MS:モルガンスタンレーの配当推移

配当






【2025年7月最新】モルガン・スタンレー (MS) 配当分析 – 8%増配と記録的業績の徹底評価


【2025年7月最新】モルガン・スタンレー (MS) 配当分析 – 8%増配と記録的業績の徹底評価

世界有数の金融サービス企業であるモルガン・スタンレー(MS)が、2025年7月16日にQ2好決算と8%の配当増額を発表したことを受け、同社の配当持続性と今後の成長性を最新データで徹底分析します。

はじめに:この記事でわかること

モルガン・スタンレーは、安定収益源であるウェルス・マネジメントと、市場連動性の高い機関投資家向けビジネスを両輪としています。本記事では、以下のポイントを通じて、同社の配当支払い能力と将来性を評価します。

  • MSの最新業績:2025年Q2の記録的好決算と収益構造の分析
  • 配当増額の背景:8%増配の根拠と持続性の評価
  • 財務体力:CET1比率15.0%の強固な資本基盤
  • 競合比較:他の金融大手との優位性
  • 投資判断:配当の持続性と今後の見通し

モルガン・スタンレーの現状(ざっくりまとめ)

  • 2025年Q2業績ハイライト:
    • EPS $2.13(予想$1.96を大幅上回る)
    • 純収益 $168億ドル(前年同期比12%増)
    • ROTCE 18.2%(業界トップクラスの収益性)
    • ウェルス・マネジメント純収益$77.6億ドル(14%増)
    • 運用資産$8.2兆ドル(過去最高)
  • 配当・株主還元:
    • 四半期配当8%増額($0.925→$1.00)
    • 年間配当$4.00(配当利回り約3.7%)
    • $200億の自社株買いプログラム再承認
    • 連続増配の実績継続
  • 現状分析: 最新データからは配当の持続可能性が極めて高いことが確認されます。ウェルス・マネジメント部門の成長と強固な資本基盤が、今回の増配を支えています。
免責事項: 本分析は情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

1. モルガン・スタンレーの「稼ぐ力」:PPNR(貸倒引当金控除前純営業収益)と収益構造

モルガン・スタンレーの基礎的な収益力は、その多角的な事業ポートフォリオから生み出されます。PPNRは、貸倒引当金を計上する前の利益であり、事業運営の本源的な収益力を示します。特に、ウェルス・マネジメントとインベストメント・マネジメントからの安定的なフィー収入、そして投資銀行部門の市場連動型収益のバランスが重要です。

モルガン・スタンレーのような金融機関では、営業キャッシュフローは市場の変動要因を受けやすいため、PPNRや純利益が持続的な収益力を測る上でより適切です。PPNR = 純金利収入 + 非金利収入 – 非金利費用(貸倒引当金費用前)。

MSは2025年Q2において、EPS $2.13、純収益$168億ドルと市場予想を大幅に上回る好決算を発表しました。特にウェルス・マネジメント部門の堅調な成長が全体業績を牽引しています。

2025年最新業績サマリー(四半期・年間ベース)
項目 2025年Q1 2025年Q2 2024年通年 前年同期比
EPS $2.60 $2.13 $5.85 +17%
純収益(10億ドル) $17.7 $16.8 $55.7 +12%
純利益(10億ドル) $4.3 $3.5 $9.9 +15%
ROTCE 22.1% 18.2% 13.8% +4.4pt
運用資産(兆ドル) $7.8 $8.2 $7.5 過去最高

出典: Morgan Stanley Q2 2025 決算発表資料、Q2 2025決算電話会議

部門別収益の内訳

部門別純収益(2025年Q2、10億ドル)
事業部門 Q2 2025 Q1 2025 前年同期比 備考
ウェルス・マネジメント $7.76 $7.45 +14% 手数料収入好調
インスティテューショナル証券 $7.64 $8.59 +9% トレーディング収益増
 - エクイティ・トレーディング $3.7 $4.1 +23%
 - 投資銀行業務 $1.54 $1.86 -5%
インベストメント・マネジメント $1.6 $1.7 +12% 運用資産増加

主な観察点: ウェルス・マネジメント部門が14%増収で$77.6億ドルに達し、全社業績を牽引。エクイティ・トレーディングも23%増と好調で、市場環境の改善を着実に収益に転換しています。

