GEエアロスペースの業績
【2026年10月版】GEエアロスペース(GE)徹底分析:Q3も利益成長、受注残2,121億ドル―航空宇宙の成長戦略と財務・株主還元
GEエアロスペース(GE Aerospace)は、民間航空機および軍用機向けジェットエンジン、コンポーネント、システムを手がける航空宇宙企業です。2024年4月にGE Vernovaを分社化し、航空宇宙事業を軸に経営しています。[1]
本記事では、FY2021~FY2025の長期データを維持し、2026年Q1~Q3決算と2026年9月末の財務諸表、通期見通し、配当・自社株買いを検証します。分社化前後の数値には比較上の制約があります。[2][3][4][5][6]
【2026年10月21日更新】
2026年10月20日に公表されたQ3決算を反映。Q3受注は190億ドル(前年同期比49%増)、調整後売上高132.85億ドル(18%増)、調整後営業利益29.88億ドル(30%増)、調整後EPS2.25ドル(36%増)。一方、Q3フリーキャッシュフローは20.42億ドルで14%減でした。通期の調整後EPS予想は8.00~8.10ドル、FCF予想は91~94億ドルに引き上げられています。[6]
【免責事項および出典について】
- 本記事の財務情報は、主にGE AerospaceのAnnual Report/Form 10-K、Form 10-Q、決算発表資料、投資家向け資料に基づいて作成しています。[1][2][3][4]
- 売上・利益、バランスシート、キャッシュフローの年次表は、原則としてFY2021~FY2025の過去5年で統一しています。
- ただし、GEヘルスケアおよびGE Vernovaの分社化により、FY2021~FY2023の旧GEベースの数値と、FY2024以降のGE Aerospace単独ベースの数値は、完全に同一条件では比較できません。本文中では、比較上の制約を明記したうえで整理しています。[5]
- 記事内の成長率、CAGR、利益率などには、公開情報に基づき筆者が算出した参考値を含みます。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の購入や売却を推奨または勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
- スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
- 最新Q3財務諸表は2026年9月30日を期末とするForm 10-Qに基づき、Q3の受注・調整後指標・通期予想は2026年10月20日の会社決算資料に基づきます。[6]
会計年度について:GEエアロスペースの会計年度は暦年(1月1日~12月31日)です。例えば「FY2025」は2025年1月1日から2025年12月31日までを指します。[1]
1. GEエアロスペースの業績:需要回復とサービス主導の成長
GEエアロスペースは民間航空機の稼働、商用エンジンの整備・交換部品、軍用エンジン需要に支えられています。FY2025は調整後売上423億ドル、調整後営業利益91億ドル、FCF77億ドルでした。2026年Q3は調整後営業利益が前年同期比30%増となりましたが、FCFは14%減であり、利益率とキャッシュフローを分けてみる必要があります。[2][6]
1.1 売上・利益の推移(過去5年:FY2021~FY2025)
FY2021は旧GEのAviationセグメント、FY2022以降はGE Aerospace相当の開示を中心に整理しています。分社化前後で完全な連続比較には制約がありますが、航空宇宙事業の成長トレンドを把握するうえでは有用です。[1][5]
| 会計年度 | 調整後売上 百万$ |
成長率 | 営業利益* 百万$ |
成長率 | 営業利益率* |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2021 | 21,310 | — | 2,882 | — | 13.5% |
| FY2022 | 26,802 | +25.8% | 4,470 | +55.1% | 16.7% |
| FY2023 | 32,816 | +22.4% | 7,253 | +62.3% | 22.1% |
| FY2024 | 35,121 | +7.0% | 7,253 | 横ばい | 20.7% |
| FY2025 | 42,322 | +20.5% | 9,055 | +24.8% | 21.4% |
| CAGR(年平均成長率)FY2021→FY2025(参考) | |||||
| 過去4年 | 約18.7% | — | 約33.1% | — | — |
注)*はNon-GAAP指標。FY2021は旧GE Aviation、FY2022~FY2025はGE Aerospace開示を中心に整理。CAGRと利益率は筆者計算。[2][5]
- 調整後売上:FY2025は423億ドルで、FY2024比21%増。サービス収入と機器収入がともに伸びました。[2]
- 営業利益*:FY2025は91億ドルで、FY2024比25%増。高付加価値サービスの拡大により、利益成長が売上成長を上回りました。[2]
