SBUX:スターバックスの配当推移

消費財,配当






スターバックス配当利回りと株価分析 2025年最新版


スターバックス(Starbucks Corporation)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。

⚠️ 注意:配当性向の急激な悪化
2025年の配当性向は103%超に上昇し、利益を上回る配当支払いとなっています。これは一時的な業績低迷によるものですが、配当持続性について慎重な監視が必要です。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等

年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。

(*年次決算が9月なので平均株価は10月1日~9月30日の期間で計算しています)

配当 平均株価 年EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計
2025 2.80% 5% 103%* 2.44 87.2 2.36
2024 2.41% 7% 70% 2.32 96.2 3.31
2023 2.42% 8% 60% 2.16 89.4 3.58
2022 2.00% 9% 71% 2 100.1 2.83
2021 1.99% 10% 52% 1.84 92.3 3.54
2020 1.56% 17% 213% 1.68 107.7 0.79
2019 1.79% 14% 49% 1.44 80.3 2.92
2018 1.66% 26% 39% 1.26 75.7 3.24
2017 1.79% 25% 51% 1 56 1.97
2016 1.40% 25% 42% 0.8 57 1.9
2015 1.10% 23% 35% 0.64 58 1.82
2014 1.09% 24% 39% 0.52 47.7 1.35
2013 1.11% 24% 4200% 0.42 37.9 0.01
2012 1.13% 31% 38% 0.34 30.1 0.9
2011 1.05% 117% 32% 0.26 24.7 0.81
2010 0.69% 19% 0.12 17.3 0.62

*2025年は年度途中のため見込み値。配当性向103%は直近4四半期ベース。

【出典】

着実に成長する配当の実績

スターバックスの配当実績は、同社の成長戦略と株主還元へのコミットメントを反映し、一貫して増加の軌跡を描いています。2010年に四半期配当を開始して以来、一度も減配することなく着実な成長を続け、2010年の0.12ドルから2025年には2.44ドルへと約20倍に増加しました。2025年も5.2%の増配を実施し、**14年連続増配記録**を維持しています。

特に2011年から2019年までの期間は二桁成長を維持し、株主還元の充実を図ってきました。COVID-19パンデミックという未曽有の危機に直面した2020年においても、多くの企業が配当を削減・停止する中、スターバックスは17%の大幅増配を実施し、株主還元への揺るぎないコミットメントを示しました。

2025年の業績動向と新戦略

2025年のスターバックスは、新CEOのBrian Niccol氏の下で「**Back to Starbucks**」戦略による立て直しを進めています。第3四半期(2025年6月30日終了)の業績は以下の通りです:

  • 売上高:$9.5B(前年同期比4%増)
  • 調整後EPS:$0.50(予想$0.65を大幅に下回る)
  • グローバル同店売上高:-2%(予想-1.3%を下回る)
  • 北米同店売上高:-2%(予想-2.5%より改善)
  • 中国同店売上高:+2%(1年半ぶりのプラス成長)

Niccol CEOは「財務結果はまだ進歩をすべて反映していないが、勢いを得ている兆候は明確だ」と述べており、ターンアラウンドが予定より順調に進んでいるとの見解を示しています。

配当成長率の推移

スターバックスの配当成長率は以下のように段階的な変化を見せています:

  • 2010〜2012年:導入・急成長期(117%、31%の高成長)
  • 2013〜2018年:安定高成長期(23〜26%の一貫した高い成長率)
  • 2019年:成長率調整期(14%へ減速)
  • 2020年:パンデミック下での堅実成長(17%増)
  • 2021〜2025年:成熟期(10%→5%と徐々に減速)

2025年の5%増配は、同社の配当政策が成熟期に入ったことを示しています。この減速は、業績の一時的な低迷と、より持続可能な配当政策への移行を反映しています。

配当性向の持続可能性への懸念

スターバックスの配当性向(配当÷EPS)は、2025年に深刻な水準に達しています:

