VTIP・TIP(物価連動国債ETF)を比較:株価・配当・構成銘柄

債券ETF






【インフレ対策】物価連動国債ETF「TIP vs VTIP」を徹底比較!

インフレ(物価上昇)は、現金の価値だけでなく、通常の債券の価値も目減りさせてしまう厄介な存在です。この記事では、そんなインフレから資産を守るために開発された米国の物価連動国債(TIPS)に投資する代表的なETF、TIPVTIPを比較します。

この2つのETFは投資するTIPSの「期間」が異なり、それによって金利感応度(実効デュレーション)や利回りの性質が変わります。仕組みと違いを理解し、ご自身のポートフォリオに合うインフレヘッジ手段を検討しましょう。

ご注意:以下のデュレーション、利回り、純資産などは日々変動します。投資判断の前に、必ず公式サイトで最新情報をご確認ください[0]

【インフレ対策】物価連動国債ETF「TIP vs VTIP」を徹底比較!


そもそも物価連動国債(TIPS)とは?

TIPS(Treasury Inflation-Protected Securities)は、消費者物価指数(CPI)に連動して元本が増減する米国債です。主な特徴は次のとおりです。

  • インフレで元本が増える:CPI上昇率に応じて債券の元本が日次で調整されます[1][2]
  • 利息も増える:クーポンは調整後の元本に対して支払われるため、インフレ期には受取利息も増えます。
  • 満期時の元本保証:デフレが起きても満期償還額は「調整後元本」または「元本額(発行時)」のいずれか高い方が支払われます[3]

主要ETF比較サマリー(要点)

最大の違いは対象期間とそれに伴う実効デュレーションです。短期型は金利上昇に強く、全期間型はインフレヘッジに加えて期間プレミアムを取りに行く設計です。

項目 【TIP】iShares TIPS Bond ETF 【VTIP】Vanguard Short-Term TIPS ETF
対象期間 TIPS全般(短期〜長期)
ベンチマーク:ICE U.S. Treasury Inflation Linked Bond Index[4]
残存0〜5年の短期TIPS
ベンチマーク:Bloomberg U.S. TIPS 0–5 Year Index[5]
実効デュレーション 約6.45年(2025/10/9時点)[4] 約2.4年(2025/8/31時点)[6]
経費率 0.18%(最新目論見書ベース)[7] 0.03%(2025/2/3時点)[6]
純資産総額 約140億ドル(ファンド、2025/10/10)[4] 約164億ドル(ETFシェア、2025年時点の目安)/
ファンド全体:約624億ドル(同)[8]
利回りの目安 実質(リアル)利回り約1.48%(2025/10/9、Real Yield)[4] 30日SEC利回り約1.04%(2025/10/2)[6]
分配頻度 毎月[4] 四半期ごと(4・7・10・12月を中心)[9]

(注)上記は作成時点の公表値に基づく概況です。実際の数値は随時更新されます。


各ETFのポイント

【TIP】iShares TIPS Bond ETF

  • 投資範囲:残存期間の短長を問わずTIPSに広く分散。指数はICEのTIPS全期間指数を採用[4]
  • 特性:実効デュレーションが約6.45年と長めで、金利上昇時は価格が下がりやすい一方、落ち着いた局面ではより高い実質利回りを取りやすい設計[4]
  • 公式情報:iShares TIP 公式[7]

【VTIP】Vanguard Short-Term Inflation-Protected Securities ETF

  • 投資範囲:残存5年未満のTIPSに限定。指数はBloombergの0–5年TIPS指数[5]
  • 特性:実効デュレーション約2.4年で金利上昇による価格下落リスクを抑制。純粋なインフレヘッジに使いやすく、経費率も低位[6]
  • 分配:四半期ごと。年間のスケジュールが公表されます[9]
  • 公式情報:Vanguard VTIP 公式[8]

投資のポイントと注意点

金利リスクとインフレヘッジの綱引き

TIPS投資では、インフレに伴う元本増額(プラス)と、金利上昇に伴う価格下落(マイナス)が拮抗します。金利が大きく上昇する局面では、短期TIPS中心のVTIPは価格下落耐性が相対的に高く、全期間のTIPは値動きが大きくなりやすい一方で、インフレが落ち着き金利も安定していく局面では実質利回り面の妙味が出やすい設計です。

結局どちらを選ぶ?(使い分けの目安)

  • 金利上昇リスクを抑えつつインフレヘッジを行いたい:VTIP
  • 金利リスクを一定程度許容し、より高い実質利回りも狙いたい:TIP

最終的には、ご自身の金利見通しポートフォリオ全体のリスクバランスで判断してください。

免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。


出典(公式・一次情報)

  1. 各ETFの最新指標は公式ページ(iShares / Vanguard)をご確認ください。
  2. U.S. Treasury Financial Report(TIPSの元本はCPIに日次連動)
  3. TreasuryDirect Glossary(調整後元本/元本額の扱い)
  4. 同上:満期時は調整後元本または元本額の高い方が支払われる旨
  5. iShares TIP 公式(指数:ICE、実効デュレーション、Real Yield、AUM、分配頻度)
  6. Bloomberg U.S. TIPS 0–5 Year Index 概要(指数の定義と要件)
  7. Vanguard VTIP 公式(平均デュレーション2.4年、経費率0.03%、SEC利回り)
    VTIP ファクトシート(2025/6/30)
  8. TIP ファクトシート(費用0.18%、特性)
  9. VTIP 公式(Fund total / Share class total net assets)
  10. Vanguard 2025年 分配スケジュール(VTIPの四半期分配)


株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。



配当(分配金)と利回り

年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算しているので、通常の定期的な配当だけで計算した時よりも利回りが高く計上されています)

VTIPの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 2.71% 1.31 -3.7% 48.3 2.1%
2023 2.88% 1.36 -57.1% 47.3 -5%
2022 6.37% 3.17 32.6% 49.8 -4.2%
2021 4.6% 2.39 298.3% 52 3.8%
2020 1.2% 0.6 -36.8% 50.1 2.2%
2019 1.94% 0.95 -18.1% 49 0.8%
2018 2.39% 1.16 56.8% 48.6 -1.6%
2017 1.5% 0.74 100% 49.4 0.6%
2016 0.75% 0.37 49.1 1.2%
2015 48.5 -2.2%
2014 0.79% 0.39 1850% 49.6 -0.2%
2013 0.04% 0.02 -81.8% 49.7 -0.6%
2012 0.22% 0.11 0% 50 0%

TIPの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 2.5% 2.69 -8.5% 107.5 0.6%
2023 2.75% 2.94 -59.9% 106.9 -7.8%
2022 6.33% 7.34 33.7% 116 -9.3%
2021 4.29% 5.49 278.6% 127.9 4.2%
2020 1.18% 1.45 -27.1% 122.8 7.4%
2019 1.74% 1.99 -31.8% 114.3 2.6%
2018 2.62% 2.92 26.4% 111.4 -2.2%
2017 2.03% 2.31 40% 113.9 -0.3%
2016 1.44% 1.65 358.3% 114.2 1.9%
2015 0.32% 0.36 -80.4% 112.1 -1.1%
2014 1.62% 1.84 49.6% 113.3 -1.9%
2013 1.06% 1.23 -53.8% 115.5 -3.9%
2012 2.21% 2.66 -44% 120.2 7.1%
2011 4.23% 4.75 79.2% 112.2 5.2%
2010 2.48% 2.65 -33.6% 106.7 5.1%
2009 3.93% 3.99 -35.9% 101.5 -2.9%
2008 5.95% 6.22 104.5

Posted by 南 一矢