EDV・TLT:超長期債券ETFを比較(株価・配当・構成銘柄)

債券ETF

金利低下局面で大きなリターンが期待できる一方、金利上昇局面では大きな損失リスクを伴う「米国の超長期債券ETF」。この記事では、その代表格であるEDVTLTを比較します。

この2つのETFは、どちらも残存期間20年以上の米国債に投資しますが、投資対象のわずかな違いが、金利感応度(デュレーション)とリスク・リターンに決定的な差を生み出します。その本質的な違いを理解し、ご自身の投資戦略に合った選択ができるよう解説します。

(※ご注意:以下に記載するデュレーションや利回り、構成比率は常に変動します。投資を検討される際は、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。)

米国の超長期債ETF【EDV vs TLT】徹底比較!最大の違いはデュレーション


主要ETF比較サマリー

まずはEDVとTLTの最も重要な違いを一覧で見てみましょう。「投資対象」と、それによって生じる「実効デュレーション」の驚くべき差に注目してください。

項目 【EDV】 【TLT】
投資対象 ストリップス債 (ゼロクーポン債) 通常の利付国債
実効デュレーション 約24.5年 約17.0年
経費率 0.06% 0.15%
純資産総額 約30億ドル 約500億ドル
配当利回り(SEC) 約4.5% 約4.4%
分配頻度 四半期 毎月

(注:数値は2025年6月時点の参考値です。配当利回りは30日間SEC利回りを示します)


各ETFの詳細

【EDV】バンガード・超長期米国債ETF (Vanguard Extended Duration Treasury ETF)

  • 連動指数:ブルームバーグ米国債ストリップス(20-30年)指数
  • 投資対象の解説:このETFは、通常の利付国債ではなく「ストリップス債」に投資します。ストリップス債とは、利息(クーポン)部分を剥ぎ取ったゼロクーポン債のことです。利息が支払われない分、将来の元本を現在価値に割り引いて価格が決まるため、同じ残存期間の利付国債よりも金利変動への感応度(デュレーション)が極端に長くなる性質があります。
  • ポイント:デュレーションが約24.5年と極めて長く、TLTよりも遥かに価格変動が激しいハイリスク・ハイリターンなETFです。経費率が非常に低い点は大きな魅力。金利の低下を強く予測し、積極的にリターンを狙う上級者向けの選択肢と言えます。
  • 情報源:Vanguard EDV 公式サイト

【TLT】iシェアーズ 米国債20年超 ETF (iShares 20+ Year Treasury Bond ETF)

  • 連動指数:ICE米国債20年超指数
  • 投資対象の解説:こちらは一般的な「利付国債」に投資します。残存期間が20年を超える米国財務省証券で構成されており、超長期債ETFのスタンダードな選択肢です。
  • ポイント:デュレーション約17.0年と、EDVに比べれば価格変動は穏やかです(それでも十分に大きいですが)。純資産総額が圧倒的に大きく、流動性が極めて高いため、大口の取引でも安心して売買できます。毎月分配であることもインカムを重視する投資家には魅力的です。
  • 情報源:iシェアーズ TLT 公式サイト

投資のポイントと注意点

1.デュレーション=価格変動の大きさ を理解する

デュレーションは、金利が1%動いたときに債券価格が何%動くかの目安です。デュレーションが「24.5年」のEDVは、金利が1%上昇すると、理論上約24.5%も価格が下落する可能性があることを意味します。TLTの「17.0年」でも十分に大きいですが、EDVのリスクの高さは際立っています。この価格変動の激しさを許容できるかどうかが、選択の最大の分かれ目です。

2.ポートフォリオにおける「ヘッジ」としての役割

これほどリスクの高い債券に投資する理由の一つに、株式との逆相関を期待した「ヘッジ(保険)」機能があります。一般的に、株式市場が暴落する「リスクオフ」の局面では、安全資産の代表である米国債が買われ、価格が上昇する傾向があります。この特性を利用し、ポートフォリオ全体のリスクを管理する目的で組み入れる投資家もいます。

3.結局どちらを選ぶべきか?

  • より積極的に金利低下の恩恵を狙いたい、最高水準のリスクを許容できるなら → 【EDV】
  • 流動性の高さを重視し、スタンダードな超長期債投資を行いたいなら → 【TLT】

どちらのETFも、金利動向に非常に敏感な金融商品です。投資する際は、そのリスクを十分に理解した上で、慎重に判断してください。

免責事項:本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。




配当(分配金)と利回り

年間配当を1年の平均株価で割り、平均の利回りを計算してみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算しているので、通期配当だけで計算した時よりも利回りが高く計上されています)

EDVの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 4.21% 3.15 10.5% 74.8 -8.2%
2023 3.5% 2.85 5.6% 81.5 -21.1%
2022 2.61% 2.7 -0.7% 103.3 -24.3%
2021 1.99% 2.72 -67.7% 136.5 -15.1%
2020 5.24% 8.42 85.9% 160.8 26.9%
2019 3.58% 4.53 38.1% 126.7 14.%
2018 2.95% 3.28 -6.8% 111.1 -4.2%
2017 3.03% 3.52 -39.3% 116 -9.4%
2016 4.53% 5.8 21.6% 128 6.5%
2015 3.97% 4.77 24.2% 120.2 13.5%
2014 3.63% 3.84 -13.5% 105.9 3.4%
2013 4.34% 4.44 -49.1% 102.4 -16.1%
2012 7.14% 8.72 40.2% 122.1 28.5%
2011 6.55% 6.22 62% 95 10.1%
2010 4.45% 3.84 -74.7% 86.3 -17.2%
2009 14.54% 15.15 298.7% 104.2 2%
2008 3.72% 3.8 102.2


TLTの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 4.02% 3.76 31.9% 93.5 -5.3%
2023 2.89% 2.85 9.6% 98.7 -15.8%
2022 2.22% 2.6 20.9% 117.2 -19.2%
2021 1.48% 2.15 -6.9% 145.1 -9.1%
2020 1.45% 2.31 -23.5% 159.6 21.1%
2019 2.29% 3.02 -4.1% 131.8 10.8%
2018 2.65% 3.15 4% 119 -3.8%
2017 2.45% 3.03 -0.3% 123.7 -5.6%
2016 2.32% 3.04 -1.3% 131 5.6%
2015 2.48% 3.08 -6.9% 124 9.1%
2014 2.91% 3.31 1.2% 113.7 2.2%
2013 2.94% 3.27 2.8% 111.3 -8.5%
2012 2.61% 3.18 -19.1% 121.7 18.6%
2011 3.83% 3.93 1.8% 102.6 6.5%
2010 4.01% 3.86 8.1% 96.3 -1.5%
2009 3.65% 3.57 -13.3% 97.8 2.2%
2008 4.31% 4.12 95.7


ポートフォリオの比較

次に、このETFの構成比率を見てみます。

ETFを構成する債権の比率

(出所はfidelity.com)

TLT EDV
国債 100% 100%
社債 0% 0%
モーゲージ債 0% 0%
地方債 0% 0%

組み入れ債権の格付け比率

さらに、ETFを構成する債券の格付け比率を見てみます。
(出所は英語版yahoo finance)

格付 TLT EDV
AAA 100% 100%
AA 0% 0%
A 0% 0%
BBB 0% 0%
BB 0% 0%
B 0% 0%
BelowB 0% 0%

Posted by 南 一矢