1株当たり利益と収益性指標

1株当たりデータと収益性比率(2018年~2025年)
年度 EPS (希薄化後) ROA (総資産利益率) ROE (自己資本利益率) ROTCE (有形自己資本利益率)* 効率性比率**
2018 $4.73 0.9% 11.1% 12.8% 73%
2019 $5.19 1.0% 11.7% 13.4% 73%
2020 $6.46 1.0% 12.8% 15.2% 70%
2021 $8.03 1.2% 15.0% 19.8% 67%
2022 $6.15 0.9% 11.1% 15.3% 73%
2023 $5.01 0.7% 8.7% 12.3% 76%
2024 $6.50 0.9% 11.5% 15.0% 72%
2025 (上半期) $4.73 1.0% 14.1% 20.2% 70%

*ROTCE = 有形自己資本利益率。経営陣が重視する指標です。
**効率性比率 = 経費 ÷ 純収益。低いほど効率が良いとされます。
2025年上半期の数値は、Q1とQ2の実績に基づくものです。

主要な収益性指標の定義

ROA(総資産利益率):企業が保有する総資産をどれだけ効率的に使って利益を生み出しているかを示す指標。

ROA = 純利益 ÷ 平均総資産

ROE(自己資本利益率):株主資本に対してどれだけの利益を生み出したかを示す指標。

ROE = 純利益 ÷ 平均自己資本

ROTCE(有形自己資本利益率):銀行・証券業界で重視される指標で、のれんや無形固定資産を除いた実質的な自己資本に対するリターンを示す。モルガン・スタンレーは20%前後のROTCEを中長期的な目標として掲げています。

ROTCE = 普通株主に帰属する純利益 ÷ 平均有形自己資本

効率性比率 (Efficiency Ratio):収益に対してどれだけ経費がかかっているかを示す指標。金融機関のコスト管理能力を測る上で重要です。

効率性比率 = 経費 ÷ 純収益

主な観察点: 2025年上半期のROTCE 20.2%は、経営目標を大幅に上回る極めて優秀な水準です。EPSおよびROTCEは、市場環境の変動(特に投資銀行業務やトレーディング収益の影響)を受けやすいものの、経営陣はROTCEの中長期的な目標達成にコミットしています。


2. 株主還元(配当と自社株買い)

2025年Q2決算発表時、MSは四半期配当を$0.925から$1.00へと8%増額することを発表しました。これは同社の強固な業績と資本基盤を反映した積極的な株主還元姿勢を示しています。

配当履歴と増配実績

配当履歴と配当性向(2018年~2025年)
年度 EPS (希薄化後) 年間配当 配当性向 (%) 増配率 (%) 備考
2018 $4.73 $1.15 24.3% +27.8%
2019 $5.19 $1.40 27.0% +21.7%
2020 $6.46 $1.40 21.7% 0.0% コロナ禍初期は慎重姿勢
2021 $8.03 $2.80 34.9% +100.0% 大幅増配
2022 $6.15 $3.10 50.4% +10.7%
2023 $5.01 $3.35 66.9% +8.1% EPS減少により性向上昇
2024 $6.50 $3.70 56.9% +10.4%
2025 $9.46 (Est.) $4.00 42.3% +8.1% Q2増配で年間$4.00

配当性向の計算式: (年間1株当たり配当 ÷ EPS) × 100。
2025年のEPSは、上半期の実績$4.73(Q1: $2.60 + Q2: $2.13)を年換算した推定値です。
主な観察点: モルガン・スタンレーは、2021年に大幅な増配を行うなど、株主還元への意識が高いです。配当性向はEPSの変動に応じて上下しますが、経営陣は持続可能な配当と成長投資のバランスを重視しています。

総株主還元の推移

総株主還元額(配当+自社株買い、10億ドル)
期間 純利益 配当 自社株買い 総還元額 還元率
2023年 $9.1 $5.6 $5.0 $10.6 117%
2024年 $9.9 $6.0 $6.0 $12.0 121%
2025年Q1 $4.3 $1.5 $1.0 $2.5 58%
2025年Q2 $3.5 $1.6 $1.0 $2.6 74%

主な観察点: MSは収益の大部分を株主に還元する積極的な方針を継続。2025年には$200億の新たな自社株買いプログラムも承認されており、株主還元へのコミットメントが確認できます。