- 受注残(RPO):FY2025末1,905.64億ドルから、2026年Q2末約2,108億ドル、Q3末2,120.84億ドルへ増えました。契約の履行状況や取消条件に注意が必要です。[1][4][6]
1.1.1 2025年Q4実績(2026年1月22日発表)
2025年Q4は、受注、売上、利益、キャッシュフローがそろって拡大しました。特に受注270億ドル、前年同期比74%増は、航空需要とサービス需要の強さを示しています。[2]
| 項目 | Q4 2025 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 受注(Total orders) | $27.0B | +74% |
| 売上(GAAP) | $12.7B | +18% |
| 調整後売上* | $11.9B | +20% |
| 営業利益* | $2.3B | +14% |
| 営業利益率* | 19.2% | -90bps |
| EPS(GAAP・継続事業) | $2.31 | +32% |
| 調整後EPS* | $1.57 | +19% |
| 営業キャッシュフロー | $2.1B | +59% |
| フリーキャッシュフロー* | $1.8B | +15% |
出典:GE Aerospace 2025年Q4 Earnings Release。*はNon-GAAP指標。[2]
1.2 FY2025通期ハイライト
FY2025は、分社化後初の完全年度として非常に好調な結果となりました。調整後売上、営業利益、調整後EPS、フリーキャッシュフローがいずれも二桁成長し、フリーキャッシュフロー転換率は113%でした。[2]
| 項目 | FY2025 | 前年比 |
|---|---|---|
| 受注(Total orders) | $66.2B | +32% |
| 売上(GAAP) | $45.9B | +18% |
| 調整後売上* | $42.3B | +21% |
| 利益(GAAP) | $10.0B | +31% |
| 営業利益* | $9.1B | +25% |
| 営業利益率* | 21.4% | +70bps |
| 調整後EPS* | $6.37 | +38% |
| 営業キャッシュフロー | $8.5B | +47% |
| フリーキャッシュフロー* | $7.7B | +24% |
| FCF転換率* | 113% | — |
出典:GE Aerospace Q4 2025 Earnings Release。*はNon-GAAP指標。[2]
1.2.1 2026年Q1実績(2026年4月21日発表)
2026年Q1も好調なスタートとなりました。受注は230億ドルで前年同期比87%増、調整後売上は116億ドルで29%増、営業利益は25億ドルで18%増でした。会社はQ1時点で、当初の2026年通期ガイダンスのレンジ上限寄りで推移していると説明していました。[3]
| 項目 | Q1 2026 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 受注(Total orders) | $23.0B | +87% |
| 売上(GAAP) | $12.4B | +25% |
| 調整後売上* | $11.6B | +29% |
| 利益(GAAP) | $2.2B | -2% |
| 営業利益* | $2.5B | +18% |
| 営業利益率* | 21.8% | -200bps |
| EPS(GAAP・継続事業) | $1.83 | 横ばい |
| 調整後EPS* | $1.86 | +25% |
| 営業キャッシュフロー | $1.9B | +21% |
| フリーキャッシュフロー* | $1.7B | +14% |
出典:GE Aerospace Q1 2026 Earnings Release。*はNon-GAAP指標。[3]
1.2.2 2026年Q2実績(2026年7月16日発表)
2026年Q2は、商用サービスの強い成長を背景に、売上、利益、EPS、キャッシュフローが二桁成長しました。Q2単独の受注は165億ドル、2026年上半期累計では395億ドルとなり、前年同期比49%増でした。[4]
| 項目 | Q2 2026 | 前年同期比 | 2026年上半期 |
|---|---|---|---|
| 受注(Total orders) | $16.5B | +17% | $39.5B/+49% |
| 売上(GAAP) | $13.3B | +21% | $25.7B/+23% |
| 調整後売上* | $12.6B | +24% | $24.2B/+27% |
| 利益(GAAP) | $2.8B | +17% | $5.0B/+8% |
| 営業利益* | $2.7B | +18% | $5.3B/+18% |
| 営業利益率* | 21.7% | -130bps | 21.8%/-160bps |
| EPS(GAAP・継続事業) | $2.30 | +23% | $4.13/+12% |
| 調整後EPS* | $2.02 | +22% | $3.88/+24% |
| 営業キャッシュフロー | $3.3B | +39% | $5.1B/+32% |
| フリーキャッシュフロー* | $3.0B | +43% | $4.7B/+31% |
