakeの強み:
- 独自のクラウドネイティブアーキテクチャ: ストレージとコンピュートの分離による柔軟性、スケーラビリティ、パフォーマンス。
- マルチクラウド対応: 主要なパブリッククラウド間で利用可能。
- データ共有機能: 組織内外での容易かつ安全なデータ共有を実現。
- 使いやすさ: SQLベースのインターフェースとシンプルな運用管理。
- 強力なエコシステム: BIツール、ETLツール、AI/MLプラットフォームとの幅広い連携。
- 消費ベースモデルの魅力: 初期投資を抑え、スモールスタートが可能。
7. FY2026年の見通しと今後のポイント:新CEOのもとでの成長戦略
Snowflakeは、新CEO Sridhar Ramaswamy氏のもと、プロダクトイノベーションと市場拡大を継続し、FY2026年も成長を目指しています。(下記は、FY2026 Q1決算発表時(2025年5月22日)に示されたFY2026年度通期ガイダンスです。)
FY2026年度 会社予想 (2025年5月22日更新):
- 製品収益: $33.00億ドル (前年度比 約24%増)
- Non-GAAP製品粗利率: 約75%
- Non-GAAP営業利益率: 約3%
- Non-GAAP調整後フリーキャッシュフローマージン: 約26%
上記ガイダンスは、Snowflake社が発表した情報に基づくものであり、将来の業績を保証するものではありません。
投資家が注目すべきポイントとリスク:
- 製品収益成長率の動向: 過去の超高成長から成熟期への移行が見られる中、20%台の成長を維持できるか。特に大口顧客の消費動向。
- Net Revenue Retention Rate (NRR): 依然として高水準だが、低下傾向にあるNRRの安定化・再上昇。
- 新製品・新ワークロードの収益貢献: Snowpark, Unistore, Native Apps, AI/ML機能(Cortex AI等)がどの程度トップライン成長に寄与するか。
- 競争環境の激化: 特にDatabricksとの競争や、クラウドハイパースケーラーの自社サービス強化への対応。
- CEO交代の影響: 新CEOのもとでの戦略実行とリーダーシップ。
- 消費ベースモデルの変動性: マクロ経済の状況により顧客のデータ消費量が変動するリスク。
- 株式報酬費用 (SBC): GAAP利益への大きな影響と、その管理。
8. まとめ:SnowflakeはデータとAIの未来をクラウドでどう描くか?
Snowflakeは、クラウドデータプラットフォームのパイオニアとして市場を席巻し、驚異的な成長を遂げてきました。その革新的なアーキテクチャとデータ共有のビジョンは、多くの企業に支持されています。
- 強み: 先進的なData Cloudプラットフォーム、強力なNRRと顧客基盤、豊富な手元資金、AI/MLへの戦略的シフト。
- 今後の鍵: 製品収益成長率の再加速、新ワークロードの収益化、AI戦略の成功、競争激化への対応、そして新経営体制下での成長ストーリーの持続。
データが新たな石油と言われる現代において、Snowflakeが提供するData Cloudの価値はますます高まっています。AI時代の到来と共に、データ活用の重要性が増す中、Snowflakeがその中核プラットフォームとして進化を続け、持続的な成長と企業価値向上を実現できるか、大きな注目が集まります。
本記事は、公開情報に基づき筆者の分析を加えたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行うようにしてください。本分析は、Snowflake Inc.の公式IR情報および信頼できると考えられる情報源に基づいていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。常に最新の公式情報をご参照ください。
最終更新日時: 2025年6月4日