QCOM(クアルコム) 今後の見通し

半導体,情報技術

クアルコム(QUALCOMM, Inc.)の今後の見通しを考えるために、まず、金利と株価チャートの推移を参照し、次に、直近の決算を確認します。

目標株価やPERなどの情報も踏まえて主な指標についても掲載します。

金利と株価:過去~現在

※チャート左目盛り:青線は株価推移赤線は200日移動平均線

※チャート右目盛り:緑線は10年国債利回り

※株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、時価総額、株式数、取引の出来高などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。

銘柄比較については関連記事(QCOM/AVGO:クアルコムとブロードコムを比較)を参照

直近決算

クアルコムは2月5日(米国時間)に決算を発表しました。
★業績
《四半期》
・EPS:予想2.97$→結果3.41$
・売上高:予想109.3億$→結果116.7億$(前年同期比+18%)
★ガイダンス
《四半期》
・EPS:予想2.69$→結果2.7~2.9$
・売上高:予想103.5億$→結果103~112億$
★出所
IRプレスリリース
・予想値はstreet insiderを参照しました。

企業概要

クアルコム(Qualcomm Incorporated)は、スマートフォンや無線通信技術の分野で世界をリードするアメリカの大手企業です。

ファブレス企業として、製造は外部に委託し、研究開発とライセンス事業に注力。デジタルワイヤレス通信機器の技術開発において世界をリードしており、特に直交周波数分割多重接続(OFDMA)方式を含む、携帯電話向けの多様な無線通信技術の開発を牽引し、これらを通信事業者や端末メーカーにライセンス供与することでロイヤリティ収入を確保しています。

半導体製品(特にSnapdragon)と特許ライセンス供与を二つの収益源を持ち、持続的な成長を実現しています。

QCOMは1985年に設立され(本社はカリフォルニア州サンディエゴ)、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどに研究拠点を持ち、大学や他社との連携を通じて革新を推進。

北米、欧州、アジア、ラテンアメリカ、アフリカなど、世界各地で事業を展開しています。

その事業分野は以下の通りです。

★半導体(チップ)事業

①Snapdragonプロセッサ:スマートフォンの中心部として、アプリケーション処理、通信、画像処理などを統合的に担い、性能と省エネルギー性に優れています。

②通信モデム・RF部品

★技術ライセンス事業

無線通信に関する多数の特許を保有し、これを世界中のデバイスメーカーにライセンス供与。各国の規制や市場特性に応じたライセンス契約を結ぶことで、同社の技術は世界中で広く採用され、標準技術としての地位を確立しています。

QCOMは、直交周波数分割多重接続(OFDMA)方式や、スマートフォン向けの画像処理技術に加えて、AI処理技術にも優れた技術力を有しています。

社史をさかのぼると、創業当初は無線通信技術の研究開発を目的とした小規模な企業でしたが、1990年代にCDMA技術が多くの通信事業者に採用され、携帯電話市場の発展に大きく寄与して急成長しました。

2015年には英国のCSR(Cambridge Silicon Radio)を買収し、技術力の強化と製品ラインの拡充に成功しています。

2017年11月には、米国の半導体大手AVGO(Broadcom)から買収提案を受けましたが、2018年3月に米政府の安全保障上の懸念から介入され、提案は取り下げられました。

近年、5G技術の普及とともに、先進国市場では5G、新興国市場では依然として4Gの高速データ通信を軸とした製品開発が進められています。

高速かつ低遅延な通信ネットワーク実現のため、5Gや将来の6G技術、またIoTや自動運転に対応した技術の開発を積極的に進めています。

今後、既存市場の強化に加え、5G、IoT、自動運転など新たな市場分野への参入を図ることで、将来の収益基盤のさらなる強化を目指しています。

5G、6G、IoT、自動運転、スマートシティ、AIなど、通信技術と連動した多様な市場での応用が見込まれています。

QCOMは、2019年以降、5G分野で米国の同業他社に先行し、かつてiPhone向け4G半導体を供給していたIntelが5G市場から撤退したことを受け、Appleは知財訴訟の解消とともにクアルコム製品の採用に舵を切りました。

ただ、カリフォルニア州の米連邦地裁は、クアルコムが反トラスト法(独占禁止法)に違反し、携帯向け半導体市場で優位的な地位を利用して過剰な特許使用料を課していると判断しています。(クアルコムは上訴中)

それ以外には、2020年にファーウェイとの特許使用料紛争が解決し、それが安定したライセンス収入の確保に寄与しています。

★出典

Qualcomm公式HP
Qualcomm年次報告書・製品情報リリース
SEC提出書類(10-K等)と関連法務文書
Bloombergの企業概要

【事業別売上比】(四捨五入のため累計が99%や101%のケースあり)

★QCT=クアルコムCDMAテクノロジー

★QTL=クアルコムテクノロジーライセンス

★RI=調整項目

地域別売上高では2022年でベトナムが約14%にまで増えています(その他の項目の中で最大)。

【事業構成】

graph

【地域別売上高】

graph

Posted by 南 一矢