【ADBE】アドビシステムズの株価と決算
アドビシステムズ(Adobe Systems Incorporated)は「イラストレーター」や「フォトショップ」、「インデザイン」などのクリエーター向けアプリで有名なソフトウェアメーカーです。
PDFの閲覧や作成に用いるアクロバットリーダーや、Flash プラットフォームなどの開発・サポートも手掛けています。
昔はフォトショップも買い切りソフトでしたが、最近では、年間7万円程度払って利用する「クリエイティブ・クラウド」を契約すれば、アドビのクリエイター向けソフトが使い放題になる、という形式に移行しています。
アドビは「クラウド化」の時代に対応し、動画編集ソフト(プリマヴェーラ)や3Dイフェクト作成、ウェブサイト設計など、アプリの範囲を広げています。
そうすることで、プロのクリエイターを支え続けているわけです。
最近は、データ分析によるマーケティング支援にまでクラウドを通じて業務を多角化しています(マーケティング分野は全体の3割程度。中心の7割は従来のクリエイター向けソフト群)。
2005年にはオーサリングソフトのマクロメディア、09年にウェブアクセス解析のオムニチュア、12年にネット広告管理のエフィシエント・フロンティア、15年にはマイクロストック写真を手がけるフォトリア、16年には動画配信サービスのチューブモーグルを買収。
18年にはEコマースのサイト構築と運営用プラットフォームを手がけるマジェントや販促支援ソフトを販売するマルケトを傘下に収めました。
こうした旺盛な買収活動が、アドビの技術を下支えしているとも言えるでしょう。
今回は、このアドビシステムズについて、情報を整理してみます。
主な指標を概観
まず、主要指標のデータを見てみます(指標と株価はgooglefinance関数から取得)。
1/4株価 | 500.3 |
4/9株価 | 504 |
株価上昇率 | 0.75% |
52週高値 | 536.9 |
52週安値 | 310.8 |
β値 | 0.95 |
EPS | 11.52 |
PER | 43.77 |
配当利回り | – |
時価総額(億$) | 2409 |
株式数(億) | 4.8 |
株価推移(チャートと伸び率)
次に、株価の推移を見てみます(青線が株価推移。赤線が200日間の移動平均線)。
株価の推移を1年ごとに見てみましょう。
★1:各年の株価伸び率(※21年終値は4/9株価) | |||||||||||||||||||
ADBE | 初値 | 終値 | 上昇率 | ||||||||||||||||
2021 | 500.3 | 504 | 1% | ||||||||||||||||
2020 | 330 | 500.1 | 52% | ||||||||||||||||
2019 | 219.9 | 329.8 | 50% | ||||||||||||||||
2018 | 175.9 | 226.2 | 29% | ||||||||||||||||
2017 | 103.4 | 175.2 | 69% | ||||||||||||||||
2016 | 91.8 | 103 | 12% | ||||||||||||||||
2015 | 73 | 93.9 | 29% | ||||||||||||||||
2014 | 59.1 | 72.7 | 23% | ||||||||||||||||
2013 | 37.9 | 59.9 | 58% | ||||||||||||||||
2012 | 28.6 | 37.7 | 32% | ||||||||||||||||
2011 | 30.8 | 28.3 | -8% | ||||||||||||||||
2010 | 36.7 | 30.8 | -16% | ||||||||||||||||
2009 | 23 | 36.8 | 60% | ||||||||||||||||
