GIS:ゼネラルミルズの配当推移

必需品,配当

ゼネラルミルズ (General Mills, Inc.) の配当利回りと株価をチャート(直近90日間)で見てみます。

権利落ち日や配当性向(1株配当÷EPS、EPS比で配当を払い過ぎていないかを図る指標)等も確認してみます。

配当利回りと株価の推移:3ヶ月チャート

出典:株価はGoogle Finance関数、分配情報はIR/NASDAQ等の公開データ

*平均株価はFY(6/1〜翌5/31相当)の日次平均、EPSは通期希薄化EPS。配当関連の一部(DPS、配当性向)はMacrotrendsとIR情報を突合、キャッシュ配当総額は10-Kに基づく。

年間利回り・配当成長率・配当性向・DPS/EPS(2008–2024)

年次の推移(食品セクター特性に即した「緩やかな増配と安定配当」):

配当 平均株価 年EPS
平均利回り 成長率 配当性向 年計(DPS,$)
2024 3.57% 9% 55% 2.36 66.1 4.31
2023 3.15% 6% 50% 2.16 68.5 4.31
2022 2.56% 1% 46% 2.04 79.7 4.42
2021 3.15% 3% 53% 2.02 64.2 3.78
2020 3.23% 0% 55% 1.96 60.7 3.56
2019 3.62% 0% 68% 1.96 54.2 2.90
2018 4.31% 2% 54% 1.96 45.5 3.64
2017 3.64% 8% 69% 1.92 52.7 2.77
2016 2.82% 7% 64% 1.78 63.2 2.77
2015 2.86% 8% 85% 1.67 58.3 1.97
2014 2.91% 17% 55% 1.55 53.2 2.83
2013 2.63% 8% 47% 1.32 50.2 2.79
2012 2.88% 9% 52% 1.22 42.3 2.35
2011 2.90% 17% 41% 1.12 38.6 2.70
2010 2.63% 12% 43% 0.96 36.5 2.24
2009 2.61% 9% 45% 0.86 32.9 1.90
2008 2.62% 10% 43% 0.79 30.1 1.85

【出典メモ】DPS・利回り・配当性向・EPSの長期系列はMacrotrendsとIR資料の整合確認に基づく整理。FY2024の実績確認(DPS/配当性向/EPS)は10-K・決算資料で裏付け。

配当総額(現金支出の概算)とOCFカバー比率:長期推移

年次の「営業CF(OCF)」と、IRの年間DPSにMacrotrendsの年次発行株式数を乗じた概算の配当総額から、OCF/配当カバー(倍)を算出しました(端数処理のため±数%の誤差があり得ます)。正確なキャッシュアウトは各年10-Kの「Common stock dividends paid」をご確認ください。

営業CF (M$) 配当総額 (M$)
(概算)
OCF/配当カバー(倍)
2024 3,586 約1,370 約2.6
2023 2,779 約1,260 約2.2
2022 3,316 約1,220 約2.7
2021 2,983 約1,230 約2.4
2020 3,676 約1,200 約3.1
2019 2,807 約1,200 約2.3
2018 2,841 約1,170 約2.4
2017 2,415 約1,170 約2.1
2016 2,764 約1,090 約2.5
2015 2,543 約1,000 約2.5
2014 2,541 約880 約2.9
2013 2,926 約760 約3.8
2012 2,407 約700 約3.4
2011 1,531 約630 約2.4
2010 2,181 約540 約4.0
2009 1,828 約510 約3.6
出典:営業CFと年次発行株式数=Macrotrends(OCF年次)、(Shares Outstanding)。DPS=General Mills IR(Dividends & Stock Splits)。
読み取り方:GISは一貫して2倍前後以上のOCFカバーを確保(コロナ特需年は3倍超)。
近年は買収後の負債圧縮と原材料高をこなしつつ、配当原資の安定性を維持。

キャッシュフローの全体像(営業/投資/財務)

営業CF 投資CF 財務CF
2008 1,730 -442 -1,093
2009 1,828 -289 -1,405
2010 2,181 -721 -1,504
2011 1,531 -715 -941
2012 2,407 -1,871 -667
2013 2,926 -1,515 -1,140
2014 2,541 -562 -1,824
2015 2,543 -1,602 -1,385
2016 2,764 93 -2,420
2017 2,415 -647 -1,747
2018 2,841 -8,685 5,446
2019 2,807 -557 -2,176
2020 3,676 -486 -1,942
2021 2,983 -513 -2,716
2022 3,316 -1,691 -2,503
2023 2,779 -346 -2,404
2024 3,586 -1,197 -2,272
出典:Macrotrends(Operating CF)、同(Investing/Financing CF 全年次)。