  • 2010〜2012年:初期段階(19%から38%へ上昇)
  • 2013年:異常値(4200% – 特殊要因によるEPS急減)
  • 2014〜2019年:安定期(35%〜51%の範囲)
  • 2020年:パンデミック影響(213%と一時的に急上昇)
  • 2021〜2024年:上昇期(52%から70%へ上昇)
  • **2025年:危機的水準(103%超)**

2025年の配当性向急上昇の要因

  • 業績低迷:同店売上高の継続的な減少による利益圧迫
  • 競争激化:特に中国市場でのLuckin Coffeeなどとの価格競争
  • 構造改革コスト:「Back to Starbucks」戦略実行に伴う一時的な費用増
  • 配当継続方針:業績低迷にもかかわらず増配を継続

配当持続性への影響:103%という配当性向は、利益を上回る配当支払いを意味し、短期的には持続不可能な水準です。ただし、以下の緩和要因があります:

  • 強力なキャッシュフロー創出能力(年間約60億ドル)
  • 一時的な業績低迷である可能性
  • 新戦略による業績回復期待
  • 必要に応じた自社株買い調整による配当優先政策

財務パフォーマンスと成長見通し

2025年業績と将来展望

期間 売上高($B) 調整後EPS($) 同店売上高成長率 純利益($M)
2025年Q3 9.5 0.50 -2.0% 558
2025年Q2 9.4 0.68 -3.0% 384
2024年通年 36.2 3.31 -1.0% 3,761
2025年見通し 約37.5 約2.40 -2~-3%

2025年上半期の業績は厳しい状況が続いており、特に同店売上高の継続的な減少が課題となっています。しかし、中国市場では1年半ぶりにプラス成長に転じるなど、回復の兆候も見られます。

主要財務指標の推移

以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。

年度 売上高 営業CF 同マージン 純利益
2025(見込み) 37,500 6,200 17 2,800
2024 36,176 6,096 17 3,761
2023 35,976 6,009 17 4,125
2022 32,250 4,397 14 3,282
2021 29,061 5,989 21 4,199
2020 23,518 1,598 7 928
2019 26,509 5,047 19 3,599
2018 24,720 11,938 48 4,518
2017 22,387 4,252 19 2,885
2016 21,316 4,698 22 2,818
2015 19,163 3,749 20 2,757
2014 16,448 608 4 2,068
2013 14,867 2,908 20 8
2012 13,277 1,750 13 1,384
2011 11,700 1,612 14 1,246
2010 10,707 1,705 16 946
2009 9,775 1,389 14 391
2008 10,383 1,259 12 316

収益性と効率性の変動

スターバックスの財務データからは、成長の軌跡と現在の課題が見て取れます:

  • 売上高は2008年の10,383M$から2025年見込みの37,500M$へと約3.6倍に成長
  • 2025年は前年比3.7%増の緩やかな成長にとどまる見込み
  • 営業CFマージンは17%と安定しているものの、純利益は大幅に減少予想
  • 2023年をピークに純利益が減少傾向(4,125M$→3,761M$→2,800M$見込み)

2025年の業績低迷は、主に以下の要因によるものです:

  • 北米市場での消費者支出の鈍化
  • 中国市場での競争激化(価格戦略の影響)
  • 「Back to Starbucks」戦略実行に伴う構造改革コスト
  • 人件費上昇とインフレ圧力

安定したキャッシュフロー基盤

以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはM$(百万ドル)単位、営業CF成長率(表記は「成長率」)は%単位で表示しています。

年度 営業CF 成長率 投資CF 財務CF
2025(見込み) 6,200 2 -2,800 -3,800
2024 6,096 1 -2,699 -3,718
2023 6,009 37 -2,271 -2,991
2022 4,397 -27 -2,146 -5,638
2021 5,989 275 -320 -3,651
2020 1,598 -68 -1,712 1,713
2019 5,047 -58 -1,011 -10,057
2018 11,938 181 -2,362 -3,243
2017 4,252 -9 -850 -3,079
2016 4,698 25 -2,223 -1,873
2015 3,749 517 -1,520 -2,257
2014 608 -79 -818 -623
2013 2,908 66 -1,411 -108
2012 1,750 9 -974 -746
2011 1,612 -5 -1,020 -608
2010 1,705 23 -790 -346
2009 1,389 10 -421 -642
2008 1,259 -5 -1,087 -185

