ASMLの業績・配当:EUV技術による圧倒的な利益率と成長性
ASMLの業績・配当:EUV技術による圧倒的な利益率と成長性(2025年通期まで反映)
はじめに
ASMLは、オランダに本社を置く、半導体産業の心臓部を握る企業です。AI、スマートフォン、データセンターなど、現代社会を支えるあらゆる先端技術は、ASMLなしには成り立ちません。その理由は、同社が最先端半導体の製造に不可欠な「EUVリソグラフィ(露光装置)」を世界で唯一製造・供給できる独占企業だからです。
本記事では、この圧倒的な競争優位性を持つASMLが、どのように成長と株主還元を両立させているのかを、最新決算(2025年通期・Q4を含む)を含む財務データから整理します。[1]
最重要ポイント:ASMLの独占的地位とは?
ASMLを理解する鍵は、EUV(極端紫外線)リソグラフィにあります。これは、シリコンウェハー上に超微細な電子回路を焼き付けるための光技術です。7ナノメートル以下の最先端半導体を製造するにはEUV技術が必須であり、この装置を開発・製造できるのは世界でASMLただ一社です。[3]
【免責事項および出典について】
1. 業績分析:半導体サイクルの波に乗る力強い成長
ASMLの業績は、半導体市場の設備投資サイクルに影響を受けながらも、長期的には「微細化の必需品」として成長してきました。2025年通期は売上高€327億、純利益€96億と、いずれも過去最高を記録しました。[1]
1.1. 売上・利益・キャッシュフローの推移(年次)
| 会計年度(通期) | 売上高(百万€) | 営業CF(百万€) | 純利益(百万€) | EPS (€)(1株当たり利益) |
|---|---|---|---|---|
| 2015 | 6,287 | 2,185 | 1,387 | 3.28 |
| 2016 | 6,796 | 2,342 | 1,473 | 3.47 |
| 2017 | 9,053 | 3,186 | 2,119 | 5.01 |
| 2018 | 10,944 | 3,521 | 2,591 | 6.14 |
| 2019 | 11,820 | 3,785 | 2,592 | 6.16 |
| 2020 | 13,978 | 4,885 | 3,553 | 8.49 |
| 2021 | 18,611 | 6,542 | 5,881 | 14.36 |
| 2022 | 21,173 | 7,215 | 5,624 | 14.14 |
| 2023 | 27,558 | 8,856 | 7,839 | 19.91 |
| 2024 | 28,260 | 6,150 | 7,570 | 19.25 |
| 2025(通期確定) | 32,700 | 11,000 | 9,600 | 24.73 |
| CAGR(年平均成長率) | ||||
| 過去10年(FY15-25) | 17.9% | 17.5% | 21.3% | 22.4% |
| 過去5年(FY20-25) | 18.5% | 17.6% | 22.0% | 23.8% |
年次(2015〜2024)は年次報告・規制当局提出書類等を基礎、2025年通期は2026年1月28日発表の決算資料に基づく。[4][1]
- 2025年は過去最高を更新:売上高€327億(前年比+16%)、純利益€96億(前年比+27%)と、いずれも過去最高を記録しました。[1]
- 長期で見た圧倒的な成長:EUVの商用化・量産立ち上げと歩調を合わせ、売上・利益ともに大きく拡大してきました。
- 短期は循環の影響:設備投資はサイクル要因でブレますが、技術ロードマップ上「微細化が進むほどASMLの重要度が増す」構造は変わりません。
1.1.(追加)2025年:四半期の業績推移(Q1〜Q4)
| 期間 | 売上高(十億€) | 売上総利益率(Gross margin) | 純利益(十億€) | EPS (€)(基本) | ネットブッキング(十億€) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年Q1 | 5.3 | 約51.0% | 1.2 | 3.1 | 3.6 |
| 2025年Q2 | 7.7 | 約51.5% | 2.0 | 5.1 | 5.6 |
| 2025年Q3 | 7.5 | 51.9% | 2.2 | 5.5 | 5.4 |
