CRM(セールスフォースドットコム) の業績

AI(人工知能),SaaS(クラウド+サブスク),ダウ30銘柄,情報技術,業績





【2026年9月版】Salesforce (CRM) 徹底分析:Agentforce・Data 360・AIforceで進む新時代 – FY2014-FY2026財務データとFY2027 Q2最新動向

【2026年9月版】Salesforce (CRM) 徹底分析:Agentforce・Data 360・AIforceで進む新時代 – FY2014-FY2026財務データとFY2027 Q2最新動向

はじめに
Salesforce(セールスフォース)は、クラウド型CRMの代表企業として長年市場を牽引してきました。
2026年9月17日時点では、単なる「CRMソフト企業」というよりも、AgentforceData 360、Informatica、Slackなどを組み合わせ、人とAIエージェントが同じ業務基盤で働く「Agentic Enterprise」を構築する企業へと軸足を移しています。

最新決算のFY2027 Q2(2026年7月31日終了)は、売上高113.45億ドル、サブスクリプション&サポート売上108.20億ドルでした。
cRPOは335億ドルで前年同期比14%増、総RPOは663億ドルで11%増となりました。
Agentforce ARRは15億ドル超、AgentforceとData 360を合わせたARRは約39億ドルまで拡大しています。[1]

FY2027 Q2のGAAP純利益は35.26億ドル、希薄化後EPSは4.29ドルでした。
ただし同四半期には戦略投資の純評価益26.13億ドルが含まれており、GAAP EPSへの押し上げ効果は2.43ドルでした。
営業実態を見る際は、GAAP EPSだけでなく、営業利益率やNon-GAAP EPSもあわせて確認する必要があります。[2]

一方、最新通期であるFY2026(2026年1月31日終了)は、売上高415.25億ドル、営業キャッシュフロー149.96億ドル、フリーキャッシュフロー144.02億ドルでした。
FY2027はInformaticaの通年寄与も加わり、売上成長率が再び二桁へ戻っています。[3]

M&Aも進みました。
2026年6月時点では買収計画だったm3ter、Contentful、Finは、それぞれ2026年7月1日、9月1日、9月10日に買収完了となっています。[4]
さらにDreamforce 2026では、Salesforceのデータ、ワークフロー、ビジネスロジック、権限、ガバナンスを外部のAIインターフェースから利用できるようにするAIforceが発表され、AnthropicとのClaudeforceも具体化しました。[5]

この記事では、FY2014~FY2026の長期財務データを維持しながら、FY2027 Q2の決算、Agentforce・Data 360、AIforce、買収後の財務構造、株主還元、FY2027ガイダンスまで整理します。

【免責事項および出典について】

  • 財務情報は、Salesforce, Inc.のForm 10-K、Form 10-Q、決算発表などの一次情報を優先しています。直近通期はFY2026(2026年1月31日終了)、直近四半期はFY2027 Q2(2026年7月31日終了)です。
  • 本文のCAGR、自己資本比率、FCFマージンなどには、公式開示値をもとに筆者が算出した概算を含みます。
  • Salesforceの会計年度は前年2月1日から当年1月31日までです。FY2027は2026年2月1日~2027年1月31日を指します。
  • 2026年9月17日時点で、FY2027 Q3および通期ガイダンスは2026年8月26日のFY2027 Q2決算発表を基準としています。
  • 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。

会計年度について:
SalesforceのFY2026は2025年2月1日~2026年1月31日、FY2027は2026年2月1日~2027年1月31日です。
したがって、FY2027 Q2は2026年5月1日~7月31日に相当します。

1. Salesforceの長期的な業績:成長率は鈍化したが、利益とキャッシュ創出力は改善

Salesforceは、FY2014の売上高40.71億ドルから、FY2026には415.25億ドルへ拡大しました。
売上成長率はかつての20~30%台から低下しましたが、その一方で営業利益率、FCF、EPS、株主還元は大幅に改善しています。
FY2027 Q2の売上高は前年同期比11%増となり、FY2026通期の9.6%成長から再び二桁へ戻りました。[1]

FY2026売上高
$41.5B
FY2026総RPO
$72.4B
FY2027 Q2売上高
$11.35B
FY2027 Q2 Agentforce ARR
$1.5B+

