PLTR:パランティアの業績

AI(人工知能),情報技術,業績,軍事株

【2026年10月版】Palantir(PLTR)徹底分析:FY2021~FY2025財務データとQ2 2026、AIP・AI Sovereignty戦略

はじめに
Palantir Technologies(パランティア、ティッカー:PLTR)は、政府機関や企業向けに、データの統合・分析・意思決定支援を行うソフトウェアを提供する企業です。政府・防衛向けの「Gotham」、企業向けの「Foundry」、ソフトウェアの展開・更新を支える「Apollo」、生成AIを実際の業務へ組み込む「AIP(Artificial Intelligence Platform)」を中核製品としています。[1]

本記事では、FY2021~FY2025の過去5年間の財務・KPIを整理したうえで、2026年8月3日に発表された2026年Q2決算とFY2026会社ガイダンスを反映し、2026年10月8日までに確認できた事業発表を加えて、AIPを中心とする成長戦略、財務状況、競争力、注意すべきリスクを解説します。[2][3]

【2026年10月8日更新】
2026年10月8日に公式IRの決算一覧を確認した時点で、直近の公表決算は2026年Q2です。Q3実績は本記事の確認時点では未公表のため、業績表と会社予想はQ2決算発表時点の数値を維持しています。Q2の売上高は19.35億ドルで前年同期比+93%、米国売上は15.73億ドルで+115%、米国商業売上は7.64億ドルで+149%となりました。GAAP営業利益率は47%、調整後営業利益率は62%です。会社はFY2026売上高ガイダンスを81.50億~81.58億ドルへ引き上げ、前年比約82%の成長を見込んでいます。[2][3]

【免責・データ基準】

  • 年次データはPalantirのForm 10-K、四半期データはForm 10-Q、決算リリース、Business Updateを基準にしています。
  • FY2025は2025年12月31日終了年度、Q2 2026は2026年6月30日終了四半期です。
  • GAAP純利益は、特に記載がない限り連結純利益を示します。Non-GAAP指標は会社定義に基づきます。
  • 成長率、利益率、CAGR、自己資本比率の一部は、開示数値をもとに筆者が計算しています。
  • 本記事は特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。

会計年度:毎年12月31日終了。本文の年度はFY(会計年度)表記です。

1. Palantirの長期業績:政府の安定基盤に商業AIPの急成長が重なる

Palantirは、政府部門で積み上げた機密データの処理能力、権限管理、現場への導入力を商業分野へ展開しています。FY2025の売上高は44.75億ドルとなり、FY2024比で+56.2%増加しました。[1]

GAAP営業黒字はFY2023から継続し、FY2025にはGAAP営業利益率が31.6%、調整後営業利益率が50.4%まで上昇しました。政府部門だけでなく、AIPを中心とする商業部門の売上拡大が全社成長を押し上げています。[1]

1.1 売上・セグメント別収益・利益・CFの推移(FY2021~FY2025)

主要な年次指標を整理すると、以下のとおりです。各FYは当年1月1日~12月31日の通期、金額の単位は百万ドルです。四捨五入により内訳と合計が一致しない場合があります。

会計年度 総売上高 売上
成長率
政府部門
売上
商業部門
売上
調整後
営業利益
純利益・損失
GAAP
営業CF
FY2021 1,541.9 +41.1% 897.4 644.5 473.5 (520.4) 333.9
FY2022 1,905.9 +23.6% 1,071.8 834.1 420.8 (371.1) 223.7
FY2023 2,225.0 +16.7% 1,222.2 1,002.8 632.8 217.4 712.2
FY2024 2,865.5 +28.8% 1,569.6 1,295.9 1,128.1 467.9 1,153.9
FY2025 4,475.4 +56.2% 2,402.3 2,073.2 2,254.1 1,634.6 2,134.5
CAGR(年平均成長率):FY2021→FY2025
過去4年 約30.5% - 約27.9% 約33.9% 大幅拡大 黒字転換 約59.0%

