トランプ政権閣僚一覧:経歴、素顔、特徴

政治経済

2025年1月20日に発足した第2期トランプ政権の全閣僚について、その経歴と背景を詳しく紹介します。第2期トランプ政権は、ビジネス界、軍事、メディア、政治など多様な分野から人材を登用し、「アメリカ・ファースト」の理念を実現するための布陣を整えました。
【金融市場への影響】
特に注目すべきは、ウォール街出身の財務長官ベセント氏と商務長官ラトニック氏の起用です。ベセント氏の「3-3-3計画」(財政赤字GDP比3%、成長率3%、石油増産日量300万バレル)は市場に好感されました。一方で、関税政策や移民制限が成長目標と矛盾するとの指摘もあり、政権内での政策調整が注目されています。全閣僚の推定純資産は数百億ドルに上り、「史上最も裕福な内閣」とも評されています。
主な特徴】
ウォール街の影響力:財務・商務長官にヘッジファンド出身者を起用
メディア出身者の登用:FOXニュース、MTV等から4人以上が入閣、広報戦略重視の姿勢
トランプへの忠誠心の重視:第一次政権に比べると経歴よりもトランプ大統領に忠実かどうかが重視されている(トランプとその周辺は第一次政権では裏切ったり内部情報をリークしたりした閣僚が多かったと見て、そうした人選を推し進めた)
「3-3-3計画」と政策の矛盾:野心的な経済目標と移民制限・関税政策の整合性が課題

金融市場は概ね好感しているものの、政権内での政策調整、特に成長促進策と保護主義的政策のバランスが今後の鍵となります。各閣僚の実務能力と政治的手腕が、今後試されることになります。

Contents

J.D.バンス副大統領の略歴

本名はジェームズ・デビッド・バンス(James David Vance、旧姓ボウマン)。

  • 1984年:8月2日にオハイオ州ミドルタウンに出生(スコットランド・アイルランド系)
  • 幼少期:オピオイド依存症の母親と不在の父親のもとで育つ
  • 2003年:高校卒業後、海兵隊に入隊
  • 2004年~2008年:米海兵隊でイラクに派遣、軍事ジャーナリストとして従軍
  • 2009年:オハイオ州立大学で学士号取得(GIビル利用、成績優秀で卒業)
  • 2013年:イェール大学ロースクール卒業、ウシャ・チルクリと出会う
  • 2014年:ウシャと結婚(彼女は後に最高裁判事のクラーク)
  • 2016年:回顧録『ヒルビリー・エレジー』出版、全米ベストセラーに(2020年Netflix映画化)
  • 2017年~:ピーター・ティールのミスリル・キャピタルでベンチャーキャピタリスト
  • 2022年:オハイオ州選出の連邦上院議員に当選(ティールから1500万ドルの支援)
  • 2024年7月15日:トランプ大統領の副大統領候補に指名
  • 2025年1月20日:第50代副大統領に就任(40歳、史上3番目の若さ)
「ラストベルトの代弁者」から国家指導者へ:
バンス氏は貧困と薬物依存に苦しむ白人労働者階級の実態を描いた回顧録で一躍有名に。当初はトランプ批判者だったが、2021年にティールの紹介で面会後、強力な支持者に転身。副大統領として共和党全国委員会の財務委員長も兼任。「史上2番目に強力な副大統領」と評され、国家安全保障や経済政策で重要な役割を担う。3人の子供の父親でもあり、ミレニアル世代初の副大統領として若い有権者への訴求力も期待される。