| 2025年Q4(過去最高) | 9.7 | 52.2% | 2.8 | 7.35 | 13.2 |
| 2025年通期 | 32.7 | 52.8% | 9.6 | 24.73 | 27.8 |
出典:2025年Q4・通期のASML公式プレスリリース(2026年1月28日発表)。[1]
- ポイント:2025年Q4は売上高€97億、ネットブッキング€132億と、いずれも過去最高を記録しました。[1]
- 受注の急回復:Q4のネットブッキング€132億は、アナリスト予想(約€63億)の2倍以上。AI関連需要への顧客の強い期待が反映されています。[5]
- バックログ:2025年末時点の受注残(バックログ)は€388億に達し、将来の収益基盤が堅固です。[1]
1.2. 収益性:独占企業ならではの高い利益率
ASMLの独占的な市場地位は、極めて高い利益率に表れています。2025年通期でも売上総利益率は52.8%と高水準を維持しました。[1]
| 期間 | 売上総利益率 | 営業利益率 |
|---|---|---|
| 2020(通期) | 48.6% | 29.5% |
| 2021(通期) | 52.7% | 36.2% |
| 2022(通期) | 50.5% | 34.1% |
| 2023(通期) | 51.3% | 35.1% |
| 2024(通期) | 51.3% | 33.2% |
| 2025(通期) | 52.8% | 35.3% |
| 2025年Q4(単四半期) | 52.2% | 35.3% |
2025年通期・Q4は公式決算資料の開示値。年次の長期推移は年次報告等を基礎にした整理。[1][4]
- 売上総利益率50%超:最先端の製造装置メーカーでありながら、50%台の高い粗利率が続いています。これは、競合が実質存在しないことによる強い価格決定力を示唆します。
- 研究開発を賄っても高収益:R&D投資を継続しても利益率が崩れにくいのは、装置の希少性とサービス(Installed Base)収益の積み上げが背景です。
2. 成長の源泉:研究開発への巨額投資
ASMLの独占的地位は、偶然の産物ではありません。競合他社を寄せ付けないための、継続的な研究開発(R&D)投資こそが、その競争優位性の源泉です。[3]
| 会計年度(通期) | 研究開発費(百万€) | 売上高比率 |
|---|---|---|
| 2020 | 2,322 | 16.6% |
| 2021 | 2,835 | 15.2% |
| 2022 | 3,360 | 15.9% |
| 2023 | 3,969 | 14.4% |
| 2024 | 4,250 | 15.0% |
| 2025 | 4,700 | 14.4% |
R&Dの推移は年次報告・提出書類等の開示を基礎、2025年は公式決算資料に基づく。[4][1]
- 売上の14〜16%をR&Dに:「次世代装置(High-NA EUV)」「歩留まり改善」「生産能力拡大」などに投資し、競合が追いつく余地を狭めています。
- 未来への投資:ASMLにとって、R&D費用はコストではなく、将来の独占的キャッシュフローを維持するための"参入障壁の維持費"に近い性格があります。
- High-NAの立ち上げ:2025年Q4には、High-NA EUV(EXE:5200B)システム2台分の売上を初めて計上しました。[1]
3. 株主還元と財務健全性
ASMLは、成長への巨額投資と並行して、株主への還元も継続しています。2025年は総配当€7.50/株(前年比+17%)を予定し、新たに最大€120億の自社株買いプログラムも発表しました。[1]
3.1. 配当実績と株主還元
- 配当:2025年の年間配当は€7.50/株(前年比+17%)を予定。中間配当€1.60×2回が既に支払済みで、最終配当€2.70/株は2026年4月の株主総会で決議予定です。[1]
- 自社株買い:2022〜2025年プログラム(総額€76億買い戻し)を完了し、2028年末までに最大€120億の新プログラムを開始しました。[1]
- 2025年の総還元:配当と自社株買いを合わせ、2025年通期で約€85億を株主に還元しました。[1]
3.2. 盤石な財務基盤
ASMLは、高い収益性を背景に、製造業としては良好な財務体質を維持してきました。設備投資サイクルの波が来ても、R&Dと生産能力増強を途切れさせにくい点は重要です。[4]
