GEエアロスペースの業績
はじめに
GEエアロスペース (GE Aerospace) は、民間航空機および軍用機向けジェットエンジン、コンポーネント、システムの設計・製造における世界的リーダーです。2024年4月の分社化完了により、航空宇宙事業に特化した企業として新たなスタートを切りました。[1]
この記事では、FY2021~FY2025の推移と、2026年の会社ガイダンスを踏まえ、事業内容、成長戦略、財務状況、そして将来展望を投資家の視点から分かりやすく整理します。[2]
【免責事項および出典について】
- 本記事の財務情報は、主に同社の年次報告書(Annual Report/10-K相当)および決算発表資料(Earnings Release等)に基づいて作成しています。[1][2]
- 記事内の成長率(CAGRなど)や一部指標は、公開情報に基づき筆者が算出した参考値です。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の購入や売却を推奨または勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。
- 分社化(および事業再編)に伴い、年度によって表示区分や比較可能性に制約が生じる場合があります(該当箇所で注記します)。[1]
- スマートフォンでご覧の場合、表は横にスクロールしてご確認ください。
会計年度について: GEエアロスペースの会計年度は暦年(1月1日〜12月31日)です。例えば「FY2025」は2025年1月1日から2025年12月31日までを指します。[1]
1. GEエアロスペースの業績:需要回復とサービス主導の成長
GEエアロスペースは、民間航空の稼働回復と防衛需要を背景に、売上・利益ともに拡大してきました。特に稼働中エンジンの整備・補修(アフターマーケット)が、収益の安定性と利益率を支える中核です。[1]
1.1. 売上・利益の推移(FY2021~FY2025)
FY2021は旧GEの「Aviation」セグメント、FY2022以降は(現行開示に基づく)GE Aerospace相当のセグメント情報を中心に整理しています。[3][1]
| 会計年度 | 調整後売上(百万$) | 成長率 | 営業利益*(百万$) | 成長率 |
|---|---|---|---|---|
| FY2021 | 21,310 | – | 2,882 | – |
| FY2022 | 26,802 | +25.8% | 4,470 | +55.1% |
| FY2023 | 32,816 | +22.4% | 7,253 | +62.3% |
| FY2024 | 35,121 | +7.0% | 7,253 | – |
| FY2025 | 42,322 | +20.5% | 9,055 | +24.8% |
| CAGR(年平均成長率) FY2021→FY2025(参考) | ||||
| 過去4年 | 約18.7% | – | 約33.1% | – |
出典:FY2021は旧GE年次報告書(Aviationセグメント)。[3] FY2022~FY2025はGE Aerospace年次報告書および決算発表資料。[1][2] *営業利益はNon-GAAP(Operating profit*)。CAGRは上記データから筆者算出。
- 調整後売上: FY2025は423億ドル、前年比+21%と力強い成長を達成。サービス収入+21%、機器収入+18%と両輪で拡大。[2]
- 営業利益*: FY2025は90.6億ドル、前年比+25%。高付加価値のサービス拡大と稼働増により、利益成長が売上成長を上回る構造が定着。[2]
1.1.1. 2025年Q4実績(2026年1月22日発表)
2025年Q4のハイライトは、受注の大幅増加と利益の堅調さです。[2]
| 項目 | Q4 2025 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 受注(Total orders) | $27.0B | +74% |
| 売上(GAAP) | $12.7B | +18% |
| 調整後売上* | $11.9B | +20% |
| 営業利益* | $2.3B | +14% |
| EPS(GAAP) | $2.31 | +32% |
| 調整後EPS* | $1.57 | +19% |
| フリーキャッシュフロー* | $1.8B | +15% |
出典:GE Aerospace 2025年Q4 Earnings Release(2026年1月22日発表)。[2] *Non-GAAP指標。
1.2. FY2025通期ハイライト
2025年通期(FY2025)は、分社化後初の完全年度として記録的な業績を達成しました。[2]
| 項目 | FY2025 | 前年比 |
|---|---|---|
| 受注(Total orders) | $66.2B | +32% |
| 調整後売上* | $42.3B | +21% |
| 営業利益* | $9.1B | +25% |
| 調整後EPS* | $6.37 | +38% |
| フリーキャッシュフロー* | $7.7B | +24% |
| FCF転換率 | 113% | – |
出典:GE Aerospace Q4 2025 Earnings Release。[2]
1.3. 受注残高とサービス事業
航空宇宙産業では、受注残高(バックログ)は将来の収益安定性を示す重要指標です。会社発表では、2025年末時点で受注残高が約1,900億ドルに達し、前年から約200億ドル増加しました。[2]
- LEAPエンジン: 2025年に1,802基を出荷(前年比+28%)、プログラム史上最高記録。[2]
- 防衛エンジン: 出荷+30%、受注残高は約210億ドルに拡大。[2]
- サービス収入: CES(Commercial Engines & Services)のサービス収入は前年比+26%、内部ショップビジット収入は+24%。[2]
2. 収益性:効率的な事業運営
収益性は、稼働増に連動するサービス比率の上昇、コスト改善、供給制約の緩和で左右されます。FY2025は営業利益率*(Operating profit margin*)が21.4%となり、前年から70bps改善しました。[2]
3. コスト構造と研究開発
燃費効率・耐久性・整備性の改善は、中長期の競争力に直結します。会社資料では、次世代技術(例:CFM RISEプログラム等)を軸に開発投資を継続しています。2025年には、ハイブリッド電動デモンストレーターの初の地上試験を実施しました。[2]