国務長官:マルコ・ルビオの略歴

本名はマルコ・アントニオ・ルビオ(Marco Antonio Rubio)。

  • 1971年:5月28日にフロリダ州マイアミでキューバ系移民の子として出生
  • 父は酒場のバーテンダー、母はホテルのメイドとして働く
  • 1993年:フロリダ大学卒業(政治学専攻)
  • 1996年:マイアミ大学ロースクール卒業
  • 1998年:ウェストマイアミ市議会議員(26歳)
  • 2000年~2008年:フロリダ州下院議員(2006年から州下院議長、34歳で最年少)
  • 2010年:ティーパーティー運動の波に乗り連邦上院議員に初当選
  • 2013年:超党派移民改革法案の起草に参加(後に撤回)
  • 2015年~2016年:大統領選に出馬、トランプに「リトル・マルコ」と揶揄され撤退
  • 2016年、2022年:上院議員に再選・3選
  • 2020年:中国政府から2度制裁を受け、入国禁止リストに
  • 2025年1月21日:第72代国務長官に就任(上院で99対0の歴史的全会一致承認)
  • 2025年5月1日:国家安全保障担当大統領補佐官(代行)を兼務、同年、国立公文書館長(代行)も兼務と報じられる(キッシンジャー以来の兼務)
対中強硬派のラテン系初の国務長官:
ルビオ氏は議会承認聴聞会で中国を「米国がこれまで直面した最も強力で危険な対等の敵対者」と断言。中国共産党が「嘘、詐欺、ハッキング、窃盗によって超大国の地位を得た」と批判。議員であった頃からラテンアメリカ政策では「事実上の国務長官」と呼ばれるほどの影響力を持ち、ベネズエラ、キューバへの制裁強化を主導。国家公文書館長代行も兼務し、米国史上最高位のヒスパニック系政府高官として、移民の子から頂点に上り詰めた成功物語を体現。

財務長官:スコット・ベセントの略歴

本名はスコット・ケネス・ホーマー・ベセント(Scott Kenneth Homer Bessent)。

  • 1962年:8月21日にサウスカロライナ州コンウェイに出生
  • 1984年:イェール大学卒業(政治学専攻、イェール・デイリー・ニュース編集者)
  • 1984年~:ジム・ロジャース(ジョージ・ソロスの初期パートナー)の下でインターン
  • 1991年:ソロス・ファンド・マネジメント入社
  • 1992年:英ポンド危機(ブラック・ウェンズデー)で10億ドル超の利益を上げるチームの主要メンバー
  • 2011–2015年:ソロス・ファンド・マネジメントCIO(最高投資責任者)
  • 2015年:キー・スクエア・キャピタル・マネジメント設立(運用資産50億ドル規模)
  • 2024年:トランプ陣営に700万ドル以上を寄付、経済顧問として活動
  • 2025年1月28日:第79代財務長官に就任(上院で68対29で承認)
「3-3-3計画」の詳細:
ベセント氏は安倍晋三元首相の「3本の矢」に触発された「3-3-3計画」を提唱。①2028年までに財政赤字をGDP比3%に削減(現在6-7%)、②実質GDP成長率3%達成、③石油生産を日量300万バレル増産。この計画実現には、規制緩和、税制改革、関税政策の段階的導入が鍵となるが、移民制限政策との整合性や歳出削減の規模について議論が続いている。
投資哲学と市場観:
ベセント氏は「マクロ経済と地政学リスクの分析」を専門とし、通貨・債券市場のスペシャリストとして知られる。関税については「外交政策の有用なツール」と位置づけつつ、段階的導入(layered approach)を支持。FRB(連邦準備制度)に対しては、当初「影の議長」構想を提案したが、後に撤回。個人資産は5億ドル以上と推定される。

国防長官:ピート・ヘグセスの略歴

本名はピーター・ブライアン・ヘグセス(Peter Brian Hegseth)。

  • 1980年:6月6日にミネソタ州ミネアポリスでノルウェー系の家庭に出生
  • 1999年:高校を首席で卒業、バスケットボールで州記録樹立
  • 2003年:プリンストン大学卒業(政治学専攻、保守派学生新聞の発行人)
  • 2003年:陸軍州兵として少尉に任官(ROTC経由)
  • 2004年:グアンタナモ湾海軍基地で収容者の警備任務
  • 2005年~2006年:イラクのサマラに派遣、ブロンズスター勲章受章
  • 2011年~2012年:アフガニスタンに派遣、対反乱作戦に従事
  • 2012年~:退役軍人団体「Vets for Freedom」「Concerned Veterans for America」で活動
  • 2014年~2024年:FOXニュースでホスト(「Fox & Friends Weekend」共同司会)
  • 2025年1月:第29代国防長官に就任(50対50の同数でバンス副大統領の決定票により承認)
異例の承認劇と「戦士の国防長官」:
ヘグセス氏は性的不品行疑惑や飲酒問題で激しい批判を浴び、史上2度目の副大統領決定票による閣僚承認となった(前例は2017年のデボス教育長官)。44歳と史上2番目の若さで国防長官に就任。タトゥーに「Deus Vult」(神の御心のままに)の文字を入れるなど、強硬な保守派として知られ、「ウォーク(覚醒)文化」の軍からの排除を公約。プリンストン大学の卒業論文で盗用疑惑も浮上したが、「現場を知る戦士」として退役軍人からの支持は厚い。

