TTD:トレードデスクの業績
【2026年5月版】The Trade Desk (TTD) 徹底分析:独立系DSPのリーダー、Kokai・UID2・CTVで成長を続けられるか
はじめに
The Trade Desk(ザ・トレードデスク)は、広告主および広告代理店が、コネクテッドTV(CTV)、モバイル、ビデオ、オーディオ、ディスプレイ、ネイティブ広告などを横断してデジタル広告を購入・管理できる、独立系のデマンドサイドプラットフォーム(DSP)です。自社で広告在庫を販売する巨大プラットフォームとは異なり、オープンインターネット上の広告在庫を中立的に評価し、データドリブンな広告配信を支援する点が特徴です。
本記事では、The Trade DeskのFY2019からFY2025までの通期データを中心に、成長ドライバー、収益性、フリーキャッシュフロー、自社株買い、Kokai・Koa AI・UID2・OpenPathなどの技術戦略を投資家目線で整理します。年次データはFY2025(2025年12月31日終了年度)まで反映しています。FY2026 Q1決算は2026年5月7日に発表予定であり、2026年5月6日時点では未発表です。[1][2]
最重要ポイント:高成長・高利益率は維持。ただし、2026年Q1見通しは明確に減速
The Trade DeskはFY2025に売上高28.96億ドル、Gross Spend 133.95億ドル、調整後EBITDA11.96億ドル、営業CF9.93億ドルを記録しました。顧客維持率は12年連続で95%超を維持し、独立系DSPとしての強さは続いています。[1]
一方で、2026年Q1見通しは売上高6.78億ドル以上、調整後EBITDA約1.95億ドルにとどまり、前年同期比では成長率が鈍化する内容でした。Kokai移行、営業体制の再編、消費財・自動車広告主の弱さ、AmazonやGoogleなどとの競争が、投資家の重要な確認ポイントになっています。[1]
- CTV:リニアTVから広告付きストリーミングへの移行が長期成長テーマです。
- Kokai:AI支援、データ活用、ワークフロー改善を含む次世代プラットフォームです。
- UID2:サードパーティCookie後のIDソリューションとして、オープンインターネット側の標準化を目指します。
- OpenPath・PubDesk:サプライチェーンの透明性と効率化を進める取り組みです。
- 自社株買い:FY2025には約13.8億ドルの自社株買いを実施し、追加承認により将来買い戻し枠は5億ドルとなりました。[1]
【免責事項および出典について】
- 本記事の財務データは、主にThe Trade Desk, Inc.のForm 10-K、決算発表、公式IR資料、SEC提出資料に基づいて作成しています。[2]
- The Trade Deskの会計年度は毎年12月31日に終了します。本文中の「FY2025」は2025年1月1日から2025年12月31日までを指します。
- 記事内のCAGR、利益率、自己資本比率、ROA、ROE、FCF、SPS、CFPSなどは、公式数値をもとに筆者が算出した概算を含みます。
- Adjusted EBITDA、Non-GAAP net income、Non-GAAP EPS、Free Cash FlowなどはNon-GAAP指標です。GAAP指標と併せて確認する必要があります。
- The Trade Deskは配当を支払っていません。株主還元は主に自社株買いで行われています。
- 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
【2026年5月更新】
FY2025 Form 10-KとFY2025通期決算を反映しました。FY2025通期は、売上高28.96億ドル(前年比+18%)、Gross Spend 133.95億ドル(+11%)、GAAP純利益4.43億ドル、GAAP希薄化後EPS0.90ドル、調整後EBITDA11.96億ドル、Non-GAAP EPS1.77ドル、営業CF9.93億ドルでした。FY2026 Q1見通しは、売上高6.78億ドル以上、調整後EBITDA約1.95億ドルです。なお、FY2026 Q1決算発表予定日は2026年5月7日です。[1][2][3]
1. The Trade Deskの長期的な業績:一貫した高成長と高収益性