1.1. 売上、サブスクリプション売上、RPO、営業CF、利益の推移

会計年度 総売上高
(百万$)
売上成長率 サブスク&サポート売上
(百万$)
総RPO
(百万$)
営業CF
(百万$)
GAAP純利益
(百万$)
FY2014 4,071 33.4% 3,791 5,400 875 (232)
FY2015 5,374 32.0% 5,008 7,100 1,335 (263)
FY2016 6,667 24.1% 6,224 9,500 1,611 (47)
FY2017 8,392 25.9% 7,800 11,800 1,969 180
FY2018 10,480 24.9% 9,773 15,300 2,727 360
FY2019 13,282 26.7% 12,410 20,400 3,416 1,110
FY2020 17,098 28.7% 16,014 26,300 3,964 126
FY2021 21,252 24.3% 19,980 36,100 4,787 4,072
FY2022 26,492 24.7% 24,659 43,700 6,008 1,444
FY2023 31,352 18.3% 29,031 48,600 7,099 208
FY2024 34,857 11.2% 32,537 56,900 10,234 4,136
FY2025 37,895 8.7% 35,679 63,400 13,092 6,197
FY2026 41,525 9.6% 39,388 72,400 14,996 7,457
CAGR(FY2014~FY2026)
長期成長率 約21.4% 約21.5% 約24.1% 約26.7% N/A

FY2026以前の長期系列はSalesforceの通期決算・年次報告書を基に整理。CAGRは筆者算出。[7][3]

  • FY2026:売上高415.25億ドル、サブスクリプション&サポート売上393.88億ドル、営業CF149.96億ドルでした。[3]
  • FY2027 Q2:売上高113.45億ドル、サブスクリプション&サポート売上108.20億ドルでした。InformaticaはQ2売上に4.56億ドル寄与しました。[1][2]
  • RPO:FY2027 Q2末の総RPOは663億ドル、cRPOは335億ドルです。総RPOは前年同期比11%増、cRPOは14%増でした。[1]
  • 上期:FY2027上期(2026年2~7月)の売上高は224.78億ドルで、前年同期比12%増でした。[2]

1.2. 収益性:高いNon-GAAP利益率を維持

会計年度 GAAP営業利益率 Non-GAAP営業利益率 営業CF率 FCF率 Rule of 40
FY2022 2.1% 18.7% 22.7% 20.4% 45.1%
FY2023 3.3% 22.5% 22.6% 20.1% 38.4%
FY2024 14.4% 30.5% 29.4% 27.3% 38.5%
FY2025 19.0% 33.0% 34.5% 32.8% 41.5%
FY2026 20.1% 34.1% 36.1% 34.7% 44.3%

営業CF率とFCF率は売上高比、Rule of 40は売上成長率+FCF率で算出。四半期FCFは季節性が大きいため、Rule of 40は通期中心で比較しています。[3]

  • FY2026 Non-GAAP営業利益率:34.1%で、FY2025の33.0%から改善しました。[3]
  • FY2027 Q2:GAAP営業利益率は20.5%、Non-GAAP営業利益率は34.1%でした。[1]
  • Q2のGAAP利益には注意:FY2027 Q2の戦略投資純利益は26.13億ドルで、そのうち約27億ドルの未実現益はAnthropicへの投資に関連します。GAAP純利益の伸びをすべて本業の利益成長とみなすのは適切ではありません。[2]

1.3. コスト構造:販売費率は安定、AI関連の原価負担は増加

FY2027 Q2では、売上高に対する販売・マーケティング費率は34%、研究開発費率は15%でした。
一方、売上原価率は前年同期の22%から23%へ上昇しています。
Salesforceは、ホスティングサービス、生成AI技術、買収関連無形資産の償却などが原価増加要因だと説明しています。[2]

会計年度・四半期 GAAP粗利率 研究開発費率 販売・マーケ費率 一般管理費率 リストラ費率
FY2024 75% 14% 37% 7% 3%
FY2025 77% 15% 35% 7% 1%
FY2026 78% 15% 35% 7% 1%
FY2027 Q1 77% 14% 34% 7% 1%
FY2027 Q2 77% 15% 34% 6% 1%

FY2027 Q2は2026年7月31日終了の3カ月。各費用率はSalesforceのForm 10-Q開示を基にした売上高比の概数です。[2]

  • 販売・マーケ費率:FY2027 Q2は34%で、前年同期と同水準でした。
  • 研究開発費率:FY2027 Q2は15%で、Agentforce、Data 360、AI基盤への投資を継続しています。
  • 粗利率:FY2027 Q2は約77%ですが、AI・クラウド運用コストの増加には注意が必要です。

