VNM・THD・EWS・EWM・EIDO・EPHEを比較:東南アジア(ASEAN)ETFの株価と配当

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【ASEAN国別ETF】VNM・THD・EWSなど6選!次の成長センターはどこだ?

東南アジア(ASEAN)各国のETFデータを比較し、情報を整理してみます。

このページでは積立や資産運用の参考となるように、ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や配当利回り、ポートフォリオ等の詳細を紹介してみましょう

【ASEAN国別ETF】VNM・THD・EWSなど6選!次の成長センターはどこだ?

「チャイナ+1」の流れや若い人口構成を背景に、新たな世界の製造拠点・消費市場として注目を集める東南アジア諸国連合(ASEAN)。

一口にASEANと言っても、その経済規模や産業構造は国によって大きく異なります。フロンティア市場として高い成長が期待される国、国際金融ハブとして成熟した国、豊富な資源を持つ国など、その個性は様々です。

今回は、ASEANの主要国に投資できる6つの国別ETFをピックアップし、それぞれの経済的な特徴、期待できる利回り、そして注意すべきリスクを比較・解説します。

【2025年8月最新】トランプ関税の影響でASEAN投資環境が激変

2025年、トランプ政権の「reciprocal tariffs(相互関税)」政策により、ASEAN諸国への投資環境が大きく変化しています。各国が個別に米国と貿易交渉を行い、関税率に大きな差が生まれており、投資判断においてこの要素は無視できません。特にシンガポールの好調なパフォーマンスが際立っています。

ASEAN主要6カ国 ETF 比較一覧表(2025年8月現在)

今回ご紹介するETFの重要ポイントの一覧表です。国の個性を示す「経済的特徴」と、インカムの目安となる「配当利回り」に注目です。

ティッカー 国名(経済的特徴) 配当利回り(最新) 経費率(年率) 米国関税率
VNM ベトナム【高成長フロンティア】 約0.16% 0.68% 20%
THD タイ【観光・ヘルスケア】 約3.4% 0.58% 19%
EWS シンガポール【国際金融ハブ】 約3.7% 0.50% 10%
EWM マレーシア【資源・イスラム金融】 約3.5% 0.50% 19%
EIDO インドネシア【巨大人口・資源】 約2.0% 0.58% 19%
EPHE フィリピン【BPO・内需】 約2.5% 0.58% 19%

※データは2025年8月時点のものを参考にしています。各種データは変動します。


各ETFの戦略と特徴

【VNM】ヴァンエック・ベトナムETF(高成長フロンティア)

経済・産業: 高い経済成長率を誇る「フロンティア市場」。若い労働人口を背景に、中国に代わる製造拠点として世界から注目されています。

特徴: ポートフォリオは不動産、生活必需品、金融が中心。高い成長ポテンシャルに期待するETFですが、市場が未成熟なため価格変動リスクは非常に高いです。配当利回りは低めで、値上がり益を狙う性格の強いETFです。

パフォーマンス(2025年8月現在)

YTD(年初来):+16.2%
1年間:+7.2%
配当利回り:0.16%
純資産:$404M

【THD】iシェアーズ MSCI タイ ETF(観光・ヘルスケア)

経済・産業: 自動車産業の集積地であるほか、世界的な観光大国。質の高い医療サービスは「メディカル・ツーリズム」として富裕層に人気です。

特徴: ポートフォリオはエネルギー、金融、ヘルスケアなどバランスが取れています。ASEANの中では比較的安定した「中進国」であり、約3.4%と改善した配当利回りも期待できる、バランス型の選択肢です。

【EWS】iシェアーズ MSCI シンガポール ETF(国際金融ハブ)

経済・産業: アジアの金融・ビジネスの中心地であり、一人当たりGDPは世界トップクラスの先進国です。

特徴: ポートフォリオは銀行などの金融セクターと、高配当で知られるREIT(不動産投資信託)を含む不動産セクターで過半数を占めます。約3.7%という高い配当利回りと政治的な安定性が最大の魅力です。

【2025年の勝者】EWSパフォーマンス(2025年8月現在)

YTD(年初来):+25.95%
1年間:+35.63%
配当利回り:3.7%
純資産:$761M
※ASEAN ETFの中で最も優秀なパフォーマンス

【EWM】iシェアーズ MSCI マレーシア ETF(資源・イスラム金融)

経済・産業: パーム油、天然ガス、電子部品などが主産業。また、イスラム金融のハブとしても機能しています。

特徴: シンガポールと同様に金融セクターの比率が高く、約3.5%と高水準の配当利回りが期待できます。景気動向に加えて、資源価格の動向にも株価が影響されやすい特徴があります。

【EIDO】iシェアーズ MSCI インドネシア ETF(巨大人口・資源)