The Trade Deskは、広告主・代理店向けの独立系DSPとして、長期的に高い成長率を維持してきました。FY2025は、マクロ不確実性や一部大口広告主の弱さがありながらも、売上高は前年比+18%となり、調整後EBITDAマージンは41%を維持しました。
1.1. 売上、調整後EBITDA、利益、キャッシュフローの推移
| 会計年度 | Gross Spend 百万$ |
売上高 百万$ |
売上 成長率 |
調整後 EBITDA 百万$ |
調整後 EBITDA マージン |
営業CF 百万$ |
純利益 GAAP・百万$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| FY2019 | 3,100 | 661 | +38.7% | 206 | 31.1% | 161 | 108 |
| FY2020 | 4,200 | 836 | +26.5% | 284 | 33.9% | 245 | 242 |
| FY2021 | 6,200 | 1,196 | +43.0% | 456 | 38.1% | 285 | 138 |
| FY2022 | 7,800 | 1,578 | +32.0% | 604 | 38.3% | 499 | 53 |
| FY2023 | 9,600 | 1,946 | +23.4% | 777 | 39.9% | 598 | 179 |
| FY2024 | 12,041 | 2,445 | +25.6% | 1,011 | 41.4% | 739 | 393 |
| FY2025 | 13,395 | 2,896 | +18.5% | 1,196 | 41.3% | 993 | 443 |
| CAGR(年平均成長率) | |||||||
| FY2019→FY2025 | 約27.6% | 約28.0% | — | 約34.0% | — | 約35.5% | 約26.5% |
| FY2020→FY2025 | 約26.1% | 約28.2% | — | 約33.4% | — | 約32.3% | 約12.9% |
注)Gross Spendは会社が管理指標として用いる広告支出総額。FY2019〜FY2022のGross Spendは過年度資料の概数を含みます。CAGRは筆者算出。[1][2][4]
- 売上高:FY2025の売上高は28.96億ドル、前年比+18%でした。FY2024の+26%からは減速しましたが、デジタル広告市場全体に比べればなお高成長です。[1]
- Gross Spend:FY2025のGross Spendは133.95億ドル、前年比+11%でした。広告主の実際のプラットフォーム利用規模を見るうえで重要です。[2]
- 調整後EBITDA:FY2025の調整後EBITDAは11.96億ドルで、マージンは約41%でした。高成長と高利益率の両立が続いています。
- 営業CF:FY2025の営業CFは9.93億ドルで、前年比+34%でした。売上成長だけでなく、キャッシュ創出力も改善しています。[2]
1.2. 収益性:高い利益率とキャッシュ創出力
| 会計年度 | GAAP 粗利率 |
GAAP 営業利益率 |
調整後 EBITDA マージン |
営業CF率 | FCF率 |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2020 | 78.5% | 20.6% | 33.9% | 29.4% | 26.9% |
| FY2021 | 80.7% | 14.8% | 38.1% | 23.8% | 22.0% |
| FY2022 | 80.2% | 8.5% | 38.3% | 31.6% | 29.0% |
| FY2023 | 81.2% | 10.3% | 39.9% | 30.7% | 27.9% |
| FY2024 | 80.7% | 17.5% | 41.4% | 30.2% | 25.9% |
| FY2025 | 78.6% | 20.3% | 41.3% | 34.3% | 27.0% |
注)粗利率は売上高からPlatform operations費用を差し引いて筆者算出。FCFは営業CF−有形固定資産取得−資産化ソフトウェアで計算。[2]
- GAAP営業利益率は20%台へ:FY2025のGAAP営業利益率は約20.3%で、FY2024の17.5%から改善しました。
- 調整後EBITDAマージン:FY2025も約41%を維持しました。売上成長率が鈍化しても、収益性は高水準です。
