TTD:トレードデスクの業績
【2025年版】The Trade Desk (TTD) 徹底分析:プログラマティック広告のリーダー – FY2019-FY2024財務データと成長戦略
はじめに
The Trade Desk (ザ・トレードデスク) は、広告バイヤー(広告主および広告代理店)がデータドリブンなデジタル広告キャンペーンを多様なチャネル(コネクテッドTV、モバイル、ビデオ、オーディオ、ディスプレイ、ネイティブ広告など)にわたり購入・管理できる、独立系のデマンドサイドプラットフォーム(DSP)です。オープンインターネットの価値最大化を掲げ、透明性と効率性の向上に寄与しています。
本稿はFY2019~FY2024の通期データを中心に、成長ドライバー、収益性、AI/ID戦略、直近見通しを投資家視点で整理します。
【免責事項および出典について】
- 財務数値は主にThe Trade Desk, Inc.の10-K/10-Q、決算リリース、株主向け資料等に基づきます。FY2024通期は2025年2月15日付の通期発表(FY2024)およびForm 10-K(2024年12月期)を反映。FY2025 Q2実績・Q3見通しは2025年8月の決算リリースに基づきます。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
- 一部の指標(CAGR、SPS/CFPS、FCF率など)は公式開示値から筆者算出。
- 投資判断は自己責任でお願いします。最新の公式IRをご確認ください:IRトップ
会計年度について: The Trade Deskの会計年度は毎年12月31日に終了。本記事の「FY2024」は2024年1月1日~12月31日を指します。
- 1. 1. The Trade Deskの長期的な業績:一貫した高成長と収益性
- 2. 2. ビジネスモデル:オープンインターネットを支える独立系DSP
- 3. 3. 財務の健全性:強力なキャッシュ創出力と成長投資への備え
- 4. 4. 資本効率性と収益性:高い利益率を背景とした効率的な資本活用
- 5. 5. AI戦略と技術的優位性:「Koa™」とデータドリブンな意思決定支援
- 6. 6. 市場での強みとライバル:オープンインターネットの旗手としての挑戦
- 7. 7. FY2025年の見通しと今後のポイント:CTVとリテールメディアが牽引
- 8. 8. まとめ:The Trade Deskはオープンインターネットの未来を切り拓けるか?
1. The Trade Deskの長期的な業績:一貫した高成長と収益性
Gross Spend拡大とCTV/新領域の伸長に支えられ、同社は長期で高い成長率を維持しています。
1.1. 売上、調整後EBITDA、利益、キャッシュフローの推移
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会計年度 | 総売上高(百万$) | 売上成長率(YoY) | 調整後EBITDA(百万$) | 調整後EBITDAマージン | 営業CF(百万$) | 純利益 (GAAP)(百万$) |
---|---|---|---|---|---|---|
FY2019 | 661.1 | 38.7% | 205.9 | 31.1% | 160.6 | 108.3 |
FY2020 | 836.0 | 26.5% | 283.6 | 33.9% | 245.4 | 242.0 |
FY2021 | 1,195.6 | 43.0% | 455.7 | 38.1% | 285.0 | 137.7 |
FY2022 | 1,578.1 | 32.0% | 603.9 | 38.3% | 499.4 | 53.4 |
FY2023 | 1,946.1 | 23.4% | 776.8 | 39.9% | 598.3 | 178.7 |
FY2024 | 2,444.8 | 26.0% | 1,011.0 | 41.4% | 739.5 | 393.0 |
CAGR (年平均成長率) FY19-FY24 | ||||||
総売上高 | +29.9% | – | – | – | – | – |
調整後EBITDA | – | – | +37.5% | – | – | – |
出典: FY2024通期リリース/10-K(売上・EBITDA・純利益・営業CF)より作成。FY2024の売上24.45億$、Adj. EBITDA 10.11億$、純利益3.93億$、営業CF7.39億$。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
- 総売上高: FY2019→FY2024で約3.7倍(CAGR約30%)。FY2024は前年比+26%で加速。:contentReference[oaicite:3]{index=3}
- 調整後EBITDA: FY2024は10.11億$(マージン約41%)と過去最高。:contentReference[oaicite:4]{index=4}