経済・産業: 約2.7億人という世界第4位の人口を誇り、巨大な内需が経済を牽引します。石炭やニッケルなど鉱物資源も豊富です。

特徴: ポートフォリオは巨大銀行などの金融セクターと、資源関連企業が中心。将来的な内需の爆発力に期待するETFですが、資源価格への依存や通貨(ルピア)の変動リスクも考慮する必要があります。

【EPHE】iシェアーズ MSCI フィリピン ETF(BPO・内需)

経済・産業: 英語が堪能な労働力を活かしたBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業と、約1億人の人口が支える内需が経済の柱です。

特徴: ポートフォリオは不動産、金融、公益事業といった内需関連セクターに大きく偏っています。世界経済の動向よりも、フィリピン国内の景気に業績が左右されやすいのが特徴です。


【配当で深掘り】ASEAN各国の株主還元姿勢を比較

次に、インカムゲインを重視する投資家のために、各ETFの「配当」という側面に絞って、より詳しく比較してみましょう。

ティッカー 配当利回り(最新) 配当頻度 配当の安定性・特徴
EWS (シンガポール) 約3.7% 年2回 【安定高配当】金融・REITが源泉。インカム投資の王道。
EWM (マレーシア) 約3.5% 年2回 【準安定高配当】金融・政府系企業が中心で比較的安定。
THD (タイ) 約3.4% 年2回 【改善傾向】従来の3.0%から上昇。景気回復の兆し。
EPHE (フィリピン) 約2.5% 年1回 【内需依存型】内需企業の業績次第。頻度も年1回。
EIDO (インドネシア) 約2.0% 年1回 【資源価格連動型】資源価格と通貨の影響が大きく不安定。
VNM (ベトナム) 約0.16% 年1回 【成長優先型】配当は大幅減。値上がり益重視の銘柄。

見ての通り、配当を重視するならEWS(シンガポール)EWM(マレーシア)の2つが群を抜いています。両国ともに成熟した金融セクターを持ち、企業が安定的に利益を株主に還元する文化が根付いているためです。特にEWSは先進国であるシンガポールの安心感と高い利回り、さらに2025年の優秀なパフォーマンスを両立しているのが強みです。

一方で、VNM(ベトナム)の配当利回りは従来の1.5%から0.16%へと大幅に低下しており、事業拡大のための再投資を優先する「成長企業」志向が鮮明になっています。これらのETFはインカムゲインではなく、将来の株価上昇(キャピタルゲイン)を狙うためのものと割り切るのが良いでしょう。

ASEAN国別ETF:目的別の選び方(2025年版)

【安定・高配当・パフォーマンス】三拍子揃った選択肢なら → EWS (シンガポール)
2025年YTD +25.95%、配当3.7%、関税も最低水準

【準安定・高配当】手堅い配当収入を重視するなら → EWM (マレーシア)
配当3.5%、低経費率0.50%

【ハイリスク覚悟】将来の大きな値上がり益を夢見るなら → VNM (ベトナム)
YTD +16.2%も高い関税リスクあり

【バランス改善】配当利回りが向上したバランス型なら → THD (タイ)
配当3.4%に改善、観光回復期待

【人口ボーナス】巨大な内需の成長に賭けたいなら → EIDO (インドネシア)
2.7億人の人口、資源国

これらの国別ETFは、それぞれ全く異なるリスク・リターンの特性を持っています。2025年現在の関税環境や各国のパフォーマンスを考慮すると、シンガポール(EWS)の優位性が際立っています。ご自身の投資戦略に合わせて、これらの国々を組み合わせることで、より効果的なポートフォリオを構築できるでしょう。


【重要】ASEAN(新興国)ETFに投資する際の注意点

ASEAN地域への投資には、先進国投資にはない特有のリスクが伴います。

1. 通貨リスク: 各国の通貨は米ドルや円に対して不安定な動きをすることがあり、リターンを押し下げる要因となり得ます。

2. カントリーリスク: 各国の政治情勢(政権交代やデモなど)や自然災害などが、経済や株式市場に直接的な影響を与える可能性があります。

3. 流動性リスク: 一部の市場では株式の売買が活発でなく、希望する価格で売買できないリスクがあります。

4. 【2025年最新】関税リスク:トランプ政権の「reciprocal tariffs」により、ベトナム20%、その他多くの国が19%の関税が課されています。関税が長期間続く場合、生産コストが上昇し、他国との競争上、魅力が低下する可能性があります。ただし、シンガポールは10%の基準税率のみで相対的に有利な立場にあります。

5. 【新規】貿易戦争の影響: 米中貿易戦争の拡大により、ASEAN諸国が「中国の迂回輸出」として標的にされるリスクが高まっています。特に中国系企業の現地進出が多い国では要注意です。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。


株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。





ポートフォリオの比較

次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率はチャールズシュワブ、組入れ上位10銘柄はフィディリティのサイト内のページを参照。

Posted by 南 一矢