2008 | 42.9 | 21.3 | -50% | ||||||||||||||||
★2:各年初から21/4/9までの伸び率 | |||||||||||||||||||
21年~ | 20年~ | 19年~ | 18年~ | ||||||||||||||||
1% | 53% | 129% | 187% | ||||||||||||||||
17年~ | 16年~ | 15年~ | 14年~ | ||||||||||||||||
387% | 449% | 590% | 753% | ||||||||||||||||
13年~ | 12年~ | 11年~ | 10年~ | ||||||||||||||||
1230% | 1662% | 1536% | 1273% | ||||||||||||||||
09年~ | 08年~ | ||||||||||||||||||
2091% | 1075% |
NVDAやNFLXほど猛烈な伸びではありませんが、十分なリターンです。
アドビのソフトはMSFTのOSのように、デザインの世界では業務用に幅広く用いられているので、今後も根強い株価の値上がりが期待できそうです。
(一点だけ警戒を要するのは、アドビの値上げ志向が強すぎ、最近はクリエイターが「脱アドビ」を図りつつある点です。2019年にはクリエイティブクラウドが定額で年7万円超になったので、クリエイターの中では、会社ではアドビソフトを使い、私用では安い代替ソフトを用いる人も増えています)
アドビの事業分野
冒頭で多少、説明しましたが、改めてアドビシステムズの事業について整理してみます。
その事業分野は、三つの分野に大別されます。
クリエイティブビジネス
これはフォトショップ、イラストレーター、インデザイン等のソフトウェアが中心です。
ここ数年で、フォトショップやイラストレーターなどは買い切り製品から、継続課金(サブスクリプションモデル)へと移行。
フォトショップなどを単体でも買えますが、近年は「クリエイティブクラウド」で画像、PDF、動画、CG等のソフトを全部使い切ることが可能となりました。
サブスクリプションモデルに移行したことで、アドビソフトは新型の機能を随時アップデートし、機能とセキュリティを最新版に維持できるようになっています。
ドキュメントビジネス
これは主にPDFなど(アクロバットリーダー等)に関連したビジネスです。
Adobeがこのビジネスを始めた約20年前には、公的機関、金融機関などをはじめとして、ビジネス界は紙の書類が氾濫していましたが、それをペーパーレス化することをビジネスチャンスにしたわけです。
PDFは編集できないと考えている方もいますが、有料版のアクロバットリーダーを導入すれば、PDFの編集も自由自在になります。
(筆者はPDFをワード・エクセルに変換する機能を重宝していますが・・・)
こちらも売り切りモデルからサブスクリプションモデルへの移行が進んでいます。
デジタルマーケティングビジネス
小売・エンタメ・映画・イベント・教育に関わる企業や公的機関が活動の領域をオンラインに移すなかで、アドビはWEBマーケティングの支援ソフトを展開。
例えば、Adobe Analyticsなどのウェブサイト分析サービスがあり、その内実はグーグルアナリティクスに似てきています。
事業別売上高の割合
売上高を占める前掲の事業の割合は以下の通り。
年/月 | DM | DE | PB |
18/11 | 70% | 27% | 3% |
19/11 | 69% | 29% | 2% |
さらに、売上高の比率を地域別に見ると、米国が5割程度で、残りはほどよく各国に分散されている感じです。
年/月 | 18/11 | 19/11 |
米国 | 51.3% | 52.9% |
欧州+中東+アフリカ | 28.2% | 26.6% |
日本 | 6.8% | 6.7% |
アジア太平洋(除く日本) | 8.3% | 8.4% |
競争優位性はどこにある?
