DOWとDDを比較:ダウインクとデュポンの違いとは
【2026年10月8日更新】ダウ(Dow Inc.、NYSE:DOW)とデュポン(DuPont de Nemours、NYSE:DD)の株価、配当、最新決算、事業再編と将来性を比較します。
両社は2019年に旧DowDuPontから分かれた企業ですが、現在の収益構造は異なります。DOWは素材化学市況の影響を強く受け、DDは電子材料事業の分離とアラミド事業の売却を経て、水処理、医療、産業技術などに事業を絞り込んでいます。なおDDは2026年7月31日付でGICS分類が「素材(Materials)」から「資本財・サービス(Industrials)」へ変更されており、両社を同一セクターの株式とみなす点にも注意が必要です。[2]
- 1. 株価:過去~現在
- 2. 決算(予想:結果)
- 3. 【化学大手対決】ダウ(DOW)vs デュポン(DD):素材化学の回復か、特殊技術の成長か
株価:過去~現在
※チャート左目盛り:DOW・DD・VAW(Vanguard Materials ETF)の株価推移。右目盛り:米国10年国債利回り。
決算(予想:結果)
決算予想と実績の詳しいグラフは関連記事にも掲載しています。DOW決算:売上・EPSの予想と結果/DD決算:売上・EPSの予想と結果
【化学大手対決】ダウ(DOW)vs デュポン(DD):素材化学の回復か、特殊技術の成長か
景気敏感な素材科学を代表するDOWと、収益性の高い特殊技術へ集中するDDを比較します。両社とも2026年6月末までの第2四半期決算が、10月8日時点で確認できる最新の四半期決算です。
最重要ポイント:素材化学の価格回復と、再編後のDD
- DOW:原料・製品市況に連動する素材科学。2026年Q2売上は120.92億ドル(前年同期比約20%増)、営業EBITDAは23.12億ドル、GAAP EPSは0.99ドル。2026年Q1までの苦境から一転して利益が拡大しました。ただし、売上増加の中心は製品価格上昇で、販売数量は前年同期比1%減でした。[1]
- DD:再編後の技術・サービス型事業。2026年Q2売上は18.19億ドル(前年同期比4%増)、営業EBITDAは4.48億ドル、調整後EPSは1.88ドル。営業EBITDAマージン24.6%と高い採算を維持しました。[2]
- Qnityの独立:2025年11月1日、DDの電子材料事業がQnity Electronics(NYSE:Q)として分離。旧DD株2株につきQnity株1株が交付されました。[3]
- アラミド事業の売却:Kevlar・Nomexを含む事業を2026年4月1日に売却。DDの事業規模と比較対象はさらに変化しました。[4]
- 株式併合への注意:DDは2026年6月24日に3株を1株とする株式併合を実施。併合前の株価・EPS・1株配当を、そのまま現在の数値と比較してはいけません。[5]
以上を踏まえると、DOWでは化学品価格の回復が持続するか、DDでは旧事業を除いた既存事業の成長と利益率が維持できるかが、評価の中心になります。
比較サマリー:景気循環のDOW、特殊技術のDD
| 項目 | ダウ(DOW) | デュポン(DD) |
|---|---|---|
| 主力分野 | ポリエチレン、ポリウレタン、シリコーン、塗料・コーティング原料 | 水処理、医療・バイオ関連、建築・航空宇宙・産業技術 |
| GICSセクター | 素材(Materials) | 資本財・サービス(Industrials、2026年7月31日変更) |
| 収益を動かす要因 | 化学品価格、供給過剰・停止、原燃料価格、工場稼働率 | 有機売上成長、技術優位性、顧客投資、製品ミックス、生産性 |
| 2026年Q2売上高 | 120.92億ドル(約+20%)[1] | 18.19億ドル(+4%)[2] |
| 2026年Q2営業EBITDA | 23.12億ドル(非GAAP) | 4.48億ドル(非GAAP) |
| 2026年Q2 GAAP EPS | 0.99ドル | 1.37ドル(継続事業・併合後ベース) |
| 2026年Q2調整EPS | 1.44ドル(営業EPS) | 1.88ドル(調整後EPS、併合後ベース) |
| 四半期配当 | 0.35ドル[6] | 0.60ドル(株式併合後)[7] |
| 2026年10月7日終値 | 27.77ドル | 131.08ドル[8] |
| 年率換算配当利回り | 約5.04% | 約1.83% |
| PERの見方 | 直近12か月のGAAP EPSが赤字のため、実績PERは意味を持ちにくい | 2026年会社予想の調整後EPSでは約17.9~18.3倍(非GAAP) |
※B=10億ドル。売上高、EBITDA、EPSの比較は2026年Q2の公表値。DOWの「営業EPS」とDDの「調整後EPS」は定義が一致しません。DDの2026年Q2 EPSは株式併合後ベースで開示されています。配当利回りは現行四半期配当を4倍し、2026年10月7日終値で割った概算です。
業績と成長性の詳細分析
