WMB:ウィリアムズカンパニーズの配当推移
🔄 2025年9月更新情報
本記事は2025年第2四半期決算結果および最新の配当情報に基づいて更新されました。主な更新点は記事末尾をご確認ください。
ウィリアムズカンパニーズ(Williams Companies、Inc.)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。
権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。
年 | 配当 | 平均株価 | 年EPS | |||
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年計 | |||
2025* | 3.48% | 5.3% | 96% | 2.00 | 57.5 | 2.08 |
2024 | 4.37% | 0% | 104% | 1.90 | 43.5 | 1.82 |
2023 | 5.51% | 5% | 69% | 1.79 | 32.5 | 2.60 |
2022 | 5.21% | 4% | 102% | 1.70 | 32.6 | 1.67 |
2021 | 6.48% | 2% | 132% | 1.64 | 25.3 | 1.24 |
2020 | 8.12% | 5% | 941% | 1.60 | 19.7 | 0.17 |
2019 | 5.91% | 12% | 217% | 1.52 | 25.7 | 0.70 |
2018 | 4.95% | 13% | -850% | 1.36 | 27.5 | -0.16 |
2017 | 4.05% | -29% | 46% | 1.20 | 29.6 | 2.62 |
2016 | 7.15% | -31% | -295% | 1.68 | 23.5 | -0.57 |
2015 | 5.37% | 25% | -322% | 2.45 | 45.6 | -0.76 |
2014 | 4.00% | 36% | 67% | 1.96 | 49.0 | 2.92 |
2013 | 4.06% | 20% | 232% | 1.44 | 35.5 | 0.62 |
2012 | 3.82% | 54% | 88% | 1.20 | 31.4 | 1.37 |
2011 | 3.28% | 59% | 124% | 0.78 | 23.8 | 0.63 |
2010 | 2.82% | 11% | -26% | 0.49 | 17.4 | -1.86 |
2009 | 3.33% | 2% | 90% | 0.44 | 13.2 | 0.49 |
2008 | 1.79% | 10% | 18% | 0.43 | 24.0 | 2.40 |
*2025年は9月時点での年換算予想値
【出典】
長期的な配当成長の軌跡と安定性の向上
Williams Companies(WMB)の配当実績は、エネルギーインフラストラクチャー企業として、市場環境の変化に対応しながらも長期的な成長を維持する努力を示しています。2008年から2015年にかけて、同社は毎年増配を続け、0.43ドルから2.45ドルへと約5.7倍に配当を拡大させました。しかし、2016年には天然ガス価格の大幅な下落、過剰な負債、そして企業買収計画(Energy Transfer Equity)の失敗といった**複合的な財務圧力**により、31%の減配を余儀なくされました。その後、再び安定的な配当成長軌道に戻り、2018年以降は毎年増配を継続しています。
特に注目すべきは、2024年から2025年にかけての配当政策です。2025年には配当を5.3%増加させ、年間2.00ドル(四半期0.50ドル)となりました。これは同社が1974年から継続している四半期配当の安定した成長を示しており、現在9年連続の増配を記録しています。
配当成長率の推移
WMBの配当成長率は、事業環境と財務戦略の変化を反映して、大きく4つの期間に分けられます:
- 2008〜2015年:拡大期(年平均27%の高成長)、特に2011年と2012年は大幅増配(それぞれ59%、54%)
- 2016〜2017年:リストラクチャリング期(-31%、-29%の減配)、財務健全化のための戦略的判断
- 2018〜2020年:回復期(13%、12%、5%と徐々に減速)、より持続可能な配当政策へのシフト
- 2021〜2025年:安定成長期(2%、4%、5%、0%、5.3%)、強固なキャッシュフロー基盤を背景とした着実な増配
この最新の期間では、特に2024年の0%成長(1.90ドル維持)から2025年の5.3%成長への転換が注目されます。これは、2025年第2四半期に記録した18億ドルのAdjusted EBITDAの8%成長に支えられた、業績回復の具現化と言えるでしょう。
配当利回りの正常化
WMBの配当利回りは、近年の株価上昇により健全な水準に正常化しています。2020年の異常に高い8.12%から、現在の約3.48%へと低下していますが、これは主に以下の要因によるものです:
- 株価の着実な回復:2020年の約20ドルから2025年の57-58ドル台への上昇
- 業績改善による投資家信頼度の向上
- 中流エネルギーセクター全体の再評価
- 天然ガス需要増加(特にLNG輸出、発電用途)への期待
現在の3.48%の利回りは、エネルギーインフラセクターとしては適正な水準であり、安定性と成長性のバランスが取れた魅力的な投資機会を提供しています。
配当性向の健全化
2025年の配当性向は約96%と、過去の極端な変動(2020年の941%や負の値)から大幅に改善し、健全なレベルに正常化しています。これは、WMBの営業キャッシュフロー基盤の安定化と、会計上の一時的要因による純利益変動からの脱却を示しています。
中流エネルギー企業として、WMBの配当持続可能性を評価する際には、純利益よりも営業キャッシュフローやAdjusted EBITDAが重要な指標となります。2025年上半期のAdjusted EBITDA年率77.5億ドル(ガイダンス中央値)は、年間約20億ドルの配当支払いを十分にカバーできる水準です。