出典:GE Aerospace Q2 2026 Earnings Release/Form 10-Q。*はNon-GAAP指標。[4]
1.2.3 2026年Q3実績(2026年10月20日発表)
2026年Q3は受注額が大きく伸び、特にCESの受注が好調でした。調整後売上と利益は二桁増加した一方、FCFは前年同期を下回りました。以下のQ3と1~9月累計の単位は原則として百万ドルです。[6]
| 項目 | Q3 2026 | 前年同期比 | 2026年1~9月 |
|---|---|---|---|
| 受注(Total orders) | 19,000 | +49% | 約58,500 |
| 売上高(GAAP) | 14,118 | +16% | 39,859(+20%) |
| 調整後売上高* | 13,285 | +18% | 37,533(+23%) |
| 利益(GAAP・税引前) | 2,805 | +12% | 7,804(+9%) |
| 調整後営業利益* | 2,988 | +30% | 8,262(+22%) |
| 調整後営業利益率* | 22.5% | +2.2pt | 22.0%(-0.3pt) |
| 継続事業GAAP EPS | $2.32 | +14% | $6.44(+12%) |
| 調整後EPS* | $2.25 | +36% | $6.13(+28%) |
| 営業CF(継続事業) | 2,203 | -14% | 7,329(+14%) |
| FCF* | 2,042 | -14% | 6,728(+13%) |
出典:GE Aerospace 2026年Q3決算資料・2026年Q3 Form 10-Q。*はNon-GAAP指標。受注の1~9月累計は会社発表の四半期概数の加算による参考値であり、丸めによる差があります。[6]
1.3 受注残高とサービス事業
航空宇宙産業では、受注残高に相当する残存履行義務(RPO)が、将来収益の予見性を測る重要指標です。GEエアロスペースのRPOはFY2025末の1,905.64億ドルから、2026年Q2末約2,108億ドル、2026年Q3末2,120.84億ドルとなりました。Q3末の内訳はサービス1,787.47億ドル、機器333.37億ドルで、サービスの長期契約が中心です。[1][4][6]
Commercial Engines & Services(CES)のRPOは2026年Q3末1,804.28億ドルで、うちサービスが1,702.27億ドルです。Defense & Propulsion Technologies(DPT)のRPOは314.31億ドルでした。これらの数字は契約上の未履行義務であり、すべてが直近の売上になるわけではありません。[6]
- LEAPエンジン:FY2025は1,802基を出荷し、FY2024比28%増でプログラム史上最高を更新しました。[2]
- 2026年上半期の出荷:商用エンジンは1,299基で前年同期比約37%増、LEAPは1,030基で約41%増でした。[4]
- CESサービス:2026年Q2のサービス収入は前年同期比26%増、内部ショップビジット収入は25%増、スペアパーツ収入は25%超の増加でした。[4]
- ショップビジット:2026年上半期の内部ショップビジット収入は前年同期比30%増で、Q2は過去最高の処理量を記録しました。[4]
- 防衛エンジン:2026年上半期のDefense & Systemsエンジン出荷は384基で、前年同期の335基から約15%増加しました。[4]
2. 収益性:サービス比率と価格が利益を支える
GEエアロスペースの収益性は、稼働中エンジンへのサービスと価格改善、新造エンジンの製品構成、インフレや成長投資のバランスで左右されます。FY2025の調整後営業利益率は21.4%。2026年Q2は21.7%(前年同期比1.3ポイント減)でしたが、Q3は22.5%(同2.2ポイント増)へ改善しました。[2][4][6]
2026年1~9月の調整後営業利益率は22.0%(前年同期比0.3ポイント減)です。Q3単独ではサービス・部品販売と価格改善により利益成長が売上成長を上回りましたが、新造機向けエンジンの構成やコストの影響は継続します。[6]
| 会計年度・期間 | 調整後売上* | 営業利益* | 営業利益率* | 主な要因 |
|---|---|---|---|---|
| FY2021 | $21.3B | $2.9B | 13.5% | 航空需要回復初期 |
| FY2022 | $26.8B | $4.5B | 16.7% | 商用航空回復、出荷増 |
| FY2023 | $32.8B | $7.3B | 22.1% | サービス拡大、価格改善 |
| FY2024 | $35.1B | $7.3B | 20.7% | 分社化後の投資・供給制約 |
| FY2025 | $42.3B | $9.1B | 21.4% | サービス増、価格改善、出荷増 |
| 2026年上半期 | $24.2B | $5.3B | 21.8% | サービス・出荷増、成長投資も拡大 |
| 2026年1~9月 | $37.5B | $8.26B | 22.0% | Q3は22.5%へ改善/累計では前年同期比-0.3pt |
注)*はNon-GAAP指標。年次表はFY2021~FY2025、2026年上半期はQ2決算資料に基づく。[2][4][5]