2025年通期のDOWは売上399.68億ドル、GAAP純損失(連結ベース)24.44億ドルと苦しい一年でした。営業キャッシュフローは約11億ドルで、当年の現金配当約15億ドルを下回っています。2026年Q2の回復は大きいものの、これが通年のキャッシュ創出力に定着するかどうかを検証する必要があります。[9]
DDは2025年通期、Qnity分離・アラミド売却後の継続事業ベースで売上約68億ドル、営業EBITDA約16.3億ドル、当時の調整後EPS1.68ドル(株式併合前)でした。2026年の比較では、Qnityとアラミドを含む旧ポートフォリオの売上と混同しないことが重要です。[10]
| 期間 | DOW 売上高・変化率 | DD 売上高・変化率 |
|---|---|---|
| 2026年Q2 | 120.92億ドル(約+20%) | 18.19億ドル(+4%) |
| 2026年Q1 | 97.94億ドル(-6%) | 16.81億ドル(+4%) |
| 2025通期 | 399.68億ドル(約-7%) | 約68億ドル(継続事業、+2%) |
| 2024通期 | 429.64億ドル(約-4%)[11] | 123.86億ドル(当時の旧ポートフォリオ)[12] |
| 2023通期 | 約446億ドル(前年比約-22%) | 120.68億ドル(当時の旧ポートフォリオ) |
| 2022通期 | 約569億ドル | 約130億ドル(当時の旧ポートフォリオ) |
※2025年以降のDDの数値はQnity分離・アラミド事業の非継続事業化を反映した比較可能な開示ベースです。2024年以前の旧売上高とは連続した時系列になりません。DOWの会計年度は暦年です。
DOWの注目点:値上がりによる利益回復と数量動向
2026年Q2のDOWは現地通貨ベースの販売価格が前年同期比20%上昇した一方、販売数量は1%減少しました。包装・特殊プラスチック事業の売上は63.85億ドル、営業EBITは12.78億ドルで、ポリエチレン価格上昇が収益改善に大きく寄与しています。[1]
売上増と利益改善を評価できる一方、数量の伸びを伴う需要回復と同一視してはいけません。中東情勢による供給制約、原燃料価格、市場価格の変動に左右されるため、今後は製品価格・販売数量・営業EBITDA・営業CFをセットで追う必要があります。
DDの注目点:水処理・医療・産業技術の採算
DDの2026年Q2は、Healthcare & Water Technologiesの売上が8.56億ドル、営業EBITDAが2.58億ドル、同マージンが30.1%でした。Diversified Industrialsは売上9.63億ドル、営業EBITDA2.13億ドル、同マージン22.1%で、航空宇宙などの需要が支えとなりました。[2]
水処理、医療・バイオ、航空宇宙は一般的な基礎化学品より顧客仕様や技術への依存度が高い一方、建設市場の弱さ、地域別需要、価格交渉、製品開発投資に左右されます。高い利益率が維持されるかを継続確認する必要があります。
会社見通しとバリュエーション
DDは2026年Q2決算時に2026年通期の継続事業売上予想を71.60億~71.90億ドル、営業EBITDA予想を17.50億~17.70億ドル、調整後EPSを7.17~7.32ドルとしました。いずれも2026年8月4日に公表された会社予想です。[2]
2026年10月7日終値131.08ドルを会社予想の調整後EPSで割ると、参考PERは約17.9~18.3倍となります。ただし非GAAP指標を使用しており、再編費用などを含むGAAP利益やFCFと併せて判断する必要があります。
DDのEPSが2026年Q1に公表された通期予想2.35~2.40ドルから、Q2発表時の7.17~7.32ドルに変わった主因は3対1の株式併合による株数減少です。従来予想を単純に3倍すると7.05~7.20ドルとなり、比較すると実質的な上方修正幅ははるかに小さくなります。併合に伴う見かけのEPS増加を利益成長と誤認しないことが重要です。
配当の詳細比較:DOWは利回り、DDは再編後の利益配分
DOWの直近確定配当は、2026年8月12日に発表された1株0.35ドルで、基準日は8月31日、支払日は9月11日でした。2025年に四半期配当を0.70ドルから半減した後の水準を維持しています。[6]
DDの直近確定配当は、2026年6月24日発表の株式併合後1株0.60ドルで、基準日は8月31日、支払日は9月15日でした。併合前の0.20ドルと経済的には同水準です。[7]
| 年・基準 | DOW 年間配当(ドル/株) | DD 年間配当(ドル/株) |
|---|---|---|
| 2026年率(現行配当×4) | 1.40(0.35×4) | 2.40(0.60×4、併合後) |
| 2025年実績 | 2.10(0.70×2+0.35×2) | 1.43(0.41×3+0.20×1、併合前)[13] |
| 2024年実績 | 2.80 | 1.52(併合前) |
| 2023年実績 | 2.80 | 1.44(併合前) |
| 2022年実績 | 2.80 | 1.32(併合前) |
※表の2026年は将来の支払総額ではなく現在の配当額を年率換算したものです。DDの2025年以前の配当は当時の株式基準で示し、2026年の併合後の金額と直接比較しないようにしてください。2025年に分離したQnity株式の分配は通常の現金配当には含みません。
