VZ:ベライゾンの配当推移
ベライゾンコミュニケーションズ(Verizon Communications Inc.)の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。
権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。
配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート
年間利回り、配当成長率、配当性向、EPS等
年平均の配当利回りや配当成長率、配当性向、年間の一株配当($)、平均株価、通年EPSの推移を確認してみます。
年 | 配当 | 平均株価 | 年EPS | |||
平均利回り | 成長率 | 配当性向 | 年計 | |||
2024 | 6.52% | 2% | 65% | 2.685 | 41.2 | 4.14 |
2023 | 7.24% | 2% | 96% | 2.635 | 36.4 | 2.75 |
2022 | 5.57% | 2% | 51% | 2.585 | 46.4 | 5.06 |
2021 | 4.58% | 2% | 48% | 2.535 | 55.3 | 5.32 |
2020 | 4.30% | 3% | 58% | 2.485 | 57.8 | 4.3 |
2019 | 4.17% | 2% | 52% | 2.42 | 58.1 | 4.65 |
2018 | 4.55% | 2% | 63% | 2.37 | 52.1 | 3.76 |
2017 | 4.81% | 2% | 32% | 2.32 | 48.2 | 7.36 |
2016 | 4.42% | 2% | 71% | 2.27 | 51.4 | 3.21 |
2015 | 4.70% | 4% | 51% | 2.22 | 47.2 | 4.37 |
2014 | 4.40% | 3% | 88% | 2.14 | 48.6 | 2.42 |
2013 | 4.27% | 3% | 52% | 2.08 | 48.7 | 4 |
2012 | 4.81% | 3% | 652% | 2.02 | 42 | 0.31 |
2011 | 5.36% | 3% | 231% | 1.96 | 36.6 | 0.85 |
2010 | 6.47% | 3% | 212% | 1.91 | 29.5 | 0.9 |
2009 | 6.53% | -3% | 108% | 1.86 | 28.5 | 1.72 |
2008 | 5.89% | 16% | -249% | 1.92 | 32.6 | -0.77 |
【出典】
安定した配当の実績
Verizonの配当実績は、米国の主要通信企業として極めて安定した軌跡を描いてきました。2008年の1.92ドルから2024年には2.69ドルへと40%の成長を実現し、この期間中にわずか1回(2009年の-3%)の減配があっただけで、その後15年連続で増配を継続しています。年平均成長率は約2.3%と決して派手ではありませんが、一貫性と予測可能性において通信業界のベンチマークとなっています。特に注目すべきは、2008年の金融危機、2020年のCOVID-19パンデミック、そして2022年のインフレ急騰といった経済危機を通じても、配当成長を維持し続けた点です。これは同社の事業モデルの安定性と、通信サービスが生活必需品であることを如実に示しています。
配当成長率の推移
Verizonの配当成長率は極めて規則的で予測可能なパターンを示しています:
- 2008年:前年比17%増という高い成長でスタート
- 2009年:金融危機の影響で唯一の減配(-3%)を実施
- 2010〜2015年:回復・安定期(年率3〜4%の堅実な成長)
- 2016〜2024年:成熟期(年率2%を中心とした安定成長)
このパターンは、Verizonの事業成熟度と経営方針の変化を反映しています。初期の高成長期(2008年)は通信インフラの急速な拡張期に対応し、その後は持続可能で予測可能な配当政策へと転換しました。特に2016年以降の年率2%という成長率は、インフレ率に連動した実質的な配当価値の維持を意図したものと考えられます。
注目すべきは、2009年の減配がわずか3%という軽微なもので、翌年には即座に成長軌道に戻った点です。これは同社が危機時でも株主還元を最優先に考え、事業の本質的な安定性に確信を持っていることを示しています。近年の年率2%という成長率は控えめに見えますが、これにより配当の持続可能性が大幅に向上し、投資家にとってより信頼性の高い配当源となっています。
配当利回りの安定性
