中国ETF(FXI・MCHI・KWEB・ASHR・CNXT・CXSE)を比較:株価・配当・構成銘柄

海外ETF

中国ETFのデータを比較し、情報を整理してみます。

このページでは積立や資産運用の参考となるように、ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や株価チャート、配当利回り、ポートフォリオ等の詳細を紹介してみましょう

日本の主要証券会社でも購入可能な米国上場の代表的な中国株ETF4本 (FXI, MCHI, KWEB, ASHR) を中心に、さらにユニークな特徴を持つETF (CXSE, CNXT) も加えて、それぞれの違いと選び方を、パフォーマンスや配当の観点も交えて徹底的に解説します。

結論:あなたの投資目的はどれ?4つの主要ETFのポジショニング

まず、中心的に比較する4つのETFがどのような投資目的に合うのか、その特徴を見てみましょう。

  • FXI: 中国を代表する超大手企業だけに投資したい。
  • MCHI: とにかく広く分散して、中国経済全体のリスク・リターンを享受したい。
  • KWEB: 中国のハイテク・インターネット分野の成長に賭けたい。
  • ASHR: 中国「本土」の経済成長に直接投資したい。

このように、同じ中国株ETFでも投資対象やコンセプトは大きく異なります。まずはこの4つの基本形を理解することが重要です。

4大ETF 詳細比較

それでは、各ETFの基本情報を比較表で確認しましょう。

ティッカー FXI MCHI KWEB ASHR
正式名称 iシェアーズ
中国大型株 ETF
iシェアーズ MSCI
チャイナ ETF
クレーンシェアーズ CSI
チャイナ・インターネット ETF
Xトラッカーズ・ハーベスト
CSI300 チャイナA株 ETF
投資対象 中国大型株
(H株,ADR等 約50銘柄)
中国株全般
(H株,ADR等 約500銘柄)
中国インターネット株
(約30銘柄)
中国本土A株
(上海・深圳 約300銘柄)
連動指数 FTSE China 50 Index MSCI China Index CSI Overseas China Internet Index CSI 300 Index
経費率 0.74% 0.59% 0.70% 0.65%
こんな方に 超大手企業に絞りたい
伝統的な投資家
バランス重視の初心者
分散投資をしたい方
ハイテク成長に期待する
積極的な投資家
中国「本土」経済に
投資したい方

※経費率は2025年6月23日時点の参考値であり、変更される可能性があります。

配当(分配金)利回りの比較

中国株ETFは、一般的にキャピタルゲイン(値上がり益)を主な目的としており、高い分配金利回りを期待する商品ではありません。しかし、ETFの構成銘柄によって分配金には明確な差が出ます。

ティッカー 直近12ヶ月の分配金利回り(目安) 特徴
FXI 約 2.8% 伝統的な大手銀行・金融株が多く、4本の中では相対的に高い利回り
MCHI 約 2.3% FXIより分散されている分、利回りはやや低くなる傾向。
KWEB 約 0.5% 利益を再投資するハイテク成長企業が中心のため、利回りはほぼゼロに近い
ASHR 約 2.1% 中国本土A株市場の平均的な利回りを反映。

※分配金利回りは2025年6月23日時点の参考値であり、将来の分配金を保証するものではありません。

結論として、分配金を少しでも重視するならFXIが候補になりますが、高配当ETFとは言えない水準です。一方で、KWEBに投資する場合、分配金は期待すべきではないと明確に理解しておくことが重要です。

各ETFの深掘り解説

1. 【伝統の大型株】 iシェアーズ 中国大型株 ETF (FXI)

FXIは、米国で最も歴史があり、流動性も高い中国株ETFの一つです。投資対象を中国を代表する大手企業約50社に絞っているのが最大の特徴です。

構成銘柄には、大手国有銀行や保険会社、エネルギー企業といった伝統的な巨大企業が多く含まれます。これが、他のETFに比べて分配金利回りが比較的高くなる要因となっています。MCHIよりも銘柄数が少ない分、これらの超大型株の動向にパフォーマンスが左右されやすくなります。

