新興国高配当vs指数ETF:VWO•DGRE•DGS•DEM・EEM・GMF・IEMG・SPEMを比較する

海外ETF

新興国高配当ETFのデータを比較し、情報を整理してみます。

このページでは積立や資産運用の参考となるように、ETF(投資信託)の概要(連動するインデックス等)や株価チャート、配当利回り、ポートフォリオ等の詳細を紹介してみましょう

【利回り比較】新興国 “高配当" ETF おすすめ3選!DEM・DGRE・DGS

新興国を対象とした投資戦略の着眼点は「成長性」とともに「高い分配金(インカムゲイン)」があります。

市場平均を上回るリターンを目指す「スマートベータ」と呼ばれる戦略のETFは、「高配当」という共通のテーマを持ちつつも、ETFごとに戦略が違います。

まず、スタンダードな指数連動型ETFと「配当」を軸にした特徴的な新興国ETFをピックアップし、それぞれの戦略、期待できる利回り、そして注意すべきリスクを比較・解説します。

新興国 “配当戦略" ETF 比較一覧表

スタンダードなETF(VWO)と高配当系のETFの違いを一覧表にしました。「配当利回り」「経費率」のバランスに注目です。

ティッカー 投資戦略タイプ 配当利回り(目安) 経費率(年率)
VWO 【スタンダード型】 約3.0% 0.08%
DEM 【高利回り追求型】 約5.2% 0.63%
DGRE 【クオリティ配当成長型】 約2.5% 0.32%
DGS 【小型株配当型】 約3.8% 0.58%

※データは2025年6月時点のものを参考にしています。各種データは変動します。


各ETFの戦略と特徴

【DEM】ウィズダムツリー 新興国高配当ファンド(高利回り追求型)

  • 戦略: 純粋に配当利回りが高い銘柄を機械的に選び出して投資します。
  • 特徴: 約5.2%という高い分配金利回りが最大の魅力で、インカム収入を重視する投資家に向いています。その代わり、高配当銘柄が多い金融、エネルギー、素材といった景気敏感セクターにポートフォリオが偏る傾向があります。また、株価が成長しない「バリュー・トラップ」に陥るリスクも考慮する必要があります。

【DGRE】ウィズダムツリー 新興国株クオリティ配当成長ファンド(クオリティ配当成長型)

  • 戦略: 単に配当が高いだけでなく、企業の収益性(ROE等)や成長性といった「質(クオリティ)」も重視して、持続的な成長が期待できる優良企業を選定します。
  • 特徴: 高い分配金だけでなく、株価自体の値上がり益も狙う、バランスの取れた戦略です。配当利回りはVWOと同程度ですが、財務が健全な優良企業に投資したい場合に選択肢となります。経費率が0.32%と、この中では比較的低いのもポイントです。

【DGS】ウィズダムツリー 新興国小型株配当ファンド(小型株配当型)

  • 戦略: 配当を支払っている新興国の小型株に特化して投資します。
  • 特徴: 将来的に大きく成長する可能性を秘めた小型株に投資することで、高いトータルリターンを狙います。その分、価格変動(ボラティリティ)は他のETFに比べて非常に大きくなるため、ハイリスク・ハイリターンな選択肢です。

新興国高配当ETF:目的別の選び方

  • 【インカム重視】とにかく高い分配金収入が欲しいなら → DEM
  • 【バランス重視】配当と株価の値上がり益の両方を狙いたいなら → DGRE
  • 【ハイリスク覚悟】将来の大きなリターンを夢見るなら → DGS

これらのスマートベータETFは、スタンダードなVWOなどと比べて経費率が高くなる傾向があります。そのコストに見合うリターンが期待できるか、ご自身の投資戦略と照らし合わせて慎重に判断しましょう。

【徹底比較】新興国インデックスETF おすすめ5選!VWO・IEMG・EEMの違いとは?