2.1 セグメント別の収益性
| 2026年Q2セグメント | Q2 2026売上 | 前年同期比 | Q2 2026利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| Commercial Engines & Services | $9.73B | +27% | $2.66B | 27.3% |
| Defense & Propulsion Technologies | $3.44B | +16% | $0.48B | 13.8% |
2026年Q3のセグメント別業績
| セグメント | 売上高(百万ドル) | 前年同期比 | 営業利益(百万ドル) | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| CES | 10,342 | +21% | 2,887(+21%) | 27.9% |
| DPT | 3,469 | +7% | 475(+8%) | 13.7% |
| 調整後連結合計* | 13,285 | +18% | 2,988(+30%) | 22.5% |
注:連結合計には部門間取引消去・本社調整が含まれます。CESのQ3サービス収入は17%増、機器収入は38%増でした。[6]
- CES:2026年Q2はサービス収入が26%増、機器収入が30%増、営業利益が20%増でした。一方、新造機搭載エンジン増加の影響で利益率は160bps低下しました。[4]
- DPT:2026年Q2はDefense & Systemsが12%増収、Propulsion & Additive Technologiesが23%増収となり、利益率は30bps改善しました。[4]
3. コスト構造と研究開発
航空機エンジン事業では、燃費、耐久性、整備性、認証、サプライチェーン能力が長期競争力を左右します。GEエアロスペースは年間30億ドル超の技術開発投資を継続しており、2026年1~9月の損益計算書上の研究開発費は13.58億ドル(前年同期11.32億ドル)でした。[1][6]
- CFM RISE/Open Fan:2026年上半期には、シンガポール民間航空庁およびAirbusと、Open Fanを中心とするRISE技術の世界初の空港テストベッドを設けました。[4]
- LEAP-1B耐久性:高圧タービンブレードなどを更新した耐久性改善キットの認証を完了しました。GE Aerospaceは、翼上時間を約2倍へ改善し、2027年初めから全面的な切り替えを始める見通しです。[4]
- ハイブリッド電動:NASAのElectrified Powertrain Flight Demonstrationを通じて開発したメガワット級ハイブリッド電動エンジンシステムの初の地上試験を完了しました。[4]
- 防衛技術:XA102エンジンのAssembly Readiness Reviewを完了し、米空軍から中推力級Autonomous Collaborative Platform向けGE426の予備設計審査までを進める契約を獲得しました。[4]
2026年Q3の技術面の進展:NASA、BETA Technologies、Boeingと協力して高度3万フィート超のハイブリッド電動飛行を実施したほか、XA102開発を前進させました。2026年9月には航空宇宙向け鋳造品メーカーCPPの買収契約を締結しました。買収価格は117.5億ドル、完了見込みは2027年後半で、約70億ドルを現金、残額を新規借入で賄う計画です。[6]
4. 投資家向け指標:1株あたりの価値
FY2025の調整後EPSは6.37ドル(FY2024比38%増)。2026年上半期は3.88ドル(前年同期比24%増)、2026年1~9月累計では6.13ドル(同28%増)となりました。Q3決算後に会社は2026年通期の調整後EPS見通しを8.00~8.10ドルへ再度引き上げています。[2][4][6]
| 項目 | 2026年1~9月 | FY2025 | 2026年上半期 | FY2026会社予想 |
|---|---|---|---|---|
| 継続事業EPS(GAAP) | $8.05 | $4.13 | $6.44 | 非提示 |
| 調整後EPS* | $6.37 | $3.88 | $6.13 | $8.00~$8.10 |
| フリーキャッシュフロー* | $7.7B | $4.7B | $6.728B | $9.1~$9.4B |
| FCF転換率* | 113% | 115% | 100%超(概算) | 100%超 |
注)*はNon-GAAP指標。2026年1~9月のFCF転換率は概算です。会社の2026年通期予想は2026年10月20日のQ3決算時点。[2][4][6]
5. 事業概要と市場:航空宇宙の巨人
GEエアロスペースは、民間・防衛の両市場で製品とサービスを提供します。2026年からは、Commercial Engines & Services(CES)に商用エンジンの製品管理、エンジニアリング、サプライチェーン、製造、アフターマーケットサービスなどを統合し、エンジンのライフサイクル全体をより一体的に管理する体制へ移行しました。[1][4]