司法長官:パメラ・ボンディの略歴

本名はパメラ・ジョー・ボンディ(Pamela Jo Bondi)。

  • 1965年:11月17日にフロリダ州タンパに出生
  • 1987年:フロリダ大学卒業(刑事司法専攻)
  • 1990年:ステットソン大学ロースクール卒業
  • 1994年~2009年:ヒルズボロー郡検事局で検事として勤務
  • 2010年:フロリダ州司法長官に当選(州初の女性司法長官)
  • 2014年:司法長官に再選
  • 2016年:トランプ陣営の全国共同議長を務め、支持を表明
  • 2019年~:バラード・パートナーズ(ロビー企業)でパートナー
  • 2020年:トランプ大統領の第1次弾劾裁判で弁護団の一員
  • 2021年~:アメリカ・ファースト・ポリシー研究所の法律部門を率いる
  • 2025年2月5日:第87代司法長官に就任(54対46で承認)
トランプ忠誠派の法執行者:
ボンディ氏はトランプ大統領の忠実な支持者として知られ、弾劾裁判での弁護や選挙関連の訴訟で活躍。司法長官として、連邦捜査の改革や移民法執行の強化を推進。検事としての経験から、薬物犯罪や人身売買対策に注力し、保守派から高い評価を得ているが、民主党からは政治的偏向を懸念する声も上がっている。

保健福祉長官:ロバート・F・ケネディJr.の略歴

本名はロバート・フランシス・ケネディ・ジュニア(Robert Francis Kennedy Jr.)。

  • 1954年:1月17日に出生(ジョン・F・ケネディ大統領の甥、ロバート・ケネディ司法長官の息子)
  • 1968年:14歳の時に父親が暗殺される
  • 1976年:ハーバード大学卒業
  • 1982年:バージニア大学ロースクール卒業
  • 1983年:薬物依存で逮捕、その後回復
  • 1985年~:リバーキーパー(環境NPO)で弁護士として活動、ハドソン川浄化に貢献
  • 1999年:ウォーターキーパー・アライアンス共同設立(世界最大の水質保護団体に成長)
  • 2011年:チルドレンズ・ヘルス・ディフェンス設立(自閉症と環境要因の関連を主張)
  • 2021年:著書『The Real Anthony Fauci』がベストセラーに
  • 2024年:大統領選に無所属で出馬後、8月にトランプ支持に転換
  • 2025年2月:第26代保健福祉長官に就任(14対13の僅差で委員会通過)
「環境の英雄」から物議を醸す保健政策立案者へ:
タイム誌「地球の英雄」に選ばれた環境運動家から、ワクチン懐疑論者として物議を醸す存在に。75人のノーベル賞受賞者が指名反対を表明。法律事務所との紹介契約で年間85万ドル以上の収入があり、製薬会社訴訟の紹介料10%を得る取り決めが倫理的問題として指摘された。「Make America Healthy Again」を掲げ、食品添加物規制強化と代替医療推進を主張。2025年2月の麻疹流行時に「ビタミンAが予防と治療に有効」と発言し、医学界から批判を浴びる。

