QCOM/AVGOを比較:クアルコムとブロードコムの戦略の違いとは
クアルコム(QUALCOMM Incorporated, NASDAQ: QCOM)とブロードコム(Broadcom Inc., NASDAQ: AVGO)は、AI時代の半導体市場で注目される2つの巨大企業です。本記事では、その違いを両社の株価推移、財務データ、事業構造、配当、そして将来性から、客観的なデータに基づいて比較・分析します。
※本記事は2026年5月6日時点の公開情報に基づき作成しており、投資助言を目的としたものではありません。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。
株価・主要指標サマリー
※以下の表やチャートは準リアルタイムで更新される指標です。本文中の詳細分析は2025年6月8日時点のデータに基づいているため、数値に多少の差異が生じる場合があります。
※チャート左目盛り:株価推移(SOXX:iShares Semiconductor ETFを含めて比較)
※チャート右目盛り:10年国債利回り
決算サマリー(予想:結果)
業績と財務指標の詳細分析
5年間の業績推移
過去5年間の売上高推移を見ると、両社とも成長していますが、伸び方は異なります。クアルコムはスマートフォン向け半導体を中核に、自動車・IoT・データセンター向けへ多角化を進めています。一方、ブロードコムはVMware買収効果とAI半導体需要の拡大により、2024年以降の売上規模が大きく切り上がりました。[1][2]
| 年度 | クアルコム (QCOM) | 前年比 | ブロードコム (AVGO) | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年度 | $44.3B | +14% | $63.887B | +23.9% |
| 2024年度 | $39.0B | +8.8% | $51.574B | +44.0% |
| 2023年度 | $35.8B | -19.0% | $35.819B | +7.9% |
| 2022年度 | $44.2B | +31.7% | $33.203B | +21.0% |
| 2021年度 | $33.6B | +42.7% | $27.450B | +14.9% |
| 年平均成長率 (CAGR, 2021→2025) |
クアルコム:約7.2% / ブロードコム:約23.5% | |||
※B=10億ドル。売上は米ドル、各社公表の会計年度。QCOMは9月期、AVGOは概ね10月期です。端数は丸め。
主要財務指標の比較(2026年5月時点)
時価総額では、ブロードコムが大きく先行しています。クアルコムは相対的に低いPERと高めの配当利回りが特徴で、ブロードコムはAI半導体とインフラソフトウェアの成長期待を反映して高い評価を受けています。[3]
| 指標 | クアルコム | ブロードコム |
|---|---|---|
| 売上高(直近四半期) | $10.6B(FY2026 Q2)[4] | $19.311B(FY2026 Q1)[5] |
| EPS(直近四半期) | GAAP EPS $6.88 Non-GAAP EPS $2.65(FY2026 Q2)[4] |
GAAP EPS $1.50 Non-GAAP EPS $2.05(FY2026 Q1)[5] |
| 時価総額 | 約$200.0B(2026年5月6日12:58 UTC時点)[3] | 約$2.08T(2026年5月6日12:58 UTC時点)[3] |
| PER(参考値) | 約20.0倍(2026年5月6日12:58 UTC時点)[3] | 約106.3倍(2026年5月6日12:58 UTC時点)[3] |
| 株価 | $186.55(2026年5月6日12:58 UTC時点)[3] | $427.36(2026年5月6日12:58 UTC時点)[3] |
| 直近見通し | FY2026 Q3売上見通し:$9.2B〜$10.0B、Non-GAAP EPS:$2.10〜$2.30。[4] | FY2026 Q2売上見通し:約$22.0B、調整後EBITDAは売上比約68%。[5] |
配当と株主還元
両社とも配当を継続していますが、投資家が見るべきポイントは少し違います。クアルコムは配当利回りが相対的に高めで、2026年4月に四半期配当を$0.92と発表しました。ブロードコムは2026年度の四半期配当を$0.65へ引き上げ、同時にFY2026 Q1で新たな$10Bの自社株買いプログラムも発表しました。[6][7]
| 項目 | クアルコム | ブロードコム |
|---|---|---|
| 四半期配当 | $0.92(2026年6月25日支払予定)[6] | $0.65(2026年3月31日支払)[7] |
| 年間配当(年率) | $3.68 | $2.60 |
| 配当利回り(概算) | 約2.0% $3.68 ÷ 株価$186.55 |
約0.6% $2.60 ÷ 株価$427.36 |
| 自社株買い | FY2026上半期に$5.4Bの自社株買いを実施。さらに新たに$20Bの承認を発表。[4] | FY2026 Q1に新たな$10Bの自社株買いプログラムを発表。[5] |
- クアルコム:配当利回りはブロードコムより高めで、スマホ依存を下げるための多角化と株主還元を同時に進めています。
- ブロードコム:配当利回りは低めですが、AI半導体とVMwareを含むインフラソフトウェア事業のキャッシュ創出力が大きく、自社株買いも含めた総還元で見る銘柄です。
事業構造と強み・弱み