- Commercial Engines & Services(CES):商用エンジンとアフターマーケットサービスが中核です。Q2 2026の受注は129億ドル、売上は97億ドル、利益は27億ドルでした。[4]
- Defense & Propulsion Technologies(DPT):防衛エンジン、航空機システム、推進・アディティブ技術を扱います。Q2 2026の受注は41億ドル、売上は34億ドル、利益は4.75億ドルでした。[4]
- 設置基盤:駐機中の機体を含め、商用エンジン約50,000基、軍用エンジン約30,000基の設置基盤があります。[4]
- サービス比率:2026年Q2のForm 10-Qでは、アフターマーケットサービス事業が売上高の約70%を占めると説明されています。[4]
- 従業員:2026年Q1時点で全世界に約57,000人の従業員を有しています。[3]
2026年Q3時点でも商用約5万基・軍用約3万基の設置基盤が収益源です。2026年Q3にはCESで受注152.65億ドル、DPTで42.69億ドルを計上し、2027年に向けたサービスと生産能力増強が重要課題となっています。[6]
6. 財務の健全性:バランスシートとキャッシュフロー
ここではFY2021~FY2025の過年度比較を残し、2026年Q2末に加えて2026年Q3末(9月30日)の財務諸表を追加します。FY2021~FY2023は分社化前後で開示主体・集計範囲が異なるため、2024年以降のGE Aerospace単独値と単純な時系列比較はできません。[1][4][5][6]
6.1 バランスシート主要項目(FY2021~FY2025・2026年Q3末)
| 会計年度末・期末 | 現金等 百万$ |
総資産 百万$ |
総負債 百万$ |
株主資本 百万$ |
総借入 百万$ |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2021 | 20,283 | 旧GE連結ベース | 旧GE連結ベース | 旧GE連結ベース | 旧GE連結ベース |
| FY2022 | 19,196 | 旧GE連結ベース | 旧GE連結ベース | 旧GE連結ベース | 旧GE連結ベース |
| FY2023 | 12,632 | 分社化前ベース | 分社化前ベース | 分社化前ベース | 20,500 |
| FY2024 | 13,619 | 123,140 | 103,576 | 19,342 | 19,273 |
| FY2025 | 12,392 | 130,169 | 111,271 | 18,677 | 20,494 |
| 2026年Q2末 | 9,345 | 127,672 | 109,805 | 17,640 | 19,157 |
| 2026年Q3末 | 8,764 | 127,195 | 109,444 | 17,522 | 19,326 |
注)現金等は貸借対照表の「Cash, cash equivalents and restricted cash」(継続事業の計上範囲)で統一。総借入は短期・長期借入の合計。FY2021~FY2023には分社化前の比較制約があります。[1][4][5][6]
- 流動性:2026年Q2末の現金等は93.5億ドルです。これに満期3カ月超の定期預金10億ドルを加えた流動性は103億ドルでした。[4]
- 総資産:2026年Q2末は1,276.7億ドルで、FY2025末の1,301.7億ドルから減少しました。[4]
- 総借入:2026年Q2末は191.6億ドルで、FY2025末の204.9億ドルから13億ドル減少しました。[4]
- 信用枠:2026年Q2末時点で、2029年満期の30億ドルの無担保リボルビング信用枠があり、借入残高はありません。[4]
- 信用格付け:2026年2月にMoody’sが長期格付けをA3からA2へ引き上げ、2026年4月にはS&PがA-を据え置きつつ見通しを「ポジティブ」へ変更しました。[4]
- 最新Q3末:貸借対照表上の現金等87.64億ドル、総借入193.26億ドルで、FY2025末比の債務削減が続いています。[6]
ミニ解説:2026年上半期は自社株買いと債務返済により現金と株主資本が減少しましたが、総借入も減っています。財務健全性を評価する際は、現金残高だけでなく、借入、年間FCF、信用格付け、株主還元を組み合わせて確認する必要があります。
6.2 キャッシュフロー推移(FY2021~FY2025・2026年1~9月)
| 会計年度・期間 | 営業CF 百万$ |
設備・ソフト投資 百万$ |
フリーCF* 百万$ |
FCF転換率* | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2021 | 旧GE連結ベース | 旧GE連結ベース | 旧GE連結ベース | — | 分社化前で比較制約あり |
| FY2022 | 旧GE連結ベース | 旧GE連結ベース | 旧GE連結ベース | — | 分社化前で比較制約あり |
| FY2023 | 4,609 | 862 | GE Aerospace相当ベース | — | GE Vernova分社化前 |
| FY2024 | 5,817 | 1,032 | 6,203 | 100%超 | GE Aerospace単独化初年度 |