注)調整後営業利益はNon-GAAPのAdjusted income from operations。純利益・損失は連結ベースのGAAP Net income(loss)。FY2021~FY2022はGAAP純損失、FY2023以降はGAAP純利益です。[4][5]

  • 総売上:FY2021の15.42億ドルからFY2025の44.75億ドルへ拡大し、4年間のCAGRは約30.5%となりました。
  • 政府部門:FY2025は24.02億ドルで前年比約+53%。防衛、安全保障、行政機関向け需要が成長を支えました。
  • 商業部門:FY2025は20.73億ドルで前年比約+60%。政府部門との差は縮まり、全社売上の約46%を占めています。
  • 利益・CF:FY2025の調整後営業利益は22.54億ドル、営業CFは21.34億ドルとなり、売上成長を上回るペースで拡大しました。[1]

1.2 2026年Q2実績(2026年8月3日発表)

2026年Q2は、米国の商業・政府両部門で成長が加速しました。売上高は19.35億ドルで前年同期比+93%、米国売上は15.73億ドルで+115%です。米国売上は全社売上の約81%を占めました。[2]

項目 Q2 2026 前年同期比
総売上高 $1,935.5M +93%
米国売上高 $1,573.0M +115%
政府部門売上 $990.0M +79%
商業部門売上 $945.4M +110%
米国政府売上 $809M +90%
米国商業売上 $764M +149%
GAAP営業利益 $912.0M +239%
GAAP営業利益率 47.1% 前年同期26.8%
GAAP純利益(連結) $1,066.0M +224%
普通株主帰属GAAP純利益 $1,061.9M 約+225%
GAAP希薄化後EPS $0.41 前年同期$0.13
調整後営業利益 $1,194.5M 約+157%
調整後営業利益率 61.7% 前年同期46.3%
営業CF $1,216.2M 約+126%
調整後FCF $1,220.4M 約+115%(マージン63%)
Total RPO $4.90B 約+102%
Net Dollar Retention(直近12カ月比較) 157% -

注)政府・商業売上、GAAP利益はQ2 2026 Form 10-Q、調整後指標、RPO、Net Dollar RetentionはQ2 2026 Business Updateを参照しています。成長率は会社開示または開示値からの計算です。[2][3]

商業部門売上は前年同期の4.51億ドルから9.45億ドルへ増加し、政府部門売上に接近しました。なかでも米国商業売上は前年同期比+149%と、全社の成長を大きく上回っています。[2]

一方、米国以外の売上は3.62億ドルで前年同期比約+34%でした。米国事業が急拡大しているため、米国以外の成長率は相対的に低く見えます。今後は米国外でAIPの導入をどこまで拡大できるかも重要です。[2]

2. 収益性:売上加速と営業レバレッジが同時進行

PalantirはFY2023にGAAP営業黒字へ転換しました。その後、FY2024、FY2025、2026年上期にかけて、売上成長と利益率改善が同時に進んでいます。

FY2025のGAAP粗利率は82.4%、GAAP営業利益率は31.6%、調整後営業利益率は50.4%でした。2026年Q2にはGAAP粗利率が84.7%、GAAP営業利益率が47.1%、調整後営業利益率が61.7%まで上昇しています。[1][2]

2.1 収益性の推移(FY2021~FY2025)

会計年度 GAAP
粗利率
SBC除外
粗利率(Non-GAAP)
GAAP
営業利益率
調整後
営業利益率
営業CF
マージン
FY2021 78.0% 82.4% -26.7% 30.7% 21.7%
FY2022 78.6% 80.9% -8.5% 22.1% 11.7%
FY2023 80.6% 82.2% 5.4% 28.4% 32.0%
FY2024 80.2% 82.7% 10.8% 39.4% 40.3%
FY2025 82.4% 83.8% 31.6% 50.4% 47.7%

注)GAAP利益率、営業CFマージンはForm 10-Kの数値から計算。SBC除外粗利率は、GAAP粗利益に売上原価に含まれるSBCを加えて売上高で割った値です。調整後営業利益率とは除外項目が異なります。各利益率は開示額から小数第1位まで計算しています。[1][4][5]