- FCF率:FY2025のFCF率は約27.0%でした。営業CFは大きく増えましたが、有形固定資産取得と資産化ソフトウェアも増えています。
1.3. コスト構造:技術投資とG&A効率化
| 会計年度 | プラットフォーム 運営費率 |
販売・ マーケ費率 |
技術開発 費率 |
一般管理 費率 |
株式報酬 百万$ |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2022 | 19.8% | 22.8% | 20.1% | 27.1% | 497 |
| FY2023 | 18.8% | 23.0% | 21.2% | 26.7% | 492 |
| FY2024 | 19.3% | 22.4% | 19.0% | 21.9% | 495 |
| FY2025 | 21.4% | 22.2% | 18.1% | 17.9% | 491 |
注)各費用率はGAAP費用÷売上高で筆者算出。株式報酬はキャッシュフロー計算書上のStock-based compensation expense。[2]
- G&A費率が改善:FY2025の一般管理費率は17.9%で、FY2023の26.7%から大きく低下しました。
- 技術開発投資は継続:FY2025の技術開発費率は18.1%でした。Kokai、Koa AI、UID2、OpenPathなど、プラットフォームの競争力を維持するための投資は続いています。
- 株式報酬は大きい:FY2025の株式報酬は4.91億ドルでした。Non-GAAP利益を見る際には、株式報酬と自社株買いによる希薄化管理をセットで確認する必要があります。
1.4. 投資家向け指標:1株当たり価値と顧客維持率
| 会計年度 | SPS 1株当たり売上$ |
CFPS 1株当たり営業CF$ |
GAAP EPS 希薄化後$ |
Non-GAAP EPS 希薄化後$ |
顧客維持率 |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2021 | 2.46 | 0.59 | 0.28 | 0.92 | 95%超 |
| FY2022 | 3.20 | 1.01 | 0.11 | 1.21 | 95%超 |
| FY2023 | 3.89 | 1.20 | 0.36 | 1.53 | 95%超 |
| FY2024 | 4.87 | 1.47 | 0.78 | 1.66 | 95%超 |
| FY2025 | 5.87 | 2.01 | 0.90 | 1.77 | 95%超 |
注)SPSとCFPSは希薄化後加重平均株式数で筆者算出。顧客維持率は会社が公表する「over 95%」表記。[1][2]
2. ビジネスモデル:オープンインターネットを支える独立系DSP
The Trade Deskは、広告主・代理店がオープンインターネット上の広告在庫を横断的に買い付け、データを活用して広告効果を高めるためのセルフサービス型プラットフォームを提供しています。収益は主に、顧客が同社プラットフォーム上で支出する広告費に対するプラットフォーム手数料と、データ・付加価値サービスから生まれます。[2]
- DSP・セルフサービス:広告主や代理店が、複数チャネルを横断して広告キャンペーンを設計、入札、最適化できます。
- オープンインターネット重視:Google、Amazon、Metaのようなウォールドガーデン外の広告在庫に、中立的・透明なアクセスを提供します。
- 収益モデル:広告主のGross Spendに連動するため、広告市場全体の成長と同社の利用シェア拡大が売上成長の源泉です。
- CTV:広告付きストリーミングの拡大により、テレビ広告費のデジタル化を取り込む余地があります。
- リテールメディア:小売・EC・決済データなどを活用し、広告効果の測定とターゲティングを改善します。
- UID2・OpenPath:ポストCookie時代のIDとサプライ透明化を支える重要な取り組みです。
3. 財務の健全性:強力なキャッシュ創出力と自社株買い
The Trade Deskは、2025年12月31日時点で現金・現金同等物6.58億ドル、短期投資6.45億ドル、合計13.03億ドルを保有していました。短期的な資金繰りは強く、同時に自社株買いを拡大しています。[2]
3.1. 資産・負債・資本の推移
| 会計年度末 | 総資産 百万$ |
総負債 百万$ |
株主資本 百万$ |