| FY2025 | 8,543 | 1,273 | 7,694 | 113% | 営業CF+47%、FCF+24% |
| 2026年上半期 | 5,126 | 666 | 4,685 | 115% | FCF+31% |
| 2026年1~9月 | 7,329 | 1,002 | 6,728 | 100%超(概算) | FCF前年同期比+13%。GAAP設備投資控除とFCFは異なる |
注)*はNon-GAAP指標。FCFには設備投資のほか、分社化・事業再編に関する現金支出などの調整が含まれるため、営業CFから設備投資を単純に差し引いた金額とは一致しない場合があります。[1][2][4][5]
FY2025のFCFは76.94億ドル、2026年上半期は46.85億ドルでした。2026年Q3は20.42億ドルで前年同期比14%減、1~9月累計は67.28億ドルで13%増です。四半期ベースの減速と、累計・通期ベースの増加を区別する必要があります。[2][4][6]
2026年Q3末の財務:総資産1,271.95億ドル、総負債1,094.44億ドル、GE Aerospace株主資本175.22億ドル。短期・長期借入合計193.26億ドルで2025年末204.94億ドルから減少しています。貸借対照表の現金等は87.64億ドル、現金等と総借入の差額は概算105.62億ドルのネット有利子負債です。ランオフ保険資産・負債もあるため、単純な純負債指標には限界があります。[6]
7. 資本効率性と株主還元
GEエアロスペースは、分社化後に航空宇宙専業会社としての資本配分を明確にしています。研究開発、MRO能力、製造設備、サプライチェーンへの再投資を優先しつつ、余剰キャッシュを配当と自社株買いに回す方針です。[1][4]
| 指標 | 2026年1~9月 | FY2025 | 2026年上半期 | 読み方 |
|---|---|---|---|---|
| 調整後EPS* | $6.37 | $3.88 | $6.13 | 2026年上半期は前年同期比24%増。 |
| フリーCF* | $7.7B | $4.7B | $6.728B | 2026年上半期は前年同期比31%増。 |
| FCF転換率* | 113% | 115% | 100%超(概算) | 利益をキャッシュへ変える力は高い。 |
| 自社株買い | $7.6B | $4.5B | $6.206B(取得株式価額) | Q2単独では20億ドルを買い戻した。 |
| 配当支払額 | — | $0.9B | $1.362B | 2026年上半期のキャッシュフロー計算書ベース。 |
注)*はNon-GAAP指標。2026年1~9月の普通株取得は発行株式の買い戻し実績62.06億ドル(10-Q記載)、キャッシュフロー計算書の自己株式取得支出は65.06億ドルで、決済タイミングなどにより異なります。2026年Q3末の200億ドルの自社株買い承認枠残高は約160.04億ドル。[4][6]
直近の配当:2026年9月21日に、1株当たり四半期0.47ドルの配当を宣言。権利落ち日と株主名簿基準日は10月5日、支払予定日は10月26日です。2026年Q3までの1株宣言配当合計は1.41ドル、9カ月の現金配当支払額は13.62億ドルでした。2026年9月の配当水準を単純年率換算すると1.88ドルで、将来配当を保証するものではありません。[7][6]
8. 技術開発とイノベーション戦略:「Future of Flight」の実現へ
次世代エンジン、耐久性向上、代替燃料対応、製造技術高度化、デジタルによる予兆保全・整備最適化は、中長期の競争軸です。GEエアロスペースは、現在のCFM56・LEAPなどの設置基盤から得るサービス収益を活用し、次世代技術に投資しています。[1][4]
- CFM RISE:Open Fanなどの次世代技術を検証するプログラムです。2026年上半期にはシンガポールで空港テストベッドを設定しました。[4]
- LEAP耐久性改善:LEAP-1Bの耐久性改善キットの認証を完了し、翼上時間を約2倍へ改善することを目指しています。[4]
- MRO投資:グローバルMROネットワークに10億ドル超を投資し、LEAP対応能力を拡大しています。2026年上半期にはIberiaを7社目のLEAP Premier MROへ加え、Delta TechOpsのLEAP-1A・1B対応能力も拡大しました。[2][4]
- サプライチェーン改善:2026年Q2は優先サプライヤーからの材料投入量が前四半期比・前年同期比とも二桁増となりました。ショップのターンアラウンドタイムもFY2025末から約1週間短縮しています。[4]
- 防衛・自律機:XA102、GE426、F404、CT7、T408など、防衛・自律航空機向けの推進技術と受注も成長領域です。[4]
2026年Q3にはハイブリッド電動推進の高高度飛行実証、GEK800のJASSM向け第2供給元としての採用、XA102の開発進展が公表されました。同時にCPP買収計画を通じて、エンジン用鋳造部品の製造能力を自社グループに取り込む方針です。[6]
9. 市場での強みとライバル
GEエアロスペースは、商用・軍用エンジンの大規模な設置基盤とサービス網を強みに持ちます。競合はPratt & Whitney(RTX傘下)、Rolls-Royceなどです。競争の焦点は、燃費、翼上時間、整備性、耐久性、納期、認証対応、アフターマーケットでの顧客接点です。[1]
