VZとTを比較:ベライゾンとAT&Tの違いとは

銘柄比較

VZとTを違いを踏まえて比較します。

ベライゾンコミュニケーションズ(Verizon Communications Inc.)とエーティアンドティー(AT&T)は通信企業の代表格です。
その株価の推移(チャート)、決算の予想と結果、配当金と利回り、業績(財務情報)はどうなっているのでしょうか。
これらの銘柄について、今後の見通しや将来性を探ってみます。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移(VOX:Vanguard Communication Services Index Fund ETFを含めて比較)

※チャート右目盛り:10年国債利回り

※株価の成長率や52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、PBR、PSR、時価総額などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。今後の見通しの参考情報として目標株価も掲載。

決算(予想:結果)

決算の予想:結果のグラフについては以下の関連記事を参照

ベライゾン(VZ)決算:予想と結果 売上&EPS

AT&T(T)決算:予想と結果 売上&EPS

【高配当通信株対決】AT&T(T) vs ベライゾン(VZ)!減配の巨人か、安定の高利回りか?

日本の投資家にも人気の米国高配当株、AT&T(T)ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)。両社は米国の通信インフラを寡占する巨大企業であり、安定したビジネスと高い配当利回りが長年の魅力でした。しかし、AT&Tは2022年に大きな戦略転換を行い、両社の投資対象としての性格は大きく変化しました。

本記事では、「通信事業への回帰」を進めるAT&Tと、「安定経営」を続けるベライゾンの業績、配当、そして将来性を徹底的に比較・分析します。

比較サマリー:戦略転換のT、安定のVZ

項目 AT&T (T) ベライゾン (VZ)
事業内容 5Gワイヤレス、光ファイバーなどの通信事業
近年の戦略 メディア事業(WarnerMedia)を分離し、通信事業に再集中。財務改善(負債削減)が最優先課題。 通信事業に集中し、5Gネットワークの品質とカバレッジで他社をリードする戦略を継続。
配当の歴史 2022年に減配。連続増配記録が途絶える。 19年連続増配。着実な増配を継続。
配当利回り(直近) 約6.1% 約6.6%
PER (株価収益率) 約8倍 約15倍

最重要ポイント:AT&Tの減配という事実

AT&Tを評価する上で最も重要なのが、2022年の減配です。巨大企業による相次ぐ買収戦略の失敗により、財務が悪化。メディア事業を分離すると同時に、35年以上続いた「配当貴族」の地位を自ら手放しました。これにより、多くのインカム投資家の信頼を失いましたが、現在は「身の丈にあった経営」へ回帰し、財務改善を進めている段階です。

業績と成長性の詳細分析

両社ともに典型的な成熟企業であり、高い成長は見込めません。AT&Tの売上高はメディア事業の分離により2022年に大きく減少しています。一方、ベライゾンは安定しているものの、横ばいの状態が続いています。

AT&T 売上高 (前年比) ベライゾン 売上高 (前年比)
2024 $122.4 B (+1.3%) $134.0 B (-2.1%)
2023 $120.7 B (-24.1%) $136.8 B (+2.4%)
2022 $159.0 B (-9.1%) $133.6 B (+4.1%)
2021 $175.0 B (+1.8%) $128.3 B (+1.6%)
2020 $171.8 B $126.3 B

※B=10億ドル。AT&Tの2022年以降の売上はWarnerMedia分離後の数値です。

配当の詳細比較:信頼性のVZ、再起を誓うT

AT&Tの減配は、以下の配当履歴からも明らかです。一方のベライゾンは、低い増配率ながらも着実に配当を増やし続けており、配当投資家からの信頼を維持しています。

T 年間配当 (増配率) VZ 年間配当 (増配率)
2024 $1.11 (0.0%) $2.66 (+1.9%)
2023 $1.11 (0.0%) $2.61 (+2.0%)
2022 $1.60 (-23.1%) $2.56 (+2.0%)
2021 $2.08 (0.0%) $2.51 (+2.0%)
2020 $2.08 (+1.0%) $2.46 (+2.1%)

配当については以下の関連記事を参照

ベライゾン(VZ)の配当推移

AT&T(T)の配当推移

結論:あなたに合うのはどちら?

両社の比較は、「減配という過去を許せるか」「今後の安定性をどう評価するか」という点が焦点になります。

「配当の安定性と信頼性」を最優先するなら → ベライゾン (VZ)

通信事業に集中する堅実な経営と、19年続く連続増配の実績が最大の魅力です。AT&Tほどの経営上の混乱もなく、高配当を安定的に受け取りたい保守的なインカム投資家にとって、より安心できる選択肢と言えます。

「財務改善による将来の復活」に期待するなら → AT&T (T)

減配によって財務改善を進め、株価もPER8倍と割安な水準にあります。現在の高い利回りを享受しつつ、負債削減が進み、事業が軌道に乗った際の株価上昇(キャピタルゲイン)も狙いたい、よりリスク許容度の高い投資家向けの「復活期待株」です。


※本ページの分析は2025年6月9日時点の公開情報に基づいています。投資に関する最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。

Posted by 南 一矢