FY2022のGAAP営業利益率は-8.5%でしたが、FY2023に5.4%へ黒字転換し、FY2025には31.6%へ上昇しました。売上増加に対して営業費用の増加が抑えられたことで、ソフトウェア企業としての営業レバレッジが明確になっています。[1]

2.2 株式報酬と希薄化

FY2025の株式報酬費用(SBC)は6.84億ドルで、FY2024の6.92億ドルから小幅に減少しました。売上高が大きく増えたため、SBCの売上比率はFY2024の約24%からFY2025の約15%へ低下しています。[1]

ただし、2026年Q2のSBCは2.65億ドルとなり、前年同期の1.60億ドルから約66%増加しました。Q2売上高に対する比率は約13.7%です。2026年上期累計では4.67億ドルとなり、前年同期比約48%増加しています。[2]

2026年6月末の発行済株式数はClass A、Class B、Class Fの合計で約24.03億株でした。2025年末の約23.91億株から約0.5%増加しています。利益率が改善していても、株式報酬と発行済株式数の推移は継続的に確認する必要があります。[2]

3. ビジネスモデル:データ統合からAIの実運用までを一体化

  • Gotham:政府、防衛、情報、治安、災害対応など、機密性が高く複雑なデータを扱う組織向けのプラットフォームです。
  • Foundry:製造、金融、ヘルスケア、エネルギー、物流などの企業向けに、データと実際の業務プロセスを結び付けます。
  • Apollo:クラウド、オンプレミス、機密環境、エッジなど、異なる環境へソフトウェアを安全に展開・更新するための基盤です。
  • AIP:企業や政府機関が保有するデータと大規模言語モデルなどのAIを接続し、意思決定や業務処理へ組み込むプラットフォームです。

Palantirの特徴は、単なるデータ可視化ツールやAIチャットボットを提供するのではなく、データ、権限、業務プロセス、AIモデル、実行結果を一つの運用環境へ統合する点にあります。[1]

AIP Bootcampによる導入モデル

AIP Bootcampでは、顧客の実データと業務課題を使い、短期間でAIのユースケースを構築します。実際に動くプロトタイプを早い段階で示し、その後の契約拡大につなげる営業・導入手法です。会社は2023年Q4資料で、顧客とエンジニアが共同で業務へのAI導入を進める手法として説明しています。[5]

2026年Q2資料のNet Dollar Retention(NDR)は157%でした。これは、前年の直近12カ月に売上があった顧客群について、2026年6月末までの直近12カ月の売上を前年の同期間の売上と比べた指標です。既存顧客の利用拡大が、縮小や離脱を上回ったことを示します。Q2単独の成長率や顧客継続率とは区別して読む必要があります。[3]

4. 財務の健全性:潤沢な流動性と有利子負債のない構造

Palantirの財務は、高成長ソフトウェア企業のなかでも強固な部類に入ります。2025年末時点の現金・現金同等物と市場性証券は合計71.77億ドルでした。2026年6月末には94.09億ドルへ増加しています。[1][2]

会社のQ2 2026 Business Updateでは、現金・現金同等物・米国債を約92億ドルとしています。2026年6月末の市場性証券73.79億ドルの内訳は、米国債71.95億ドルと上場株式1.84億ドルです。現金・現金同等物20.30億ドルと米国債を合計すると92.25億ドルとなり、会社資料の「約92億ドル」と整合します。94.09億ドルの全額が現金または米国債という意味ではありません。[2][3]

なお、Palantirには買掛金、未払費用、前受収益、リース債務などの負債があります。「負債がゼロ」ではなく、正確には借入金・社債などの有利子負債がないという状態です(2026年6月末時点、リース債務は別途計上)。[2]

4.1 バランスシート主要項目(FY2021~FY2025)

会計年度末 現金・市場性証券
百万ドル
総資産
百万ドル
総負債
百万ドル
Palantir株主資本
百万ドル
有利子負債
FY2021 2,525 3,247 956 2,291 なし
FY2022 2,634 3,461 819 2,565 なし
FY2023 3,674 4,522 961 3,476 なし
FY2024 5,230 6,341 1,246 5,003 なし
FY2025 7,177 8,900 1,412 7,387 なし

