アメリカ素材セクターETF(VAW・XLB・IYM・MXI)株価・配当・構成銘柄
米国の素材セクターETFのデータを比較してみます。2025年は貿易政策・エネルギー転換・インフレヘッジ需要が素材セクターの重要なドライバーとなっています。
その代表は、バンガード社の【VAW】、ステート・ストリート社の【XLB】、ブラックロック社の【IYM】ですが、世界各国の素材企業に投資する【MXI】の内容も紹介してみます。
ブラックロック社の世界投資型ETFは、どのセクターでも米国比率がかなり高いからです。
このページでは積立や資産運用の参考となるように、ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や株価チャート、配当利回り、ポートフォリオ等の詳細を整理してみましょう
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2025年素材セクター市場環境
🔥 銅価格の激動
貿易戦争・関税で価格大幅変動。2025年Q2に史上最高値$5.65/lbを記録後、調整局面入り
🌍 中国経済の影響
世界素材需要の50-60%を占める中国の成長率低下(4.6%→4.1%)が重要なリスク要因
⚡ エネルギー転換需要
EVバッテリー、再生エネルギー、AIデータセンターが銅・リチウムなど素材需要を押し上げ
📈 インフレヘッジ
3-4%の高インフレ環境下で、実物資産としての素材の価値が再評価される
【徹底比較】素材ETF VAW vs XLB おすすめは?超・景気敏感セクターを解説
化学、金属、鉱業、建設資材など、あらゆる産業の「もと」となる素材を供給する「素材セクター」。世界経済の成長と密接に結びつくこのセクターに手軽に投資できるのが、VAWやXLBといった素材ETFです。
しかし、その投資は景気の大きな波に乗ることを意味し、高いリターンが期待できる反面、大きなリスクも伴います。
この記事では、まず素材セクターの「景気敏感」という特性を解説し、その上で代表的なETFの戦略の違いを徹底的に比較します。
【はじめに】素材セクターは「世界景気の先行指標」
素材セクターは、世界経済が拡大する局面で需要が急増し、景気後退の懸念が高まると真っ先に需要が減少するため、株価が経済全体の動きを先取りする「景気の先行指標」とも言われます。ハイリスク・ハイリターンな「超・景気循環セクター」の代表格です。
主要 素材セクターETF 比較一覧表(2025年8月最新版)
まずは、今回ご紹介するETFの「個性」が一目でわかる比較表をご覧ください。「投資戦略」と「経費率」が特に重要な比較ポイントです。
※データは2025年8月時点のものを参考にしています。各種データは変動します。
米国市場への投資戦略:集中か、分散か
【低コスト対決】巨大企業(XLB) vs 幅広く分散(VAW)
米国素材セクターに投資するなら、この2つの低コストETFが中心的な選択肢となります。どちらを選ぶかは、あなたの投資戦略次第です。
XLB
巨大企業に集中投資
S&P500の素材企業(約30銘柄)に限定。リンデ(産業ガス)やエア・プロダクツ、ダウといった巨大企業に賭けるETFです。
出典:
SSGA
VAW
セクター全体に分散投資
推奨
中小型株まで含む約125銘柄に分散。巨大企業への集中を避け、米国素材セクター全体の成長を取り込みたい方向けです。最低コストが魅力。
出典:
Vanguard
(補足:iシェアーズ社のIYMもVAWと似た分散型のETFですが、経費率が0.42%と割高なため、特別な理由がなければVAWやXLBが合理的な選択肢となります。出典はこちら)
視点を世界へ:グローバル素材セクター戦略
なぜグローバルに投資するのか?