4. 投資家向け指標:1株あたりの価値
FY2025の調整後EPSは$6.37(前年比+38%)を達成。2026年の会社ガイダンス(調整後EPS)は$7.10~$7.40に設定されています。[2]
5. 事業概要と市場:航空宇宙の巨人
GEエアロスペースは、民間・防衛の両市場で製品とサービスを提供します。セグメントとしては「Commercial Engines & Services(CES)」と「Defense & Propulsion Technologies(DPT)」を中核に構成されています。2026年1月より、CESにTechnology & Operations(T&O)チームを統合し、エンジンのライフサイクル全体を一元管理する体制に移行しました。[2]
6. 財務の健全性:バランスシート
ここでは、主要な財務指標を確認します。分社化・再編により年度間で区分変更が起こり得るため、「同一基準での完全な連続比較」には限界がある点は前提として押さえてください。[1]
6.1. バランスシート主要項目(5年分)
| 会計年度 | 現金等(百万$) | 総借入(百万$) | 希薄化後 株式数(百万株) |
|---|---|---|---|
| FY2021 | 20,283 | — | — |
| FY2022 | 19,196 | — | — |
| FY2023 | 12,632 | — | — |
| FY2024 | 13,600 | — | 1,094 |
| FY2025 | 12,400 | 20,500 | 1,068 |
出典:FY2021~FY2023は旧GE年次報告書。[3]
FY2024~FY2025はGE Aerospace決算発表資料。[2]
7. 資本効率性と収益性
資本効率は、株主還元・再投資・負債水準のバランスとともにチェックします。
| 会計年度 | ROE(概算) | 備考 |
|---|---|---|
| FY2025 | 約34% | 会社発表のROE。[4] |
出典:ROEは報道ベースの参考値。[4]
8. 技術開発とイノベーション戦略:「Future of Flight」の実現へ
次世代エンジン(CFM RISE等)、代替燃料対応、製造技術高度化、デジタル(予兆保全・整備最適化)などが中長期の競争軸です。[1]
- CFM RISE: 2026年にAirbus A380テストベッドを用いた飛行試験を予定。オープンファン技術により燃料消費20%削減を目標。[5]
- MRO投資: 10億ドル超を全世界のMRO(整備・修理・オーバーホール)ネットワークに投資中。うち約5億ドルはLEAP対応能力の拡大に充当。[2]
- サプライチェーン改善: 優先サプライヤーからの材料投入量を2025年に前年比40%超増加。[2]
9. 市場での強みとライバル
GEエアロスペースは大規模な設置基盤とサービス網を強みに持ち、Pratt & Whitney(RTX傘下)やRolls-Royce等と競合します。競争の焦点は、運航コスト(燃費・整備性)、納期、信頼性、そしてアフターマーケットの囲い込みです。[1]
10. FY2026年の見通しと今後のポイント
会社は2026年1月22日のQ4決算発表時にFY2026ガイダンスを公表しています。[2]
FY2026 会社予想(2026年1月22日発表)
- 営業利益*(Operating profit*):$9.85~$10.25B(前年比+約10%)[2]
- 調整後EPS*:$7.10~$7.40(前年比+14%中間値)[2]
- フリーキャッシュフロー*:$8.0~$8.4B(FCF転換率100%超)[2]
- LEAP出荷:約2,000基(前年比+15%目標)[2]
投資家が注目すべきリスク
- サプライチェーンと生産制約: 供給制約が長引けば、生産・納入に影響する可能性。高温合金や先端複合材料の調達が課題。
- GE9Xプログラム: Boeing 777X向けGE9Xエンジンの認証遅延と、2026年に損失が前年の約2倍(数億ドル規模)に拡大見込み。[5]
- マクロ経済: 景気後退や航空需要の減速が、新造機・サービス需要に波及するリスク。
- 地政学・防衛予算: 防衛需要の変動、輸出規制、国際紛争等の不確実性。
- 技術・品質: 新技術の開発遅延、品質問題、運航停止等のリスク。
- 規制環境: 環境規制・認証制度の変化が製品計画に影響する可能性。
11. まとめ:GEエアロスペースはこれからも成長できるか?
GEエアロスペースは、分社化で航空宇宙事業に集中し、設置基盤とサービス収益をテコに成長を狙うモデルがより明確になりました。FY2025は売上+21%、EPS+38%、FCF転換率113%と好調な業績を達成し、約1,900億ドルの受注残高が将来の収益安定性を支えています。[2]
- 強み: 約80,000基の設置基盤、サービス網、技術力(次世代技術への投資)。[1]
- 今後の鍵: 生産能力の拡大と供給制約の緩和、GE9X認証完了と777X量産開始、技術ロードマップの遂行、規律ある資本配分。
- 短期の焦点: FY2026ガイダンスの達成(営業利益約100億ドル、FCF80~84億ドル)と受注動向の持続。[2]
本記事は、公開情報に基づき筆者の分析を加えたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。
最終更新日時: 2026年2月2日(2025年Q4決算反映/2026年1月22日発表)
【注】(出典リンク)
- GE Aerospace 年次報告書(FY2024、財務諸表・セグメント・ガイダンス基礎) → Annual Report (PDF) → Form 10-K(FY2024, HTML)(確認日:2026-02-02) ↩
- GE Aerospace 2025年Q4 決算発表(受注・売上・EPS・FY2025通期・FY2026ガイダンス) → Earnings Release(HTML) → Investor Presentation (PDF) → Earnings(一覧)(確認日:2026-02-02) ↩
- 旧GE 年次報告書(FY2021、Aviationセグメント) → Annual Report 2021 (PDF)(確認日:2026-02-02) ↩
- ROE等の参考値 → Ticker Report(確認日:2026-02-02) ↩
- GE Aerospace 市場分析・競争環境 → FinancialContent(分析記事)(確認日:2026-02-02) ↩