  • トップ保有銘柄(一例): Tencent, Alibaba, China Construction Bank, Meituan, ICBC
  • こんな投資家に最適: 「中国経済を支える巨大企業だけに投資したい」「値上がり益だけでなく、多少のインカムも欲しい」

2. 【バランスの王道】 iシェアーズ MSCI チャイナ ETF (MCHI)

MCHIは、中国株ETFの中で最も包括的で分散が効いている一本です。香港市場のH株や米国市場のADRなど、海外で取引される中国株を中心に約500銘柄に投資します。

構成銘柄はテンセントやアリババといった巨大テック企業から、金融、消費財まで幅広くカバー。特定のセクターに偏らず、中国経済全体の値動きを捉えたい投資家にとって、ポートフォリオの「核」となるETFです。

  • トップ保有銘柄(一例): Tencent, Alibaba, PDD Holdings, Meituan, Xiaomi
  • こんな投資家に最適: 「最初の1本をどれにすべきか迷っている」「個別銘柄を選ぶのは難しいので、まずは市場全体を買いたい」

3. 【ハイテク特化】 クレーンシェアーズ CSI チャイナ・インターネット ETF (KWEB)

KWEBは、その名の通り中国のインターネット関連企業に特化した、テーマ型ETFの代表格です。Eコマース、オンライン決済、ゲーム、SNSなど、中国のデジタル経済を牽引する企業に集中投資します。

構成銘柄は利益を事業拡大に再投資する「グロース株」がほとんどのため、分配金はほぼ期待できません。その分、中国のテクノロジーセクターのダイナミックな成長を狙うなら、これ以上ない選択肢と言えるでしょう。

  • トップ保有銘柄(一例): Tencent, Alibaba, Meituan, PDD Holdings, JD.com
  • こんな投資家に最適: 「中国の成長エンジンであるハイテク分野に賭けたい」「分配金は不要で、値上がり益を最大限に追求したい」

4. 【中国「本土」市場】 Xトラッカーズ・ハーベスト CSI300 チャイナA株 ETF (ASHR)

ASHRは、上記3つとは異なり、中国本土(上海・深圳)の株式市場(A株)に上場する主要300銘柄に投資するETFです。

A株市場は、中国の国内政策や個人投資家の動向に影響されやすいという特徴があります。海外上場のH株やADRとは異なる値動きをすることが多く、ポートフォリオにASHRを加えることで、より多角的な中国投資が可能になります。

  • トップ保有銘柄(一例): 貴州茅台酒 (Kweichow Moutai), CATL, 平安保険 (Ping An Insurance), BYD
  • こんな投資家に最適: 「国際市場だけでなく、中国の『国内』経済の成長を取り込みたい」「H株やADRだけでは不十分だと感じる」

【参考】東証で手軽に投資したいなら

「まずは為替リスクを気にせず、日本円で手軽に始めてみたい」という方のために、東京証券取引所(東証)に上場している代表的な中国株ETFもご紹介します。これらは日本のほぼ全ての証券会社で、国内株と同じように取引できます。

コード 銘柄名 概要
1322 上場インデックスファンド中国A株(パンダ) 中国本土の主要300銘柄(CSI300)に連動。米国上場のASHRの東証版と位置づけられます。
1309 NEXT FUNDS China FTSE China A50 中国本土の超大型株50銘柄に連動。本土A株版のFXIに近いコンセプトです。
1571 NEXT FUNDS ハンセン高配当株指数ETF 香港市場の代表的な高配当株に投資。この記事で紹介した4本より明確に分配金を重視する場合の選択肢。