国土安全保障長官:クリスティ・ノームの略歴

本名はクリスティ・リン・アーノルド・ノーム(Kristi Lynn Arnold Noem)。

  • 1971年:11月30日にサウスダコタ州ウォータータウンに出生
  • 1990年:高校卒業、サウスダコタ・スノークイーンに選出
  • 1994年:父の農場事故死後、家族農場を継ぐ
  • 2007年~2011年:サウスダコタ州下院議員
  • 2011年~2019年:連邦下院議員
  • 2019年~2025年:サウスダコタ州知事(州初の女性知事)
  • 2020年:COVID-19対策でマスク義務化を拒否、州の経済を優先
  • 2024年:回顧録『No Going Back』を出版、トランプ支持を強調
  • 2025年1月25日:第8代国土安全保障長官に就任(59対34で承認)
農村部出身の強硬保守派:
ノーム氏はサウスダコタ知事として、銃規制反対や中絶制限を推進。国土安全保障長官として、国境管理の強化と移民政策の厳格化を主導。トランプ大統領の忠実な支持者として信頼が厚い。

運輸長官:ショーン・ダフィーの略歴

本名はショーン・パトリック・ダフィー(Sean Patrick Duffy)。

  • 1971年:10月3日にウィスコンシン州ヘイワードに出生(11人兄弟の10番目、アイルランド系カトリック)
  • 5歳から木材転がし、13歳から高速木登り競技を開始、世界チャンピオンに
  • 1994年:セントメリーズ大学卒業(マーケティング専攻)
  • 1997年:MTV「リアルワールド:ボストン」出演(25歳の法学生として)
  • 1998年:「ロードルールズ」で妻となるレイチェル・カンポスと出会う
  • 1999年:ウィリアム・ミッチェル法科大学院卒業
  • 2002年~2010年:アシュランド郡地方検事(100件以上の裁判で90%以上の有罪率)
  • 2011年~2019年:連邦下院議員(ウィスコンシン州第7区、金融サービス委員会所属)
  • 2019年:9人目の子供の健康問題で議員辞職、家族を優先
  • 2023年~2025年:FOXビジネス「The Bottom Line」共同ホスト
  • 2025年1月28日:第20代運輸長官に就任(77対22で承認)
  • 2025年7月9日:NASA長官代行も兼務
「リアリティTVから連邦政府へ」:
妻レイチェルと共に「アメリカ初のリアリティTV夫婦」として25年の結婚生活、9人の子供を持つ。プエルトリコ債務危機対策法(PROMESA)の主要起草者として農村部振興に尽力。1000億ドル規模の運輸省予算を管理し、インフラ投資と安全性向上を最優先課題に掲げる。イーロン・マスクとの政策対立も報じられ、特に航空管制官削減を巡って内閣会議で衝突したとされる。

教育長官:リンダ・マクマホンの略歴

本名はリンダ・マリー・マクマホン(Linda Marie McMahon、旧姓エドワーズ)。

  • 1948年:10月4日にノースカロライナ州ニューバーンに出生
  • 1969年:イーストカロライナ大学を3年で卒業(夫と同時卒業するため短縮)
  • 1982年:夫ビンスと共にWWE(世界レスリング・エンターテインメント)を設立
  • 1997年~2009年:WWE CEO(企業価値を10億ドル超に成長させる)
  • 2009年~2010年:コネチカット州教育委員会委員(共和党知事が任命)
  • 2010年、2012年:連邦上院選挙に出馬するも落選(自己資金1億ドル投入)
  • 2016年:トランプ大統領就任委員会に100万ドル寄付
  • 2017年~2019年:中小企業庁長官(第1期トランプ政権、上院で81対19で承認)
  • 2019年~2021年:アメリカ・ファースト・アクションPAC会長
  • 2021年~:アメリカ・ファースト・ポリシー研究所理事長
  • 2025年3月:第13代教育長官に就任第13代教育長官に就任
「エンターテインメント帝国から教育改革へ」:
マクマホン氏はWWEを世界的エンターテインメント企業に育て上げた経営手腕で知られ、純資産は推定30億ドル。教育経験の不足を批判されるも、学校選択制(スクールチョイス)の強力な支持者として保守派から支持。家族財団を通じて教育関連に数百万ドル寄付。2024年には元WWE「リングボーイ」による性的虐待訴訟の被告となり物議を醸した。「教育省廃止」を掲げるトランプ政権で「最後の教育長官」になると宣言し、権限の州への移譲を推進。