- 設置基盤:商用約50,000基、軍用約30,000基のエンジン設置基盤があり、長期サービス収入の基盤になっています。[4]
- LEAP:ナローボディ機向けで重要なエンジンファミリーです。2026年上半期の出荷は1,030基で前年同期比41%増でした。[4]
- サービス優位性:FY2025はCESサービス収入がFY2024比26%増、2026年上半期も前年同期比32%増と、アフターマーケットの強さが続いています。[2][4]
- 顧客獲得:2026年上半期にはUnited AirlinesとDelta Air LinesがGEnx、American AirlinesとCopa AirlinesがLEAPを選定しました。Ryanairとは約2,000基のCFM56・LEAPエンジンを対象とする長期部品サービス契約を締結しています。[4]
2027年の焦点:経営陣は2027年の商用サービス売上成長を低二桁と見込んでいます。2026年Q3はCESサービス売上17%増でした。新造エンジン増産に伴う製品構成の変化が続くため、短期の需要の強さだけでなく、将来のサービス成長率とGE9Xの採算も重要です。[6]
10. FY2026年の見通しと今後のポイント
会社は2026年1月22日にFY2026見通しを示し、7月16日のQ2決算で上方修正しました。さらに2026年10月20日のQ3決算では、受注とサービス売上の好調さを受け、売上成長率、営業利益、EPS、FCFの予想を再び上方修正しました。[2][4][6]
FY2026会社予想(2026年Q3決算で再上方修正)
| 指標 | 従来予想 | 2026年Q2後の予想 | 2026年Q3後の最新予想 |
|---|---|---|---|
| 調整後売上成長率* | 低二桁成長 | 10%台後半 | 約19~20% |
| 営業利益* | $9.85~$10.25B | $10.55~$10.75B | $10.9~$11.0B |
| 調整後EPS* | $7.10~$7.40 | $7.65~$7.85 | $8.00~$8.10 |
| フリーキャッシュフロー* | $8.0~$8.4B | $8.9~$9.2B | $9.1~$9.4B |
| FCF転換率* | 100%超 | 100%超 | 100%超 |
注)*はNon-GAAP指標。旧見通しは当時の公表内容、最新見通しは2026年10月20日Q3決算時点。[4][6]
セグメント別のFY2026見通し
- CES売上:2026年通期は20%台前半の成長へ引き上げ。[6]
- CESサービス売上:2026年通期は20%台前半の従来レンジの上限寄りを予想。[6]
- CES機器売上:2026年通期は20%台前半の成長へ引き上げ。[6]
- CES営業利益:2026年通期105億~106億ドル(従来102.5億~103.5億ドル)へ引き上げ。[6]
- DPT売上:2026年通期は低二桁成長を予想。[6]
- DPT営業利益:2026年通期16億~17億ドルの予想を維持。[6]
2026年Q3はLEAPの出荷が前年同期比5%増、2026年1~9月累計では26%増でした。Q3決算は年間LEAP出荷基数の確定値を示すものではないため、FY2026の最終着地と生産能力の増強状況を確認する必要があります。[6]
投資家が注目すべきリスク
- サプライチェーンと生産制約:材料・部品供給が遅れれば、エンジン納入とサービス収入の成長に影響します。供給状況は改善していますが、会社は制約とインフレが続くとみています。[4]
- GE9Xプログラム:Boeing 777X向けGE9Xは重要な将来製品ですが、777X認証・納入スケジュールの遅れは収益化時期に影響します。
- 新造機搭載エンジンの採算:新造機向けエンジンは初期採算が低くなりやすく、2026年上半期もGE9Xを含む搭載エンジン増加がCESの利益率を押し下げました。[4]
- 航空需要の変動:景気後退、燃料価格、航空会社の財務悪化、投資計画変更は、新造機・サービス需要に影響します。
- 中東情勢:2026年上半期には業績への重大な影響はありませんでしたが、紛争による航空機稼働率低下や燃料価格上昇は、ショップビジット、スペアパーツ、長期サービス契約の採算に影響する可能性があります。[4]
- 防衛予算・地政学:防衛需要は追い風ですが、予算配分、輸出規制、国際情勢の変化に左右されます。
- 技術・品質・認証:新技術の開発遅延、品質問題、認証遅延は長期の競争力と収益性に影響します。
- 関税・貿易政策:航空宇宙分野の関税政策や返金の扱いは、仕入れコストや長期契約の採算に影響する可能性があります。[4]
- 旧GE由来の負債・年金・保険関連:航空宇宙専業会社になった後も、年金、ランオフ保険、訴訟関連のリスクは完全には消えていません。[1]
- CPP買収・資金調達:買収対価117.5億ドル、予定資金は現金約70億ドルと新規借入です。完了時期は2027年後半を見込んでおり、規制当局承認、統合コスト、借入増加に注意が必要です。[6]
- 2027年のサービス成長率:経営陣は低二桁成長を想定しており、2026年Q3のサービス増収率17%からの鈍化余地があります。[6]
11. まとめ:GEエアロスペースはこれからも成長できるか?