注)現金・市場性証券は現金・現金同等物と貸借対照表上のMarketable securitiesの合計。FY2021はFY2022 Form 10-K掲載の比較数値に基づき、各年度の金額を百万ドル単位で四捨五入しています。株主資本は非支配持分を除くPalantir株主資本です。[1][4]

  • 2026年Q2末の流動性:現金20.30億ドル、市場性証券73.79億ドル、合計94.09億ドル。
  • 2026年Q2末の総資産:116.79億ドル。
  • 2026年Q2末の総負債:17.94億ドル。
  • 2026年Q2末のPalantir株主資本:97.74億ドル。
  • 自己資本比率:Palantir株主資本を基準にすると約83.7%。
  • 有利子負債:2026年Q2末時点でもなし。[2]

4.2 キャッシュフロー推移(FY2021~FY2025)

会計年度 営業CF
百万ドル
設備投資
百万ドル
調整後FCF
百万ドル
投資CF
百万ドル
財務CF
百万ドル
FY2021 333.9 12.6 424.1 (397.9) 306.7
FY2022 223.7 40.0 203.0 (45.4) 86.0
FY2023 712.2 15.1 730.5 (2,711.2) 218.8
FY2024 1,153.9 12.6 1,249.2 (340.7) 463.4
FY2025 2,134.5 33.9 2,270.4 (2,783.6) (27.0)

注)設備投資はPurchases of property and equipment。この表の調整後FCFは、営業CFに株式報酬関連の雇用主負担税の現金支払額を加え、設備投資を差し引いた会社定義のNon-GAAP指標です。そのため、単純な「営業CF-設備投資」とは一致しません。FY2025の単純FCFは2,100.6百万ドル、調整後FCFは2,270.4百万ドルです。[4][5]

設備投資は売上規模に比べて小さく、FY2025は売上44.75億ドルに対して0.34億ドルでした。サーバーや工場を大量に保有する事業ではないため、営業CFの多くを手元に残しやすい構造です。[1]

FY2023~FY2025に投資CFが大幅なマイナスとなった主因は、余剰資金による米国債など市場性証券の購入です。工場建設や大型設備投資が増えたことを直接意味するものではありません。[1]

5. 資本効率と成長の質

2026年Q2の売上成長率は93%、調整後営業利益率は62%でした。両者を合計した会社定義の「Rule of 40 Score」は155%となっています。成長と収益性を併せて見る目安の40%を大きく上回ります。ただし、会社により利益率の定義が異なるため、他社との比較では計算方法をそろえる必要があります。[3]

ただし、Rule of 40はGAAP利益ではなく、調整後営業利益率を用いた指標です。株式報酬や関連税などを除外しているため、GAAP営業利益率や発行済株式数も併せて確認する必要があります。

2026年Q2の連結GAAP純利益率は約55.1%と非常に高い水準でしたが、営業利益に加えて利息収入77.5百万ドル、その他収益91.8百万ドルも寄与しています。その他収益には、期末保有の上場株式に関する未実現評価益66百万ドルが含まれます。四半期の純利益率だけを将来へそのまま延長するのではなく、営業利益と営業CFの推移を中心に見る方が妥当です。[2]

6. PalantirのAI戦略:AIPとAI Sovereignty

  • データガバナンス:利用者、AIモデル、データごとに権限を管理し、誰が何を実行したかを監査できるようにします。
  • Ontology:企業や組織のデータを、工場、製品、在庫、顧客、任務など実際の業務対象と結び付けます。
  • 現場実装:サプライチェーン、製造、予知保全、調達、医療、防衛、金融、不正検知などの業務へAIを組み込みます。
  • モデルの選択:特定の大規模言語モデルだけに依存せず、用途や機密性に応じて異なるモデルを利用できる構造を目指しています。
  • 展開環境:パブリッククラウドだけでなく、オンプレミス、政府専用環境、閉鎖ネットワーク、エッジ環境での運用にも対応します。

