NVDA (エヌビディア)の業績・財務情報

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【2025年版】NVIDIA (NVDA) 徹底分析:AI革命の絶対王者 – FY2009-FY2025財務データとアクセラレイテッド・コンピューティング戦略


【2025年版】NVIDIA (NVDA) 徹底分析:AI革命の絶対王者 – FY2009-FY2025財務データとアクセラレイテッド・コンピューティング戦略

はじめに
NVIDIA (エヌビディア) は、アクセラレイテッド・コンピューティングのパイオニアであり、AI(人工知能)革命を牽引する半導体設計企業です。同社のGPU(Graphics Processing Unit)は、当初ゲーミング市場で圧倒的な地位を確立しましたが、現在ではデータセンター、AI、自動運転、プロフェッショナルビジュアライゼーションなど、多岐にわたる分野で不可欠な存在となっています。
特に近年の生成AIブームにより、NVIDIAのデータセンター事業は驚異的な成長を遂げ、同社を世界のテクノロジー業界の頂点へと押し上げました。
この記事では、NVIDIAの会計年度FY2009からFY2025(2025年1月期)までの財務データを基に、その爆発的な成長の軌跡、AIを中心としたプラットフォーム戦略、そして今後の展望について、投資家の視点から分かりやすく解説します。

【免責事項および出典について】

  • 本記事に掲載されている財務情報(特にFY2009からFY2025までの時系列データ)は、主にNVIDIA Corporationが米国証券取引委員会 (SEC) に提出している年次報告書 (Form 10-K)、四半期報告書 (Form 10-Q)、および決算発表資料(Earnings Releases, Investor Presentationsなど)といった公式IR情報に基づいて作成しています。FY2025の通期データは、2025年2月26日公表のFY2025決算リリースに基づきます。FY2026の最新情報は同リリースに記載のQ1 FY2026アウトルック等を参照しています。
  • 記事内の成長率 (CAGRなど) や一部の経営指標は、これらの公式データに基づき筆者が算出したものです。株式分割の影響によりEPSなどの一株当たり指標は年度間で連続性に留意が必要です(注記参照)。
  • 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の購入や売却を推奨または勧誘するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
  • データは記事作成時点で入手可能な情報に基づき、正確を期すよう努めていますが、常に最新かつ完全な情報を保証するものではありません。必ずNVIDIA社の公式IR情報をご確認ください。
  • NVIDIA Corporation 投資家向け情報ページ: https://investor.nvidia.com/

会計年度について: NVIDIAの会計年度は、通常、毎年1月最終日曜日に終了します。例えば、本記事で「FY2025」と表記する会計年度は、2024年1月29日から2025年1月26日までの期間を指します。表内の年度表記はこの会計年度に基づいています。

1. NVIDIAの長期的な業績:AIブームによる爆発的成長

NVIDIAの業績は、特にFY2023以降、データセンター向けAIプラットフォームの需要爆発により前例のない規模で伸長しました。FY2025通期は売上高1,304.97億ドル(前年比+114%)営業利益814.53億ドル純利益728.80億ドルと、いずれも過去最高を更新しています。(EPSは分割後ベースで$2.94)※株式分割の注記は後述

数値出典:NVIDIA FY2025通期決算リリース。Full-year revenue $130.5B、Operating income $81.4B、Net income $72.9B、Diluted EPS $2.94

1.1. 売上、利益、キャッシュフローの推移

NVIDIAの主要な業績の移り変わりを見てみましょう。(金額は百万ドル)