財務パフォーマンスと成長見通し
以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。
主要財務指標の推移
年度 | 売上高 | 営業CF | 同マージン | 純利益 |
---|---|---|---|---|
2025* | 11,230 | 6,200 | 55.2% | 2,520 |
2024 | 10,753 | 4,974 | 46.2% | 2,222 |
2023 | 9,951 | 5,938 | 59.7% | 3,179 |
2022 | 11,352 | 4,889 | 43.1% | 2,049 |
2021 | 10,775 | 3,945 | 36.6% | 1,517 |
2020 | 7,719 | 3,496 | 45.3% | 211 |
2019 | 8,201 | 3,693 | 45.0% | 850 |
2018 | 8,686 | 3,293 | 37.9% | -155 |
2017 | 8,031 | 3,089 | 38.5% | 2,174 |
2016 | 7,499 | 4,155 | 55.4% | -424 |
2015 | 7,360 | 2,708 | 36.8% | -571 |
2014 | 7,637 | 2,115 | 27.7% | 2,114 |
2013 | 6,860 | 2,217 | 32.3% | 430 |
2012 | 7,486 | 1,835 | 24.5% | 859 |
2011 | 7,930 | 3,439 | 43.4% | 376 |
2010 | 6,638 | 2,651 | 39.9% | -1,097 |
2009 | 5,278 | 2,572 | 48.7% | 285 |
2008 | 11,890 | 3,355 | 28.2% | 1,418 |
*2025年は上半期実績の年換算予想値
業績の持続的な改善と成長加速
WMBの2025年上半期の業績は、同社の事業戦略の成功と天然ガス市場の構造的成長を明確に示しています。第2四半期の売上高27.8億ドルは前年同期比19.1%増を記録し、年換算では約112億ドルと過去最高水準に到達する見込みです。
特に注目すべきは営業CFマージンの大幅改善です。2025年上半期は約55%の高水準を維持しており、これは:
- Transco(主力パイプライン)システムでの記録的需要:2025年7月29日には夏季としては過去最高の日量16.1 Bcfを記録
- 6つの主要プロジェクトの第2四半期での稼働開始による増収効果
- 戦略的買収の寄与:SaberMidstreamなどの統合効果
- ガルフ地域での生産量17%増加とNGL生産量77%増加
の複合的な成果によるものです。
記録的なAdjusted EBITDAの成長
2025年のAdjusted EBITDAガイダンスは77.5億ドル(中央値)に引き上げられており、これは2024年の70.8億ドルから9%の成長を意味します。この成長は以下の要因に支えられています:
- Transmission & Gulfセグメント:第2四半期に前年同期比11%成長の過去最高記録
- Northeast G&Pセグメント:5%成長(高いギャザリング・処理料金による)
- Westセグメント:7%成長(ヘインズビル地域での高い生産量)
- 長期契約ベースの安定収入構造(フィーベース収入の高い割合)
同社は2025年末までに14の高収益プロジェクトを実行中であり、特にTranscoのSoutheast Supply Enhancement projectは同社史上最大の収益増加プロジェクトとして期待されています。
改善された資本配分とキャッシュフロー管理
WMBは2016-2017年の財務リストラクチャリング以降、規律ある資本配分政策を継続しています。2025年の業績見通しでは:
- レバレッジ比率中央値:3.65倍(健全な水準の維持)
- 強力なフリーキャッシュフロー生成による配当支払い能力の安定化
- 成長プロジェクトへの厳選された投資(過剰投資リスクの回避)
- 株主還元と負債削減のバランス
これにより、天然ガス価格や市場環境の変動に対する耐性を保ちながら、持続的な成長を実現する基盤が構築されています。
まとめ:2025年以降のWMBへの投資戦略
Williams Companies(WMB)は、過去の財務的教訓を活かした堅実な経営により、現在「成熟した安定配当銘柄」としての地位を確立しています。2025年の業績は同社の変革の成功を明確に示しており、長期配当投資家にとって魅力的な投資機会を提供しています。
同社の現在の強みは以下の点にあります:
- 業界トップクラスのTranscoパイプラインシステム(契約輸送容量33.4 Bcf/d、3.4%増)
- 記録的な業績成長(2025年Adjusted EBITDA見通し77.5億ドル、9%成長)
- 安定した配当成長(9年連続増配、2025年は5.3%増の年2.00ドル)
- 健全な財務体質(レバレッジ比率3.65倍、営業CFマージン55%超)
- 天然ガス需要の構造的成長(LNG輸出、発電用途、工業用途の拡大)の恩恵
- 長期契約に基づくフィーベース収入構造による収益の安定性
- エネルギートランジションにおける「橋渡し燃料」としての天然ガスの重要な役割
2025年以降の投資戦略:WMBへの投資は、「安定配当収入」と「中程度の成長」を両立できる理想的なエネルギーインフラ投資です。現在の配当利回り3.48%は魅力的な水準であり、過去9年の増配実績は今後の持続可能性を示唆しています。
特に以下の投資家に適しています:
- 安定した配当収入を求める長期投資家
- エネルギートランジション期の「橋渡し」セクターへの投資を希望する投資家
- インフレヘッジとしてのエネルギーインフラ資産への投資を考える投資家
- 過度なリスクを取らずに、適度な成長性を求める保守的な投資家
よくある質問
2025年の業績好調は一時的なものでしょうか、それとも構造的な改善でしょうか?
