AMAT(アプライドマテリアルズ) 半導体装置の巨人、AI時代の成長性と配当力の両立

半導体,情報技術,配当

【2026年5月版】Applied Materials (AMAT) 徹底分析:半導体装置の巨人、AI時代の成長性と配当力の両立

はじめに
Applied Materials(アプライド・マテリアルズ、以下AMAT)は、半導体製造装置市場のリーダーの一角を占める企業です。特定の工程に特化したASMLとは対照的に、AMATは成膜、エッチング、イオン注入、熱処理、検査、プロセス制御、サービスなど、半導体製造の多岐にわたる工程で不可欠な装置・ソリューションを提供しています。

本記事では、半導体業界の景気循環の波を受けながらも、AMATがどのようにして「持続的な成長」と「加速する株主還元」を両立させているのかを財務データから整理します。年次データはFY2025(2025年10月26日終了年度)まで、四半期データはFY2026 Q2(2026年4月26日終了四半期)まで反映しています。[1][2]

最重要ポイント:AMATのビジネスモデル「半導体製造装置の総合プラットフォーム」

AMATの最大の強みは、その業界でも屈指の幅広い製品ポートフォリオにあります。半導体チップは数百の工程を経て製造されますが、AMATはその多くの工程で必要とされる装置、材料工学、プロセス制御、サービスを提供しています。

AI向け半導体では、より高性能で省電力なチップが必要になります。その結果、最先端ロジック、DRAM、HBM、先端パッケージング、配線、GAAトランジスタなどの難易度が上がり、AMATの成膜・エッチング・材料工学の重要性が増しています。FY2026 Q2決算でも、同社はAIコンピューティング投資の世界的な拡大、先端ロジック、DRAM、HBM、先端パッケージングを成長ドライバーとして強調しています。[2]

【免責事項および出典について】

  • 本記事の財務データは、主にApplied Materials, Inc.のForm 10-K、四半期決算発表、公式IR資料、SEC提出資料に基づいて作成しています。[1][2]
  • AMATの会計年度は、10月最終日曜日付近で終了します。FY2025は2025年10月26日終了年度です。
  • 記事内のCAGR、利益率、自己資本比率、ROE、FCF配当カバー率などは、公式数値をもとに筆者が算出した概算を含みます。
  • 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

【2026年5月更新】
FY2025 Form 10-K、FY2026 Q1決算、FY2026 Q2決算を反映しました。FY2025は売上高283.68億ドル、GAAP純利益69.98億ドル、GAAP希薄化後EPS8.66ドル、営業CF79.58億ドル、Non-GAAP FCF56.98億ドルでした。FY2026 Q2は売上高79.10億ドル、GAAP EPS3.51ドル、Non-GAAP EPS2.86ドル、Non-GAAP FCF2.10億ドルでした。2026年3月には四半期配当を0.46ドルから0.53ドルへ15%引き上げ、9年連続増配となりました。[1][2][3]

1. 業績分析:景気循環を乗り越える力強い成長

AMATの業績は、顧客である半導体メーカーの設備投資に左右されます。したがって短期では景気循環や輸出規制の影響を受けますが、長期ではAI、HBM、先端ロジック、先端パッケージング、IoT、自動車、データセンターといった半導体需要の拡大が追い風になります。

1.1. 売上・利益・キャッシュフローの推移

会計年度 売上高
百万$
営業CF
百万$
純利益
百万$
EPS
GAAP・希薄化後$
2014 9,072 1,800 1,072 0.88
2015 9,659 1,163 1,377 1.16
2016 10,825 2,566 1,721 1.54
2017 14,537 3,789 3,434 3.17
2018 16,803 3,787 4,174 4.01
2019 14,608 3,247 2,706 2.84
2020 17,202 3,804 3,619 3.92
2021 23,063 5,442 5,888 6.40
2022 25,785 5,399 6,525 7.44
2023 26,517 8,700 6,856 8.11
2024 27,176 8,677 7,177 8.61
2025 28,368 7,958 6,998 8.66
CAGR(年平均成長率)
過去10年
FY2015→FY2025
約11.4% 約21.2% 約17.7% 約22.3%
過去5年
FY2020→FY2025
約10.5% 約15.9% 約14.1% 約17.2%

注)FY2023〜FY2025はForm 10-Kの公式値。CAGRは筆者算出。[1][4]

