ASMLの業績・配当:EUV技術による圧倒的な利益率と成長性

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ASMLの業績・配当:EUV技術による圧倒的な利益率と成長性(最新決算反映)


ASMLの業績・配当:EUV技術による圧倒的な利益率と成長性(2025年通期まで反映)

はじめに
ASMLは、オランダに本社を置く、半導体産業の心臓部を握る企業です。AI、スマートフォン、データセンターなど、現代社会を支えるあらゆる先端技術は、ASMLなしには成り立ちません。その理由は、同社が最先端半導体の製造に不可欠な「EUVリソグラフィ(露光装置)」を世界で唯一製造・供給できる独占企業だからです。
本記事では、この圧倒的な競争優位性を持つASMLが、どのように成長と株主還元を両立させているのかを、最新決算(2025年通期・Q4を含む)を含む財務データから整理します。[1]

【免責事項および出典について】

  • 2025年通期・四半期データは、ASMLが公表する四半期決算の一次資料(プレスリリース/決算パッケージ)に基づきます。[1][2]
  • 長期の年次データ(2015〜2024)は、ASMLの年次報告・Form 20-F等(規制当局提出書類を含む)を基礎とした整理です。[4]
  • 数値は原則ユーロ(€)建てです。2025年は通期実績が確定しています(2026年1月28日発表)。[1]
  • 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。投資の最終決定は、ご自身の判断と責任においてお願いします。

1. 業績分析:半導体サイクルの波に乗る力強い成長

ASMLの業績は、半導体市場の設備投資サイクルに影響を受けながらも、長期的には「微細化の必需品」として成長してきました。2025年通期は売上高€327億、純利益€96億と、いずれも過去最高を記録しました。[1]

1.1. 売上・利益・キャッシュフローの推移(年次)

会計年度(通期) 売上高(百万€) 営業CF(百万€) 純利益(百万€) EPS (€)(1株当たり利益)
2015 6,287 2,185 1,387 3.28
2016 6,796 2,342 1,473 3.47
2017 9,053 3,186 2,119 5.01
2018 10,944 3,521 2,591 6.14
2019 11,820 3,785 2,592 6.16
2020 13,978 4,885 3,553 8.49
2021 18,611 6,542 5,881 14.36
2022 21,173 7,215 5,624 14.14
2023 27,558 8,856 7,839 19.91
2024 28,260 6,150 7,570 19.25
2025(通期確定) 32,700 11,000 9,600 24.73
CAGR(年平均成長率)
過去10年(FY15-25) 17.9% 17.5% 21.3% 22.4%
過去5年(FY20-25) 18.5% 17.6% 22.0% 23.8%

年次(2015〜2024)は年次報告・規制当局提出書類等を基礎、2025年通期は2026年1月28日発表の決算資料に基づく。[4][1]

  • 2025年は過去最高を更新:売上高€327億(前年比+16%)、純利益€96億(前年比+27%)と、いずれも過去最高を記録しました。[1]
  • 長期で見た圧倒的な成長:EUVの商用化・量産立ち上げと歩調を合わせ、売上・利益ともに大きく拡大してきました。
  • 短期は循環の影響:設備投資はサイクル要因でブレますが、技術ロードマップ上「微細化が進むほどASMLの重要度が増す」構造は変わりません。

1.1.(追加)2025年:四半期の業績推移(Q1〜Q4)

期間 売上高(十億€) 売上総利益率(Gross margin) 純利益(十億€) EPS (€)(基本) ネットブッキング(十億€)
2025年Q1 5.3 約51.0% 1.2 3.1 3.6
2025年Q2 7.7 約51.5% 2.0 5.1 5.6
2025年Q3 7.5 51.9% 2.2 5.5 5.4
2025年Q4(過去最高) 9.7 52.2% 2.8 7.35 13.2
2025年通期 32.7 52.8% 9.6 24.73 27.8

出典:2025年Q4・通期のASML公式プレスリリース(2026年1月28日発表)。[1]

  • ポイント:2025年Q4は売上高€97億、ネットブッキング€132億と、いずれも過去最高を記録しました。[1]
  • 受注の急回復:Q4のネットブッキング€132億は、アナリスト予想(約€63億)の2倍以上。AI関連需要への顧客の強い期待が反映されています。[5]
  • バックログ:2025年末時点の受注残(バックログ)は€388億に達し、将来の収益基盤が堅固です。[1]