【参考】その他ユニークな米国上場ETF

主要4本のETF以外にも、ユニークな戦略を持つETFが存在します。他の投資家と差をつけたい場合に検討の価値がある2本です。

ウィズダムツリー 中国株 ex-国有企業 ファンド (CXSE)

CXSEは、その名の通り「中国の国有企業を除外する」という非常に明確なコンセプトを持つETFです。具体的には、中国政府が20%以上出資する企業を投資対象から外します。

これにより、政府の政策に影響されやすい大手銀行やエネルギー、通信といったセクターが除かれ、より市場原理に基づいて経営される民間のテクノロジー企業や消費関連企業への投資比率が高まります。「中国には投資したいが、政府の介入リスクは避けたい」と考える投資家にとって、非常に魅力的な選択肢です。

  • 投資戦略: 非・国有企業への特化
  • 構成銘柄の特徴: Tencent, Alibabaなど民間テック企業が中心。FXIなどが組入れる大手国有銀行は含まれない。

ヴァンエック 中国ニューエコノミー ETF (CNXT)

CNXTは、中国の「新経済(ニューエコノミー)」を担う、最も成長性が高く魅力的なセクターの企業に投資することを目指すETFです。テクノロジーだけでなく、ヘルスケア、消費財(コンシューマー・ディスクレショナリーおよびコンシューマー・ステープルズ)など、将来の中国を牽引する分野を幅広くカバーします。

単なる時価総額加重ではなく、成長性、価値、収益性などのファンダメンタルズに基づいて銘柄を選定する「GARP(Growth at a Reasonable Price)」アプローチが特徴です。より能動的に、次世代の成長企業を発掘したい投資家向けのETFと言えます。

  • 投資戦略: 中国の「新経済」を担う成長企業に投資
  • 構成銘柄の特徴: PDD Holdings, Li Auto, Kuaishou Technologyなど、新しいビジネスモデルを持つ企業が含まれる。

結論として、どのETFが最適かは、あなたの投資目標とリスク許容度次第です。まずは基本となる4本(FXI, MCHI, KWEB, ASHR)の違いを理解し、さらにこだわりたい場合はCXSEやCNXTのようなユニークなETFを検討することで、ご自身のポートフォリオに最適な一本を見つけられるでしょう。

【免責事項】
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載された情報は2025年6月23日時点のものであり、変更される可能性があります。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。



ポートフォリオ

次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率、セクター別比率はチャールズシュワブのサイト内のページを参照。

中国の経済力

最後に、中国の経済力を見ていきましょう。
ここで、世界銀行のデータバンクから主要統計を閲覧してみます。

実質GDPと成長率

(※実質GDPは2015年米ドル基準。単位は億ドル )

実質GDP 名目GDP 実質成長率
2005 44205 22860 11.39
2006 49829 27521 12.72
2007 56920 35503 14.23
2008 62413 45943 9.65
2009 68279 51017 9.40
2010 75541 60872 10.64
2011 82756 75515 9.55
2012 89263 85322 7.86
2013 96196 95704 7.77
2014 103339 104757 7.43
2015 110616 110616 7.04
2016 118191 112333 6.85
2017 126402 123104 6.95
2018 134934 138948 6.75
2019 142962 142799 5.95
2020 146318 147227 2.35

 

一人当たりGDP/人口/失業率

(*失業率はILO方式。一人当たりGDP〔実質〕の単位はドル、人口は万人)

1人当りGDP 人口 失業率
2005 3391 130372 4.5
2006 3801 131102 4.4
2007 4319 131789 4.3
2008 4712 132466 4.6
2009 5129 133126 4.7
2010 5647 133771 4.5
2011 6153 134504 4.5
2012 6592 135419 4.6
2013 7056 136324 4.6
2014 7533 137186 4.6
2015 8016 137986 4.6
2016 8517 138779 4.5
2017 9053 139622 4.4
2018 9619 140276 4.3
2019 10155 140775 4.6
2020 10370 141093 5

Posted by 南 一矢