- 純利益 (GAAP): FY2024は3.93億$。:contentReference[oaicite:5]{index=5}
- 営業CF: FY2024は7.39億$。:contentReference[oaicite:6]{index=6}
1.2. 収益性:高い利益率とキャッシュ創出力
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会計年度 | GAAP 粗利率 |
GAAP 営業利益率 |
Non-GAAP 営業利益率 |
調整後EBITDAマージン | 営業CF率 | FCF率 |
---|---|---|---|---|---|---|
FY2019 | 77.0% | 12.4% | 26.9% | 31.1% | 24.3% | 20.4% |
FY2020 | 78.5% | 20.6% | 30.0% | 33.9% | 29.4% | 27.0% |
FY2021 | 80.7% | 14.8% | 35.0% | 38.1% | 23.8% | 22.0% |
FY2022 | 80.2% | 8.5% | 35.7% | 38.3% | 31.4% | 29.0% |
FY2023 | 81.2% | 11.6% | 37.3% | 39.9% | 30.7% | 27.9% |
FY2024 | 80.7% | 17.5% | — | 41.4% | 30.2% | 25.9% |
出典: 10-K(売上原価=Platform operations、営業利益)、FY2024通期リリース(Adj. EBITDA)より算出。FY2024の粗利率/営業利益率/営業CF率/FCF率は筆者計算。:contentReference[oaicite:7]{index=7}
1.3. コスト構造:効率的な事業運営
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会計年度 | プラットフォーム 運営費率 |
販売・マーケ費率 | 技術開発費率 | 一般管理費率 |
---|---|---|---|---|
FY2022 | 19.8% | 22.8% | 20.1% | 27.1% |
FY2023 | 18.8% | 21.6% | 20.3% | 22.7% |
FY2024 | 19.3% | 21.9% | 20.1% | 19.9% |
出典: 10-K(GAAPベース費用/売上)。過年度のG&A比率に誤差があったためFY2022〜FY2024を訂正。:contentReference[oaicite:8]{index=8}
1.4. 投資家向け指標:1株あたりの価値と顧客維持率
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会計年度 | SPS ($)1株当たり売上 | CFPS ($)1株当たり営業CF | Non-GAAP EPS ($)希薄化後 | 顧客維持率 |
---|---|---|---|---|
FY2019 | 1.40 | 0.34 | 0.55 | 95%超 |
FY2020 | 1.74 | 0.51 | 0.77 | 95%超 |
FY2021 | 2.46 | 0.59 | 0.92 | 95%超 |
FY2022 | 3.20 | 1.01 | 1.21 | 95%超 |
FY2023 | 3.91 | 1.34 | 1.53 | 95%超 |
FY2024 | 4.88 | 1.48 | 1.66 | 95%超 |
出典: FY2024のNon-GAAP EPS=1.66(会社発表)。同年の希薄化後株式数を逆算しSPS/CFPSを算出。顧客維持率は「95%超」を継続。:contentReference[oaicite:9]{index=9}
2. ビジネスモデル:オープンインターネットを支える独立系DSP
(本文構成は維持。記述は確認・微修正のみ)
- DSP/セルフサーブ: 広告主/代理店が自走可能な高機能プラットフォーム。
- オープンインターネット重視: ウォールドガーデン外の在庫横断で透明性/測定性を提供。
- 収益モデル: プラットフォーム経由の広告支出(Gross Spend)に連動。
- 成長ドライバー: CTV、リテールメディア、国際、UID2、OpenPath、次世代「Kokai」。
3. 財務の健全性:強力なキャッシュ創出力と成長投資への備え
3.1. 資産・負債・資本の推移
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会計年度末 | 総資産(百万$) | 総負債(百万$) | 株主資本(百万$) | 自己資本率 | 現金及び 短期投資(百万$) |
---|---|---|---|---|---|
FY2019 | 1,135 | 585 | 550 | 48.5% | 438 |
FY2020 | 2,587 | 1,520 | 1,067 | 41.2% | 654 |