  • FY2025は過去最高売上:FY2025の売上高は283.68億ドル、前年比+4%でした。GAAP希薄化後EPSは8.66ドル、Non-GAAP希薄化後EPSは9.42ドルでした。[1]
  • 利益は高水準だが税金・在庫の影響あり:FY2025のGAAP純利益は69.98億ドルで、FY2024の71.77億ドルから小幅減少しました。営業CFは79.58億ドルで、税金支払いと在庫増加の影響によりFY2024の86.77億ドルから減少しました。[1]
  • 長期成長は非常に強い:FY2015→FY2025の売上CAGRは約11.4%、EPS CAGRは約22.3%です。売上成長に加え、利益率改善と自社株買いが1株当たり利益の成長を押し上げました。

1.2. FY2026 Q2実績:AI投資が成長を押し上げ、売上・EPSともに過去最高

項目 FY2026 Q2 前年同期比
売上高 79.10億ドル +11%
GAAP粗利益率 49.9% +0.8pt
GAAP営業利益率 31.9% +1.4pt
GAAP純利益 28.06億ドル +31%
GAAP EPS 3.51ドル +33%
Non-GAAP営業利益率 32.1% +1.4pt
Non-GAAP EPS 2.86ドル +20%
Non-GAAP FCF 2.10億ドル -80%
配当・自社株買い 7.65億ドル 四半期実績

注)FY2026 Q2は2026年4月26日終了四半期。[2]

  • 売上・EPSは過去最高:FY2026 Q2の売上高は79.10億ドルで、前年同期比+11%でした。GAAP EPSは3.51ドル、Non-GAAP EPSは2.86ドルで、ともに過去最高水準となりました。[2]
  • AI関連投資が支え:会社は、AIコンピューティング・インフラの世界的な構築が、先端ロジック、DRAM、HBM、先端パッケージング需要を押し上げていると説明しています。[2]
  • FCFは一時的に低下:FY2026 Q2の営業CFは8.45億ドルでしたが、設備投資が6.35億ドルと大きく、Non-GAAP FCFは2.10億ドルにとどまりました。需要増に備えた投資・在庫・サプライチェーン強化の影響を見ておく必要があります。[2]
  • FY2026 Q3ガイダンス:会社はFY2026 Q3について、売上高89.50億ドル±5.00億ドル、Non-GAAP EPS3.36ドル±0.20ドルを見込んでいます。[2]

2. 株主還元:安定と加速の配当政策

AMATは、半導体製造装置企業として景気循環の影響を受けながらも、配当と自社株買いを組み合わせて株主還元を継続してきました。近年は配当成長も加速しています。

2.1. 配当実績

連続増配年数
9年
直近増配率
+15%
配当性向
FY2025 EPS基準
約24%
年間配当
現行・年換算
$2.12
  • 9年連続増配:AMATは2026年3月、四半期配当を0.46ドルから0.53ドルへ15%引き上げました。これにより9年連続増配となりました。[3]
  • 配当性向はまだ低い:現行年換算配当2.12ドルをFY2025のGAAP EPS8.66ドルで割ると、配当性向は約24%です。半導体装置企業として景気循環はありますが、配当余力は比較的厚い水準です。
  • 配当と自社株買いの併用:FY2025は配当13.84億ドル、自社株買い48.95億ドルを実施しました。総還元は62.79億ドルです。FY2026 Q2には、配当3.65億ドル、自社株買い4.00億ドル、合計7.65億ドルを株主に還元しました。[1][2]

2.2. フリーキャッシュフローで見る配当の安全性

AMATの配当は、潤沢なフリーキャッシュフローによって支えられています。ただしFY2026 Q2は、需要増に備えた設備投資の増加により、四半期ベースのFCF配当カバー率が一時的に低下しました。配当の持続性を見る際は、単四半期ではなく通期の営業CF、設備投資、在庫投資、自社株買いの優先順位を合わせて確認する必要があります。

会計年度 営業CF
百万$
設備投資
百万$
FCF
百万$
配当支払額
百万$
FCF配当
カバー率
2021 5,442 831 4,611 817 5.6倍
2022 5,399 1,182 4,217 868 4.9倍
2023 8,700 1,106 7,594 975 7.8倍
2024 8,677 1,190 7,487 1,192 6.3倍
2025 7,958 2,260 5,698 1,384 4.1倍
FY2026 Q1 1,690 650 1,040 365 2.8倍
FY2026 Q2 845 635 210 365 0.6倍
FY2026上期 2,531 1,281 1,250 730 1.7倍