Verizonの配当利回りは、通信業界の成熟企業として魅力的で安定した水準を維持してきました。特に注目すべき点は:
- 長期的に4〜7%の範囲で安定した利回りを提供
- 株価の変動に対して配当の安定性が高く、利回りの極端な変動が少ない
- 他の高配当セクター(REITsやユーティリティ)との競争力を維持
- 国債利回りとの適切なスプレッドを維持し、投資魅力を確保
Verizonの配当利回りの安定性は、同社の事業モデルの予測可能性を反映しています。通信サービスの月額料金制により収益が安定しており、これが配当の安定性を支えています。また、同社は配当利回りを意識した株価管理を行っており、利回りが極端に低下した場合は自社株買いを、高すぎる場合は投資や負債削減を優先するなど、バランスの取れた資本配分を実施しています。
注目ポイント:Verizonは通信業界では珍しく「配当成長株」的な性格を持っています。AT&Tが大型買収と事業再編により配当政策が大きく変動したのに対し、Verizonは有機的成長を重視し、一貫した配当政策を維持してきました。これにより、長期投資家にとって予測可能で信頼性の高い配当源としての地位を確立しています。
配当性向の持続可能性
Verizonの配当性向(配当÷EPS)は、通信業界の特性を反映して変動はあるものの、概ね健全な水準を維持してきました:
- 2008年:金融危機の影響で純損失となり配当性向がマイナス(-249%)
- 2009〜2012年:景気回復期だが配当性向は高水準(108%〜652%)
- 2013〜2022年:安定期(32%〜96%の適正範囲)
- 2023年:一時的上昇(96%)
- 2024年:正常化(65%)
高配当性向期の理解:2009-2012年の異常に高い配当性向は、主に減価償却や一時的費用の影響によるEPSの低下が原因です:
- 2010年:FiOSネットワーク展開に伴う大規模設備投資の減価償却により、EPSが0.90ドルに低下。配当1.91ドルに対して212%の配当性向となりました。
- 2012年:LTE(4G)ネットワーク構築への投資とスペクトラム取得費用により、EPSが0.31ドルまで減少。配当2.02ドルに対して652%という極端な配当性向が算出されました。
- 2023年:5G関連の設備投資償却と競争激化による利益圧迫により、EPSが2.75ドルに低下。配当2.64ドルに対して96%の配当性向となりました。
通信業界の会計上の特殊性:Verizonのような通信企業の純利益は以下の理由で変動します:
- 大規模インフラ投資の減価償却:5G、光ファイバー、データセンターなどの長期資産
- スペクトラム取得費用:政府オークションでの周波数ライセンス購入
- 技術移行コスト:3G→4G→5Gへの設備更新に伴う除却損
- 競争対応費用:顧客獲得コストや端末補助金の変動
- 規制関連費用:FCC規制への対応コストや和解金
これらの要因により純利益が変動するため、配当性向だけでは配当の持続可能性を正確に評価することは困難です。通信企業の配当分析では、営業キャッシュフローに対する配当の割合を重視することが重要です。
実際に、Verizonのキャッシュフロー指標を見ると、配当性向が高い年でも、営業キャッシュフロー(2012年は31,486M$、2024年は36,912M$)は配当支払いをカバーするのに十分な水準を維持しています。2024年の配当総額は約110億ドルで、営業キャッシュフローの30%程度となっており、健全な水準にあります。
財務パフォーマンスと成長見通し
以下の表では、売上高、営業CF、純利益はM$(百万ドル)単位、営業CFマージン(表記は同マージン)は%単位で表示しています。
主要財務指標の推移
年度 | 売上高 | 営業CF | 同マージン | 純利益 |
---|---|---|---|---|
2008 | 97,354 | 27,452 | 28 | -2,193 |
2009 | 107,808 | 31,390 | 29 | 4,894 |
2010 | 106,565 | 33,363 | 31 | 2,549 |
2011 | 110,875 | 29,780 | 27 | 2,404 |
2012 | 115,846 | 31,486 | 27 | 875 |
2013 | 120,550 | 38,818 | 32 | 11,497 |
2014 | 127,079 | 30,631 | 24 | 9,625 |
2015 | 131,620 | 39,027 | 30 | 17,879 |
2016 | 125,980 | 21,689 | 17 | 13,127 |
2017 | 126,034 | 24,318 | 19 | 30,101 |