商務長官:ハワード・ラトニックの略歴

本名はハワード・ウィリアム・ラトニック(Howard William Lutnick)。

  • 1961年:7月14日にニューヨーク州ロングアイランドに出生
  • 1978年:高校時代に両親を相次いで失う(母はリンパ腫、父は医療事故)
  • 1983年:ハバフォード大学卒業(経済学専攻、学費は全額奨学金)
  • 1983年:B・ジェラルド・キャンターの指導下でキャンター・フィッツジェラルド入社
  • 1991年:29歳の若さでキャンター・フィッツジェラルドCEO就任
  • 1996年:会長就任、電子取引プラットフォーム「eSpeed」を設立
  • 2001年9月11日:世界貿易センター北棟のオフィスで弟ゲイリーを含む658人の社員を失う
  • 2001年~:遺族支援基金を設立、5年間で会社利益の25%(計1億8000万ドル)を遺族に分配
  • 現在:BGCグループ会長、ニューマーク・グループ会長も兼任
  • 2024年:トランプ政権移行チーム共同議長、関税政策の立案に深く関与
  • 2025年2月18日:第41代商務長官に就任(51対45で承認)
9.11からの復活:
同時多発テロで会社の従業員の68%を失うという未曾有の悲劇から、ラトニック氏は不屈の精神で会社を再建。遺族への継続的支援(医療保険10年間、利益分配など)は米企業史上類を見ない規模。現在、キャンター・フィッツジェラルドは米国債のプライマリーディーラーとして復活し、暗号通貨テザー(Tether)の準備資産800億ドル以上を管理。純資産は推定30-80億ドルとされる。

退役軍人長官:ダグラス・コリンズの略歴

本名はダグラス・アレン・コリンズ(Douglas Allen Collins)。

  • 1966年:8月16日にジョージア州ゲインズビルに出生
  • 1988年:ノースジョージア大学卒業(政治学・刑法専攻)
  • 1996年:ニューオーリンズ・バプテスト神学校で神学修士取得
  • 2002年~:空軍予備役で従軍牧師として勤務
  • 2007年:ジョン・マーシャル法科大学院卒業
  • 2007年~2013年:ジョージア州下院議員
  • 2013年~2021年:連邦下院議員(ジョージア州第9区)
  • 2019年:トランプ大統領の第1次弾劾裁判で弁護団の一員
  • 2023年:空軍大佐に昇進
  • 2025年2月5日:第12代退役軍人長官に就任(77対23で承認)
軍人兼牧師の退役軍人支援者:
コリンズ氏はイラク派遣経験を持つ従軍牧師として、精神衛生ケアの重要性を強調。連邦下院議員時代に退役軍人関連法案を複数提出し、トランプ政権でVA改革を推進。保守的なキリスト教価値観を基に、退役軍人の雇用支援と医療アクセスの拡大を公約としている。

エネルギー長官:クリス・ライトの略歴

本名はクリストファー・C・ライト(Christopher C. Wright)。

  • 1964年:コロラド州デンバー近郊に出生
  • 1986年:マサチューセッツ工科大学(MIT)で学士号取得(物理学・地球科学)
  • 1991年:MITで博士号取得(地球物理学)
  • 1990年代:石油・ガス業界でキャリア開始、シェブロンなどで勤務
  • 2005年:Stratum Reservoirを共同設立(石油・ガス分析企業)
  • 2011年:Liberty Energyを設立、CEO就任(水圧破砕技術の専門企業)
  • 2020年~:化石燃料擁護の著書を出版、気候変動懐疑論を主張
  • 2024年:トランプ陣営のエネルギー政策顧問として活動
  • 2025年2月3日:第17代エネルギー長官に就任(59対38で承認)
化石燃料業界の擁護者:
ライト氏は水圧破砕(フラッキング)の推進者として知られ、エネルギー独立を強調。「アメリカのエネルギー支配」を掲げ、規制緩和と石油・ガス生産拡大を推進。一方で、環境団体から気候変動対策の後退を懸念され、承認聴聞会で激しい議論を呼んだ。Liberty EnergyのCEOとして、企業価値を数十億ドル規模に成長させた実業家。