1.4. 投資家向け指標:EPS、FCF、株主還元

会計年度・四半期 GAAP希薄化後EPS Non-GAAP希薄化後EPS FCF
(百万$)
自社株買い
(百万$)
配当支払
(百万$)
FY2023 0.20 5.24 6,300 3,869 0
FY2024 4.20 8.22 9,500 7,692 0
FY2025 6.36 10.20 12,434 7,757 1,549
FY2026 7.80 12.52 14,402 12,677 1,605
FY2027 Q1 2.42 3.88 6,556 27,100 365
FY2027 Q2 4.29 5.90 1,098 84 364

FY2027 Q2のFCFは営業CF12.69億ドル-設備投資1.71億ドル=10.98億ドルで算出。
Q1の自社株買いには250億ドルASRの前払いが含まれるため、Q2との単純比較には注意が必要です。[1][2]

  • EPS:FY2027 Q2はGAAP EPS4.29ドル、Non-GAAP EPS5.90ドルでした。ただし戦略投資益の影響が大きいため、前年同期とのGAAP EPS比較は割り引いて見る必要があります。[1][2]
  • FCF:FY2027 Q2は10.98億ドルでした。Q2またはQ3は歴史的に営業CFが小さくなりやすいため、通期・上期ベースでも確認する必要があります。[2]
  • ASR:2026年3月に250億ドルのAccelerated Share Repurchaseを開始し、約1.03億株を先行取得しました。最終精算は2026年10月を予定しています。[1][2]

最新配当
Salesforceは2026年9月3日、1株0.44ドルの四半期配当を発表しました。
基準日は2026年9月17日、支払日は2026年10月8日です。
同額が年4回続くと仮定した年換算配当は1.76ドルです。[6]

2. ビジネスモデル:「Customer 360」から「Agentforce 360 Platform」へ

Salesforceは従来、Sales Cloud、Service Cloud、Marketing Cloudなど個別のCRMアプリを中心に説明される企業でした。
現在は、人、AIエージェント、アプリ、データを一体で動かすAgentforce 360 Platformへと製品体系を再構成しています。

  • Agentforce Apps:Agentforce Sales、Service、Marketing、Commerce、Flex Credits、Slackなどを含みます。FY2027 Q2の売上は71.93億ドルで、前年同期比8%増でした。[2]
  • Data 360, Headless Platform, and Other:Data 360、Informatica、MuleSoft、Tableau、Headless Platformなどを含みます。FY2027 Q2の売上は36.18億ドルで、前年同期比20%増でした。[2]
  • Agentforce:FY2027 Q2のARRは15億ドルを超え、前年同期比240%以上増加しました。[1]
  • Agentforce + Data 360:FY2027 Q2のARRは約39億ドルで、前年同期比210%以上増加しました。[1]
  • Informatica:2025年11月に買収完了。FY2027 Q2の総売上には4.56億ドル寄与しました。[1]
  • m3ter:AI時代の使用量・成果ベース課金を支えるメータリング/レーティング基盤で、2026年7月1日に買収完了しました。[4]
  • Contentful:コンポーザブルなコンテンツ基盤をHeadless 360へ加える狙いで、2026年9月1日に買収完了しました。[4]
  • Fin:カスタマーサービス向けAIエージェント企業で、2026年9月10日に買収完了しました。[4]

FY2027 Q2のサブスクリプション&サポート売上区分

サービス区分 FY2027 Q2売上
(百万$)
FY2026 Q2売上
(百万$)
前年比
Agentforce Apps 7,193 6,682 +8%
Data 360, Headless Platform, and Other 3,618 3,008 +20%
ヘッジ調整 9 0 N/A
合計 10,820 9,690 +12%

FY2027 Q1からサブスクリプション&サポート売上の開示区分が「Agentforce Apps」と「Data 360, Headless Platform, and Other」を中心とする体系へ変更されています。[2]

ミニ解説
この開示変更は重要です。
Salesforceは、自社をSales CloudやService Cloudなど個別アプリの集合体としてではなく、AIエージェントが業務アプリとデータを横断して動く統合基盤として見せる方向へ進んでいます。
FY2027 Q2では、データ・統合系を含む「Data 360, Headless Platform, and Other」が20%成長し、Agentforce Appsの8%成長を上回りました。[2]