2018 | 130,863 | 34,339 | 26 | 15,528 |
2019 | 131,868 | 35,746 | 27 | 19,265 |
2020 | 128,292 | 41,768 | 33 | 17,801 |
2021 | 133,613 | 39,539 | 30 | 22,065 |
2022 | 136,835 | 37,141 | 27 | 21,256 |
2023 | 133,974 | 37,475 | 28 | 11,614 |
2024 | 134,788 | 36,912 | 27 | 17,506 |
収益性と効率性の安定
Verizonの財務データからは、通信業界のリーダーとしての安定性と効率性が見て取れます:
- 売上高は2008年の97,354M$から2024年には134,788M$へと38%成長し、年平均成長率は約2.1%
- 営業CFマージンは一貫して高水準を維持し、17%〜33%の範囲で推移
- 純利益は2008年の赤字を除き概ね安定しており、近年は年間110億〜220億ドル水準
- 2020年のパンデミック時も売上は微減(-3%)にとどまり、営業CFは増加(+17%)
特に注目すべきは、売上成長率の安定性です。通信サービスの契約型収益モデルにより、景気変動の影響を受けにくく、年率1〜5%の範囲で安定した成長を実現しています。また、営業CFマージンの高さ(平均27%)は、一度構築されたネットワークインフラから高い収益性を実現できる通信事業の特性を表しています。
2016年と2017年の営業CF一時低下(17%、19%)は、主にVerizon Mediaの買収統合費用と5G準備投資によるものでした。その後2018年以降は効率が改善し、安定した高いマージンを回復しています。2020年のパンデミック時には、在宅勤務需要増により通信需要が拡大し、過去最高の営業CFマージン(33%)を記録しました。
安定したキャッシュフロー基盤
以下の表では、営業CF、投資CF、財務CFはM$(百万ドル)単位、営業CF成長率(表記は「成長率」)は%単位で表示しています。
年度 | 営業CF | 成長率 | 投資CF | 財務CF |
---|---|---|---|---|
2008 | 27,452 | 2 | -31,474 | 12,651 |
2009 | 31,390 | 14 | -23,156 | -16,007 |
2010 | 33,363 | 6 | -15,054 | -13,650 |
2011 | 29,780 | -11 | -17,250 | -5,836 |
2012 | 31,486 | 6 | -20,502 | -21,253 |
2013 | 38,818 | 23 | -14,833 | 26,450 |
2014 | 30,631 | -21 | -15,856 | -57,705 |
2015 | 39,027 | 27 | -30,043 | -15,112 |
2016 | 21,689 | -44 | -9,874 | -13,376 |
2017 | 24,318 | 12 | -18,456 | -6,151 |
2018 | 34,339 | 41 | -17,934 | -15,377 |
2019 | 35,746 | 4 | -17,581 | -18,164 |
2020 | 41,768 | 17 | -23,512 | 1,325 |
2021 | 39,539 | -5 | -67,153 | 8,277 |
2022 | 37,141 | -6 | -28,662 | -8,529 |
2023 | 37,475 | 1 | -23,432 | -14,657 |
2024 | 36,912 | -2 | -18,674 | -17,100 |
Verizonの最大の強みは、極めて安定したキャッシュフロー創出能力です:
- 営業CFは過去17年間一度もマイナスになることなく、年間210億〜420億ドルを安定創出
- 2008年の金融危機、2020年のパンデミック時も営業CFは堅調を維持
- 2020年には過去最高の41,768M$を記録し、通信サービスの必需品性を実証
- 2021年以降は年間370億ドル前後で安定し、予測可能性の高いキャッシュフロー
投資CFのパターンから、同社の戦略的投資サイクルが読み取れます:
- 2008〜2012年:4G LTE展開のための大規模インフラ投資(年間150億〜300億ドル)
- 2013〜2020年:投資の効率化と5G準備期(年間100億〜240億ドル)
- 2021年:過去最大の投資(671億ドル)- 主にCバンドスペクトラム取得(450億ドル)