その他の主要閣僚

内務長官:ダグラス・バーガムの略歴

本名はダグラス・ジェームズ・バーガム(Douglas James Burgum)。

  • 1956年:8月1日にノースダコタ州アーサーに出生
  • 1978年:ノースダコタ州立大学卒業
  • 1980年:スタンフォード大学でMBA取得
  • 1983年:Great Plains Softwareを共同設立
  • 2001年:グレートプレーンズ・ソフトウェアをマイクロソフトに11億ドルで売却
  • 2001年~2016年:不動産開発やベンチャーキャピタルで活躍
  • 2016年~2024年:ノースダコタ州知事
  • 2024年:共和党大統領予備選に出馬後、トランプ支持に転換
  • 2025年2月5日:内務長官に就任(54対46で承認)
テック起業家からエネルギー州の指導者へ:
バーガム氏はノースダコタ知事としてシェールオイルブームを主導、州経済を活性化。内務長官として、公有地管理と資源開発のバランスを重視。トランプ政権のエネルギー独立政策を支え、化石燃料業界との密接なつながりが注目されている。

農務長官:ブルック・ロリンズの略歴

本名はブルック・レスリー・ロリンズ(Brooke Leslie Rollins)。

  • 1972年:テキサス州グレンローズ出身
  • 1994年:テキサスA&M大学卒業(農業開発学、初の女性学生会長)
  • 1997年:テキサス大学ロースクール卒業
  • 1997年~2001年:テキサス州検事局で勤務
  • 2003年~2018年:テキサス公共政策財団を15年間率いる
  • 2017年~2021年:大統領国内政策会議議長(第1期トランプ政権)
  • 2021年~:アメリカ・ファースト・ポリシー研究所創設者・CEO
  • 2025年2月13日:農務長官に就任(72対28で承認)
保守政策の専門家:
ロリンズ氏はテキサス公共政策財団で刑法改革や経済政策を推進。第1期トランプ政権で国内政策を統括し、農務長官として貿易交渉と農業補助金の改革を重視。女性初のテキサスA&M学生会長として、リーダーシップを発揮。

労働長官:ロリ・チャベス=デレマーの略歴

12 March 2025 – Washington, DC – US Secretary of Labor Lori M. Chavez-DeRemer Official Portrait
***Official Department of Labor

本名はロリ・ミシェル・チャベス=デレマー(Lori Michelle Chavez-DeRemer)。

  • 1968年:4月7日にオレゴン州ベンド出身(メキシコ系アメリカ人)
  • 1990年:カリフォルニア州立大学フレズノ校卒業(ビジネス専攻)
  • 2011年~2018年:ハッピーバレー市長(オレゴン州)
  • 2019年~2022年:オレゴン州下院議員
  • 2023年~2025年:連邦下院議員(オレゴン州第5区、激戦区で当選)
  • 労働組合との深い関係を持つ共和党穏健派
  • 下院教育・労働委員会メンバーとして労働者保護法案を支持
  • PRO法(労働組合組織化促進法)の共和党側共同提案者という異例の立場
  • 最低賃金引き上げ支持、労働者の権利拡大を主張
  • 2025年2月12日:労働長官に就任(超党派の支持を得て承認、67対32)
チャベス=デレマー氏は共和党内では異例の親労働組合派として知られ、民主党議員からも支持を得る稀有な存在。最低賃金引き上げや労働者保護強化を支持し、トランプ政権内で労使関係の調整役として期待される。ヒスパニック系として、多様な労働力の活用を推進。

住宅都市開発長官:スコット・ターナーの略歴

本名はエリック・スコット・ターナー(Eric Scott Turner)。

  • 1972年:2月26日にテキサス州リチャードソン出身
  • 1994年:イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校卒業(政治学、フットボール選手)
  • 1994年~2003年:NFL選手(ダラス・カウボーイズなど、安全担当)
  • 2013年~2019年:テキサス州下院議員
  • 2019年~2021年:ホワイトハウス機会・活性化評議会執行ディレクター(第1期トランプ政権)
  • 2021年~:不動産開発業界での豊富な経験、機会ゾーン投資を推進
  • 2025年2月12日:住宅都市開発長官に就任(55対45で承認)
元NFL選手の都市再生専門家:
ターナー氏は第1期トランプ政権で機会ゾーン政策を主導、低所得地域の投資を促進。住宅都市開発長官として、住宅供給増加と都市貧困対策を重視。スポーツ選手から政治家への転身した経歴を持つ。