3. 財務の健全性:キャッシュ創出力は高いが、ASRで財務構造は大きく変化

Salesforceは高いキャッシュ創出力を維持していますが、2026年3月の250億ドルASR向け起債により、バランスシートは以前よりレバレッジの高い構造へ変わりました。
FY2027 Q2末(2026年7月31日)の現金・現金同等物と有価証券は合計114.03億ドル、非流動債務は392.88億ドルです。[2]

3.1. 資産・負債・資本の推移

時点 総資産
(百万$)
総負債
(百万$)
株主資本
(百万$)
自己資本比率 現金・現金同等物・有価証券
(十億$)
FY2024末 99,823 40,177 59,646 59.8% 14.2
FY2025末 102,928 41,755 61,173 59.4% 14.0
FY2026末 112,305 53,163 59,142 52.7% 9.6
FY2027 Q2末 109,620 71,242 38,378 約35.0% 11.4

FY2027 Q2末は2026年7月31日時点。自己資本比率は株主資本÷総資産で筆者算出。[2][3]

  • 総資産:FY2027 Q2末は1,096.20億ドルでした。
  • 総負債:FY2026末の531.63億ドルからFY2027 Q2末は712.42億ドルへ増加しました。
  • 株主資本:FY2027 Q2末は383.78億ドルまで低下しています。大規模ASRによる自己株式増加が主因です。[2]
  • 債務:FY2027 Q2末の非流動債務は392.88億ドルで、シニア無担保債の帳簿価額は333億ドルでした。[2]

3.2. キャッシュフロー分析:事業のキャッシュ力は維持

会計年度・四半期 営業CF
(百万$)
設備投資
(百万$)
FCF
(百万$)
FCFマージン 総還元額
(百万$)
FY2023 7,099 799 6,300 20.1% 3,869
FY2024 10,234 734 9,500 27.3% 7,692
FY2025 13,092 658 12,434 32.8% 9,306
FY2026 14,996 594 14,402 34.7% 14,282
FY2027 Q1 6,701 145 6,556 58.9% 27,465
FY2027 Q2 1,269 171 1,098 約9.7% 448

総還元額は自社株買いの現金支出+配当支払。FY2027 Q2は自社株買い84百万ドル+配当364百万ドル。
ASRの250億ドル前払いはQ1に計上されているため、四半期の還元額は大きく変動します。[2]

FY2027上期の営業キャッシュフローは79.70億ドルで、前年同期の72.16億ドルから約10%増加しました。
設備投資は3.16億ドルで、単純FCFは約76.54億ドルです。
大型ASRで財務構造は変化しましたが、本業のキャッシュ創出力そのものは引き続き強い水準です。[2]

4. AI戦略:「Agentforce」からAIforce・Claudeforceを含む企業AI基盤へ

SalesforceのAI戦略は、CRM画面に生成AIを追加する段階からさらに進みました。
現在の構造は、Data 360で企業データを統合し、AgentforceでAIエージェントを動かし、AIforceでSalesforce内部のデータ、ルール、ワークフロー、権限、ガバナンスを外部AIにも接続するというものです。[5]

  • Agentforce ARR:FY2027 Q2時点で15億ドル超、前年同期比240%以上増加しました。[1]
  • Agentforce + Data 360 ARR:FY2027 Q2時点で約39億ドル、前年同期比210%以上増加しました。[1]
  • Agentic Work Units:FY2027 Q2までの累計は70億、Q2単独では32億で前四半期比97%増でした。[1]
  • Data 360:FY2027 Q2に104兆レコードを取り込み、うち82兆レコードがZero Copy経由でした。前年同期比ではそれぞれ355%、731%増です。[1]
  • AIforce:Dreamforce 2026で発表されたインターフェース層で、Salesforceに蓄積されたデータ、ワークフロー、ビジネスロジック、セマンティクス、権限、セキュリティ、ガバナンスを各種AIインターフェースから利用できるようにする構想です。[5]
  • Claudeforce:Anthropicとの提携を拡大し、ClaudeからSalesforceの企業データや業務ロジックを利用できる仕組みです。「Salesforce in Claude」には営業向け37種類の事前構築スキルが用意されています。[5]