- 2022年以降:5G展開の通常運転期(年間190億〜290億ドル)
財務CFは配当政策と資本調達の変化を反映しています:
- 2008年、2013年、2020〜2021年:大型投資に伴う資金調達によりプラス
- 2014年:特別配当支払い(577億ドル)による大幅マイナス
- 2022年以降:配当支払いと負債削減による適度なマイナス
キャッシュフロー分析のポイント:Verizonのキャッシュフローパターンは、「安定創出→戦略投資→効率運営」のサイクルを示しています。通信インフラの特性上、大型投資は周期的に発生しますが、営業CFの安定性により投資資金を内部調達できる能力を持っています。2021年のCバンドスペクトラム取得は今後10年間の5G競争力を決定づける戦略投資であり、この投資効果により今後数年間でさらなる収益性向上が期待されます。
負債水準と資本構成
以下の表では、総資産、総負債、株主資本はM$(百万ドル)単位、自己資本率は%単位で表示しています。
年度 | 総資産 | 総負債 | 株主資本 | 自己資本率 | 負債比率 |
---|---|---|---|---|---|
2008 | 202,352 | 123,447 | 41,706 | 21 | 296 |
2009 | 226,907 | 142,764 | 41,382 | 18 | 345 |
2010 | 220,005 | 133,093 | 38,569 | 18 | 345 |
2011 | 230,461 | 144,553 | 35,970 | 16 | 402 |
2012 | 225,222 | 139,689 | 33,157 | 15 | 421 |
2013 | 274,098 | 178,682 | 38,836 | 14 | 460 |
2014 | 232,616 | 218,940 | 12,298 | 5 | 1,780 |
2015 | 244,175 | 226,333 | 16,428 | 7 | 1,378 |
2016 | 244,180 | 220,148 | 22,524 | 9 | 977 |
2017 | 257,143 | 212,456 | 43,096 | 17 | 493 |
2018 | 264,829 | 210,119 | 53,145 | 20 | 395 |
2019 | 291,727 | 228,892 | 61,395 | 21 | 373 |
2020 | 316,481 | 247,209 | 67,842 | 21 | 364 |
2021 | 366,596 | 283,396 | 83,200 | 23 | 341 |
2022 | 379,680 | 287,217 | 92,463 | 24 | 311 |
2023 | 380,255 | 286,456 | 93,799 | 25 | 305 |
2024 | 384,711 | 284,136 | 100,575 | 26 | 283 |
Verizonの資本構成には、以下の特徴的な変化が見られます:
- 総資産は2008年の202,352M$から2024年には384,711M$へと約1.9倍に拡大
- 自己資本率は2014〜2016年の極端な低水準(5〜9%)を経て、2024年には26%まで回復
- 負債比率は2015年にピーク(1,378%)を記録した後、継続的に改善し2024年には283%
- 株主資本は2014年の特別配当後の低水準から着実に回復し、2024年には過去最高を記録
資本構成の劇的な変化には、以下の戦略的要因が影響しています:
- 2013年:Vodafone持分買い戻し(1,300億ドル)のための大規模負債調達
- 2014年:特別配当(577億ドル)による株主資本の大幅減少
- 2017年以降:利益の内部留保と負債削減による財務体質の段階的改善
- 2021年:Cバンドスペクトラム取得のための追加負債調達
- 2022年以降:5G投資効果による収益改善と継続的な負債削減
負債比率の高さ(2024年で283%)は数値上は高く見えますが、通信業界の特性を考慮する必要があります。通信インフラは長期間にわたって安定したキャッシュフローを生み出すため、他の業界と比較して高い負債比率での運営が可能です。また、Verizonは2015年のピーク時(1,378%)から着実に改善を続けており、年間100億ドル以上のペースで負債削減を実施しています。
流動比率の低さ(2024年で63%)は通信業界では一般的で、安定した営業キャッシュフローと充実した信用枠により、短期的な流動性リスクは限定的です。むしろ、効率的な運転資本管理の表れと評価できます。
まとめ:長期配当投資家にとってのVerizonとは?