アドビはクリエイティブ分野では、ほぼ向かうところ敵なしです。
デザイナーの使用ソフトは、ほぼ、アドビのフォトショップ、イラストレーター、インデザインと相場は決まっています。
MSFTのオフィスでさえ、AAPLのマックがライバルになっているのに、アドビにはそれがないのです。
そして、アドビはネットの世界でも、PDFやフラッシュプレイヤーなどで存在感を保ち、クリエイティブ⇒PDF化⇒WEBマーケティングへと一貫したビジネス分野を保っています。
クリエイティブやドキュメントの分野でのシェアは高く、十分なワイドモート(参入を阻止する「広い堀」を意味する)を保っています。
ただ、デジタルマーケティングに関しては、CRM(セールスフォース)など、数多くのライバルがひしめき合っているので、ここはそこまでの占有度が確立できていません。
全体的には、ワイドモートが築かれており、ソフトの優秀さでは他社の追随を許さないので、今後も成長が見込める優良銘柄だと言えます。
四半期決算(2021予想など)
さらに、四半期決算のEPSと売上の予想を整理してみます。
(※下記図表では、Y=年度決算、Q=四半期決算、日/月=データの日時、その右欄にあるのは1カ月前、2か月前の予想値を記載。データの主な出所は英語版のヤフーファイナンス。ただ、2019年6月までのデータ出所はロイター)。
EPS:予想と結果
予想 | 3/27 | 1月前 | 2月前 |
Y:2022 | 13.68 | 13.26 | 13.25 |
Y:2021 | 11.88 | 11.26 | 11.24 |
Q:21/8 | 2.89 | 2.8 | 2.8 |
Q:21/5 | 2.81 | 2.7 | 2.7 |
EPS | 予想 | 結果 | 差 | % |
21/2 | 2.78 | 3.14 | 0.36 | 12.9 |
20/11 | 2.66 | 2.81 | 0.15 | 5.6 |
20/8 | 2.41 | 2.57 | 0.16 | 6.6 |
20/5 | 2.33 | 2.45 | 0.12 | 5.2 |
20/2 | 2.23 | 2.2 | -0.03 | -1.3 |
19/11 | 2.26 | 2.29 | 0.03 | 1.3 |
19/8 | 1.97 | 2.05 | 0.08 | 4.1 |
19/5 | 1.78 | 1.83 | 0.05 | 2.8 |
19/2 | 1.61 | 1.65 | 0.04 | 2.5 |
18/11 | 1.88 | 1.9 | 0.02 | 1.1 |
18/8 | 1.69 | 1.73 | 0.04 | 2.4 |
18/5 | 1.54 | 1.66 | 0.12 | 7.8 |
売上高:予想と結果
予想 | 3/27 | 1月前 | 2月前 |
Y:2022 | 17690 | 17410 | 17380 |
Y:2021 | 15480 | 15200 | 15200 |
Q:21/8 | 3830 | – | – |
Q:21/5 | 3730 | 3700 | 3700 |
売上 | 予想 | 結果 | 差 | % |
21/2 | 3760 | 3910 | 150 | 4 |
20/11 | 3360 | 3420 | 60 | 1.8 |
20/8 | 3160 | 3225 | 65 | 2.1 |
20/5 | 3160 | 3130 | -30 | -0.9 |
20/2 | 3050 | 3090 | 40 | 1.3 |
19/11 | 2970 | 2992 | 22 | 0.7 |
19/8 | 2817 | 2834 | 17 | 0.6 |
19/5 | 2705 | 2744 | 40 | 1.5 |
19/2 | 2547 | 2580 | 33 | 1.3 |
18/11 | 2429 | 2440 | 11 | 0.5 |
18/8 | 2252 | 2291 | 39 | 1.7 |
18/5 | 2156 | 2195 | 39 | 1.8 |
決算予想と結果では米国会計基準(GAAP)とは違う「非GAAP基準」の数値(各社が経営実態を踏まえて調整した数値)が多用されています。そのため、本節の売上とEPSは次節のGAAP基準の値と同じになるとは限りません。
通年決算(GAAP基準)
最後に、通年決算の数字を見てみます(以下、売上、利益、資産、負債、資本、キャッシュフローなどの単位は百万ドル。EPS=希薄化後EPS)。
損益計算(売上、純利益等)
ADBE | 売上高 | 営業CF | 同マージン | 純利益 |
08/11 | 4098 | 1270 | 31% | 798 |
09/11 | 3425 | 249 | 7% | -30 |
10/11 | 3326 | 488 | 15% | -68 |
11/11 | 3543 | 676 | 19% | 253 |
12/11 | 3998 | 909 | 23% | 581 |
13/11 | 4280 | 824 | 19% | 563 |
14/11 | 4130 | 835 | 20% | 440 |
15/11 | 4682 | 906 | 19% | 631 |