WMBの2025年の好調な業績は構造的な改善によるものと判断されます。その根拠は以下の通りです:(1)長期契約に基づく収益構造(大部分がフィーベース)により短期的な市場変動の影響を受けにくい、(2)Transcoシステムでの記録的需要は米国の天然ガス輸出拡大とガス火力発電増加という長期トレンドを反映、(3)14の高収益プロジェクトが段階的に稼働開始し、2026年まで継続的な増収を見込める、(4)戦略的買収(Saber Midstreamなど)による事業基盤の拡大。ただし、天然ガス価格の大幅下落や規制環境の急変、LNG需要の想定外の減速などが発生すれば、成長ペースに影響する可能性はあります。しかし、基本的なビジネスモデルの堅牢性と長期契約による安定性を考慮すると、現在の業績水準は持続可能と考えられます。
配当利回り3.48%は他のエネルギー株と比較してどうでしょうか?
WMBの配当利回り3.48%は、エネルギーセクター内での位置づけとして適正な水準です。上流石油・ガス企業(5-8%)よりは低いものの、公益事業(2-4%)や一般的なREIT(3-5%)と同程度であり、中流エネルギーインフラ企業としては平均的な水準です。重要なのは利回りの絶対値よりも、その安定性と成長性です。WMBは(1)9年連続増配の実績、(2)営業キャッシュフローに対して60-70%程度の健全な配当性向、(3)長期契約による安定した収益基盤、(4)過去の減配リスクを踏まえた保守的な配当政策、という点で他の高利回りエネルギー株より安全性が高いと評価できます。特に上流企業のような商品価格への直接的な依存度が低く、配当カットのリスクは相対的に小さいと考えられます。
天然ガスの長期的な需要見通しはWMBにどのような影響を与えますか?
天然ガスの長期需要見通しは、WMBにとって複数の成長機会を提供しています。短中期的(2025-2030年)には、(1)米国LNG輸出の急速な拡大(複数の輸出プロジェクトが建設・稼働予定)、(2)石炭火力発電からガス火力発電への転換継続、(3)工業用途(石油化学、肥料製造など)での需要堅調、(4)ピーク電力需要対応とグリッド安定化のためのガス火力需要、という強力な需要要因があります。WMBのTranscoシステムは米国南東部からメキシコ湾岸のLNG施設への主要な輸送ルートであり、この需要拡大の直接的な恩恵を受けます。長期的(2030年以降)には、再生可能エネルギーとの共存、水素製造原料としての利用、CCUS(炭素捕集・利用・貯留)との組み合わせなど、新たな需要分野も期待されます。一方で、電化の進展や再生可能エネルギーコストの大幅低下により、2040年以降は需要成長率の鈍化リスクもありますが、WMBの既存インフラは水素輸送やCO2輸送への転用可能性もあり、エネルギートランジションにおける適応力は高いと評価できます。
更新情報(2025年9月)
本記事の主な変更点:
- 2025年第2四半期決算結果の反映(Adjusted EBITDA 18億ドル、8%成長)
- 2025年配当データの追加(年2.00ドル、5.3%増)
- 2024年実績データの修正(配当1.90ドル、EPS 1.82ドル)
- 2025年ガイダンス情報の追加(Adjusted EBITDA 77.5億ドル)
- 配当性向の正常化を反映(96%の健全水準)
- 現在の株価水準と配当利回りの更新(約3.48%)
- 業績好調の要因分析(Transco記録的需要、主要プロジェクト稼働など)
- 財務指標の最新化(2025年予想値含む)
- 投資戦略セクションの全面改訂
- FAQ内容の現況に即した更新
※本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。
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