自己資本比率 | 現金・短期投資 百万$ |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2021 | 3,334 | 1,930 | 1,404 | 42.1% | 920 |
| FY2022 | 3,774 | 2,307 | 1,467 | 38.9% | 1,121 |
| FY2023 | 4,328 | 2,164 | 2,164 | 50.0% | 1,440 |
| FY2024 | 6,112 | 3,163 | 2,949 | 48.3% | 1,921 |
| FY2025 | 6,153 | 3,669 | 2,484 | 40.4% | 1,303 |
注)自己資本比率は株主資本÷総資産で筆者算出。現金・短期投資は現金・現金同等物と短期投資の合計。[2][4]
- 自己資本比率は低下:FY2025末の自己資本比率は約40.4%でした。これは主に大規模な自社株買いにより、利益剰余金が減少したためです。
- 現金・短期投資:FY2025末の現金・短期投資は13.03億ドルで、FY2024末の19.21億ドルから減少しました。FY2025に約13.8億ドルの自社株買いを実施したことが主因です。
- 信用枠:FY2025末時点で、同社は修正後クレジットファシリティに基づく4.45億ドルの利用可能枠を持っていました。[2]
3.2. キャッシュフロー分析:FCFは高水準だが、CapExも増加
フリーキャッシュフロー(FCF)= 営業CF − 有形固定資産取得 − 資産化ソフトウェア
| 会計年度 | 営業CF 百万$ |
CapEx等 百万$ |
FCF 百万$ |
FCF マージン |
自社株買い 百万$ |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2021 | 285 | 22 | 263 | 22.0% | — |
| FY2022 | 499 | 42 | 458 | 29.0% | — |
| FY2023 | 598 | 55 | 543 | 27.9% | 647 |
| FY2024 | 739 | 107 | 632 | 25.9% | 235 |
| FY2025 | 993 | 210 | 783 | 27.0% | 1,380 |
注)CapEx等は有形固定資産取得と資産化ソフトウェアの合計。自社株買いはキャッシュフロー計算書上のRepurchases of Class A common stock。[2]
- FCFは7.83億ドル:FY2025のFCFは概算7.83億ドルで、FY2024の6.32億ドルから増加しました。
- CapEx等が増加:FY2025の有形固定資産取得と資産化ソフトウェアの合計は約2.10億ドルでした。プラットフォーム、データ、インフラへの投資が増えています。
- 自社株買いが大きい:FY2025の自社株買いは13.80億ドルで、FCFを上回りました。FY2025末時点で約1.50億ドルの枠が残り、さらに3.50億ドルの追加承認により、将来買い戻し枠は合計5億ドルとなりました。[1]
4. 資本効率性と収益性:高利益率だが株式報酬と買い戻しに注意
The Trade Deskは高い営業利益率とFCFマージンを持ちます。一方で、株式報酬も大きく、FY2025にはFCFを上回る自社株買いを行ったため、利益、株式数、現金残高、株主資本の関係を合わせて見る必要があります。
| 会計年度 | GAAP営業利益 百万$ |
GAAP営業利益率 | GAAP純利益 百万$ |
ROA 期末総資産 |
ROE 期末株主資本 |
Rule of 40 売上成長+FCF率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| FY2021 | 177 | 14.8% | 138 | 4.1% | 9.8% | 65% |
| FY2022 | 134 | 8.5% | 53 | 1.4% | 3.6% | 61% |
| FY2023 | 200 | 10.3% | 179 | 4.1% | 8.3% | 51% |
| FY2024 | 427 | 17.5% | 393 | 6.4% | 13.3% | 52% |
| FY2025 | 589 | 20.3% | 443 | 7.2% | 17.8% | 45% |
注)ROA、ROE、Rule of 40は筆者算出。Rule of 40は売上成長率とFCFマージンの合計。[2]