16/11 | 5010 | 1175 | 23% | 614 |
17/11 | 6910 | 1672 | 24% | 1666 |
18/11 | 9714 | 3502 | 36% | 3047 |
19/11 | 11716 | 3743 | 32% | 4141 |
20/11 | 10918 | 4761 | 44% | 2796 |
同マージン=営業キャッシュフローマージン。15%もあれば優良。通常、売上高>営業CF>純利益となる。営業CF<純利益となる企業は粉飾決算の可能性あり。
EPSや営業利益率など
ADBE | SG(%) | EPS | DSO |
08/11 | 34% | 1.31 | |
09/11 | -16% | -0.05 | 52.5 |
10/11 | -3% | -0.12 | 38 |
11/11 | 7% | 0.43 | 37.3 |
12/11 | 13% | 0.94 | 31.3 |
13/11 | 7% | 0.9 | 33.7 |
14/11 | -4% | 0.74 | 38.9 |
15/11 | 13% | 1.12 | 35.1 |
16/11 | 7% | 1.08 | 35.7 |
17/11 | 38% | 2.57 | 35.2 |
18/11 | 41% | 4.82 | 39.3 |
19/11 | 21% | 6.63 | 41.9 |
20/11 | -7% | 4.52 | 51.5 |
※SG(セールスグロース):売上高成長率(前年度比)
※DSO(デイズ・セールス・アウトスタンディング):売掛金回収に必要な日数。売掛金÷1日平均売上高で計算。期末に無理して売込みをかけてEPSをよい数値にした企業の場合は、売掛金が増え、DSOの数値が大きくなる。上記DSOの出所はモーニングスター社。
バランスシート
ADBE | 総資産 | 総負債 | 株主資本 | 自己資本率 |
08/11 | 3748 | 1130 | 2618 | 70% |
09/11 | 3351 | 956 | 2395 | 71% |
10/11 | 3586 | 921 | 2665 | 74% |
11/11 | 4495 | 1314 | 3181 | 71% |
12/11 | 5553 | 1407 | 4146 | 75% |
13/11 | 6412 | 1585 | 4828 | 75% |
14/11 | 7251 | 2794 | 4456 | 61% |
15/11 | 7201 | 2783 | 4418 | 61% |
16/11 | 7370 | 2901 | 4469 | 61% |
17/11 | 9841 | 4079 | 5762 | 59% |
18/11 | 11241 | 3770 | 7471 | 66% |
19/11 | 13292 | 3950 | 9342 | 70% |
20/11 | 17315 | 5111 | 12204 | 70% |
ROAとROEなど
ADBE | ROA | ROE | 流動比率 |
08/11 | 21% | 30% | 299% |
09/11 | -1% | -1% | 278% |
10/11 | -2% | -3% | 316% |
11/11 | 6% | 8% | 342% |
12/11 | 10% | 14% | 420% |
13/11 | 9% | 12% | 489% |
14/11 | 6% | 10% | 595% |
15/11 | 9% | 14% | 638% |
16/11 | 8% | 14% | 257% |
17/11 | 17% | 29% | 477% |
18/11 | 27% | 41% | 803% |
19/11 | 31% | 44% | 794% |
20/11 | 16% | 23% | 767% |
★ROA=当期純利益÷総資産 ※総資産を用いて企業があげた利益の割合
★ROE=当期純利益÷自己資本 ※投下資本に対して企業があげた利益の割合
★流動比率=流動資産÷流動負債 ※短期的な支払い能力を見る指標
キャッシュフロー
ADBE | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
08/11 | 1270 | -761 | -326 |
09/11 | 249 | -209 | -349 |
10/11 | 488 | -519 | 61 |
11/11 | 676 | -650 | 192 |
12/11 | 909 | -1143 | 237 |
13/11 | 824 | -744 | -15 |
14/11 | 835 | -806 | 390 |
15/11 | 906 | -727 | -834 |
16/11 | 1175 | -400 | -676 |
17/11 | 1672 | -793 | 291 |
18/11 | 3502 | 1278 | -2544 |
19/11 | 3743 | -4097 | -2866 |
20/11 | 4761 | 6145 | -792 |