BS概観(長期)

総資産・総負債・株主資本の推移と自己資本率の目安。2018年に大型買収でレバレッジ上昇→その後、着実に自己資本比率回復。

総資産 総負債 株主資本 自己資本率(%)
2016 21,712 15,560 4,930 23
2017 21,813 16,216 4,328 20
2018 30,624 23,355 6,141 20
2019 30,111 22,192 7,055 23
2020 30,807 21,913 8,894 29
2021 31,842 21,464 10,378 33
2022 31,090 20,302 10,788 35
2023 31,452 20,752 10,700 34
2024 31,470 21,821 9,649 31
出典:Macrotrends(Balance Sheet 年次)。

投資家向けポイント

価格決定力
価格×ミックスの両輪
CFの質
OCFで配当を賄う構造
レバレッジ
買収後に規律回復
ペットフード
Blue Buffaloが牽引

① 収益ドライバー

  • 価格改定とミックス改善:北米シリアル/スナックで継続。インフレ耐性の源泉。
  • プレミアム志向:ヨーグルト(高付加価値SKU)やペットフードの拡販で粗利率を底上げ。
  • チャネル最適化:クラブ/ディスカウント等のMIXを調整し回転率確保。

② コストとマージン

  • 原材料のボラ:穀物・乳製品・カカオは引き続き注視。ヘッジと値上げで吸収を継続。
  • 物流/労務:正常化進展。22–23年のピークからコスト圧力は緩和方向。

③ キャッシュ配分

  • 配当+自社株買い:OCFカバー>2倍で継続余地。中期は増配余力あり。
  • 負債圧縮:2018年のレバレッジ上昇後は減債を継続、格付安定を優先。
  • 選択的M&A:高ROIC案件(プレミアム菓子/ペット/機能性食品)に限定。

④ 評価と位置づけ

  • ディフェンシブ×インカム:3〜4%の利回り帯+緩やかな増配で総合リターンを狙う銘柄。
  • バリュエーションは食品大手レンジ内。相対ではCF安定性が強み。
主要リスク:原材料急騰、PBとの価格競争、健康志向による既存SKUの置き換え、買収後統合作業の遅延など。

まとめ:長期配当投資家にとってのゼネラルミルズとは?

ゼネラルミルズは、食品業界のリーダーとして、安定性と戦略的成長を両立する魅力的な配当株の一つです。生活必需品を扱う事業特性により景気変動に対する耐性を持ちながら、戦略的買収と高付加価値製品への注力により新たな成長機会を追求しています。

同社の強みは以下の点にあります:

  • 100年以上配当を継続してきた確たる実績
  • Cheerios、Yoplait、Häagen-Dazsなど強力なブランド・ポートフォリオ
  • 食品という生活必需品による景気耐性と安定した需要基盤
  • 高い営業CFマージンによる堅実な収益構造
  • Blue Buffalo買収による高成長ペットフード市場への参入
  • 北米市場でのリーダーシップと価格決定力
  • 継続的な効率化とコスト管理による競争優位性

一方で、注意すべき点としては:

  • 成熟市場での低い売上成長率
  • 高い負債比率による金利上昇リスク
  • ヘルシー・トレンドによる従来製品需要への圧迫
  • 原材料価格変動リスク(穀物、乳製品など)
  • プライベートブランドとの価格競争激化
  • 消費者嗜好の変化への対応(オーガニック、グルテンフリーなど)
  • 大型買収に伴う統合リスクと債務負担

投資家へのポイント:ゼネラルミルズへの投資は、「安定性と適度な成長」を重視する長期配当投資家に適しています。同社は急激な成長は期待できないものの、配当の継続的な増額と株価の安定した推移により、堅実なトータルリターンを期待できます。特に、景気後退時の業績安定性、インフレ環境下での価格転嫁能力、そして100年以上配当を続けてきた実績は、他の食品企業では代替できない価値です。長期的には、Blue Buffalo統合の成功とヘルシー・トレンドへの対応力が、持続的な価値創造を支えるでしょう。

※本記事は投資判断の参考として財務データを分析したものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっては、ご自身の判断と責任のもとで行ってください。

出典(主要)

  • Macrotrends – General Mills: Cash Flow from Operating Activities(年次OCF)
  • Macrotrends – General Mills: Shares Outstanding(年次発行株式数)
  • General Mills IR – Dividends & Stock Splits(年計DPS)
  • General Mills IR / Annual Reports, SEC 10-K(Common stock dividends paid =厳密額)
※配当総額欄は「DPS×発行株式数」による概算。四半期タイミング差や自己株式の影響で10-K計上額と乖離する場合があります。

Posted by 南 一矢