会計年度 売上高(百万$) 売上成長率 営業利益(百万$) 純利益(百万$) 希薄化後EPS ($)
FY2009 3,425 -15.9% (77) (30) (0.05)
FY2010 3,312 -3.3% 60 (68) (0.12)
FY2011 3,543 7.0% 348 253 0.43
FY2012 3,998 12.8% 682 581 0.94
FY2013 4,280 7.1% 779 563 0.90
FY2014 4,130 -3.5% 624 440 0.74
FY2015 4,682 13.4% 878 631 1.06
FY2016 5,010 7.0% 758 614 1.08
FY2017 6,910 37.9% 1,947 1,666 2.57
FY2018 9,714 40.6% 3,036 3,047 4.82
FY2019 11,716 20.6% 3,804 4,141 6.63
FY2020 10,918 -6.8% 2,846 2,796 4.52
FY2021 16,675 52.7% 4,719 4,332 6.90
FY2022 26,914 61.4% 10,041 9,752 3.85
FY2023 26,974 0.2% 4,224 4,368 1.74
FY2024 60,922 125.8% 32,972 29,760 1.19 (分割後)
FY2025 130,497 114.2% 81,453 72,880 2.94 (分割後)
CAGR (年平均成長率) – 注: EPSは分割影響が大きく連続性に注意
過去16年(FY09-25) 売上高 25.6%
過去5年(FY20-25) 売上高 64.2%

FY2025の数値およびFY2024のEPS(分割後)はNVIDIA公式発表に準拠。CAGRは上記データから筆者算出。

  • 売上高/利益: FY2025はデータセンター需要が牽引し、売上・利益とも過去最高を更新。
  • EPSの取り扱い: 2024年6月の10対1株式分割(実施済)に伴い、FY2024以降のEPSは分割後ベースです。過年度は当時の開示値(未調整)を便宜的に残しています。

1.2. 収益性:データセンターが牽引する高マージン

会計年度 売上総利益率 (GM) 営業利益率 純利益率
FY2019 61.2% 32.5% 35.3%
FY2020 62.1% 26.1% 25.6%
FY2021 62.3% 28.3% 26.0%
FY2022 64.9% 37.3% 36.2%
FY2023 56.9% 15.7% 16.2%
FY2024 72.7% 54.1% 48.9%
FY2025 75.0% 62.4% 55.9%

FY2025のGM 75.0%、通期売上/利益に基づく営業・純利益率は筆者算出。

2. 事業セグメントとプラットフォーム戦略:データセンターが主役

NVIDIAの事業は、主に「データセンター」「ゲーミング」「プロフェッショナルビジュアライゼーション」「オートモーティブ」の4つの市場プラットフォームで構成されます。特にデータセンター事業の成長が著しく、会社全体の業績を牽引しています。

2.1. 主要市場プラットフォーム別売上高 (百万ドル)

会計年度 / 四半期 データセンター ゲーミング プロフェッショナル
ビジュアライゼーション
オートモーティブ 合計 (その他含む)
FY2023 15,005 9,067 1,544 903 26,974
FY2024 47,525 10,449 1,554 1,088 60,922
FY2025 115,252 11,425 1,973 1,787 130,497
FY2025 Q4 35,600 2,865 511 573 39,300

FY2025通期の各プラットフォーム売上(データセンター$115.2B等)およびQ4実績(データセンター$35.6B等)は公式リリースに基づく。

  • データセンター: GPU(H100/H200など)やDGX/HGXシステム、InfiniBandやSpectrum-X等のネットワーキング、CUDAを核とするソフトウェア群までを統合した「フルスタック」で需要を獲得。
  • ゲーミング: GeForce RTXシリーズが主力。PC市場回復を背景に安定推移。
  • プロフェッショナルビジュアライゼーション: ワークステーション向けRTX、Omniverseなど。
  • オートモーティブ: NVIDIA DRIVEプラットフォーム。中長期の成長ドライバー。

3. AIとアクセラレイテッド・コンピューティング戦略:GPUからシステム、ソフトウェアまで

  • 最先端GPUアーキテクチャ: Hopper(H100/H200)に続き、次世代Blackwellプラットフォーム(B100/B200、GB200 Grace Blackwell Superchip等)を2024年後半から展開予定(24年発表)。さらに将来世代(例:Rubin)も予告済み。
  • ソフトウェア/サービス: CUDAとNVIDIA AI Enterprise、Omniverse、NeMo/BioNeMoなど、用途別ソフトウェアスタックを充実。
  • ネットワーク統合: InfiniBandおよびSpectrum-X Ethernet、NVLink/NVSwitchで大規模クラスタを最適化。
  • CPU統合: Armベース「Grace」、Grace Hopper / Grace Blackwell SuperchipでCPU/GPUを密結合。
  • 推論重視: 学習だけでなく推論需要の拡大に合わせ、ハード/ソフトの最適化を継続。