さらに、新興国市場全体に幅広く分散投資できる「新興国インデックス」に連動するETFを比較します。

ただ、どれを選べば良いのかわかりにくいので、代表的な5銘柄をピックアップし、長期投資の観点で重要な「経費率」と、それぞれの特徴を比較・解説します。

主要 新興国ETF 比較一覧表

今回ご紹介するETFの重要ポイントの一覧表です。特に「経費率」「投資範囲」の違いに注目です。

ティッカー 投資範囲 経費率(年率) 特徴
IEMG 新興国全体(小型株含む 0.09% 低コスト・高分散。iシェアーズの主力商品。
VWO 新興国全体(小型株含む 0.08% 業界最安コスト。バンガードの主力商品。
SPEM 新興国全体(小型株含む 0.09% IEMG/VWOの競合。S&P指数の低コストETF。
EEM 新興国全体(大・中型株) 0.70% 高コストな旧世代版。流動性重視の短期売買向け。
GMF アジア太平洋に限定 0.45% アジアの成長に集中投資したい方向け。

※データは2025年6月時点のものを参考にしています。各種データは変動します。


【3大低コストETF】IEMG vs VWO vs SPEM

個人の長期・積立投資において、新興国ETFの核となるのはこの3つのうちのどれかです。

  • IEMG (iシェアーズ): 経費率0.09%。MSCI社の指数に連動。小型株まで含み分散性が高い、iシェアーズの主力商品。
  • VWO (バンガード): 経費率0.08%。FTSE社の指数に連動。業界最安コストを誇るバンガードの牙城。IEMGと人気を二分する。
  • SPEM (SPDR): 経費率0.09%。S&P社の指数に連動。上記2つと同様に低コストで、指数提供会社の好みで選ばれる。

結論として、この3つのパフォーマンスや特性に劇的な差はありません。どれを選んでも、低コストで新興国全体に投資するという目的は達成できます。ブランドの好みや、ご自身が利用する証券会社での買いやすさで選んで良いでしょう。

【要注意】IEMGとEEMの決定的違い

同じiシェアーズの商品で名前も似ているIEMGとEEMですが、中身は全くの別物です。

  • EEM (旧世代・高コスト): 2003年に設定された歴史の古いETF。経費率が0.70%と非常に高く、個人の長期投資には向きません。流動性が非常に高いため、機関投資家の短期売買などに利用されます。
  • IEMG (新世代・低コスト): 高コストだったEEMに代わる、個人投資家向けとして2012年に設定されたETF。経費率は0.09%とEEMの約8分の1。長期・積立投資なら迷わずこちらを選ぶべきです。

【補足】アジア集中投資ならGMF

GMFは、投資対象をアジア太平洋地域の新興国に限定したETFです。ブラジルや南アフリカなどの市場を含まないため、より中国・台湾・インドといったアジアの動向にパフォーマンスが連動します。アジアの成長に特に強気な場合の選択肢となりますが、経費率は0.45%とやや高めです。


【重要】新興国ETFに投資する際の注意点

新興国への投資には、先進国投資にはない特有のリスクが伴います。

  1. 通貨リスク: 新興国の通貨は下落しやすい傾向にあり、円換算のリターンが押し下げられることがあります。
  2. カントリーリスク: 構成比率の高い中国など、特定の国の政治・経済情勢がパフォーマンスに大きな影響を与えます。
  3. 高いボラティリティ(価格変動): 先進国市場に比べて値動きが激しいのが特徴です。長期的な視点での投資が求められます。

免責事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

株価:過去~現在

※チャート左目盛り:株価推移
※チャート右目盛り:緑線は米国10年国債利回り
※主要指標の単位 B:10億ドル、M:100万ドル。株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、総資産、配当利回り、経費率、権利落ち日などの情報を整理。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。





配当(分配金)と利回り

年間累計の分配金(ドル)を株価で割った利回りの推移を見てみます。
(*ここでは特別配当(分配金)を含めて計算するので、通常の定期的な配当だけで計算した時よりも利回りが高くなることがあります)