「米国の景気動向だけに、資産を集中させるのは避けたい」「世界の資源需要を捉えたい」と考える投資家にとって、グローバルな視点を持つことは有効なリスク分散戦略です。
MXI
世界の鉱業・化学メジャーに投資
iシェアーズ グローバル素材ETF (MXI)は、そのグローバル戦略を実現するための具体的な選択肢です。このETFは、米国のトップ企業に加えて、各国の代表的な素材企業にも投資することで、地政学的なリスクや特定国の経済・政策リスクを分散する効果が期待できます。
MXIに投資する主なメリット
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カントリーリスクの分散: 米国企業の比率は約3割に抑えられ、残りをオーストラリア、英国、日本などの企業に分散します。 -
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世界的なリーダー企業へのアクセス: 米国市場にはない、オーストラリアのBHPグループやリオ・ティントといった世界的な鉱業メジャーに大きく投資できます。 -
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高配当利回り: 3.27%の配当利回りは、米国素材ETFの約2倍の水準を実現。
⚠️ 注意点:コストとのトレードオフ
MXIの経費率は0.42%であり、VAW/XLBの約4倍です。このコストを支払ってでもグローバル分散のメリットと高配当を享受したいか、という視点での検討が必要になります。
出典:
BlackRock
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2025年版 素材セクター投資戦略
🎯 低コスト分散重視
推奨:VAW
経費率0.10%の最低コストで125銘柄に分散投資
🏭 大型株集中投資
推奨:XLB
S&P500大型素材株約30銘柄に集中、配当利回り2.05%
🌐 グローバル高配当
推奨:MXI
世界の鉱業メジャーに投資、配当利回り3.27%
⚡ エネルギー転換テーマ
注目:VAW + 個別株
銅・リチウム関連企業への個別株投資を併用
2025年の投資環境:
貿易政策の不確実性と中国経済減速がリスク要因。一方で、エネルギー転換需要とインフレヘッジ効果により、中長期的には素材需要は底堅い。銅価格の変動が激しいため、分散投資とタイミング分散(積立投資)が重要。
素材セクター投資に共通するリスク(2025年版)
世界景気の動向に敏感なこのセクターには、特有の大きなリスクが伴います。
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1
景気後退・コモディティ価格リスクこれが最大のリスクです。2025年はJ.P.モルガンが景気後退確率60%と予測。世界経済が悪化すると素材への需要が減り、銅や鉄鉱石といったコモディティ価格も下落するため、企業の収益と株価が二重の打撃を受けます。
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2
地政学・貿易戦争リスク2025年は米中貿易戦争が激化。鉱山の所在地や資源国の政治情勢、米国の輸入関税(銅に10%以上の関税検討中)が、素材の安定供給や価格に大きな影響を与える可能性があります。
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3
中国経済依存リスク中国は世界素材需要の50-60%を占める最大消費国。中国の成長率が4.6%から4.1%に下方修正され、不動産セクターの低迷継続が素材需要を直撃するリスクがあります。
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4
環境規制リスク鉱山開発や化学プラントの操業には厳しい環境規制が伴い、その対策コストが企業の収益を圧迫する可能性があります。カーボンニュートラル対応でコスト負担増加。
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありません。投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。
株価:過去~現在
※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。
配当(分配金)と利回り
年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算するので、通常の定期的な配当だけで計算した時よりも利回りが高くなることがあります)
VAWの利回り
年 | 配当 | 株価 | |||
平均利回り | 年累計 | 年伸び率 | 平均株価 | 年伸び率 | |
2024 | 1.61% | 3.19 | -1.5% | 198.7 | 11.9% |
2023 | 1.83% | 3.24 | -3.3% | 177.5 | 1.1% |
2022 | 1.91% | 3.35 | 18.8% | 175.6 | -2.4% |
2021 | 1.57% | 2.82 | 8% | 180 | 40.8% |
2020 | 2.04% | 2.61 | 0.8% | 127.8 | 2.5% |
2019 | 2.08% | 2.59 | 16.1% | 124.7 | -4.4% |
2018 | 1.71% | 2.23 | 0.9% | 130.5 | 5.4% |
2017 | 1.79% | 2.21 | 18.2% | 123.8 | 21% |
2016 | 1.83% | 1.87 | -13.4% | 102.3 | -1.4% |
2015 | 2.08% | 2.16 | 14.3% | 103.7 | -3.7% |
2014 | 1.75% | 1.89 | 0% | 107.7 | 16.8% |
2013 | 2.05% | 1.89 | 20.4% | 92.2 | 15% |
2012 | 1.96% | 1.57 | 0% | 80.2 | 0.3% |
