OKTA:オクタの業績

SaaS(クラウド+サブスク),サイバーセキュリティ,情報技術,業績






【2025年版】Okta (OKTA) 徹底分析:アイデンティティ・セキュリティのリーダー – FY2018-FY2025財務データと成長戦略


【2025年版】Okta (OKTA) 徹底分析:アイデンティティ・セキュリティのリーダー – FY2018-FY2025財務データと成長戦略

はじめに
Okta (オクタ) は、現代のデジタル世界において不可欠なアイデンティティ管理とアクセスセキュリティを提供するリーディングカンパニーです。従業員や顧客が安全かつシームレスにテクノロジーにアクセスできるようにすることで、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援しています。
この記事では、Oktaの過去の会計年度 (FY2018~FY2025) の財務データを基に、その成長の軌跡、ビジネスモデル、そして将来の展望を、投資家の視点から整理します。

【免責事項および出典について】

  • 本記事の財務データは主にOkta, Inc.の公式IR(10-K/10-Q、決算発表資料)に基づきます。FY2025の通期・Q4実績は、2025年3月3日のニュースリリース(EX-99.1)に基づき更新、FY2026 Q1の直近見通しは2025年5月29日のニュースリリース(EX-99.1)を参照しています。原典リンクは本文末に掲載。
  • 成長率や比率は公開数値から筆者算出したものを含みます。
  • 投資判断は自己責任でお願いします。最新情報は必ずOktaの公式IRでご確認ください。
    Okta IR: https://investor.okta.com
  • スマートフォンでご覧の方は表を横スクロールしてご確認ください。

会計年度について: Oktaの会計年度は毎年1月31日に終了します。「FY2025」は2024年2月1日~2025年1月31日の期間です。

1. Oktaの長期的な業績:成長と進化の軌跡

OktaはIPO以降、サブスクリプション中心のビジネスモデルを軸に高成長を持続。直近では収益性とキャッシュ創出力の改善が鮮明です。

1.1. 売上、利益、キャッシュフローの推移

主要KPIの推移を一覧化します(FY2025は通期確定値)。

会計年度 総売上高(百万$) 売上成長率 サブスク売上(百万$) 営業CF(百万$) 純損失(百万$)
FY2018 259.8 239.0 (27.1) (125.3)
FY2019 399.3 53.7% 369.6 (6.3) (208.8)
FY2020 586.1 46.8% 553.0 42.1 (266.3)
FY2021 835.4 42.5% 797.7 134.8 (557.6)
FY2022 1,300.0 55.6% 1,245.0 (27.0) (848.4)
FY2023 1,858.0 42.9% 1,789.0 73.0 (815.0)
FY2024 2,262.9 21.8% 2,189.8 489.0 (323.0)
FY2025 2,610.0 15.3% 2,551.0 782.0 (43.0)
CAGR (年平均成長率)
過去7年(FY18-25) 約39% 約40%
過去5年(FY20-25) 約35% 約36%

出典: Okta 公式IR/SEC開示。FY2025通期売上は$2.61B(+15%)。営業CF・FCFはFY2025通期の確定値。

  • 総売上高: FY2025は$2.61B(前年比+15%)で過去最高を更新。
  • 営業キャッシュフロー: FY2025は$782Mまで拡大。FCFは後述。
  • GAAP純損失: FY2025は-$43Mまで大幅縮小。

1.2. 収益性:効率性と改善のトレンド

会計年度 営業CF率 GAAP営業利益率 Non-GAAP営業利益率 GAAP純利益率
FY2018 -10.4% -46.4% -26.3% -48.2%
FY2019 -1.6% -45.8% -19.5% -52.3%
FY2020 7.2% -42.5% -9.8% -45.4%
FY2021 16.1% -64.0% -4.8% -66.7%
FY2022 -2.1% -61.9% -0.5% -65.3%
FY2023 3.9% -35.9% 5.8% -43.9%
FY2024 21.6% -9.0% 13.7% -14.3%
FY2025 30.0% -0.3% 22.5% -1.6%