1.2. 収益性:独占企業ならではの高い利益率

ASMLの独占的な市場地位は、極めて高い利益率に表れています。2025年通期でも売上総利益率は52.8%と高水準を維持しました。[1]

期間 売上総利益率 営業利益率
2020(通期) 48.6% 29.5%
2021(通期) 52.7% 36.2%
2022(通期) 50.5% 34.1%
2023(通期) 51.3% 35.1%
2024(通期) 51.3% 33.2%
2025(通期) 52.8% 35.3%
2025年Q4(単四半期) 52.2% 35.3%

2025年通期・Q4は公式決算資料の開示値。年次の長期推移は年次報告等を基礎にした整理。[1][4]

  • 売上総利益率50%超:最先端の製造装置メーカーでありながら、50%台の高い粗利率が続いています。これは、競合が実質存在しないことによる強い価格決定力を示唆します。
  • 研究開発を賄っても高収益:R&D投資を継続しても利益率が崩れにくいのは、装置の希少性とサービス(Installed Base)収益の積み上げが背景です。

2. 成長の源泉:研究開発への巨額投資

ASMLの独占的地位は、偶然の産物ではありません。競合他社を寄せ付けないための、継続的な研究開発(R&D)投資こそが、その競争優位性の源泉です。[3]

会計年度(通期) 研究開発費(百万€) 売上高比率
2020 2,322 16.6%
2021 2,835 15.2%
2022 3,360 15.9%
2023 3,969 14.4%
2024 4,250 15.0%
2025 4,700 14.4%

R&Dの推移は年次報告・提出書類等の開示を基礎、2025年は公式決算資料に基づく。[4][1]

  • 売上の14〜16%をR&Dに:「次世代装置(High-NA EUV)」「歩留まり改善」「生産能力拡大」などに投資し、競合が追いつく余地を狭めています。
  • 未来への投資:ASMLにとって、R&D費用はコストではなく、将来の独占的キャッシュフローを維持するための"参入障壁の維持費"に近い性格があります。
  • High-NAの立ち上げ:2025年Q4には、High-NA EUV(EXE:5200B)システム2台分の売上を初めて計上しました。[1]

3. 株主還元と財務健全性

ASMLは、成長への巨額投資と並行して、株主への還元も継続しています。2025年は総配当€7.50/株(前年比+17%)を予定し、新たに最大€120億の自社株買いプログラムも発表しました。[1]

3.1. 配当実績と株主還元

還元の軸
配当+自社株買い
2025年 年間配当(予定)
€7.50 / 株
2025年 総還元額
€85億
新自社株買い枠
最大€120億
  • 配当:2025年の年間配当は€7.50/株(前年比+17%)を予定。中間配当€1.60×2回が既に支払済みで、最終配当€2.70/株は2026年4月の株主総会で決議予定です。[1]
  • 自社株買い:2022〜2025年プログラム(総額€76億買い戻し)を完了し、2028年末までに最大€120億の新プログラムを開始しました。[1]
  • 2025年の総還元:配当と自社株買いを合わせ、2025年通期で約€85億を株主に還元しました。[1]

3.2. 盤石な財務基盤

ASMLは、高い収益性を背景に、製造業としては良好な財務体質を維持してきました。設備投資サイクルの波が来ても、R&Dと生産能力増強を途切れさせにくい点は重要です。[4]

会計年度(通期) 総資産(百万€) 株主資本(百万€) 自己資本比率 ROE (%)(自己資本利益率)
2020 32,963 14,412 43.7% 24.7%
2021 38,629 18,559 48.0% 31.7%
2022 44,383 21,694 48.9% 25.9%
2023 47,235 25,379 53.7% 30.9%
2024 45,860 24,150 52.7% 31.3%

財務(年次)は年次報告・提出書類等の開示を基礎にした整理。[4]

  • 自己資本比率:製造業としては高めの自己資本比率を維持し、景気後退局面でも投資余力を残しやすい構造です。
  • 高い資本効率(ROE):高利益率ビジネスのため、ROEは長期的に高水準となりやすい点が特徴です。
  • 潤沢な手元資金:2025年Q4末時点で現金・現金同等物・短期投資は€133億、フリーキャッシュフローは通期で€110億に達しています。[1]

