EDV・TLT:超長期債券ETFを比較(株価・配当利回り・構成銘柄)
金利低下局面で大きなリターンが期待できる一方、金利上昇局面では大きな損失リスクを伴う「米国の超長期債券ETF」。この記事では、分配金(配当)の推移にも注目しながら、その代表格であるEDVとTLTを比較します。
この2つのETFは、どちらも残存期間20年以上の米国債に投資しますが、投資対象のわずかな違いが、金利感応度(デュレーション)とリスク・リターンに決定的な差を生み出します。その本質的な違いを理解し、ご自身の投資戦略に合った選択ができるよう解説します。
※ご注意:以下に記載するデュレーションや配当利回り、構成比率は常に変動します。
投資を検討される際は、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。
米国の超長期債ETF【EDV vs TLT】徹底比較!最大の違いはデュレーション
主要ETF比較サマリー
まずはEDVとTLTの最も重要な違いを一覧で見てみましょう。「投資対象」と、それによって生じる「実効デュレーション」の差に注目してください。
項目 | 【EDV】 | 【TLT】 |
---|---|---|
投資対象 | ストリップス債(ゼロクーポン債)[1] | 通常の利付国債[2] |
実効デュレーション | 約24年台(指数の平均満期24.5年に相当)[3] | 15.73年(2025/10/03時点)[4] |
経費率 | 0.05%[5] | 0.15%[4] |
純資産総額 | 約45億ドル(参考)[6] | 約482億ドル(2025/10/06)[4] |
配当利回り(30日SEC) | 5.02%(2025/10/02)[7] | 4.67%(2025/10/03)[4] |
分配頻度 | 四半期[8] | 毎月[4] |
(注:数値は記載日の参考値です。配当利回りは30日間SEC利回り)
各ETFの詳細
【EDV】バンガード・超長期米国債ETF (Vanguard Extended Duration Treasury ETF)
- 連動指数:Bloomberg U.S. Treasury STRIPS 20–30 Year Equal Par Bond Index[1]
- 投資対象の解説:このETFは、通常の利付国債ではなく「ストリップス債」に投資します。ストリップス債とは、利息(クーポン)部分を剥ぎ取ったゼロクーポン債のことです。
利息が支払われない分、将来の元本を現在価値に割り引いて価格が決まるため、同じ残存期間の利付国債よりも金利変動への感応度(デュレーション)が極端に長くなる性質があります。利息がないため、同じ満期の利付国債よりも金利変動への感応度が高いのが特徴です[3]。 - ポイント:指数の平均満期が24.5年に設定されており、きわめて長いデュレーションを通じて金利低下局面の上昇弾性を狙える一方、上昇局面では大きく下落し得ます。経費率は0.05%と低水準[5]、分配は四半期ごと[8]。
- 公式情報:Vanguard EDV 公式サイト[7]
【TLT】iシェアーズ 米国債20年超 ETF (iShares 20+ Year Treasury Bond ETF)
- 連動指数:ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Index[4]
- 投資対象の解説:こちらは一般的な「利付国債」に投資します。残存期間が20年を超える米国財務省証券で構成されており、超長期債ETFのスタンダードな選択肢です。超長期ゾーンへのスタンダードなエクスポージャーを提供します[2]。
- ポイント:直近の実効デュレーションは15.73年(2025/10/03)とEDVより短く、価格変動は相対的にマイルド。月次分配で純資産規模も非常に大きく、流動性に優れます[4]。
- 公式情報:iShares TLT 公式サイト[4]
投資のポイントと注意点
1.デュレーション=価格変動の大きさを理解する
デュレーションは、金利が1%動いたときに債券価格が何%動くかの目安です。
指数の平均満期24.5年相当のEDVは、金利が1%上昇すると理論上20%超の下落になり得ます。
TLTの直近デュレーション15.73年でも十分に大きく、超長期ゾーンは価格変動が極めて大きい点に留意が必要です[3][4]。
2.ポートフォリオにおける「ヘッジ」機能
これほどリスクの高い債券に投資する理由の一つに、株式との逆相関を期待した「ヘッジ(保険)」機能があります。
一般的に、株式市場が暴落する「リスクオフ」の局面では、安全資産の代表である米国債が買われ、価格が上昇する傾向があります。
この特性を利用し、ポートフォリオ全体のリスクを管理する目的で組み入れる投資家もいます。
3.結局どちらを選ぶべきか?