- Rule of 40は高水準:FY2025は売上成長率18.5%+FCF率27.0%で約45%でした。FY2024の約52%からは低下しましたが、依然として質の高いSaaS/プラットフォーム企業の目安を上回ります。
- ROEは改善:FY2025のROEは約17.8%でした。自社株買いで株主資本が減ったこともROEを押し上げています。
- 株式報酬と希薄化:FY2025の株式報酬は4.91億ドルで、GAAP純利益4.43億ドルを上回ります。Non-GAAP EPSだけでなく、発行株式数と自社株買いも確認する必要があります。
5. AI戦略と技術的優位性:Koa AI、Kokai、UID2、OpenPath
The Trade Deskの技術戦略は、広告主がより少ない無駄で、より高い広告効果を得るための意思決定基盤を作ることです。広告在庫、オーディエンスデータ、入札、測定、予算配分、クリエイティブ、サプライチェーンをAIで統合的に最適化する方向へ進んでいます。
- Koa AI:入札、ターゲティング、予測、キャンペーン最適化を支えるAIエンジンです。
- Kokai:AI推奨、ワークフロー改善、より多くのデータシグナル活用を目指す次世代プラットフォームです。
- UID2:サードパーティCookieに代わるIDソリューションとして、ユーザー制御とプライバシーを意識しながら、広告の関連性を維持しようとする取り組みです。[1]
- OpenPath:広告主がパブリッシャー在庫へより直接的・透明にアクセスできるようにするサプライパス最適化の取り組みです。
- PubDesk・Ventura Ecosystem:FY2025には、パブリッシャー向け透明化ダッシュボードPubDeskや、CTV領域に関わるVentura Ecosystemが発表されました。[1]
- リテールデータ:小売・コマースデータを活用し、広告主の成果測定とターゲティング精度を高める領域です。
ミニ解説:The Trade Deskの競争力は「広告在庫を持たない中立性」と「広告在庫を効率よく買う技術力」の組み合わせです。ただし、AmazonやGoogleのような企業は広告在庫、購買データ、クラウド、DSPを一体で持つため、TTDの独立性が強みになる場面と、統合プラットフォームに押される場面の両方があります。
6. 市場での強みとライバル:オープンインターネットの旗手としての挑戦
The Trade Deskは、オープンインターネット広告の代表的な独立系DSPです。CTV、リテールメディア、ポストCookie ID、AIによる最適化という大きな成長テーマを持つ一方、競争環境は厳しくなっています。
The Trade Deskの強み
- 独立性・中立性:自社で広告在庫を販売しないため、広告主側から見て利益相反が少ないという訴求ができます。
- 高い顧客維持率:FY2025も顧客維持率は95%超で、12年連続で95%超を維持しています。[1]
- CTVへの露出:広告付きストリーミング、スポーツ、ライブイベント、プレミアム動画在庫のプログラマティック化は長期成長テーマです。
- UID2とデータ連携:Databricksなどとの連携を含め、データクリーンルームやファーストパーティデータ活用との相性があります。[1]
- 高収益・高FCF:FY2025の調整後EBITDAマージンは41%、FCFマージンは約27%でした。
- S&P 500採用:2025年7月18日からS&P 500構成銘柄となりました。流動性と市場での認知度という面では前向きです。[5]
注意すべきリスク要因
- 成長率鈍化:FY2026 Q1見通しは売上高6.78億ドル以上で、前年同期比では約10%成長にとどまる水準です。高成長期待とのギャップには注意が必要です。
- Amazon・Googleとの競争:Amazon DSP、Google DV360、YouTube、Prime Video、リテールメディアなど、データ・在庫・購買接点を持つ大手との競争が強まっています。
- Kokai移行リスク:次世代プラットフォームへの移行は長期的には重要ですが、短期的には営業・顧客利用・教育面で摩擦が出る可能性があります。
- マクロ広告予算:広告費は景気、金利、消費、企業業績に左右されます。特に消費財や自動車など大口カテゴリーの弱さは業績に影響します。
- プライバシー規制:Cookie規制、ID規制、各国のプライバシー法制は、ターゲティングと測定に影響します。