出典: Okta 公式IR/SEC開示。Non-GAAP営業利益率は会社開示ベースの指標。

1.3. コスト構造:成長投資と効率化

クラウドネイティブのSaaSらしく、サブスク粗利は80%台で安定。S&M・R&Dの効率化が進み、比率は低下傾向です。

会計年度 サブスク
グロスマージン率
販売・マーケ費率(対売上高) 研究開発費率(対売上高) 一般管理費率(対売上高)
FY2021 78.2% 51.6% 28.1% 14.6%
FY2022 76.1% 52.0% 28.1% 10.6%
FY2023 77.8% 49.6% 27.6% 9.9%
FY2024 79.8% 43.6% 25.1% 9.3%
FY2025 80.5% 40.1% 22.0% 8.8%

出典: Okta 公式IR

1.4. 投資家向け指標:1株あたりの価値 (GAAPベース)

会計年度 SPS ($)(1株当たり売上高) CFPS ($)(1株当たり営業CF) EPS ($)(1株当たり純損失) BPS ($)(1株当たり純資産)
FY2021 6.30 1.02 (4.20) 23.02
FY2022 8.71 (0.18) (5.68) 41.90
FY2023 11.93 0.47 (5.23) 40.11
FY2024 14.23 3.08 (2.03) 39.32
FY2025 16.12 4.83 (0.27) 39.56
EPS 改善 大幅改善

注: OktaはNon-GAAP EPSも開示。FY2025は約$2.9(会社開示ベース)。

2. ビジネスモデル:アイデンティティクラウドの力

Okta Identity Cloudは、Workforce IdentityとCustomer Identityを統合的に提供する中立系プラットフォーム。SSO、MFA、ライフサイクル管理、APIアクセス管理などを備え、継続課金(サブスク)で安定収益を生みます。

  • 主要KPI(直近):
    • DBNRR($ベースネットリテンション): Q4 FY2025で107%
    • RPO(未実現履行義務): FY2025末は$4.132B(+30%)。
    • cRPO(12か月内計上分): FY2025末は$2.270B(+14%)。
    出典: 2025年3月3日リリース(Q4/FY2025)
  • Auth0買収(2021): CIAM領域での開発者向け優位性を強化。

3. 財務の健全性:キャッシュ創出力の向上

強いサブスク粗利と運転資本の改善でCFが伸長。手元資金も潤沢です。

3.1. 資産・負債・資本の推移

会計年度末 総資産(百万$) 総負債(百万$) 株主資本(百万$) 自己資本率 D/Eレシオ
FY2021 (Jan 31, ’21) 4,220 2,613 1,607 38.1% 1.63
FY2022 (Jan 31, ’22) 9,793 3,371 6,422 65.6% 0.52
FY2023 (Jan 31, ’23) 9,112 3,133 5,979 65.6% 0.52
FY2024 (Jan 31, ’24) 9,437 3,032 6,405 67.9% 0.47
FY2025 (Jan 31, ’25) 9,321 2,848 6,473 69.5% 0.44
  • 現金・短期投資: FY2025期末は$2.61B。Q1 FY2026期末(2025/4/30)は$2.73Bへ増加。

出典: 2025年3月3日(FY2025 Q4)/ 2025年5月29日(FY2026 Q1)各リリース

3.2. キャッシュフロー分析:フリーキャッシュフローと戦略的投資

FCF = 営業CF – CapEx。設備投資が軽いモデルのため、営業CFの改善がそのままFCFに効きます。

会計年度 営業CF(百万$) 設備投資(CapEx)(百万$) FCF(百万$) FCFマージン
FY2022 (27.0) 26.1 (53.1) -4.1%
FY2023 73.0 30.0 43.0 2.3%
FY2024 489.0 37.0 452.0 20.0%
FY2025 782.0 52.0 730.0 28.0%

FY2025のFCFは$730M(マージン28%)。配当は未実施で、成長投資・製品開発・セキュリティ強化等へ再投資。

4. 資本効率性と収益性:改善の兆し

Non-GAAPでの黒字定着、GAAP損失の縮小が続き、ROA/ROE(GAAP)もマイナス幅が縮小。

会計年度 ROA (%)(GAAP) ROE (%)(GAAP)
FY2021 -13.2% -34.7%
FY2022 -8.7% -13.2%
FY2023 -8.9% -13.6%
FY2024 -3.4% -5.0%
FY2025 -0.5% -0.7%