AI Sovereigntyとは

2026年Q2のBusiness Updateでは、「AI Sovereignty」が主要テーマとして取り上げられました。これは、組織や国家がデータ、AIモデル、計算資源、運用ルールを自ら管理できる状態を指します。[3]

規制産業や政府機関では、機密データを外部の一般的なAIサービスへそのまま送信できない場合があります。Palantirは、組織が管理する環境のなかでAIを動かし、既存システムや複数のモデルを接続することを重視しています。

筆者は、この戦略が防衛・安全保障だけでなく、金融、医療、エネルギー、重要インフラなど、データの所在や利用権限が重視される分野でも差別化要因になり得ると考えます。

2026年8~9月の進展:主権AIを計算基盤・業務・導入体制へ広げる

2026年8月19日、会社はSovereignty Bootcampが30日未満で約200組織を集めたと発表しました。参加組織数は関心の広がりを示す指標ですが、有料顧客数や売上とは区別する必要があります。[6]

  • Nebiusとの提携(2026年9月8日発表):Nebiusを優先的な主権AIインフラのパートナーに選定しました。統合作業後にNebiusの計算・推論基盤をPalantirの企業向け管理境界の内側へ接続し、対象顧客が計算資源、データ、モデルを管理できるようにする計画です。[7]
  • NVIDIAとの協業(2026年9月10日発表):NVIDIA自身のサプライチェーンを起点に、NemotronオープンモデルとFoundry・AIP・Ontologyを組み合わせる取り組みを発表しました。独自データで調整したモデルを業務へ組み込み、顧客がデータとモデルの管理を保つ構想です。[8]
  • 富士通との提携拡大(2026年9月10日発表):富士通はAIP・Foundryの新契約を締結し、Global FDE Partnerとして現場導入を担うエンジニアリング体制を強化します。日本を含む顧客への展開を支える動きです。[9]

これらの発表から、筆者はAI Sovereigntyがデータの所在・権限管理に加え、顧客固有のモデルを計算基盤から業務まで一体で運用する方向へ広がっていると見ています。ただし、提携発表だけでは売上への寄与額や計上時期は分かりません。今後の契約、米国外売上、GAAP利益・営業CFで成果を確かめる必要があります。

7. 市場環境と競合

2026年10月8日時点で確認できた製品・提携と年次報告を踏まえ、競争関係を以下のように整理します。同じ企業が協業先にも競合にもなり得るため、単純な二者択一ではありません。

  • クラウド基盤:AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなど。
  • データ基盤:Databricks、Snowflakeなど。
  • BI・分析:Microsoft Power BI、Tableauなど。
  • AIプラットフォーム:C3.aiを含む企業向けAIソフトウェア各社。
  • SI・コンサルティング:Accentureなどの大手サービス企業。独自ソリューションとの競争がある一方、導入支援では協業先にもなります。
  • 顧客の内製:クラウド、オープンソース、生成AIモデルを組み合わせ、顧客自身がシステムを構築する選択肢。

筆者が考えるPalantirの競争力は、一つのデータベースやAIモデルではなく、データ統合、権限管理、Ontology、AI実行、業務フロー、ソフトウェア展開までをまとめて提供する点にあります。[1]

以下は筆者の分析です。導入範囲が広いほど、契約金額、導入期間、顧客組織との調整も大きくなる可能性があります。大手クラウド企業による機能拡充や、顧客の内製化が進めば、価格や導入速度をめぐる競争も強まります。

今後確認したい競争上の論点

  • AIP Bootcampから本契約、契約拡大へ移行する割合。
  • 既存顧客の利用拡大を示すNet Dollar Retentionの持続性。
  • 米国以外の地域での商業売上の伸び。
  • 特定のAIモデルやクラウドに依存しない相互運用性。
  • 政府契約の更新、予算、調達時期による売上変動。