- 株式報酬と自社株買い:株式報酬が大きいため、自社株買いが株主価値を高めるものなのか、希薄化相殺にとどまるのかを確認する必要があります。
7. FY2026 Q1見通しと今後のポイント
FY2026 Q1ガイダンス(2026年2月25日発表時点)
- 売上高:6.78億ドル以上。
- 調整後EBITDA:約1.95億ドル。
- 決算発表予定:FY2026 Q1決算は2026年5月7日に発表予定。
FY2026 Q1ガイダンスは、FY2025通期の成長率と比べて明確な減速を示しています。投資家にとっては、単にQ1の数字だけでなく、Kokai移行の進捗、消費財・自動車広告主の回復、CTVとリテールメディアの成長、Amazon・Googleとの競争、営業体制再編の効果を確認する局面です。[1][3]
投資家が注目すべきポイント
- 売上成長の再加速:FY2026 Q1の低い見通しから、Q2以降に成長率を戻せるか。
- Gross Spend:広告主の実支出が売上以上に重要です。Gross Spendの伸びが再加速するかを確認する必要があります。
- Kokaiの定着:営業現場と顧客側で、Kokaiの導入が広告成果と利用拡大につながるか。
- CTVとリテールメディア:成長テーマとしての強さが、全社成長率の鈍化を補えるか。
- Adjusted EBITDAマージン:売上成長が鈍化しても、40%前後の高い利益率を維持できるか。
- 自社株買い:FY2025の大規模買い戻し後、現金・投資残高と株式報酬のバランスをどう管理するか。
8. まとめ:The Trade Deskはオープンインターネット広告の主導権を維持できるか
The Trade Deskは、FY2025に売上高28.96億ドル、Gross Spend 133.95億ドル、調整後EBITDA11.96億ドル、営業CF9.93億ドルを記録し、高収益な独立系DSPとしての地位を維持しました。顧客維持率95%超、CTV、UID2、Kokai、OpenPathといった成長テーマも健在です。[1][2]
投資家目線では、The Trade Deskは「独立系DSP」「高い顧客維持率」「CTV・リテールメディアへの露出」「UID2とデータ連携」「高い調整後EBITDAマージン」「強いFCF」が魅力です。
一方で、FY2026 Q1見通しは成長鈍化を示しており、過去のような高成長前提だけで評価するのは危険です。AmazonやGoogleとの競争、Kokai移行、広告主予算、プライバシー規制、株式報酬と自社株買いの関係を慎重に見る必要があります。投資判断では、売上高だけでなく、Gross Spend、顧客維持率、Adjusted EBITDA、FCF、Non-GAAP EPS、株式数、Kokaiの導入進捗をセットで確認することが重要です。
【注】(出典リンク)
- The Trade Desk FY2025通期決算・FY2026 Q1見通し → The Trade Desk FY2025 Results → The Trade Desk Quarterly Results(確認日:2026-05-06) ↩
- The Trade Desk FY2025 Form 10-K → SEC EDGAR The Trade Desk Form 10-K(FY2025) → The Trade Desk IR SEC Filings(確認日:2026-05-06) ↩
- FY2026 Q1決算発表予定 → The Trade Desk Q1 FY2026 Conference Call Notice → The Trade Desk News & Events(確認日:2026-05-06) ↩
- The Trade Desk過年度データ → The Trade Desk Annual Reports → SEC EDGAR The Trade Desk filings(確認日:2026-05-06) ↩
- S&P 500採用 → The Trade Desk「to Join the S&P 500 Index」 → S&P Dow Jones Indices Press Release(確認日:2026-05-06) ↩
本記事は公開情報に基づく筆者分析であり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。正確性・完全性には注意していますが、内容を保証するものではありません。
最終更新日時:2026年5月6日(FY2025 Form 10-K/FY2025通期決算反映)