GEエアロスペースは、分社化によって航空宇宙事業に集中し、設置基盤とサービス収益をテコに成長するモデルがより明確になりました。FY2025は調整後売上21%増、営業利益25%増、調整後EPS38%増、FCF転換率113%と、非常に強い業績を示しました。[2]
2026年Q3は受注49%増、調整後売上18%増、調整後営業利益30%増、調整後EPS36%増と好調でした。2026年1~9月は調整後売上375.33億ドル、調整後営業利益82.62億ドル、FCF67.28億ドル。RPOは2026年Q3末で2,120.84億ドルとなりました。一方、Q3のFCF単独では14%減少しました。[6]
- 強み:約80,000基の商用・軍用エンジン設置基盤、アフターマーケットサービス網、価格決定力、2,100億ドル超の受注残、次世代技術への投資。
- 今後の鍵:生産能力の拡大、サプライチェーン改善、GE9Xと777Xの進展、LEAPの出荷拡大、サービス収入の持続的成長。
- 短期の焦点:2026年の調整後営業利益109億~110億ドル、調整後EPS8.00~8.10ドル、FCF91億~94億ドルの達成と、Q4のキャッシュ創出力です。[6]
GEエアロスペースは、エンジンの新規出荷だけでなく稼働中のエンジンが生む長期サービス収益を強みとします。需要・収益性が強い一方、Q3のFCF減少、サプライチェーン、GE9Xの採算、2027年のサービス成長鈍化、CPP買収による新規借入は慎重に評価すべき要素です。[6]
ミニ解説:売上成長と利益率を分けて見る
GEエアロスペースでは、新造機向けエンジンの出荷が増えると売上は伸びても、初期採算の低さから利益率が低下することがあります。その後、稼働エンジンが増え、整備・交換部品・長期サービス契約の収入が積み上がることで、ライフサイクル全体の収益性が高まる構造です。
本記事は、公開情報に基づき筆者の分析を加えたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。
最終更新日時:2026年10月21日(FY2025通期・2026年Q1~Q3決算・2026年Q3 Form 10-Q反映)
変更箇所(2026年10月21日更新)
- Q3決算の受注・GAAP売上・調整後売上・営業利益率・EPS・FCF、および2026年1~9月累計を追加。
- 通期調整後EPSを8.00~8.10ドル、調整後営業利益を109~110億ドル、FCFを91~94億ドルへ更新。
- 2026年Q3末のRPOを2,120.84億ドル、CESのRPOを1,804.28億ドルへ更新。
- 2026年Q3のCES・DPTセグメント別売上・利益・利益率を追加。
- 2026年Q3末の総資産、負債、株主資本、現金、借入残高、1~9月キャッシュフローを追加。
- 2026年9月21日宣言の四半期配当0.47ドル、9月末までの株主還元と自社株買い残存枠を追加。
- CPP買収契約(117.5億ドル、2027年後半完了予定)と資金調達・統合リスクを追加。
- ハイブリッド電動の高高度試験と次世代防衛エンジンの技術開発進展を追加。
- 分社化前後の比較、FCFと営業CFの定義、GAAPとNon-GAAPを区別し、一次情報への出典・確認日を整理。
【注】(出典リンク)
- GE Aerospace FY2025年次報告・分社化・財務・事業概要 → GE Aerospace 2025 Annual Report and 10-K → SEC Form 10-K(FY2025)(確認日:2026-10-21) ↩
- GE Aerospace 2025年Q4・FY2025決算 → GE Aerospace Q4 2025 Earnings Release → Q4 2025 Investor Presentation(確認日:2026-10-21) ↩
- GE Aerospace 2026年Q1決算 → GE Aerospace Q1 2026 Earnings Release → Q1 2026 Press Release PDF(確認日:2026-10-21) ↩
- GE Aerospace 2026年Q2決算・上半期実績・最新ガイダンス・財務諸表 → GE Aerospace Q2 2026 Earnings Release → Q2 2026 Investor Presentation → GE Aerospace Form 10-Q(2026年6月30日終了期)(確認日:2026-10-21) ↩
- 旧GE・過年度データ・分社化前後の比較制約 → GE Aerospace Annual Reports → GE Annual Reports Archive(確認日:2026-10-21) ↩
- GE Aerospace 2026年Q3・1~9月業績、RPO、BS・CF、通期見通し・CPP買収 → GE Aerospace「Q3 2026 Results」 → SEC 2026年Q3 Form 10-Q → SEC決算発表添付資料(8-K)(確認日:2026-10-21) ↩
- 2026年9月21日宣言配当・10月26日支払予定 → GE Aerospace「Board Authorizes Quarterly Dividend」(確認日:2026-10-21) ↩


Q3の追加指標:2026年Q3はCESのサービス売上が前年同期比17%増、スペアパーツ売上が20%超増加。CESの受注額は152.65億ドル(58%増)、DPTは42.69億ドル(18%増)でした。経営陣は2027年の商用サービス売上を低二桁成長と見込んでいます。[6]