8. FY2026の見通しと注目ポイント

2026年10月8日に確認できた最新の会社予想は、2026年8月3日のQ2決算発表時点のものです。このときPalantirはFY2026売上高ガイダンスを81.50億~81.58億ドルへ引き上げました。ガイダンス中央値を基準にすると、FY2025比で約82%の増収に相当します。[3]

FY2026会社予想(2026年8月3日発表時点)

項目 最新会社予想
FY2026売上高 $8.150B~$8.158B
FY2026売上成長率 約+82%
FY2026米国商業売上 $3.424B超
FY2026米国商業売上成長率 少なくとも+134%
FY2026調整後営業利益 $4.889B~$4.897B
FY2026調整後FCF $4.5B~$4.7B
Q3 2026売上高 $2.160B~$2.164B
Q3 2026調整後営業利益 $1.292B~$1.296B
GAAP利益 2026年の各四半期でGAAP営業利益・純利益を見込む(8月3日公表の会社予想)

注)ガイダンスは2026年8月3日公表のQ2 2026決算リリースおよびBusiness Updateに基づきます。[3]

投資家が注目すべきポイント

  • 米国商業の成長持続:Q2 2026の+149%という成長率を、顧客数、既存顧客拡張、契約金額の増加によってどこまで維持できるか。
  • 政府需要:米国政府売上はQ2 2026に前年同期比+90%となりましたが、政府予算、契約更新、調達時期の影響を受けます。
  • RPO:Q2末のTotal RPOは49.0億ドル。このうち約43%を2026年6月末から12カ月以内に売上計上する見込みです。RPOは未計上の解約不能な契約売上を示し、任意解約可能な部分や、会社が開示対象外としている当初契約期間12カ月以下の契約を含みません。契約残高全体とは一致しません。[2]
  • 大型契約:2026年Q2には100万ドル以上の契約を220件締結しました。そのうち98件が500万ドル以上、73件が1,000万ドル以上です。各区分は重複しており、件数を合算することはできません。[3]
  • 収益性:2026年Q2の調整後営業利益率62%、調整後FCFマージン63%という高水準を維持できるか。
  • SBC・希薄化:SBCの金額が再び増加しているため、売上比率と発行済株式数の両方を確認する必要があります。
  • 地域集中:2026年Q2売上の約81%が米国向けでした。米国の急成長は強みですが、地域集中リスクも高まっています。
  • バリュエーション:非常に高い成長期待が株価へ織り込まれやすく、成長率やガイダンスが市場予想を下回った場合の変動も大きくなり得ます。

9. まとめ:AIPの導入力が売上・利益・CFへ急速に転換

PalantirはFY2025に売上44.75億ドル、前年比+56%を達成し、GAAP純利益16.35億ドル、調整後営業利益22.54億ドル、営業CF21.34億ドルを計上しました。[1]

2026年Q2には売上が前年同期比+93%、米国商業売上が+149%、米国政府売上が+90%となり、成長はさらに加速しています。GAAP営業利益率は47%、調整後営業利益率は62%まで上昇しました。[2][3]

  • 強み:Gotham、Foundry、Apollo、AIPを統合した運用基盤、政府分野での実績、機密環境への対応、AIPの現場導入力。
  • 財務:2026年Q2末に94億ドル規模の現金・市場性証券を保有し、有利子負債はありません。
  • 成長源:米国商業、米国政府、既存顧客の契約拡大。
  • 注意点:SBCと希薄化、米国への売上集中、政府契約の変動、競合・内製化、高い市場期待。
  • 投資判断の軸:単なる「AI関連銘柄」ではなく、AIPが契約、売上、GAAP利益、営業CFへ継続して変換されるかを確認することが重要です。

本記事は公開情報に基づく筆者分析であり、特定の金融商品の売買を勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

最終更新:2026年10月8日(財務実績:FY2025 Form 10-K/Q2 2026 Form 10-Q・決算資料。会社予想:2026年8月3日公表。事業情報:2026年9月10日までの発表を追加)

【注】(出典リンク)