閣僚級の役職

行政管理予算局長官:ラッセル・ボートの略歴

  • 1976年生まれ
  • 1998年:ウィートン大学卒業
  • 2004年:ジョージ・ワシントン大学ロースクール卒業
  • 連邦議会で20年間勤務
  • 2020年~2021年:第1期トランプ政権でOMB長官代行
  • 2021年~:センター・フォー・リニューイング・アメリカ所長
  • 2025年:第44代行政管理予算局長官に就任

大統領経済諮問委員会(CEA)委員長:スティーブン・ミランの略歴

  • ハーバード大で経済学博士
  • 2020年に財務省シニアアドバイザー、その後資産運用業界でマクロ戦略を担当
  • 2025年3月12日、上院が53–46でCEA委員長に承認(正式就任)

環境保護庁長官:リー・ゼルディンの略歴

  • 1980年生まれ、ニューヨーク州サフォーク郡出身
  • 23歳でニューヨーク州最年少の弁護士に
  • 2015年~2023年:連邦下院議員(ニューヨーク州第1区)
  • 2022年:ニューヨーク州知事選に出馬(惜敗)
  • 2025年:環境保護庁長官に就任

中小企業庁長官:ケリー・レフラーの略歴

  • ジョージア州出身
  • 実業家として成功
  • 2020年~2021年:連邦上院議員(ジョージア州)
  • 2025年:中小企業庁長官に就任

国連大使:<現職 代行>ドロシー・シー /<指名>マイク・ウォルツ

  • 2025年1月20日以降、キャリア外交官ドロシー・シーが代行として国連安保理等で発言
  • 2025年5月1日:トランプ大統領がマイク・ウォルツを国連大使に指名と発表。正式就任は上院承認待ち

通商代表(USTR):ジェイミソン・グリア(Jamieson Greer)

  • King & Spaldingで通商弁護士として勤務、空軍士官出身
  • 2017–2020年:第1期トランプ政権でロバート・ライトハイザーUSTRの首席補佐官
  • 2025年2月26日、上院が56–43で米通商代表に承認(第20代USTR)

国家情報長官(DNI):トゥルシー・ギャバード(Tulsi Gabbard)

  • 現役の陸軍予備役を務めつつ、連邦下院議員(ハワイ、4期)
  • 2025年2月12日、上院が52–48で国家情報長官に承認
  • ODNI公式発表:就任宣誓を行い、上院承認を受けた8人目の「上院承認を伴うDNI」、女性の戦闘従事経験者としては初
  • 2025年、ODNIの人員・経費の大幅スリム化(年度末までに40%削減)計画を公表

 

閣僚級ではないが重要な役職

 

CIA長官:ジョン・ラトクリフの略歴

  • テキサス州出身
  • 2015年~2020年:連邦下院議員(テキサス州第4区)
  • 2020年~2021年:国家情報長官(第1期トランプ政権)
  • 2025年:CIA長官に就任

FBI長官:カッシュ・パテルの略歴

本名はカシップ・プリヤンク・パテル(Kashyap Pramod Patel)。

  • 1980年:2月25日にニューヨーク州ガーデンシティ出身(インド系移民の子)
  • 2002年:リッチモンド大学卒業
  • 2005年:フロリダ国際大学ロースクール卒業
  • 2005年~2014年:連邦検事局で検事としてテロ・麻薬事件を担当
  • 2014年~2017年:下院インテリジェンス委員会スタッフ
  • 2017年~2018年:国家安全保障会議上級ディレクター
  • 2019年~2021年:国防総省首席補佐官
  • 2021年~:トランプ関連の書籍出版、保守メディア出演
  • 2025年2月20日:FBI長官に就任(51対49で承認)
インテリジェンスの専門家から法執行トップへ:
パテル氏はトランプ政権で「ロシアゲート」調査を主導、忠誠派として知られる。FBI長官として、内部改革と国家安全保障脅威への対応を強調。インド系アメリカ人として、多文化主義を体現する一方、民主党から政治的偏向を批判されている。

 

Posted by 南 一矢