3. 財務体力:自己資本比率

モルガン・スタンレーの自己資本比率は、その財務的な健全性を示し、ストレス時における耐久力を測る上で重要です。

指標 2020年末 2022年末 2023年末 2024年末 2025年Q2末 規制上の最低水準 (目安)
CET1比率 (普通株式等Tier1比率) 16.7% 15.2% 15.1% 14.8% 15.0% ~10.5-12.0% (G-SIB、SCB等込)
Tier1資本比率 18.9% 17.3% 17.3% 16.8% 17.0% ~12.0-13.5%
総自己資本比率 22.0% 20.2% 20.2% 19.8% 19.9% ~14.0-15.5%
SLR (補完的レバレッジ比率) 7.4% 6.2% 6.3% 6.1% 6.1% 5.0% (G-SIB向け)
規制上の最低水準は、G-SIBサーチャージやストレス資本バッファー(SCB)など、様々なバッファーを含むため変動します。モルガン・スタンレーの具体的な要求水準は、FRBの年次ストレステスト結果等により決定されます。2025年Q2末の数値は、最新の決算発表に基づく実績値です。

自己資本比率の用語解説

CET1比率(普通株式等Tier1比率):銀行の財務健全性を示す最も重要な指標。質の高い自己資本(普通株式など)が、リスクアセットに対してどの程度あるかを示します。

CET1比率 = CET1資本 ÷ リスクアセット

Tier1資本比率:CET1資本に加え、その他の適格なTier1資本(優先株など)を含めた、基本的な自己資本の比率。

Tier1資本比率 = Tier1資本 ÷ リスクアセット

総自己資本比率:Tier1資本にTier2資本(劣後債など)も加えた、銀行の全ての自己資本の比率。

総自己資本比率 = (Tier1資本 + Tier2資本) ÷ リスクアセット

SLR(補完的レバレッジ比率):Tier1資本を総エクスポージャー(オンバランス資産+オフバランス項目)で割った比率。リスク度外視の単純な資本の厚みを示します。

SLR = Tier1資本 ÷ 総エクスポージャー

主な観察点: モルガン・スタンレーは、全ての自己資本比率において規制上の最低水準を大幅に上回っており、強固な財務基盤を維持しています。これは、経済的なストレス環境下においても事業を継続し、株主還元を行うための重要な要素です。


4. 流動性と資金調達の安定性

十分な流動性の確保と安定的な資金調達は、金融機関の生命線です。

指標 2022年末 2023年末 2024年末 2025年Q2末 (最新値) 規制上の最低水準
LCR (流動性カバレッジ比率) 131% 128% 129% 130% 100%
NSFR (安定調達比率) >100% >100% >100% >100% 100%
HQLA (適格流動資産) ~$350B ~$330B ~$340B ~$345B N/A (LCRを裏付ける資産)
LCRおよびNSFRのデータは、特定の規制関連開示資料や投資家向けプレゼンテーションで確認できます。2025年Q2の数値は、最新の決算発表に基づく実績値および傾向に基づく推定値です。

流動性指標の用語解説

LCR(流動性カバレッジ比率):30日間のストレスシナリオにおいて、高品質流動資産で純現金流出をカバーできる比率。短期流動性リスクの耐性を示す。

LCR = 高品質流動資産(HQLA) ÷ 30日間純現金流出額

NSFR(安定調達比率):1年間の期間における安定調達額と所要安定調達額の比率。長期流動性リスクの管理指標。

NSFR = 利用可能安定調達額 ÷ 所要安定調達額

HQLA(適格流動資産):ストレス時でも損失なく迅速に現金化できる高品質な資産。現金、中央銀行預け金、国債等が含まれる。

主な観察点: モルガン・スタンレーは、LCRとNSFRを規制の最低水準である100%を大きく上回る水準で維持しており、短期および長期の資金繰りに対する十分な備えがあることを示しています。潤沢なHQLA(適格流動資産)がこの安定性を支えています。


5. リスク管理(信用リスク・市場リスク等)

モルガン・スタンレーは、事業の特性上、信用リスクに加え、市場リスクやオペレーショナルリスクの管理が極めて重要です。

指標 2020年 2022年 2023年 2024年 2025年上半期
貸倒引当金費用 (百万ドル) 2,274 629 765 800 331
純貸倒 (百万ドル) N/A 75 131 150 ~100
モルガン・スタンレーの貸倒引当金費用や純貸倒は、伝統的な商業銀行と比較すると規模が小さい傾向にありますが、ウェルス・マネジメント部門のローンポートフォリオや、投資銀行部門のカウンターパーティーリスクに関連して計上されます。市場リスク管理指標(VaRなど)も重要な経営指標ですが、ここでは簡略化のため割愛します。2025年上半期の数値は実績値です。