注)FCFは営業CF-設備投資。FY2026 Q1、FY2026 Q2、FY2026上期のFCFは会社発表のNon-GAAP FCF。[1][2]

  • 通期ベースでは配当余力は厚い:FY2025のFCFは56.98億ドルで、配当支払額13.84億ドルの約4.1倍でした。FY2026上期もFCFは12.50億ドル、配当支払額は7.30億ドルで、上期ベースのFCF配当カバー率は約1.7倍です。[1][2]
  • FY2026 Q2単体ではFCFが低下:FY2026 Q2のFCFは2.10億ドルで、配当支払額3.65億ドルを下回りました。これは直ちに配当危機を意味するものではありませんが、需要増に備えた設備投資・在庫投資の負担が短期キャッシュフローに出ている点は確認しておきたいポイントです。[2]
  • 自社株買いも重要:FY2025の自社株買いは48.95億ドル、FY2026 Q2の自社株買いは4.00億ドルでした。配当利回りだけでなく、自社株買いを含めた総還元力を見る必要があります。[1][2]

3. 財務分析:盤石な財務基盤

AMATは、装置産業として研究開発や生産能力への投資を続けながらも、比較的健全なバランスシートを維持しています。現金・投資有価証券、営業CF、自己資本の厚みが、配当・自社株買い・研究開発を支えています。

会計年度末 総資産
百万$
総負債
百万$
株主資本
百万$
自己資本比率 ROE
概算
2021 25,825 13,578 12,247 47.4% 48.1%
2022 26,726 14,532 12,194 45.6% 53.5%
2023 30,729 14,380 16,349 53.2% 42.0%
2024 34,409 15,408 19,001 55.2% 40.6%
2025 36,299 15,884 20,415 56.2% 35.6%

注)自己資本比率は株主資本÷総資産。ROEは純利益÷期首期末平均株主資本で筆者算出。[1][4]

  • 自己資本比率は高水準:FY2025末の総資産は362.99億ドル、株主資本は204.15億ドル、自己資本比率は約56.2%でした。[1]
  • 手元流動性:FY2025末時点で、現金・現金同等物は72.41億ドル、短期投資は13.32億ドル、長期投資は43.27億ドルでした。[1]
  • 債務:FY2025末時点の長期債務は64.55億ドル、短期債務は1.00億ドルでした。総負債は158.84億ドルで、自己資本とのバランスは健全です。[1]

ミニ解説:AMATのような半導体製造装置企業は、売上や利益が顧客の設備投資サイクルに左右されます。そのため、単年度のEPSだけでなく、Non-GAAP FCF、受注・ガイダンス、セグメント別売上、中国向け比率、配当と自社株買いをセットで見ると、投資判断が安定します。FY2026 Q2は売上・EPSが過去最高となった一方、設備投資増でFCFが一時的に低下しており、成長投資とキャッシュ還元のバランスを見る局面です。

4. 投資判断のヒント:AMATの強みとリスク

AMATへの投資を検討するうえでは、その幅広い事業基盤と、半導体装置業界特有のサイクル、輸出規制、技術競争を同時に理解する必要があります。

Applied Materialsの強み

  • 幅広い製品ポートフォリオ:成膜、エッチング、イオン注入、熱処理、プロセス制御、サービスなど、半導体製造の複数工程に装置を提供しています。
  • 先端技術トレンドへの露出:AI、GAAトランジスタ、HBM、先端パッケージング、DRAM、先端ロジックなどの複雑化が、AMATの材料工学・プロセス装置の需要を押し上げます。[2]
  • サービス事業の安定性:Applied Global ServicesはFY2025に64億ドルの売上を上げ、装置販売より安定しやすい保守・部品・アップグレード収益の土台になります。FY2026 Q2のApplied Global Services売上高は16.65億ドルで、前年同期比で増加しました。[1][2]
  • 強力なキャッシュ創出力:FY2025の営業CFは79.58億ドル、Non-GAAP FCFは56.98億ドルでした。FY2026 Q2単体では成長投資によりFCFが低下しましたが、事業規模の拡大と高い利益率は配当と自社株買いを支える土台です。[1][2]
  • 株主還元の強化:2026年3月には15%増配を発表し、四半期配当は0.53ドルへ引き上げられました。FY2026 Q2にも配当と自社株買いを合わせて7.65億ドルを株主に還元しています。[3][2]