Verizonは、米国通信業界のリーダーとして安定した配当成長と強固な事業基盤を両立させています。AT&Tが大型買収により複雑な事業構造を経験したのに対し、Verizonは一貫して通信事業に注力し、有機的成長と効率的な資本配分により株主価値を創造してきました。
同社の強みは以下の点にあります:
- 15年連続増配の実績(2009年の軽微な減配以降)
- 極めて安定した営業キャッシュフロー創出能力(年間370億ドル前後)
- 全米最高品質のワイヤレス・ネットワークという競争優位性
- 5G展開による新たな成長機会(企業向けサービス、IoT、プライベートネットワーク)
- 予測可能な配当政策と適正な配当性向(65%前後)
- 通信サービスの必需品性による景気耐性
- 2015年以降の継続的な財務改善(負債比率の着実な低下)
一方で、注意すべき点としては:
- 成熟市場での限定的な成長率(売上年率2%前後)
- 依然として高い負債比率(283%)による財務リスク
- 無線通信市場の価格競争激化と顧客獲得コストの上昇
- 5G投資による継続的な設備投資負担(年間180億〜200億ドル)
- 固定通信事業の構造的衰退(コードカッティングの進展)
- 規制リスク(ネット中立性、プライバシー保護、独占禁止法)
- 技術変化への対応コスト(6G準備、エッジコンピューティング、AI活用)
投資家へのポイント:Verizonへの投資は、「安定した配当成長と適度なリターン」の特性を持っています。同社は急激な成長よりも、通信インフラ企業としての安定性と予測可能な株主還元を重視する投資家に適しています。年率2%の配当成長は控えめに見えますが、これが15年以上継続していることの価値は高く評価されるべきです。
配当投資家としては、Verizonの配当は「確実性の高い配当成長株」として位置づけることができます。5G投資サイクルが2025年頃に一段落すれば、より高い配当成長率の実現も期待できるでしょう。長期的には、5G、エッジコンピューティング、IoTなどの新技術により、従来の「成熟した通信企業」から「デジタルインフラ企業」への進化が期待され、より高い成長性と収益性を実現する可能性があります。
よくある質問
Verizonの配当はどれくらい安全ですか?
Verizonの配当は非常に安全と評価できます。過去17年間でわずか1回(2009年の-3%)の軽微な減配があっただけで、その後15年連続で増配を継続しています。現在の配当性向は65%と適正な範囲にあり、営業キャッシュフロー(369億ドル)に対する配当支払い総額(約110億ドル)の比率は30%程度と十分に余裕があります。また、通信サービスは生活必需品としての性質上、景気変動の影響を受けにくく、安定したキャッシュフロー創出が期待できます。さらに、同社は年率2%という保守的な配当成長率を採用しており、これにより配当の持続可能性が大幅に向上しています。5G投資による一時的な設備投資負担はありますが、これらの投資は将来の収益基盤を強化するものであり、短期〜中期的な配当削減リスクは極めて低いと考えられます。
5G投資はVerizonの将来の配当にどのような影響を与えますか?
