HPQとHPEを比較:分社後のヒューレットパッカード(事業の違いを解説)

銘柄比較






HPQとHPE比較分析 – 2025年8月更新

HPQとHPEを違いを踏まえて比較します。(2025年8月更新)

ヒューレットパッカード(Hewlett Packard/HP Inc.)とヒューレット・パッカード・エンタープライズ(Hewlett Packard Enterprise Company)は2015年にHPが分社したことで成立しました。

その株価の推移(チャート)、決算の予想と結果、配当金と利回り、業績(財務情報)はどうなっているのでしょうか。

これらの銘柄について、今後の見通しや将来性を探ってみます。

最新株価情報(2025年8月21日時点)

銘柄 株価 配当利回り PER 次回決算発表
HP Inc. (HPQ) $25.35 4.57% 9.93倍 2025年8月27日
HPE $21.37 2.44% 21.20倍 未発表

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移(IYW:iShares US Technology ETFを含めて比較)

※チャート右目盛り:10年国債利回り

※株価の成長率や52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、PBR、PSR、時価総額などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。今後の見通しの参考情報として目標株価も掲載。

決算(予想:結果)

【HP分割対決】HP Inc(HPQ) vs HPE!PCとプリンターか、サーバーとAIか?

シリコンバレーの源流とも言える伝説の企業、ヒューレット・パッカード。その遺伝子を受け継ぐ2つの会社が、HP Inc.(HPQ)ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)です。両社はともに「HP」の名を冠しますが、事業内容は全く異なり、高配当な「バリュー株」として投資家から注目されています。

本記事では、2015年の歴史的な会社分割によって生まれたこの2社の、ビジネスモデル、業績、そして株主還元を徹底的に比較・分析します。

最重要ポイント:2015年の会社分割

両社を理解する上で、旧ヒューレット・パッカードが2社に分割された経緯を知ることが不可欠です。

  • HP Inc. (HPQ) → PC・プリンター事業
    パソコンやプリンターといった、主に個人(コンシューマー)向けのハードウェア事業を継承しました。プリンターのインクやトナーで稼ぐ、安定したビジネスモデルが特徴です。
  • ヒューレット・パッカード・エンタープライズ (HPE) → 法人向け事業
    サーバー、ストレージ、ネットワーク機器といった、法人(エンタープライズ)向けのITインフラ事業を継承しました。企業のデータセンターやクラウド環境の構築を支援します。近年はAI向けの高性能サーバーにも注力しています。

比較サマリー:個人のHPQ、法人のHPE

項目 HP Inc. (HPQ) ヒューレット・パッカード・エンタープライズ (HPE)
主力事業 PC、プリンター、消耗品(インク等) サーバー、ストレージ、ネットワーク機器、AIインフラ
主要顧客 個人消費者、一般企業 大企業、データセンター、政府機関
業績の特性 PCの販売サイクルに連動(景気敏感) 企業のIT投資動向に連動(景気敏感)
配当利回り(2025年8月) 4.57% 2.44%
PER (株価収益率) 9.93倍 21.20倍

業績と成長性の詳細分析

両社とも成熟した市場で事業を展開しており、業績は景気サイクルに影響されます。HPQは2025年Q2において売上が3.3%成長し4連続四半期の成長を記録。一方、HPEは2025年Q1で16%の売上成長を実現しており、AIインフラ需要の恩恵を受けています。

2025年最新決算ハイライト

  • HPQ Q2 2025: 売上$13.2B(+3.3% YoY)、調整EPS $0.71(予想$0.80を下回る)
  • HPE Q1 2025: 売上$7.85B(+16% YoY)、調整EPS $0.49(予想通り)
  • 注目点: HPQは関税コストの影響を受け、HPEはAIサーバー需要で好調
HPQ 売上高 (前年比) HPE 売上高 (前年比)
2025 Q2/Q1 $13.2 B (+3.3%) $7.85 B (+16.0%)
2024 $53.72 B (-9.9%) $30.13 B (+3.4%)
2023 $59.60 B (-9.7%) $29.14 B (-8.6%)
2022 $66.01 B (+0.8%) $31.29 B (+3.2%)
2021 $65.48 B (+12.1%) $30.32 B (+3.1%)

※B=10億ドル。両社は決算月が異なるため、各社会計年度に基づき比較しています。2025年は四半期データ。

配当の詳細比較

両社とも株価が割安な水準にあるため、高い配当利回りを提供しています。特にHPQは4.57%という高配当利回りが魅力的です。

HPQ 年間配当 (利回り) HPE 年間配当 (利回り)
2025 $1.16 (4.57%) $0.52 (2.44%)
2024 $1.16 (+5.3%) $0.52 (+4.2%)
2023 $1.05 (+5.0%) $0.48 (+0.0%)
2022 $1.00 (+29.0%) $0.48 (+0.0%)
2021 $0.78 (+10.0%) $0.48 (+0.0%)

配当情報アップデート(2025年8月)

  • HPQ: 次回配当権利落ち日:2025年9月10日、支払日:2025年10月1日($0.2894/株)
  • HPE: 前回配当権利落ち日:2025年6月18日、支払日:2025年7月17日($0.13/株)

2025年の市場動向と展望

HPQ(HP Inc.)の現況

  • 関税影響: 米国関税によるコスト増加を2025年Q4までに緩和予定
  • AI PC: AIパソコンが2025年末までにPC事業の25%以上を占める見込み
  • 製造多様化: ベトナム、タイ、インド、メキシコ、米国での生産拡大

HPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)の現況

  • AI需要: AIシステムのバックログが前四半期比29%増の$3.1B
  • Juniper買収: $14Bでのジュニパー買収が2025年10月までに完了予定
  • 効率化: 5%の人員削減により2027年度までに$350Mのコスト削減

結論:あなたに合うのはどちら?

両社への投資は、どちらの市場の将来性を信じ、どのようなリターンを求めるかによって判断が分かれます。

「高い配当利回り」と「安定した消耗品ビジネス」を重視するなら → HP Inc. (HPQ)

PC市場は成熟していますが、世界で数億台のPCとプリンターが稼働しており、そこから生まれるインクやトナーといった消耗品ビジネスは、安定したキャッシュフローを生み出します。PERが10倍以下と極めて割安で、4.57%の高い配当利回りを狙うバリュー投資家・インカム投資家にとって魅力的な選択肢です。

「企業のAI投資」という大きなテーマに乗るなら → ヒューレット・パッカード・エンタープライズ (HPE)

すべての企業がAI活用を迫られる中で、その基盤となる高性能サーバーやストレージへの需要は今後も続くと考えられます。HPEは、特に企業の自社データセンターで使われるAIインフラの分野で強みを持ちます。AIサーバーのバックログ増加やJuniper買収による事業拡大など、成長ストーリーに投資したい投資家向けの銘柄です。


※本ページの分析は2025年8月21日時点の公開情報に基づいています。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。


Posted by 南 一矢