ミニ解説
2025~2026年の変化は、「Salesforce自身のAIを顧客に売る」だけではなくなった点です。
AIforceやClaudeforceでは、Salesforceが保有する顧客データ、権限、ワークフロー、業務ロジックを、Claudeなど別のAIから安全に利用できるようにする方向へ進んでいます。
この戦略が成功すれば、SalesforceはAIモデルそのものの競争よりも、企業AIが安全に業務を実行するためのデータ・権限・ワークフロー層で価値を維持できる可能性があります。
一方、その収益化速度は今後確認すべき点です。[5]

5. 市場での強みとライバル:CRMから企業AI基盤の競争へ

SalesforceはCRM市場で強い顧客基盤を持っていますが、競争領域は営業支援や顧客管理だけではありません。
AIエージェント、企業データ、ワークフロー、分析、業務自動化、使用量課金、コンテンツ基盤まで競争範囲が広がっています。

  • 主な競合:Microsoft(Dynamics 365 / Copilot)、Oracle、SAP、Adobe、ServiceNow、HubSpot、Snowflake、Databricksなど。
  • Salesforceの強み:既存の大規模顧客基盤、継続課金収益、Sales・Service・Slackなど業務の入口を持つこと、Data 360・Informaticaによるデータ基盤、高いFCFです。
  • 成長の核:FY2027 Q2ではAgentforce + Data 360 ARRが約39億ドルへ拡大し、AI・データ領域は全社売上より速く成長しています。[1]
  • オーガニック成長:FY2027 Q2の会社説明ではNet New Annual Order Valueの伸びが過去4年間で最も強く、会社はFY2027後半のオーガニック売上再加速を引き続き見込んでいます。[1]

投資家が注目すべきリスク

  • AIの収益化:
    Agentforce ARRは急成長していますが、AgentforceやAIforceの利用増が長期的に既存CRM売上を上乗せするのか、一部既存機能を置き換えるのかはまだ確認が必要です。
  • ARR定義の変更:
    FY2027 Q2からAgentforce ARRにはAI offerings、Slackbot、Headless 360が含まれるようになりました。
    Q1以前との成長率比較では定義変更を認識しておく必要があります。[1]
  • 買収統合:
    Informaticaに加え、2026年にはm3ter、Contentful、Finを相次いで取得しました。
    製品統合やクロスセルが想定通り進まない場合、成長率や利益率に影響します。[4]
  • GAAP利益の変動:
    FY2027 Q2はAnthropicなど戦略投資の評価益がGAAP純利益を大きく押し上げました。
    将来は逆方向の評価損が発生する可能性もあるため、本業の営業利益と区別する必要があります。[2]
  • 負債と資本配分:
    250億ドルASRに伴う起債で債務が大きく増加しました。
    自社株買い、M&A、AI投資、債務返済のバランスが以前より重要になっています。[2]
  • AI運用コスト:
    FY2027 Q2は生成AI技術やホスティング費用が売上原価を押し上げています。
    AI売上が増えても、推論・インフラコストが高ければ粗利益率への圧力が残ります。[2]

6. FY2027年の見通しと今後のポイント

FY2027 Q2決算時点でSalesforceは通期売上ガイダンスを引き上げました。
FY2027通期売上高は461億~464億ドル、前年比11~12%増を見込みます。
Non-GAAP営業利益率は34.3%、営業CFとFCFの成長率はそれぞれ約4~5%を見込んでいます。[1]

項目 FY2027 Q3 ガイダンス FY2027 通期ガイダンス
売上高 $11.42B~$11.50B $46.1B~$46.4B
売上成長率 11%~12% 11%~12%
cRPO成長率 約14%
サブスク&サポート売上成長率 12%をやや上回る
GAAP営業利益率 20.1%
Non-GAAP営業利益率 34.3%
GAAP EPS $1.81~$1.83 $10.21~$10.25
Non-GAAP EPS $3.42~$3.44 $16.67~$16.71
営業CF成長率 約4%~5%
FCF成長率 約4%~5%
CapEx 売上高の約1.5%

2026年8月26日のFY2027 Q2決算発表時点の会社ガイダンス。
通期売上ガイダンスにはInformaticaの寄与が3ポイント強含まれます。
当時未完了だったContentfulとFinの寄与もガイダンスに織り込まれており、その後両社の買収は完了しました。[1][4]