FY2021 | 3,334 | 1,930 | 1,404 | 42.1% | 920 |
FY2022 | 3,774 | 2,307 | 1,467 | 38.9% | 1,121 |
FY2023 | 4,744 | 2,855 | 1,889 | 39.8% | 1,440 |
FY2024 | 6,112 | 3,163 | 2,949 | 48.3% | 1,380 |
出典: FY2025 Q2決算資料に含まれる期末貸借対照表(2024/12/31列)。現金および短期投資=現金同等物+短期投資。
3.2. キャッシュフロー分析:フリーキャッシュフローの着実な成長
フリーキャッシュフロー (FCF) = 営業CF −(有形固定資産取得+資産化ソフトウェア)
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会計年度 | 営業CF(百万$) | 設備投資(CapEx)(百万$) | FCF(百万$) | FCFマージン |
---|---|---|---|---|
FY2019 | 160.6 | 39.2 | 121.4 | 18.4% |
FY2020 | 245.4 | 20.2 | 225.2 | 26.9% |
FY2021 | 285.0 | 21.6 | 263.4 | 22.0% |
FY2022 | 548.7 | 91.9 | 456.8 | 29.0% |
FY2023 | 598.3 | 55.0 | 543.3 | 27.9% |
FY2024 | 739.5 | 107.1 | 632.4 | 25.9% |
出典: 10-K(営業CF、PP&E取得、資産化ソフト)。FY2024の営業CF7.39億$、CapEx合計10.71億$→FCF6.32億$。:contentReference[oaicite:11]{index=11}
4. 資本効率性と収益性:高い利益率を背景とした効率的な資本活用
(記述は維持、FY2024の改善を強調)
- ROE/ROA(GAAP): 営業利益率の改善と継続的なキャッシュ創出で押し上げ。
- Rule of 40視点: FY2024の売上成長率(+26%)+FCF率(約26%)≒約52%。
5. AI戦略と技術的優位性:「Koa™」とデータドリブンな意思決定支援
- Koa™ AI / Kokai: 入札最適化・ターゲティング・予測を高度化。KokaiでAI推奨やワークフローを強化。
- UID2 / OpenPath: ポストCookie時代のID/サプライ透明化を推進。
- R&D投資: 技術開発費率は売上の約20%前後で安定(FY2024: 約20%)。:contentReference[oaicite:12]{index=12}
6. 市場での強みとライバル:オープンインターネットの旗手としての挑戦
競合・市場環境の定性評価は一般的認識に基づく概説。
- 機会: CTV、リテールメディア、プライバシー規制下のID標準。
- 競合: 大手プラットフォーマー(Google DV360、Amazon DSP)や他DSP、代理店TD、ウォールドガーデン。
- TTDの強み: 独立・中立、高機能プラットフォーム、顧客維持率95%超、CTVリーダーシップ、UID2への貢献。:contentReference[oaicite:13]{index=13}
7. FY2025年の見通しと今後のポイント:CTVとリテールメディアが牽引
FY2025年 Q2実績(2025年8月発表):
- 売上高: $694百万(前年比+約26%)。
- GAAP純利益: 約$101百万。
- Adjusted EBITDA: 約$307百万(マージン約44%)。
- Q3 FY2025ガイダンス: 売上少なくとも$717百万、Adjusted EBITDA少なくとも$282百万。
- 経営トピック: CFO交代を発表(Alex Kayyal氏がCFO、Laura Schenkein氏は退任予定)。
出典: 2025年8月のQ2決算リリース。
その他の最近のトピック:
- S&P 500採用: The Trade Deskは2025年7月18日付でS&P 500に採用(インデックスの定期入替に伴う)。同社の大型化・流動性を反映。:contentReference[oaicite:15]{index=15}
8. まとめ:The Trade Deskはオープンインターネットの未来を切り拓けるか?
独立系DSPのリーダーとして、同社は高い成長と収益性、強固な顧客維持率を両立。CTV/リテールメディア/UID2/Kokaiを柱に、ポストCookieの広告エコシステムで主導的役割を担うポジションにあります。FY2025も成長持続が見込まれる一方、マクロによる広告予算の変動や大手プラットフォーマーとの競争、規制動向には引き続き注意が必要です。
本記事は公開情報に基づく分析であり、投資勧誘ではありません。正確性・完全性は保証されません。必ず最新の公式情報をご確認ください。
最終更新日時: 2025年8月31日