- 積極的に金利低下の恩恵を狙い、最大級の金利感応度を許容できる → 【EDV】
- 流動性と月次分配の安定感を重視し、スタンダードな超長期債投資を行いたい → 【TLT】
どちらのETFも金利動向に非常に敏感です。投資前に、金利シナリオ(インフレ見通し・米国の金融政策)と、ポートフォリオ全体のボラティリティ許容度を必ず確認しましょう。
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
出典(公式・一次情報)
- Vanguard「EDV | Extended Duration Treasury ETF」:連動指数・投資手法など(公式ページ)
- iShares「TLT | 20+ Year Treasury Bond ETF」:投資対象(利付米国債)の基本情報(公式ページ)
- Vanguard『EDV サマリー/プロスペクタス』:指数の平均満期24.5年の記載(2024/08/31基準)(PDF)
- BlackRock「TLT 公式ページ」:実効デュレーション15.73年(2025/10/03)、30日SEC利回り4.67%、月次分配、純資産など(公式ページ)
- Vanguard「EDV 経費率0.05%」(2025/02/03時点)(公式ページ)
- EDV 純資産規模(参考):約45億ドル(Yahoo Finance)
- EDV 30日SEC利回り5.02%(2025/10/02)(公式ページ)
- EDV 分配頻度:四半期(Vanguard 配当スケジュール資料/EDV個別ページ)(配当スケジュールPDF / EDV地域サイト)
株価:過去~現在
※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。
配当(分配金)と利回り
年間配当を1年の平均株価で割り、平均の利回りを計算してみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算しているので、通期配当だけで計算した時よりも利回りが高く計上されています)
EDVの利回り
年 | 配当 | 株価 | |||
平均利回り | 年累計 | 年伸び率 | 平均株価 | 年伸び率 | |
2024 | 4.21% | 3.15 | 10.5% | 74.8 | -8.2% |
2023 | 3.5% | 2.85 | 5.6% | 81.5 | -21.1% |
2022 | 2.61% | 2.7 | -0.7% | 103.3 | -24.3% |
2021 | 1.99% | 2.72 | -67.7% | 136.5 | -15.1% |
2020 | 5.24% | 8.42 | 85.9% | 160.8 | 26.9% |
2019 | 3.58% | 4.53 | 38.1% | 126.7 | 14.% |
2018 | 2.95% | 3.28 | -6.8% | 111.1 | -4.2% |
2017 | 3.03% | 3.52 | -39.3% | 116 | -9.4% |
2016 | 4.53% | 5.8 | 21.6% | 128 | 6.5% |
2015 | 3.97% | 4.77 | 24.2% | 120.2 | 13.5% |
2014 | 3.63% | 3.84 | -13.5% | 105.9 | 3.4% |
2013 | 4.34% | 4.44 | -49.1% | 102.4 | -16.1% |
2012 | 7.14% | 8.72 | 40.2% | 122.1 | 28.5% |
2011 | 6.55% | 6.22 | 62% | 95 | 10.1% |
2010 | 4.45% | 3.84 | -74.7% | 86.3 | -17.2% |
2009 | 14.54% | 15.15 | 298.7% | 104.2 | 2% |
2008 | 3.72% | 3.8 | – | 102.2 | – |
TLTの利回り
年 | 配当 | 株価 | |||
平均利回り | 年累計 | 年伸び率 | 平均株価 | 年伸び率 | |
2024 | 4.02% | 3.76 | 31.9% | 93.5 | -5.3% |
2023 | 2.89% | 2.85 | 9.6% | 98.7 | -15.8% |
2022 | 2.22% | 2.6 | 20.9% | 117.2 | -19.2% |
2021 | 1.48% | 2.15 | -6.9% | 145.1 | -9.1% |
2020 | 1.45% | 2.31 | -23.5% | 159.6 | 21.1% |
2019 | 2.29% | 3.02 | -4.1% | 131.8 | 10.8% |
2018 | 2.65% | 3.15 | 4% | 119 | -3.8% |
2017 | 2.45% | 3.03 | -0.3% | 123.7 | -5.6% |
2016 | 2.32% | 3.04 | -1.3% | 131 | 5.6% |
2015 | 2.48% | 3.08 | -6.9% | 124 | 9.1% |
2014 | 2.91% | 3.31 | 1.2% | 113.7 | 2.2% |
2013 | 2.94% | 3.27 | 2.8% | 111.3 | -8.5% |
2012 | 2.61% | 3.18 | -19.1% | 121.7 | 18.6% |
2011 | 3.83% | 3.93 | 1.8% | 102.6 | 6.5% |
2010 | 4.01% | 3.86 | 8.1% | 96.3 | -1.5% |
2009 | 3.65% | 3.57 | -13.3% | 97.8 | 2.2% |
2008 | 4.31% | 4.12 | – | 95.7 | – |
ポートフォリオの比較
次に、このETFの構成比率を見てみます。
ETFを構成する債権の比率
(出所はfidelity.com)
TLT | EDV | |
国債 | 100% | 100% |
社債 | 0% | 0% |
モーゲージ債 | 0% | 0% |
地方債 | 0% | 0% |
組み入れ債権の格付け比率
さらに、ETFを構成する債券の格付け比率を見てみます。
(出所は英語版yahoo finance)
格付 | TLT | EDV |
AAA | 100% | 100% |
AA | 0% | 0% |
A | 0% | 0% |
BBB | 0% | 0% |
BB | 0% | 0% |
B | 0% | 0% |
BelowB | 0% | 0% |