  • 売上見通し:FY2027通期は461億~464億ドルで、FY2026の415.25億ドルから11~12%増を見込みます。
  • Q3:売上高114.2億~115.0億ドル、前年比11~12%増を見込み、cRPO成長率は約14%の想定です。[1]
  • 利益率:Non-GAAP営業利益率は34.3%を維持する計画です。
  • EPS:FY2027通期Non-GAAP EPS見通しは16.67~16.71ドルです。
  • キャッシュフロー:営業CF・FCFとも通期4~5%成長を見込みます。3月のASR向け資金調達に伴う利息負担が成長率を抑えています。
  • 長期目標:FY2030売上高目標は、Informaticaを含め630億ドルです。[3]

FY2027後半で確認したい点
売上成長率だけを見ると、Informaticaなど買収企業の寄与も含まれています。
今後は、①Informaticaを除いたオーガニック成長、②Agentforce・Data 360 ARR、③cRPO、④AI運用コストを含む利益率、⑤ASR後の債務、⑥Contentful・Fin・m3terの統合を組み合わせて見る必要があります。

7. まとめ:Salesforceは「AI CRM」から企業AIの実行基盤へ

SalesforceはFY2026に売上高415.25億ドル、営業CF149.96億ドル、FCF144.02億ドルを記録しました。
FY2027 Q2では売上高113.45億ドル、cRPO335億ドル、Agentforce ARR15億ドル超、Agentforce + Data 360 ARR約39億ドルとなり、全社売上よりAI・データ領域の方が速く成長しています。[1][3]

同時に、企業の見方も変える必要があります。
FY2027 Q2のGAAP EPS4.29ドルには戦略投資の評価益が大きく含まれる一方、250億ドルASRに伴う起債で負債は増え、自己資本比率はFY2026末の52.7%からFY2027 Q2末には約35.0%へ低下しました。
高いキャッシュ創出力は維持されていますが、以前より資本配分の重要性が増しています。[2]

事業面では、Informaticaに続き、m3ter、Contentful、Finの取得が完了しました。
さらにAIforceやClaudeforceによって、Salesforceは自社AIを提供するだけでなく、企業データ、権限、ワークフロー、業務ロジックをさまざまなAIエージェントから利用できる基盤を目指しています。[4][5]

  • 強み:大規模なCRM顧客基盤、高い継続収益、Data 360・Informaticaを含むデータ基盤、高いFCF、急成長するAgentforce。
  • 確認点:オーガニック成長の再加速、Agentforceの収益化、AI関連原価、買収統合、ASR後の債務と資本配分。
  • 事業の変化:「CRM SaaS企業」から「企業のデータ・アプリ・AIエージェントをつなぎ、実際の業務を実行させる基盤」へ移行しつつあります。

ミニ解説
Salesforceを評価するときは、売上成長率だけでは実態を捉えにくくなっています。
総RPO・cRPO、Agentforce / Data 360 ARR、営業利益率、FCF、戦略投資損益、買収寄与を除いた成長率、債務までセットで見ると、AI時代の再成長が本物かどうかを判断しやすくなります。

【注】(出典リンク)

  1. FY2027 Q2実績・Agentforce / Data 360 KPI・FY2027 Q3および通期ガイダンス → 一次情報:Salesforce「FY2027 Q2 Results」(確認日:2026-09-17)
  2. FY2027 Q2 Form 10-Q・財務諸表・売上区分・戦略投資益・債務・ASR・キャッシュフロー → 一次情報:SEC EDGAR「Salesforce FY2027 Q2 Form 10-Q」(確認日:2026-09-17)
  3. FY2026通期実績・FY2030売上目標・FY2026 Form 10-K → 一次情報:Salesforce「FY2026 Q4 / FY2026 Results」SEC EDGAR「Salesforce FY2026 Form 10-K」(確認日:2026-09-17)
  4. m3ter・Contentful・Finの買収完了 → 一次情報:Salesforce「m3ter」Salesforce「Contentful」Salesforce「Fin acquisition completed」(確認日:2026-09-17)
  5. AIforce・Claudeforce・Salesforce in Claude → 一次情報:Salesforce「Salesforce Unveils AIforce」Salesforce「Salesforce and Anthropic Announce Claudeforce」(確認日:2026-09-17)
  6. 2026年9月発表の四半期配当0.44ドル・基準日・支払日 → 一次情報:Salesforce「Salesforce Announces Quarterly Dividend」(確認日:2026-09-17)
  7. FY2014~FY2025の長期財務データ → 一次情報:Salesforce「Annual Reports」(確認日:2026-09-17)


Posted by 南 一矢