信用リスク指標の解説

貸倒引当金費用:将来発生が見込まれる信用損失に備えて計上する費用。経済環境の悪化予想や信用リスクの増大により増加する。

純貸倒:実際に損失として確定した金額から回収額を差し引いた純額。貸倒引当金では足りなかった実損失。

VaR(Value at Risk):一定期間・信頼水準のもとで被る可能性のある最大損失額。市場リスク管理の代表的指標(本レポートでは割愛)。

主な観察点: モルガン・スタンレーの信用リスクは、主にウェルス・マネジメント部門の顧客向け貸付や、機関投資家向けの取引に関連しています。貸倒関連の費用は、経済環境やポートフォリオの質によって変動します。市場のボラティリティに収益が影響されるビジネスモデルであるため、市場リスク管理体制の堅牢性が常に問われます。


6. 競合他行との比較(2025年最新)

金融機関 配当利回り 四半期配当 ROTCE(直近) CET1比率
モルガン・スタンレー (MS) ~3.7% $1.00 18.2% 15.0%
ゴールドマン・サックス (GS) ~2.2% $4.00 11.1% 14.5%
JPモルガン・チェース (JPM) ~2.1% ~$1.25 ~21% 15.3%
バンク・オブ・アメリカ (BAC) ~2.4% ~$0.26 ~15% ~11.8%
主な観察点: MSは競合他行と比較してROTCE 18.2%という極めて高い収益性を実現。配当利回りも魅力的な水準で、投資銀行としての特性を活かした効率的な資本運用が評価できます。

7. 投資家が注意すべきリスク

  • 市場環境への依存: 投資銀行業務やトレーディング収益は市場環境に大きく左右され、市場の低迷は業績に直接影響します。
  • ウェルス・マネジメントへの競争激化: 安定収益源であるウェルス・マネジメント分野では、伝統的金融機関やフィンテック企業との競争が激化しています。
  • 規制環境の変化: 金融規制の変更が収益性や事業戦略に影響を与える可能性があります。
  • 信用リスクの増加: 経済環境悪化により、貸倒引当金費用が増加する可能性があります。

8. 結論:投資判断と今後の見通し

モルガン・スタンレーの配当は、記録的なQ2業績(ROTCE 18.2%)と強固な資本基盤(CET1比率15.0%)に支えられ、「極めて高い持続性」があると評価できます。

投資判断の根拠

定量的要因:

  • 2025年Q2の8%増配決定と、連続増配の実績
  • Q2のEPS $2.13(予想$1.96を大幅上回る)などの好調な業績
  • 業界トップクラスのROTCE 18.2%という収益性
  • 規制要件を200bp以上上回るCET1比率15.0%の健全な財務状況
  • 運用資産$8.2兆ドル(過去最高)による安定収益基盤

定性的要因:

  • ウェルス・マネジメント部門による安定的な手数料収入
  • 投資銀行業務における高い競争力
  • 市場環境改善による収益機会の拡大

現状データからの見通し

  • ウェルス・マネジメント部門の14%増収により、安定収益基盤が一層強化される
  • CET1比率15.0%の強固な資本基盤により、更なる株主還元余地が確保されている
  • 投資銀行業務の回復により、収益成長ポテンシャルが拡大

投資家への参考意見:
MSは、8%の配当増額と18.2%という驚異的なROTCEにより、長期的な配当投資戦略において極めて魅力的な選択肢となっています。ウェルス・マネジメント部門の安定成長と、投資銀行業務の市場機会獲得能力を両立している点が特に評価できます。ただし、市場環境変動リスクを理解し、ポートフォリオの適切な比重で保有することが重要です。

免責事項

本レポートは、Morgan Stanley公式発表資料等の公開情報に基づく分析であり、投資助言を構成するものではありません。投資判断は投資家自身の責任において行ってください。

最終更新日: 2025年7月28日
次回更新予定: 2025年10月(Q3決算発表後)

主要データ出典:

  • Morgan Stanley Q2 2025決算発表
  • Morgan Stanley配当増額発表
  • Morgan Stanley Q2 2025決算電話会議
  • 信頼できる配当データプロバイダー



Posted by 南 一矢