注意すべきリスク要因

  1. 半導体産業の景気循環:AMATの業績は、顧客である半導体メーカーの設備投資動向に大きく左右されます。需要が鈍化すれば、短期的な業績は下振れしやすくなります。
  2. 中国向け・輸出規制リスク:米国の対中輸出規制は、AMATの中国向け売上や製品出荷に影響します。FY2026上期にも輸出管理関連の和解費用が計上されており、2026年にかけても中国向けビジネスの不確実性は重要論点です。[2]
  3. 技術競争:Lam Research、東京エレクトロン、KLA、ASMLなどとの競争は激しく、研究開発投資を続けなければ競争力を失うリスクがあります。
  4. AI投資期待の反動:AI関連の設備投資期待が高まるほど、株価にも高い成長期待が織り込まれやすくなります。ガイダンスや受注見通しが期待を下回ると、株価変動が大きくなる可能性があります。
  5. 在庫・供給能力リスク:FY2026 Q2時点で会社は需要増に備えて製造計画、在庫、物流能力を強化していると説明しています。需要の伸びが想定を下回れば、在庫や稼働率が重荷になる可能性もあります。[2]

5. 2026年の見通しと注目点

FY2026 Q3ガイダンス(2026年5月14日発表時点)

AMATはFY2026 Q3について、売上高89.50億ドル±5.00億ドル、Non-GAAP希薄化後EPS3.36ドル±0.20ドルを見込んでいます。FY2026 Q2の売上高79.10億ドルからさらに増収を見込む内容であり、AIインフラ投資、先端ロジック、DRAM、HBM、先端パッケージングの強さが反映されています。[2]

  • AI関連需要:HBM、先端ロジック、先端パッケージング、GAA関連装置が成長ドライバーになるかが焦点です。
  • 半導体装置事業の成長:会社は2026年暦年の半導体装置事業について、30%超の成長を見込むと説明しています。[2]
  • 中国向け売上:輸出規制の影響で、中国向け売上の水準と構成が業績に大きく影響します。
  • サービス事業:Applied Global Servicesの成長が、装置サイクルの変動をどこまで緩和できるかが重要です。
  • 株主還元:配当の増加に加え、自社株買いの継続がEPS成長をどこまで支えるかを確認する必要があります。
  • FCFの回復:FY2026 Q2は設備投資が大きく、Non-GAAP FCFが2.10億ドルに低下しました。売上成長と同時に、営業CFとFCFがどこまで回復するかも重要です。[2]

6. まとめ

Applied Materialsは、半導体産業全体の成長を享受しやすい、高品質な「ピックス&ショベル」銘柄です。FY2025は売上高283.68億ドル、GAAP純利益69.98億ドル、営業CF79.58億ドルを記録しました。FY2026 Q2は売上高79.10億ドル、GAAP EPS3.51ドル、Non-GAAP EPS2.86ドルと過去最高水準の四半期実績となり、AIコンピューティング投資、DRAM、HBM、先端ロジック、先端パッケージングが成長テーマとして一段と明確になりました。[1][2]

投資家目線では、AMATは「幅広い製品ポートフォリオ」「AI・先端半導体投資への露出」「高い利益率」「低い配当性向」「自社株買い」の組み合わせが魅力です。

一方で、半導体装置企業である以上、設備投資サイクル、輸出規制、中国向け需要、競争、AI投資期待の反動には注意が必要です。加えて、FY2026 Q2のように成長投資が増える局面では、売上高やEPSだけでなく、Non-GAAP FCF、設備投資、セグメント別売上、ガイダンス、中国向け比率、配当・自社株買いの総還元をセットで確認することが重要です。

【注】(出典リンク)

  1. Applied Materials FY2025 Form 10-K・通期決算 → SEC EDGAR Applied Materials Form 10-K(FY2025)Applied Materials FY2025 Results(確認日:2026-05-18)
  2. Applied Materials FY2026 Q2決算 → Applied Materials Q2 FY2026 ResultsApplied Materials Q2 FY2026 Earnings Presentation(確認日:2026-05-18)
  3. 2026年配当増配 → Applied Materials「Raises Quarterly Cash Dividend by 15 Percent」Applied Materials Stock Information(確認日:2026-05-18)
  4. Applied Materials過年度データ → Applied Materials Annual Report & ProxySEC EDGAR Applied Materials filings(確認日:2026-05-18)

本記事は公開情報に基づく筆者分析であり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。正確性・完全性には注意していますが、内容を保証するものではありません。

最終更新日時:2026年5月18日(FY2025 Form 10-K/FY2026 Q2決算反映)

Posted by 南 一矢