株主還元とキャッシュフロー:高利回りだけで選ばない
DOWの現行配当年率1.40ドルを株価27.77ドルで割った利回りは約5.04%です。2025年通期の営業CFが現金配当支払いを下回った点からも、配当の持続可能性は市況回復がどの程度キャッシュフローに定着するかに左右されます。2026年Q2の営業CF13.24億ドルという改善を、今後の四半期にも確認したいところです。
DDは現行配当年率2.40ドル、株価131.08ドルで利回り約1.83%。2026年Q2の継続事業営業CFは4.00億ドル、取引関連調整後FCFは3.26億ドルでした。2026年会社予想の調整後EPSを基準とした参考配当性向は約33%ですが、GAAP利益・設備投資・自社株買いを含む資金配分で検証する必要があります。
リスク比較:DOWは価格変動、DDは事業再編後の成長
| リスク | DOW | DD |
|---|---|---|
| 需給・景気 | 石化製品の供給過剰・新設備増設・世界景気の変化 | 建設・産業・医療向け需要の鈍化、顧客側の設備投資 |
| 価格・マージン | 製品価格と原燃料のスプレッド、価格上昇の持続性 | 高マージン維持、製品ミックス・競争・研究開発投資 |
| 資本配分 | 設備投資、負債、将来の配当原資と現金創出力 | 売却資金の活用、自社株買い、M&A、再編後の事業運営 |
| 評価上の注意 | 景気回復期の利益は変動が大きく、赤字期の実績PERは使いにくい | スピンオフと株式併合で、過去の売上・株価・EPSの比較が複雑 |
結論:どちらが投資目的に合うか
DOW:素材化学市況の回復と配当収入を重視する場合
2026年Q2のDOWは利益とキャッシュフローが改善し、素材化学の底入れを示す材料となりました。ただし増収は価格要因が中心で、数量はまだ前年割れです。配当利回りの高さを評価する場合も、化学品価格の反落、供給能力、負債と設備投資がキャッシュ創出力を圧迫しないか確認する必要があります。
DD:特殊技術の成長と利益率を重視する場合
DDはQnity分離とアラミド売却を終え、Healthcare & Water TechnologiesとDiversified Industrialsの成長・採算が株価評価の中心になりました。2026年Q2の有機増収率4%、営業EBITDAマージン24.6%は評価材料ですが、買収・売却の影響を除いた売上成長とFCFの持続性を重視したいところです。
まとめると、DOWは「化学品市況の反転と高めの配当利回り」、DDは「事業再編後の高マージン特殊技術」が投資テーマです。かつて同じ企業グループを構成していましたが、現在の株価評価や配当利回りだけで同種の銘柄とみなすのは適切ではありません。
※本記事は2026年10月8日時点で公表されている情報を整理したもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。次回決算や配当の予定日を確定済みとして扱わず、公式IRでご確認ください。
【注】(出典リンク)
- Dow 2026年Q2決算・セグメント・CF → Dow IR:2026年Q2決算 → SEC:2026年Q2 Form 10-Q(確認日:2026-10-08) ↩
- DuPont 2026年Q2決算・通期見通し → DuPont IR:2026年Q2決算 → SEC:2026年Q2 Form 10-Q(確認日:2026-10-08) ↩
- Qnity Electronicsの分離完了 → DuPont公式:Qnity分離完了(確認日:2026-10-08) ↩
- アラミド事業の売却完了 → DuPont IR:2026年4月のアラミド事業売却(確認日:2026-10-08) ↩
- DDの3対1株式併合 → SEC:2026年5月26日株式併合発表(確認日:2026-10-08) ↩
- Dow直近の四半期配当 → Dow IR:2026年8月の配当宣言(確認日:2026-10-08) ↩
- DD直近の四半期配当 → DuPont IR:2026年6月の配当宣言(確認日:2026-10-08) ↩
- 2026年10月7日米国市場終値 → Stock Analysis:DOW株価 → Stock Analysis:DD株価履歴(確認日:2026-10-08) ↩
- Dow 2025年通期決算 → Dow IR:2025年通期決算(確認日:2026-10-08) ↩
- DuPont 2025年通期・継続事業実績 → DuPont IR:2025年通期決算(確認日:2026-10-08) ↩
- Dow 2023~2024年通期売上 → Dow IR:2024年通期決算(確認日:2026-10-08) ↩
- DuPont旧ポートフォリオの2023~2024年売上 → DuPont IR:2024年通期決算(確認日:2026-10-08) ↩
- DuPont 2025年末の配当改定 → DuPont IR:新DuPontの2025年Q4配当(確認日:2026-10-08) ↩