2011 | 1.96% | 1.57 | -12.8% | 80 | 14.3% |
2010 | 2.57% | 1.8 | 95.7% | 70 | 27.7% |
2009 | 1.68% | 0.92 | -42.1% | 54.8 | -28.6% |
2008 | 2.07% | 1.59 | – | 76.7 | – |
XLBの利回り
年 | 配当 | 株価 | |||
平均利回り | 年累計 | 年伸び率 | 平均株価 | 年伸び率 | |
2024 | 1.79% | 1.61 | -4.7% | 90.1 | 11.8% |
2023 | 2.1% | 1.69 | -2.3% | 80.6 | 0.5% |
2022 | 2.16% | 1.73 | 19.3% | 80.2 | -2.7% |
2021 | 1.76% | 1.45 | 19.8% | 82.4 | 38.3% |
2020 | 2.03% | 1.21 | 1.7% | 59.6 | 4.9% |
2019 | 2.1% | 1.19 | 10.2% | 56.8 | -1.9% |
2018 | 1.87% | 1.08 | 9.1% | 57.9 | 5.7% |
2017 | 1.81% | 0.99 | 4.2% | 54.8 | 18.6% |
2016 | 2.06% | 0.95 | -1% | 46.2 | -1.9% |
2015 | 2.04% | 0.96 | 2.1% | 47.1 | -2.3% |
2014 | 1.95% | 0.94 | 0% | 48.2 | 17.8% |
2013 | 2.3% | 0.94 | 13.3% | 40.9 | 13.3% |
2012 | 2.3% | 0.83 | 15.3% | 36.1 | -1.4% |
2011 | 1.97% | 0.72 | -37.9% | 36.6 | 10.9% |
2010 | 3.52% | 1.16 | 107.1% | 33 | 21.8% |
2009 | 2.07% | 0.56 | -30.9% | 27.1 | -26% |
2008 | 2.21% | 0.81 | – | 36.6 | – |
IYMの利回り
年 | 配当 | 株価 | |||
平均利回り | 年累計 | 年伸び率 | 平均株価 | 年伸び率 | |
2024 | 1.51% | 2.15 | -11.2% | 142.1 | 8.8% |
2023 | 1.85% | 2.42 | -8.7% | 130.6 | 0.7% |
2022 | 2.04% | 2.65 | 28.% | 129.7 | 0% |
2021 | 1.6% | 2.07 | 32.7% | 129.7 | 38.7% |
2020 | 1.67% | 1.56 | -22.8% | 93.5 | 1.7% |
2019 | 2.2% | 2.02 | 45.3% | 91.9 | -6.3% |
2018 | 1.42% | 1.39 | -4.1% | 98.1 | 6.5% |
2017 | 1.57% | 1.45 | 20.8% | 92.1 | 21.2% |
2016 | 1.58% | 1.2 | -15.5% | 76 | -2.3% |
2015 | 1.83% | 1.42 | -0.7% | 77.8 | -7.6% |
2014 | 1.7% | 1.43 | -0.7% | 84.2 | 16% |
2013 | 1.98% | 1.44 | 9.1% | 72.6 | 7.7% |
2012 | 1.96% | 1.32 | -6.4% | 67.4 | -7.8% |
2011 | 1.93% | 1.41 | 65.9% | 73.1 | 15.8% |
2010 | 1.35% | 0.85 | 1.2% | 63.1 | 36.3% |
2009 | 1.81% | 0.84 | -27% | 46.3 | -31.1% |
2008 | 1.71% | 1.15 | – | 67.2 | – |
MXIの利回り
年 | 配当 | 株価 | |||
平均利回り | 年累計 | 年伸び率 | 平均株価 | 年伸び率 | |
2024 | 2.92% | 2.52 | -0.8% | 86.4 | 5.6% |
2023 | 3.11% | 2.54 | -33.2% | 81.8 | 0.4% |
2022 | 4.66% | 3.8 | 20.3% | 81.5 | -8.9% |
2021 | 3.53% | 3.16 | 225.8% | 89.5 | 36.9% |
2020 | 1.48% | 0.97 | -60.4% | 65.4 | 3.2% |
2019 | 3.86% | 2.45 | 56.1% | 63.4 | -5.4% |
2018 | 2.34% | 1.57 | 28.7% | 67 | 7.5% |
2017 | 1.96% | 1.22 | 71.8% | 62.3 | 25.1% |
2016 | 1.43% | 0.71 | -56.4% | 49.8 | -6.7% |
2015 | 3.05% | 1.63 | 26.4% | 53.4 | -13.3% |
2014 | 2.09% | 1.29 | -2.3% | 61.6 | 3.5% |
2013 | 2.22% | 1.32 | 2.3% | 59.5 | 0.2% |
2012 | 2.17% | 1.29 | 3.2% | 59.4 | -12.1% |
2011 | 1.85% | 1.25 | 4.2% | 67.6 | 9.4% |
2010 | 1.94% | 1.2 | 172.7% | 61.8 | 28.% |
2009 | 0.91% | 0.44 | -57.7% | 48.3 | -26.9% |
2008 | 1.57% | 1.04 | – | 66.1 | – |
ポートフォリオの比較
次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率、組入れ上位10銘柄はチャールズシュワブのサイト内のページを参照。