5G投資はVerizonの配当に短期的には制約要因となりますが、中長期的には配当成長のドライバーとなる可能性があります。短期的な影響としては:(1)年間180〜200億ドルの継続的な設備投資により、フリーキャッシュフローが圧迫される、(2)2021年のCバンドスペクトラム取得(450億ドル)による負債増加と利払い負担、(3)投資回収期間中は配当成長が抑制される(現在の年率2%維持)、ことが挙げられます。
一方、中長期的なメリットとしては:(1)5G企業向けサービス(プライベートネットワーク、エッジコンピューティング、IoT)による高付加価値化、(2)固定無線アクセス(FWA)サービスによる家庭向け市場拡大、(3)ネットワーク効率化による運営コスト削減とマージン改善、(4)新たな収益源(自動運転支援、スマートシティ、産業IoT)の創出、が期待されます。
Verizonの5G投資は2025年頃にピークを迎え、その後は投資負担が軽減される見込みです。この時期以降、5G関連サービスからの収益拡大と投資負担の軽減により、配当成長率の向上(年率3〜4%程度)が期待できます。同社は2025年以降、5G投資効果により営業キャッシュフローを現在の370億ドルから400億ドル以上に拡大することを目標としており、これが実現すれば配当成長の余地は大幅に拡大します。
Verizonの高い負債比率は持続可能ですか?
Verizonの負債比率(2024年で283%)は確かに高い水準にありますが、通信業界の特性と同社の改善軌跡を考慮すると、持続可能な範囲内にあると考えられます。通信インフラは長期間にわたって安定したキャッシュフローを生み出すため、他の業界と比較して高い負債比率での運営が可能です。同社の強みとして:(1)年間370億ドルの安定した営業キャッシュフロー、(2)通信サービスの必需品としての性質による収益の予測可能性、(3)規制された寡占市場での事業運営、(4)長期契約による顧客基盤の安定性、が挙げられます。
また、同社は2015年のピーク時(負債比率1,378%)から着実な改善を続けており、年間約100億ドルペースでの負債削減を実施しています。2021年のCバンドスペクトラム取得による一時的な負債増加はありましたが、この投資は今後10年間の競争力の源泉となるものです。
今後の見通しとして、同社は2027年頃までに負債比率を250%以下に低下させる目標を掲げており、5G投資効果による収益向上と継続的な負債削減により、より健全な財務構造を実現できると期待されます。リスク要因としては金利上昇による借り換えコストの増加がありますが、現在の信用格付け(BBB+/Baa2)と安定したキャッシュフローを考慮すると、短期的な流動性リスクは限定的です。
Verizonと他の高配当株と比較した場合の投資魅力はどうですか?
Verizonは高配当株として以下の独自の魅力を持っています:(1)15年連続増配という優れた配当成長実績、(2)約6%の魅力的な配当利回りとインフレヘッジ効果、(3)生活必需品としての通信サービスによる景気耐性、(4)5G技術による将来成長性、(5)米国通信業界での寡占的地位による価格決定力。
REITsとの比較では、VerizonはREITsほど高い利回りは提供しませんが、より安定した配当成長実績と景気耐性を持ちます。ユーティリティ株との比較では、類似した安定性を持ちながら、5G展開による成長性がより期待できます。他の通信株(AT&T)との比較では、一貫した配当政策と財務規律の強さが際立っています。
エネルギー株との比較では、商品価格に左右されない安定性がVerizonの大きな優位点です。銀行株との比較では、金利感応度が低く、金利上昇局面でも比較的安定したパフォーマンスが期待できます。
投資家のポートフォリオにおいて、Verizonは「守備的成長株」としての役割を果たします。急激な株価上昇は期待できませんが、安定した配当利回りと緩やかな配当成長により、長期的に着実なリターンを提供する可能性が高いでしょう。特に、金利低下局面やボラティリティの高い市場環境では、その安定性がより高く評価される傾向があります。
【出典】
- 配当情報
- 年間報告書
- IRページ
- Macrotrends – Verizon Financial Statements
- 平均株価はグーグルファイナンス関数を用いて計算