5. Oktaの戦略:ゼロトラストとプラットフォームの進化

  • ゼロトラストの中核: アイデンティティ中心のアクセス制御(SSO/MFA/リスクベース認証等)でゼロトラストを実装。
  • 製品拡張: Workforce/Customer両領域に加え、IGAやPAMなど隣接分野にも展開。
  • Okta Integration Network: 7,500以上の事前統合で導入を高速化。
  • 継続的なR&D投資: FY2025のR&Dは売上の約22%。AI/機械学習を用いた検知・適応型MFA等に注力。

6. 競争環境とOktaの優位性

  • 市場機会: DX・クラウド・リモートワーク・脅威増大を背景に、アイデンティティ市場は拡大。
  • 主な競合: Microsoft(Entra ID)、Ping(含ForgeRock)、CyberArk、SailPoint、Oracle/IBM など。
  • Oktaの強み: ベンダー中立性、クラウドネイティブ、広い連携、Workforce/Customer両輪、アナリスト評価の高さ。

7. FY2026年の見通しと今後のポイント(最新ガイダンス抜粋)

通期 FY2026 会社見通し(2025年3月3日公表時点)

  • 売上高:$2.85B~$2.86B(+9%~+10%)
  • Non-GAAP営業利益:$705M~$715M(営業利益率 約25%)
  • Non-GAAP希薄化EPS:$3.15~$3.20
  • FCFマージン:約26%

Q2 FY2026 ガイダンス(2025年5月29日公表)

  • 売上高:$709M~$711M(+9%~+10%)
  • Non-GAAP営業利益:$186M~$188M(営業利益率 約26%)
  • Non-GAAP希薄化EPS:$0.88~$0.89

出典: 2025年3月3日(FY25通期発表)/ 2025年5月29日(FY26 Q1発表)

投資家が注目すべきリスク

  • IT投資マクロ環境の鈍化によるDBNRRの変動
  • Microsoft等のエコシステム競合との消耗戦
  • セキュリティインシデントによる信頼リスク
  • 成長率と利益率の両立(M&A含む資本配分の巧拙)

8. まとめ:Oktaはアイデンティティ市場の成長を捉え続けられるか?

  • 強み: 中立性・使いやすさ・豊富な連携・Workforce/Customerの両輪・高い粗利・強いFCF。
  • 今後の鍵: DBNRRの安定化/再上昇、ゼロトラスト文脈での付加価値拡大、CIAMの深耕、収益性と成長の最適バランス。

本記事は公開情報に基づく分析であり、投資勧誘を目的としません。正確性には留意していますが保証はできません。必ず最新の公式資料をご確認ください。

最終更新日時: 2025年8月31日

更新履歴(今回の修正点)

  1. FY2026ガイダンスを最新化: 通期売上 $2.85B~$2.86B、Non-GAAP営業利益率 約25%、Non-GAAP EPS $3.15~$3.20、FCFマージン 約26% に修正(以前の「$2.915B~$2.935B/約21%/$2.58~$2.63/約22%」表記を訂正)。
  2. KPIの整合性を向上: OktaはARRの公式定義を通期資料では必ずしも開示していないため、ARRや顧客数の具体値の断定を避けRPO/cRPO/DBNRRに差し替え。
  3. 手元資金を最新化: FY2025期末の現金+短期投資 $2.61B、Q1 FY2026期末 $2.73Bを追記。
  4. 本文の表現調整: 見出し・注記を最新日付に更新、冗長表現の簡素化、数値の丸めを統一。
  5. 軽微な誤記修正: 句読点・単位表記の統一、用語整備(例:RPO/cRPOの表記揺れ)。

※テーブルの既存年度データは構成を維持しつつ整合性チェックを実施。FY2025の売上・営業CF・FCFなどは一次情報に一致する値に更新しています。


Posted by 南 一矢