4. 投資判断のヒント:ASMLの強みとリスク

ASMLへの投資を検討する上で、その圧倒的な強みと、それに伴うリスクの両面を理解することが不可欠です。

ASMLの強み(事業の優位性)

  • 技術的独占:最先端半導体製造に不可欠なEUV露光装置を世界で唯一供給できる、代替不可能な存在です。[3]
  • 極めて高い参入障壁:長年の研究開発で蓄積された技術・特許・顧客との共同開発が、模倣をほぼ不可能にしています。
  • 構造的な成長市場:AI、データセンター、先端スマホ、車載などが半導体の微細化需要を支え、ASMLの事業環境は長期で追い風です。
  • 価格決定力:供給が限られる装置を握ることで、収益性を維持しやすいポジションにあります。[1]
  • AI需要への期待:2025年Q4の受注急増は、顧客がAI関連需要の持続性に自信を深めていることを示唆します。[5]

注意すべきリスク要因

  1. 半導体産業の景気循環:設備投資の増減が四半期業績に影響します(受注と売上のタイミング差にも注意)。[1]
  2. 地政学・輸出規制:中国向け売上は2026年に全体の約20%程度に低下する見通しですが、規制の変更リスクは残ります。[5]
  3. 顧客集中:主要顧客の投資計画変更が、受注や売上に波及します。
  4. 高い株価評価(バリュエーション):期待が大きい銘柄ほど、ガイダンスの微修正で株価が振れやすい点は要注意です。
  5. 組織再編:2026年1月に約1,700名の人員削減を発表。組織効率化の一環ですが、短期的な混乱リスクも。[5]

4.1. 2026年のガイダンス

ASMLは2026年について以下の見通しを示しています。[1]

  • Q1 2026:売上高€82〜89億、売上総利益率51〜53%
  • 2026年通期:売上高€340〜390億、売上総利益率51〜53%
  • 長期見通し:2030年までに半導体市場は1兆ドルを超える可能性があり、ASMLはその恩恵を受ける立場にあります。[5]

5. まとめ

本記事では、ASMLの財務データを多角的に整理しました。最後に、投資判断のためのポイントをまとめます。

ASMLは、「技術的独占に支えられた、他に類を見ない高品質な成長企業」です。2025年通期は売上高€327億、純利益€96億と過去最高を更新し、Q4のネットブッキング€132億はアナリスト予想を大きく上回りました。[1]

AI需要を背景に顧客の設備投資意欲は強く、2025年末のバックログは€388億に達しています。2026年は売上高€340〜390億を見込み、成長継続が期待されます。[1]

一方で、設備投資サイクル・輸出規制・高バリュエーションといった「外部要因」による短期変動は避けられません。[4]

最終的な投資判断では、(1)受注(ネットブッキング)とガイダンス、(2)粗利率の維持、(3)中長期の微細化ロードマップの3点を軸に、期待とリスクの釣り合いを見極めることが重要です。

ミニ解説:この記事の数値表の見方
年次表(2015〜2025)は「通期」の比較で、2025年は確定値です。四半期の推移表も併記しており、直近のトレンド確認は、四半期の売上・粗利率・ネットブッキング(受注)をセットで見るのが実務的です。[1]

【注】(出典リンク)

  1. 2025年Q4・通期決算(主要数値・配当・ブッキング・ガイダンス) → ASML Investors: Fourth quarter 2025(一次情報) → GlobeNewswire: ASML Press Release 2026/1/28(一次情報) 確認日:2026-02-05
  2. 2025年Q2・Q3決算 → ASML Investors: Financial results(一次情報) 確認日:2026-02-05
  3. ASML技術・製品概要 → ASML Technology(一次情報) 確認日:2026-02-05
  4. 年次報告・Form 20-F(長期の年次データ確認) → SEC EDGAR: ASML Holding N.V. filings(一次情報) / ASML Investors(年次資料)(一次情報) 確認日:2026-02-05
  5. Q4 2025決算報道・アナリスト分析 → CNBC: ASML Q4 2025 earnings(二次情報) → Yahoo Finance: ASML Q4 Earnings Call Highlights(二次情報) 確認日:2026-02-05


Posted by 南 一矢