クアルコム:技術ライセンス+多角化
クアルコムは、スマートフォン向け半導体に加え、高収益な特許ライセンス(QTL)を持つ点が大きな特徴です。FY2026 Q2は売上$10.6B、Non-GAAP EPS$2.65で、QCT Automotiveは四半期として過去最高の売上を記録しました。また、AutomotiveとIoTの合算売上は前年比+20%でした。[4]
- 強み:高収益なライセンスモデル、オートモーティブ/IoTの成長、ファブレスによる資本効率、スマホ以外への多角化。
- 弱み:スマホ市況の影響、Apple・Samsung・Xiaomiなど特定顧客依存、地政学リスク、メモリ不足や部材価格上昇による端末需要への影響。
ブロードコム:インフラ半導体+ソフト+AI
ブロードコムは、データセンター向け半導体とインフラソフトウェアの二本柱です。FY2026 Q1は総売上$19.311B(前年比+29%)、AI半導体売上は$8.4B(前年比+106%)でした。半導体ソリューション売上は$12.515B、インフラソフトウェア売上は$6.796Bで、VMware統合後のソフトウェア収益も大きな柱になっています。[5]
- 強み:AIデータセンター関連の強い需要、カスタムAIアクセラレータとAIネットワーキング、VMwareを含むインフラソフトウェア、M&A統合の実績。
- 弱み:高バリュエーション、AI設備投資サイクルへの感応度、VMware統合・価格改定に伴う顧客反応のリスク、特定大型顧客への依存。
まとめ:投資判断のポイント
データに基づく両社の特徴は以下の通りです。
- 成長性(売上・AI露出):直近5年と現在のAI追い風ではブロードコム優位。FY2026 Q1のAI半導体売上は前年比+106%でした。[5]
- 収益の安定性:クアルコムはスマホ依存が残る一方、QTLのライセンス収益が下支え。ブロードコムは半導体に加えてVMwareを含むソフトウェア収益が積み上がっています。
- 株価の割安性:PER参考値ではクアルコムが相対的に低い水準です。ブロードコムはAI成長期待が強く、株価評価も高くなっています。[3]
- 配当投資の魅力:利回りではクアルコムに分があります。ただし、ブロードコムは配当よりもAI成長と自社株買いを含めた総還元で見るべき銘柄です。
クアルコムは、多角化で安定成長と株主還元を両立したいバリュー/配当志向に合いやすい銘柄です。ブロードコムは、AIインフラという巨大テーマの中核で高成長を狙うグロース志向に魅力的な選択肢です。ただし、ブロードコムは高バリュエーションを正当化する成長継続が必要であり、クアルコムはスマホ依存からの脱却がどこまで進むかが焦点になります。
データ更新日:2026年5月6日(日本時間)
QCOMとAVGOは同じ半導体銘柄でも、利益の出方が違います。QCOMはスマホ・自動車・IoT・ライセンスの組み合わせ、AVGOはAI半導体・ネットワーク・VMwareを含むインフラソフトの組み合わせです。配当利回りだけでなく、AI関連売上、ソフトウェア比率、自社株買い、顧客集中リスクを合わせて見ると比較しやすくなります。
【注】(出典リンク)
- QCOM FY2025通期売上・事業概況(売上$44.3B、Non-GAAP EPS $12.03、QCT Non-Apple売上+18%、Automotive+IoT +27%等) → Qualcomm FY2025通期決算リリース(一次情報) / Qualcomm Form 10-K FY2025(一次情報) / 確認日:2026-05-06 ↩
- AVGO FY2025通期売上・事業概況(売上$63.887B、Adjusted EBITDA $43.0B、FCF $26.9B、四半期配当10%増額等) → Broadcom FY2025通期決算リリース(一次情報) / Broadcom Annual Reports(一次情報) / 確認日:2026-05-06 ↩
- 株価・時価総額・PER試算の前提(QCOM $186.55、AVGO $427.36、2026年5月6日12:58 UTC時点) → Yahoo Finance:QCOM(二次情報) / Yahoo Finance:AVGO(二次情報) / 確認日:2026-05-06 ↩
- QCOM FY2026 Q2決算・FY2026 Q3見通し(売上$10.6B、GAAP EPS $6.88、Non-GAAP EPS $2.65、Q3売上見通し$9.2B〜$10.0B、$20B自社株買い承認等) → Qualcomm FY2026 Q2決算リリース(一次情報) / Qualcomm Earnings PDF(一次情報) / 確認日:2026-05-06 ↩
- AVGO FY2026 Q1決算・FY2026 Q2見通し(売上$19.311B、AI売上$8.4B、Non-GAAP EPS $2.05、Q2売上見通し約$22.0B、新$10B買戻し等) → Broadcom FY2026 Q1決算リリース(一次情報) / PR Newswire(一次情報配信) / 確認日:2026-05-06 ↩
- QCOM配当(四半期$0.92、2026年6月25日支払予定) → Qualcomm 配当リリース(一次情報) / Qualcomm Dividend History(一次情報) / 確認日:2026-05-06 ↩
- AVGO配当(四半期$0.65、2026年3月31日支払) → Broadcom FY2026 Q1決算リリース(一次情報) / Broadcom Dividends(一次情報) / 確認日:2026-05-06 ↩