| 会計年度(通期) | 総資産(百万€) | 株主資本(百万€) | 自己資本比率 | ROE (%)(自己資本利益率) |
|---|---|---|---|---|
| 2020 | 32,963 | 14,412 | 43.7% | 24.7% |
| 2021 | 38,629 | 18,559 | 48.0% | 31.7% |
| 2022 | 44,383 | 21,694 | 48.9% | 25.9% |
| 2023 | 47,235 | 25,379 | 53.7% | 30.9% |
| 2024 | 45,860 | 24,150 | 52.7% | 31.3% |
財務(年次)は年次報告・提出書類等の開示を基礎にした整理。[4]
- 自己資本比率:製造業としては高めの自己資本比率を維持し、景気後退局面でも投資余力を残しやすい構造です。
- 高い資本効率(ROE):高利益率ビジネスのため、ROEは長期的に高水準となりやすい点が特徴です。
- 潤沢な手元資金:2025年Q4末時点で現金・現金同等物・短期投資は€133億、フリーキャッシュフローは通期で€110億に達しています。[1]
4. 投資判断のヒント:ASMLの強みとリスク
ASMLへの投資を検討する上で、その圧倒的な強みと、それに伴うリスクの両面を理解することが不可欠です。
ASMLの強み(事業の優位性)
注意すべきリスク要因
4.1. 2026年のガイダンス
ASMLは2026年について以下の見通しを示しています。[1]
- Q1 2026:売上高€82〜89億、売上総利益率51〜53%
- 2026年通期:売上高€340〜390億、売上総利益率51〜53%
- 長期見通し:2030年までに半導体市場は1兆ドルを超える可能性があり、ASMLはその恩恵を受ける立場にあります。[5]
5. まとめ
本記事では、ASMLの財務データを多角的に整理しました。最後に、投資判断のためのポイントをまとめます。
ASMLは、「技術的独占に支えられた、他に類を見ない高品質な成長企業」です。2025年通期は売上高€327億、純利益€96億と過去最高を更新し、Q4のネットブッキング€132億はアナリスト予想を大きく上回りました。[1]
AI需要を背景に顧客の設備投資意欲は強く、2025年末のバックログは€388億に達しています。2026年は売上高€340〜390億を見込み、成長継続が期待されます。[1]
一方で、設備投資サイクル・輸出規制・高バリュエーションといった「外部要因」による短期変動は避けられません。[4]
最終的な投資判断では、(1)受注(ネットブッキング)とガイダンス、(2)粗利率の維持、(3)中長期の微細化ロードマップの3点を軸に、期待とリスクの釣り合いを見極めることが重要です。
ミニ解説:この記事の数値表の見方
年次表(2015〜2025)は「通期」の比較で、2025年は確定値です。四半期の推移表も併記しており、直近のトレンド確認は、四半期の売上・粗利率・ネットブッキング(受注)をセットで見るのが実務的です。[1]
【注】(出典リンク)
- 2025年Q4・通期決算(主要数値・配当・ブッキング・ガイダンス) → ASML Investors: Fourth quarter 2025(一次情報) → GlobeNewswire: ASML Press Release 2026/1/28(一次情報) 確認日:2026-02-05 ↩
- 2025年Q2・Q3決算 → ASML Investors: Financial results(一次情報) 確認日:2026-02-05 ↩
- ASML技術・製品概要 → ASML Technology(一次情報) 確認日:2026-02-05 ↩
- 年次報告・Form 20-F(長期の年次データ確認) → SEC EDGAR: ASML Holding N.V. filings(一次情報) / ASML Investors(年次資料)(一次情報) 確認日:2026-02-05 ↩
- Q4 2025決算報道・アナリスト分析 → CNBC: ASML Q4 2025 earnings(二次情報) → Yahoo Finance: ASML Q4 Earnings Call Highlights(二次情報) 確認日:2026-02-05 ↩