4. 財務の健全性と成長投資

NVIDIAは、AIブームによる収益急増を背景に強固な財務体質を維持。キャッシュ創出力を成長投資(R&D/サプライチェーン/ソフトウェア)と株主還元に振り向けています。

4.1. 資産・負債・資本の推移

会計年度末 総資産(百万$) 総負債(百万$) 株主資本(百万$) 自己資本率 D/Eレシオ
FY2021 38,991 17,516 21,475 55.1% 0.82
FY2022 49,676 17,551 32,125 64.7% 0.55
FY2023 44,460 14,785 29,675 66.7% 0.50
FY2024 65,817 16,786 49,031 74.5% 0.34
FY2025 111,601 32,274 79,327 71.1% 0.41

FY2025の総資産/負債/資本は通期開示に基づく概数。現金・同等物等はFY2025期末で約314億ドル

4.2. キャッシュフローと研究開発投資

会計年度 営業CF(百万$) 設備投資 (CapEx)(百万$) フリーCF (FCF)(百万$) 研究開発費 (R&D)(百万$)
FY2021 5,821 861 4,960 3,921
FY2022 8,984 1,139 7,845 5,268
FY2023 5,602 1,675 3,927 7,341
FY2024 28,923 1,882 27,041 8,680
FY2025

FY2025のCF/R&Dは通期開示を精査中。期末の現金・有価証券残高は約314億ドル(会社開示)で、高水準の投資余力を維持。

  • 株主還元: 2024年6月の10対1株式分割を実施し、四半期配当を1株あたり$0.01(分割後)へ引き上げ。

5. 市場での強みと競争環境:AI覇権を巡る攻防

  • NVIDIAの優位性: 最高性能/効率のGPU、CUDA中心の巨大エコシステム、ネットワーキング〜ソフトまでのフルスタック、迅速な製品ケイデンス、CSP/大企業/研究機関との強固な関係。
  • 主な競合/課題: AMD(MIシリーズ/ROCm)、Intel(Gaudi/CPU)、CSP内製(TPU/Trainium/Inferentia/Maia等)、供給制約とHBMなど部材の確保、対中輸出規制、そして高期待に伴う株価ボラティリティ。

6. FY2026年の見通しと今後のポイント:Blackwellが導く次なる成長

FY2026 第1四半期(2025年4-5月期)会社アウトルック(FY2025通期発表時点):

  • 売上高見通し:$43.0B
  • 売上総利益率(GAAP/Non-GAAP):約70.6% / 約71.0%(±50bp)

出典:FY2025決算リリース内「Outlook」。

投資家が注目すべきポイントとリスク:

  • Blackwell立ち上がり: B100/B200/GB200の量産・顧客採用状況、Hopperからの移行、供給能力(HBM/先端パッケージ)
  • 需要の持続性: 生成AIからエンタープライズAI/推論への裾野拡大
  • 競争環境: 競合/内製チップへの優位維持(性能・TCO・エコシステム)
  • 規制・地政学: 輸出規制・サプライチェーンの不確実性

7. まとめ:AI時代の「石油王」NVIDIA、成長はどこまで続くか

NVIDIAは、GPUを核にネットワーキング/ソフト/システムまで束ねるプラットフォームでAI需要を取り込み、テクノロジー産業の中核へと飛躍しました。
強み: 圧倒的性能、CUDAという堀、フルスタック戦略、迅速な製品投入、強固な顧客基盤。
今後の鍵: Blackwellの成功、需要の多様化と持続性、競争激化の中での技術的リーダーシップ、安定した供給体制の確立。

本記事は、公開情報に基づき筆者の分析を加えたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行うようにしてください。本分析は、NVIDIA Corporationの公式IR情報および信頼できると考えられる情報源に基づいていますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。常に最新の公式情報をご参照ください。

最終更新日時: 2025年8月31日


Posted by 南 一矢