VWOの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 3.22% 1.41 -2.8% 43.8 8.4%
2023 3.59% 1.45 -8.2% 40.4 -4.9%
2022 3.72% 1.58 23.4% 42.5 -18.4%
2021 2.46% 1.28 36.2% 52.1 23.8%
2020 2.23% 0.94 -33.3% 42.1 1%
2019 3.38% 1.41 31.8% 41.7 -4.1%
2018 2.46% 1.07 1.9% 43.5 4.1%
2017 2.51% 1.05 18% 41.8 19.8%
2016 2.55% 0.89 -15.2% 34.9 -9.4%
2015 2.73% 1.05 -6.3% 38.5 -7.7%
2014 2.69% 1.12 1.8% 41.7 0%
2013 2.64% 1.1 13.4% 41.7 0.5%
2012 2.34% 0.97 7.8% 41.5 -7.2%
2011 2.01% 0.9 11.1% 44.7 5.2%
2010 1.91% 0.81 50% 42.5 32.8%
2009 1.69% 0.54 -53.8% 32 -21.6%
2008 2.87% 1.17 40.8

DGREの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 1.85% 0.48 -12.7% 26 14.5%
2023 2.42% 0.55 -40.9% 22.7 -2.2%
2022 4.01% 0.93 31% 23.2 -20.8%
2021 2.42% 0.71 22.4% 29.3 22.1%
2020 2.42% 0.58 -1.7% 24 -0.8%
2019 2.44% 0.59 0% 24.2 -4%
2018 2.34% 0.59 -28.9% 25.2 3.3%
2017 3.4% 0.83 25.8% 24.4 15.1%
2016 3.11% 0.66 17.9% 21.2 -6.6%
2015 2.47% 0.56 -5.1% 22.7 -10.6%
2014 2.32% 0.59 293.3% 25.4 0.8%
2013 0.6% 0.15 25.2

DGSの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 3.23% 1.65 -27.3% 51.1 9.4%
2023 4.86% 2.27 -3% 46.7 -0.8%
2022 4.97% 2.34 12% 47.1 -10.3%
2021 3.98% 2.09 19.4% 52.5 26.5%
2020 4.22% 1.75 -6.9% 41.5 -9.8%
2019 4.09% 1.88 6.8% 46 -5.7%
2018 3.61% 1.76 21.4% 48.8 4.7%
2017 3.11% 1.45 9% 46.6 21.4%
2016 3.46% 1.33 16.7% 38.4 -6.8%
2015 2.77% 1.14 -16.8% 41.2 -11.2%
2014 2.95% 1.37 -12.7% 46.4 -4.7%
2013 3.22% 1.57 9% 48.7 6.6%
2012 3.15% 1.44 -14.3% 45.7 -6.5%
2011 3.44% 1.68 32.3% 48.9 6.1%
2010 2.75% 1.27 5% 46.1 38.4%
2009 3.63% 1.21 -0.8% 33.3 -11.4%
2008 3.24% 1.22 37.6

DEMの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 5% 2.12 -5.4% 42.4 10.7%
2023 5.85% 2.24 -27% 38.3 -1.8%
2022 7.87% 3.07 21.3% 39 -12%
2021 5.71% 2.53 47.1% 44.3 16.9%
2020 4.54% 1.72 -21.1% 37.9 -12.5%
2019 5.03% 2.18 22.5% 43.3 -2.7%
2018 4% 1.78 7.2% 44.5 6.2%
2017 3.96% 1.66 23% 41.9 18.7%
2016 3.82% 1.35 -17.7% 35.3 -12%
2015 4.09% 1.64 -28.7% 40.1 -18%
2014 4.7% 2.3 10.6% 48.9 -7.7%
2013 3.92% 2.08 11.2% 53 -2.2%
2012 3.45% 1.87 -17.3% 54.2 -4.7%
2011 3.97% 2.26 17.7% 56.9 8.8%
2010 3.67% 1.92 34.3% 52.3 30.4%
2009 3.57% 1.43 -24.7% 40.1 -15%
2008 4.03% 1.9 47.2