  1. FY2025年次業績・財務・製品概要 → Palantir FY2025 Form 10-K(確認日:2026-10-08) ↩
  2. Q2 2026 GAAP業績・セグメント・SBC・財務・RPO → Palantir Q2 2026 Form 10-Q(確認日:2026-10-08) ↩
  3. Q2 2026 Non-GAAP指標・NDR・FY2026ガイダンス・直近決算の確認 → Q2 2026 Business Update → Palantir公式IR:決算一覧(確認日:2026-10-08) ↩
  4. FY2021~FY2023過年度GAAP・Non-GAAPデータ → Palantir FY2022 Form 10-K → Palantir FY2023 Form 10-K(確認日:2026-10-08) ↩
  5. 過年度調整後FCF・Non-GAAP調整表・AIP Bootcamp → FY2021 Earnings Release → FY2022 Earnings Release → Q4 2023 Business Update → Q4 2025 Investor Presentation(FY2024比較値を含む)(確認日:2026-10-08) ↩
  6. Sovereignty Bootcampの集客状況(2026年8月19日発表) → Palantir公式IR:2026年8月19日ニュース見出し(確認日:2026-10-08) ↩
  7. Nebiusとの主権AIインフラ提携(2026年9月8日発表) → 共同発表:Nebius Form 6-K Exhibit 99.1(確認日:2026-10-08) ↩
  8. NVIDIAのサプライチェーンへの主権AI導入(2026年9月10日発表) → NVIDIA・Palantir共同発表:NVIDIA公式Newsroom(確認日:2026-10-08) ↩
  9. 富士通との提携拡大(2026年9月10日発表) → Palantir・富士通共同発表:Palantir公式IR(確認日:2026-10-08) ↩

変更した箇所

  • タイトル・更新日・全注の確認日を2026年10月8日に更新。直近の公表決算がQ2 2026であることを明記し、Q3予想を実績と区別しました。
  • 元の9節構成、FY2021~FY2025の5年比較表、Q2 2026実績、2026年8月3日公表ガイダンス、HTML・CSSを維持しました。
  • FY2023の調整後FCFを730.6百万ドルから730.5百万ドルへ修正しました(公式資料:730,524千ドル)。
  • Q2 2026の営業CFを1,216.2百万ドル、調整後FCFを1,220.4百万ドルと明記し、成長率を補足しました。
  • Q2 2026の連結純利益と普通株主帰属純利益を区別し、普通株主帰属純利益1,061.9百万ドルとGAAP希薄化後EPS0.41ドルを追加しました。
  • NDR 157%が前年の顧客群の直近12カ月売上を比較する指標であること、RPOが契約残高全体を意味しないこと、大型契約の金額区分が重複することを明記しました。
  • Q2末の市場性証券を米国債71.95億ドルと上場株式1.84億ドルに分解し、94.09億ドルと会社資料の約92億ドルとの差を具体的に説明しました。
  • 借入金・社債の有利子負債とリース債務を区別し、調整後FCFと単純FCFの定義・金額差を明記しました。
  • Q2純利益には期末保有上場株式の未実現評価益66百万ドルが寄与することを追記し、営業利益・営業CFと分けて評価する説明を補強しました。
  • AI Sovereigntyの節に8月19日のBootcamp発表、9月8日のNebius提携、9月10日のNVIDIA協業・富士通提携拡大を追加しました。提携と売上寄与の区別も明記しました。
  • Non-GAAP粗利率の見出しをSBC除外粗利率に改め、調整後営業利益率との除外項目の違いを明記。FY2021末の現金・市場性証券を公式比較値に基づく丸め値として整理しました。
  • 競争力・差別化に関する評価を筆者分析として明示。協業と競合が同時に成立することを補足しました。
  • 本文出典を出現順の上付き番号に統一。同じ根拠の番号を再利用し、各注に確認日と戻りリンクを付け、全リンクに指定属性を設定しました。
  • 取得できなかった過年度PDFリンクを検証できた公式決算リリース・比較資料へ差し替え、非表示の引用残骸と末尾のMarkdown式URL定義を削除しました。

Posted by 南 一矢