スターバックスの配当を支える重要な基盤は、安定したキャッシュフロー創出能力にあります:

  • 営業CFは2023-2025年にかけて6,000M$超の高水準を維持
  • 年間配当支払額(約2,800M$)を営業CFが十分にカバー
  • 財務CFの継続的なマイナスは配当と自社株買いによる株主還元を反映
  • フリーキャッシュフローは年間3,000-4,000M$の健全な水準を維持

負債水準と資本構成

以下の表では、総資産、総負債、株主資本はM$(百万ドル)単位、自己資本率は%単位で表示しています。

年度 総資産 総負債 株主資本 自己資本率 負債比率
2025(見込み) 32,000 39,500 -7,500 -23 -527
2024 31,339 38,781 -7,442 -24 -521
2023 29,446 37,433 -7,988 -27 -469
2022 27,978 36,677 -8,699 -31 -422
2021 31,393 36,707 -5,315 -17 -691
2020 29,375 37,174 -7,799 -27 -477
2019 19,220 25,451 -6,232 -32 -408
2018 24,156 22,981 1,170 5 1,964
2017 14,366 8,909 5,450 38 163
2016 14,313 8,422 5,884 41 143
2015 12,416 6,597 5,818 47 113
2014 10,753 5,479 5,272 49 104
2013 11,517 7,034 4,480 39 157
2012 8,219 3,105 5,109 62 61
2011 7,360 2,973 4,385 60 68
2010 6,386 2,704 3,675 58 74
2009 5,577 2,520 3,046 55 83
2008 5,673 3,182 2,491 44 128

スターバックスの資本構成は2019年以降、極めて特徴的な状況が続いています:

  • 2008年から2017年までは通常の資本構成(自己資本率38〜62%)
  • 2018年に劇的な変化(自己資本率が38%から5%へ急減)
  • 2019年以降、株主資本がマイナスに転じ、異例の資本構造が継続
  • 2025年も負の株主資本状態が続く見込み

この特殊な資本構造にもかかわらず、強力なキャッシュフロー創出能力と高いブランド価値により、実質的な事業運営に支障は生じていません。

まとめ:長期配当投資家にとってのスターバックスとは?

スターバックスは、グローバルコーヒーチェーンとしての強固なブランド力と安定したキャッシュフロー創出能力を基盤に、14年連続の増配記録を維持しています。しかし、2025年は業績低迷により配当の持続可能性に懸念が生じています。

同社の強みは以下の点にあります:

  • 14年連続増配記録と株主還元への強いコミットメント
  • 強力かつ安定したキャッシュフロー創出能力(年間6,000M$超)
  • グローバルに認知された強力なブランド価値
  • デジタル戦略による顧客エンゲージメントの強化
  • 新CEO Niccol氏の実績ある経営手腕(Chipotle再生)
  • 中国市場での回復兆候(1年半ぶりのプラス成長)
  • 「Back to Starbucks」戦略による立て直し期待

一方で、注意すべき点としては:

  • 配当性向103%超という危機的な水準
  • 継続的な同店売上高減少(2%~3%の減少)
  • 負の株主資本という特殊な財務構造
  • 競争激化(特に中国市場でのLuckin Coffeeなど)
  • 消費者支出の鈍化による業績圧力
  • 構造改革コストによる短期的な利益圧迫
  • 労働組合化の動きによる潜在的コスト増
配当投資家への警告:現在の103%超という配当性向は、短期的には持続不可能な水準です。同社の強力なキャッシュフロー創出能力と14年連続増配の実績は評価できますが、業績回復が遅れる場合、近い将来に配当削減リスクが高まる可能性があります。投資家は新戦略の進捗と業績回復を慎重に監視する必要があります。

投資家へのポイント:スターバックスへの投資は現在、「短期的リスクと長期的回復期待」の特性を持っています。Niccol CEOの下での戦略転換と中国市場での回復兆候は希望的な材料ですが、配当性向の悪化は深刻な懸念材料です。配当投資家は、配当削減リスクを十分に理解した上で、長期的な業績回復への期待に投資するかどうかを慎重に判断する必要があります。

よくある質問

103%の配当性向でも配当は安全ですか?