EEMの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 2.41% 1.02 -3.8% 42.3 7.6%
2023 2.7% 1.06 12.8% 39.3 -4.6%
2022 2.28% 0.94 -2.1% 41.2 -22%
2021 1.82% 0.96 29.7% 52.8 23.9%
2020 1.74% 0.74 -39.8% 42.6 0.9%
2019 2.91% 1.23 43% 42.2 -5.4%
2018 1.93% 0.86 -2.3% 44.6 5.4%
2017 2.08% 0.88 35.4% 42.3 23.3%
2016 1.9% 0.65 -18.8% 34.3 -9.3%
2015 2.12% 0.8 -8% 37.8 -9.4%
2014 2.09% 0.87 2.4% 41.7 0.2%
2013 2.04% 0.85 16.4% 41.6 1.5%
2012 1.78% 0.73 -8.8% 41 -6.6%
2011 1.82% 0.8 27% 43.9 4.3%
2010 1.5% 0.63 10.5% 42.1 29.1%
2009 1.75% 0.57 -32.9% 32.6 -17.5%
2008 2.15% 0.85 39.5

GMFの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 2% 2.21 -20.5% 110.7 11.3%
2023 2.79% 2.78 14.4% 99.5 -3.6%
2022 2.35% 2.43 -25.9% 103.2 -20.7%
2021 2.52% 3.28 96.4% 130.2 23.9%
2020 1.59% 1.67 -6.7% 105.1 9.4%
2019 1.86% 1.79 -9.6% 96.1 -4.5%
2018 1.97% 1.98 11.9% 100.6 8.3%
2017 1.91% 1.77 -4.8% 92.9 23.5%
2016 2.47% 1.86 -32.6% 75.2 -9.8%
2015 3.31% 2.76 115.6% 83.4 2.5%
2014 1.57% 1.28 -23.4% 81.4 6.7%
2013 2.19% 1.67 22.8% 76.3 6.1%
2012 1.89% 1.36 -47.3% 71.9 -8.5%
2011 3.28% 2.58 -31.2% 78.6 2.1%
2010 4.87% 3.75 428.2% 77 30.7%
2009 1.21% 0.71 22.4% 58.9 -10.9%
2008 0.88% 0.58 66.1

IEMGの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 3.15% 1.67 14.4% 53.1 8.4%
2023 2.98% 1.46 16.8% 49 -3.4%
2022 2.47% 1.25 -31.7% 50.7 -21%
2021 2.85% 1.83 59.1% 64.2 25.9%
2020 2.25% 1.15 -31.5% 51 0.6%
2019 3.31% 1.68 30.2% 50.7 -5.9%
2018 2.39% 1.29 -3% 53.9 5.5%
2017 2.6% 1.33 38.5% 51.1 22.2%
2016 2.3% 0.96 -2% 41.8 -8.5%
2015 2.14% 0.98 -8.4% 45.7 -8.4%
2014 2.14% 1.07 23% 49.9 0.8%
2013 1.76% 0.87 64.2% 49.5 0.2%
2012 1.07% 0.53 49.4

SPEMの利回り

配当 株価
平均利回り 年累計 年伸び率 平均株価 年伸び率
2024 2.83% 1.07 8.1% 37.8 10.2%
2023 2.89% 0.99 -10% 34.3 -3.9%
2022 3.08% 1.1 -14.7% 35.7 -18.7%
2021 2.94% 1.29 61.3% 43.9 23.7%
2020 2.25% 0.8 -27.3% 35.5 0.6%
2019 3.12% 1.1 46.7% 35.3 -3.3%
2018 2.05% 0.75 78.6% 36.5 6.7%
2017 1.23% 0.42 0% 34.2 23%
2016 1.51% 0.42 -32.3% 27.8 -8.6%
2015 2.04% 0.62 -11.4% 30.4 -7%
2014 2.14% 0.7 14.8% 32.7 1.9%
2013 1.9% 0.61 -7.6% 32.1 1.9%
2012 2.1% 0.66 -37.1% 31.5 -7.9%
2011 3.07% 1.05 22.1% 34.2 3.6%
2010 2.61% 0.86 290.9% 33 32.5%
2009 0.88% 0.22 -68.1% 24.9 -18.4%
2008 2.26% 0.69 30.5


ポートフォリオの比較

次に、このETF(投資信託)の資産総額を占める金融商品(株式など)の構成比率を見てみます。
投資する企業の規模別比率はチャールズシュワブ、組入れ上位10銘柄はフィディリティのサイト内のページを参照。

Posted by 南 一矢