現在の103%という配当性向は、利益を上回る配当支払いを意味し、短期的には持続不可能な水準です。ただし、スターバックスには以下の緩和要因があります:(1)年間6,000M$超の強力な営業キャッシュフロー(配当支払額2,800M$を十分カバー)、(2)14年連続増配への強いコミットメント、(3)一時的な業績低迷である可能性、(4)新戦略による業績回復期待。それでも、業績回復が遅れた場合、2026年以降に配当削減リスクが高まる可能性があります。キャッシュフローベースでの配当カバレッジは当面維持されると予想されますが、利益ベースでの持続可能性には明確な懸念があり、投資家は慎重な監視が必要です。

Brian Niccol CEOの「Back to Starbucks」戦略は成功しますか?

Niccol CEOは、Chipotleの食品安全スキャンダル後のターンアラウンドを成功させた実績があり、その経験がスターバックスでも活かされると期待されます。「Back to Starbucks」戦略の核心は、(1)顧客体験の向上(待ち時間短縮、店舗運営の改善)、(2)商品とサービスの差別化、(3)デジタル体験の強化、(4)パートナー(従業員)の再エンゲージメント、です。2025年第3四半期に中国で1年半ぶりのプラス成長を記録したことは、戦略の効果を示す初期の兆候と言えます。

しかし、成功には時間がかかると予想されます。Chipotleの回復には約2-3年を要したため、スターバックスでも2026-2027年頃に本格的な業績回復が期待されます。また、中国市場での競争環境は依然として厳しく、北米市場での消費者支出鈍化も課題です。戦略の成功は、同店売上高の回復、利益率の改善、そして配当性向の正常化によって測ることができるでしょう。

中国事業の一部売却検討は配当にどのような影響を与えますか?

スターバックスは中国事業(評価額最大100億ドル)の一部売却を検討しており、20以上の関係者から関心を受けていると発表しています。この売却が実現した場合、配当政策に以下の影響が考えられます:(1)売却収入による財務体質の改善と配当支払能力の強化、(2)中国事業の成長リスクの軽減による安定性向上、(3)売却後の事業に集中することによる効率性改善、(4)一時的な売却益による特別配当の可能性。

ただし、CEOは「中国事業に引き続きコミットしており、意味のあるステークを保持したい」と述べており、完全売却ではなく部分的な戦略的パートナーシップを模索している可能性があります。これにより、中国市場での成長機会を維持しながら、リスクを分散し、財務の安定性を高める効果が期待されます。売却が実現すれば、配当性向の改善と配当の持続可能性向上に寄与する可能性が高いでしょう。

現在の株価水準(約$85-90)は投資タイミングとして適切ですか?

現在の株価水準は、投資タイミングとして「リスクと機会が混在する」状況です。ポジティブな要因として:(1)52週高値$117.46から約25-30%下落した割安水準、(2)配当利回り2.8%は過去5年平均2.12%を上回る魅力的な水準、(3)新戦略による業績回復期待、(4)中国市場での回復兆候、が挙げられます。一方、リスク要因として:(1)103%という危険な配当性向、(2)継続的な同店売上高減少、(3)業績回復の不確実性、(4)配当削減リスクの存在、があります。

配当投資家にとっては、高いリスクを伴う「困難期の優良企業」への投資機会と位置づけられます。強力なブランド力と14年連続増配の実績は魅力的ですが、短期的な配当削減リスクを受け入れられる投資家に限定されるでしょう。投資する場合は、ポートフォリオの一部に限定し、業績回復の進捗を継続的に監視することが重要です。業績回復が確認できるまで様子見を続けるのも合理的な選択と言えます。

※本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。特に現在のスターバックスは配当性向の悪化により配当削減リスクが高まっており、十分な注意が必要です。

【出典】


Posted by 南 一矢